TOB(株式公開買付)が不成立やディスカウントになる理由は?【廣済堂/ソレキア事例】

本記事では、TOB(株式公開買付)が不成立になる理由やディスカウントTOBが行われる理由などについて解説します。また、廣済堂やソレキアなどのTOB(株式公開買付)が不成立になった事例やディスカウントTOBが行われた事例もご紹介します。


目次

  1. TOB(株式公開買付)とは
  2. TOB(株式公開買付)が不成立やディスカウントになる理由
  3. TOB(株式公開買付)が不成立になった事例
  4. ディスカウントTOBが行われた事例
  5. 敵対的TOBは不成立になりやすい?
  6. TOB(株式公開買付)の相談先
  7. まとめ

1. TOB(株式公開買付)とは

TOB(株式公開買付)とは

TOB(株式公開買付)とは、買い手側が買い付け条件をあらかじめ公表したうえで売り手企業の株主から取引市場外で株式を買い付ける方法のことです。

本記事では、TOB(株式公開買付)が不成立になったりディスカウントTOBが行われたりする理由について解説します。まずは、TOB(株式公開買付)の目的やメリット、種類について説明します。

TOB(株式公開買付)が行われる目的

TOB(株式公開買付)は、一定数以上の株式を手に入れて経営権を握るためや、経営陣が金融機関や投資ファンドなどと協力して自社株を買い集めるMBOのためなどに用いられます。

株式を手に入れるには、TOB(株式公開買付)や株式市場内取引、株式譲渡契約などの方法が用いられます。

経営権を手に入れるには株式を規定数量以上獲得しなければなりませんが、TOB(株式公開買付)や株式市場内取引、株式譲渡契約によって株式を取得する場合、それぞれにメリット・デメリットがあります。

TOB(株式公開買付)のメリット

TOB(株式公開買付)のメリットは、決まった株価で決まった期間に株式を取得できる点です。

TOB(株式公開買付)によって株式を取得する場合、買取価格にプレミアムを付加し、基準となる値段よりも高い値段で募集することが一般的です。

株式取引市場内で一気に株式を手に入れようとすると株価が暴騰してしまうので、結果的にTOB(株式公開買付)で取得するよりも損をしてしまう可能性があります。

しかし、TOB(株式公開買付)であれば一定の価格で固定されているので、買収に必要な資金を想定しやすい点がメリットです。

また、TOB(株式公開買付)は買取期間もあらかじめ告知するので、買い手は計画が立てやすいことも利点です。

TOB(株式公開買付)の種類

買い手はTOB(株式公開買付)を行う前に、売り手経営陣に対して理由や条件、思いなどを伝えます。

買い手によるTOB(株式公開買付)の意向に対して、TOB(株式公開買付)を受けた側の経営陣が同意したケースが「友好的TOB」です。

一方、買い手の提案に対して売り手側の経営陣が拒否を示し、それでも買い手側が強制的にTOB(株式公開買付)を実行した場合は「敵対的TOB」とみなされます。

売り手側の経営陣は、買収を止めるために「ホワイトナイト」「ポイズンピル」「焦土作戦」などの買収防衛策を発動して抵抗します。

TOB(株式公開買付)が失敗となるのは、売り手側経営陣による抵抗が主な原因のひとつです。一方、ディスカウントTOBは友好的TOBの際に発生します。

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2. TOB(株式公開買付)が不成立やディスカウントになる理由

TOB(株式公開買付)が不成立やディスカウントになる理由

TOB(株式公開買付)が不成立になったり、ディスカウントTOBになったりするのは、敵対的TOBや友好的TOBの特徴に原因があります。ここでは、TOB(株式公開買付)が不成立やディスカウントになる主な理由を解説します。

TOBが不成立になる理由

TOB(株式公開買付)が不成立になるのは、買い手側が敵対的TOBを仕掛け、敵対的TOBを仕掛けられた側が買収に抵抗することが主な原因です。

特に、日本では欧米に比べて敵対的TOBが不成立となる確率が高く、一時期急増した敵対的TOBは現在あまり行われなくなっていました。

しかし、近年の先行き不透明な社会状況や、経営陣に対する株主の目が厳しくなっていることなどから、再び敵対的TOBが増える兆しが現れ始めています。

そのほか、TOB(株式公開買付)が不成立になる原因として、TOB手続き中に売り手側企業に重大な経営上の問題が発生・発覚するケースもありますが、このようなケースでの不成立は比較的少数です。

ディスカウントTOBを行う理由

TOB(株式公開買付)を行う際は、売り手側の株主から確実に株式を集めるために、募集価格にプレミアムを上乗せし、株式取引市場価格よりも割高な価格で買い取るケースが一般的です。

しかし近年は、株式取引市場価格よりも割安な価格で募集をかけるディスカウントTOBが増加しています。

通常のTOBは、すべての対象株主から広く株式を買い集めることを目的としていますが、ディスカウントTOBの場合は、特定の株主から確実に株式を取得することが目的です。

例えば、買い手側がTOB(株式公開買付)によって50.1%の株式取得を目指す際、対象企業の大株主から保有株式をすべて買い取る約束をしたとします。

もし、通常のTOB(株式公開買付)によって株式を買い集めると、大株主以外からの株主からも売却希望が集まるので、大株主の株式をすべて取得できない可能性も少なくありません。

そこで、ディスカウントTOBによって募集価格を低くし、売却を希望する株主を減らします。

また、もうひとつの目的は、通常のTOBを行った場合に起こりうる上場廃止リスクを避けるためです。通常のTOBによって株主数が少数になると、上場廃止条件に当てはまる可能性があります。

ディスカウントTOBによって株式を売却する株主数を減らすことで、株主の減少を防ぐことができます。

なお、特定の株主から株式を買い取るには株式譲渡契約を用いる方法もありますが、上場企業の株式を市場外で買い集めた結果、株式の所有割合が3分の1を超える場合は、株式公開買付でなければなりません。

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3. TOB(株式公開買付)が不成立になった事例

TOB(株式公開買付)が不成立になった事例

ここからは、過去にTOB(株式公開買付)が不成立になり、注目された以下5つの事例をご紹介します。

  1. 廣済堂のTOB不成立事例
  2. ソレキアのTOB不成立事例
  3. 夢真ホールディングスのTOB不成立事例
  4. ドン・キホーテのTOB不成立事例
  5. 王子ホールディングスのTOB不成立事例

1.廣済堂のTOB不成立事例

TOB(株式公開買付)が不成立になった事例1

出典: https://www.kosaido.co.jp/

1件目は、廣済堂のTOB不成立事例です。2019年、廣済堂は投資ファンドのベインキャピタルから、TOBの提案を受けました。

しかし、廣済堂の複数の大株主が反対したことから、ベインキャピタルのTOBは不成立に終わっています。

廣済堂は、情報事業・人材関連事業・ライフスタイル事業を中心に展開しており、印刷事業と出版事業の不振が続くなか、廣済堂の子会社で火葬場事業を営む東京博善の業績は好調で、高い企業価値を持っています。

ベインキャピタルのTOB提案に対して廣済堂の経営陣は賛同し、MBO(経営陣による買収)を図りましたが、反対株主の保有株式割合は大きく、ベインキャピタルに対する対抗TOBもあって不成立となりました。

当事例は、経営陣が賛同しているのにもかかわらず不成立に終わった数少ないケースです。

2.ソレキアのTOB不成立事例

TOB(株式公開買付)が不成立になった事例2

出典: https://www.solekia.com/

2件目は、ソレキアのTOB不成立事例です。2017年ソレキアは、実業家で個人投資家の佐々木ベジ氏から、業績の改善と会社の独立性維持を目的としたTOBを受けました。

これに対し、ソレキアと取引関係にある富士通が対抗TOBを開始し、TOB合戦によって価格は高騰していきます。結果的に富士通による対抗TOBは不成立となり、佐々木ベジ氏が筆頭株主となっています。

ソレキアはICTを活用した製品やサービスを提供しており、富士通によるソレキアの株式保有割合は少ないものの売上の多くを富士通に依存しており、役員も送り込まれていたことから実質富士通に支配権がある状態でした。

富士通は、ソレキアの完全子会社化を目指しましたが、大企業が個人投資家に負けた事例として注目を浴びました。

3.夢真ホールディングスのTOB不成立事例

TOB(株式公開買付)が不成立になった事例3

出典: https://www.yumeshin.co.jp/

3件目は、夢真ホールディングスのTOB不成立事例です。夢真ホールディングスは、積極的なM&A戦略によって成長してきた企業です。

2011年にはフルキャストテクノロジーをTOBによって買収し、2016年には日本サード・パーティをTOBによって買収するなど、TOBも成功させています。しかし、夢真ホールディングスは、過去にTOBの不成立で大きなダメージを負ったこともあります。

夢真ホールディングスは、2005年に建設コンサルティング会社の日本技術開発へTOBを行いました。

しかし、日本技術開発は買収防衛策を実行し、夢真ホールディングスは買収防衛策導入企業へTOBを仕掛けることになります。

結果的に日本技術開発への敵対的TOBは不成立に終わり、その後もM&Aの失敗が続いたことから、夢真ホールディングスは2006年から立て続けに子会社の売却を進めました。

4.ドン・キホーテのTOB不成立事例

TOB(株式公開買付)が不成立になった事例4

出典: https://ppi-hd.co.jp/social/

4件目は、ドン・キホーテのTOB不成立事例です。ドン・キホーテは、2018年にユニー・ファミリーマートHDによるTOBが行われ、株主の賛同が得られず不成立となったことで話題となりました。

そのドン・キホーテ自身も、過去に敵対的TOBを仕掛けて不成立となり、注目を集めました。

ドン・キホーテは、2005年に外食・中食事業を展開するオリジン東秀に買収を提案したものの、オリジン東秀の経営陣に拒否され、敵対的TOBを仕掛けます。

一方、オリジン東秀側はイオンをホワイトナイトとして、対抗TOBを行いました。その結果ドン・キホーテの敵対的TOBは不成立となっています。

5.王子ホールディングスのTOB不成立事例

TOB(株式公開買付)が不成立になった事例5

出典: https://www.ojiholdings.co.jp/

5件目は、王子ホールディングスのTOB不成立事例です。M&Aや敵対的買収という言葉が注目され、メディアでも多く取り上げられていた2006年、王子製紙が北越製紙にTOBを仕掛けました。

しかし、北越製紙の経営陣はこれを拒否し、第三者割当増資などの買収防衛策を講じた結果、王子製紙の敵対的TOBは不成立に終わっています。

王子製紙は、北越製紙の買収によって業界トップとなり、業界再編を促すことを目的としていましたが、日本での敵対的TOBの難しさが関係者に認知される事例となりました。

4. ディスカウントTOBが行われた事例

ディスカウントTOBが行われた事例

続いて、ディスカウントTOBが行われた以下の事例をご紹介します。

  1. NRIによる自社株のTOB
  2. コカBJHによる自社株のディスカウントTOB
  3. 三菱商事による三菱自動車工業のディスカウントTOB
  4. 三井化学によるアークへのディスカウントTOB
  5. ジョイフル本田による自社株のディスカウントTOB
  6. RIZAPグループによるジーンズメイトのディスカウントTOB
  7. TBIホールディングスによるホリイフードサービスへのディスカウントTOB

1.NRIによる自社株のTOB

ディスカウントTOBが行われた事例1

出典: https://www.nri.com/jp

1件目は、NRIによる自社株のTOBです。野村総合研究所(NRI)は2019年、ディスカウントTOBによって自社株を取得しました。

本TOBは、野村HDがNRIの保有株式を一部売却する意向を示したことで、実行が決定しています。

野村グループは、業績不振に加えてコーポレート・ガバナンスの問題が発覚したことから、株主還元策の一環として本件の実行に至りました。

2.コカBJHによる自社株のディスカウントTOB

ディスカウントTOBが行われた事例2

出典: https://www.ccbj-holdings.com/

2件目は、コカBJHによる自社株のディスカウントTOBです。コカ・コーラボトラーズジャパンHD(コカBJH)は、2018年TOBによる自社株買いを発表しました。

本TOBは、市場価格よりも約13%やすいディスカウントTOBとなっており、大株主であるリコーから株式を買い取ること目的として行われました。

本TOBにより、コカBJHは資本効率の向上を図り、リコーは事業投資に充てています。

3.三菱商事による三菱自動車工業のディスカウントTOB

ディスカウントTOBが行われた事例3

出典: https://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/

3件目は、三菱商事による三菱自動車工業のディスカウントTOBです。2018年、三菱商事はディスカウントTOBによって三菱自動車株式の保有数を増やし、三菱自動車を関連会社化しました。

三菱自動車工業の株式保有上位を三菱系の企業が占めていますが、三菱商事のTOBによって三菱自動車工業への出資構成を変更しています。

4.三井化学によるアークへのディスカウントTOB

ディスカウントTOBが行われた事例4

出典: https://jp.mitsuichemicals.com/jp/

4件目は、三井化学によるアークへのディスカウントTOBです。2017年、三井化学はアークへのTOBを発表し、2018年にTOBが完了しています。TOB価格は、公表時の市場価格よりも約10%やすいディスカウントTOBとなりました。

三井化学は、工業製品開発支援を行うアークの株式を取得することで、自動車メーカーへの提案力強化を図っています。

5.ジョイフル本田による自社株のディスカウントTOB

ディスカウントTOBが行われた事例5

出典: https://www.joyfulhonda.com/

5件目は、ジョイフル本田による自社株のディスカウントTOBです。ホームセンターを運営するジョイフル本田は、2017年、TOBによって自社株を取得しました。TOB価格は、TOB発表の前日終値よりも約7%やすいディスカウントTOBとなっています。

TOBによって買い取る株式の大半は、筆頭株主のベアリング・プライベート・エクイティ・アジアからで、投資ファンドが取得した時の株価よりも大幅に上昇していたことから、投資ファンドは株式売却に応じました。

6.RIZAPグループによるジーンズメイトのディスカウントTOB

ディスカウントTOBが行われた事例6

出典: https://www.rizapgroup.com/

6件目は、RIZAPグループによるジーンズメイトのディスカウントTOBです。RIZAPグループは、2017年、ジーンズメイトに対してTOBを行いました。

TOB価格は、TOB公表日の前日終値から約22%安いディスカウントTOBとなっており、株式の多くはジーンズメイトの創業者一族から取得することで合意しました。

RIZAPグループは、当時M&Aによる事業の多角化戦略を進めており、ジーンズメイトの買収もその一環でした。

7.TBIホールディングスによるホリイフードサービスへのディスカウントTOB

ディスカウントTOBが行われた事例7

出典: https://tbi-group.co.jp/

7件目は、TBIホールディングスによる、ホリイフードサービスへのディスカウントTOBです。外食事業を営むTBIホールディングスは、2017年、居酒屋チェーンを展開するホリイフードサービスをTOBによって買収しました。

TOB価格は市場価格よりも約22%安いディスカウントTOBであったことから、TOBに応じたのはホリイフードサービスの会長1人だけで、過半数を超える株式を会長から取得しています。

また、買収後もホリイフードサービスの上場は維持されることが事前に発表されており、買収後にホリイフードサービスの企業価値向上が期待できたことも、株式売却に応じる株主がいなかった理由です。

5. 敵対的TOBは不成立になりやすい?

敵対的TOBは不成立になりやすい?

日本でこれまで行われてきたTOBのほとんどは友好的TOBであり、敵対的TOBの件数は少数です。また、敵対的TOBが成功したケースはごく少数です。

欧米に比べて、日本の敵対的TOBが不成立になりやすい原因にはさまざまなものが考えられますが、ひとつには会社の所有権に関する価値観の違いがあるといわれています。

米国では会社は株主のものと考えられていますが、日本の場合、会社は経営者のものという考え方が一般的です。

そのため、日本では上場企業であっても株主より経営陣の利益が優先されやすく、敵対的TOBが株主にとってメリットの大きいものであっても、経営陣の意向によって不成立になってしまう傾向にあります。

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6. TOB(株式公開買付)の相談先

TOB(株式公開買付)の相談先

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M&A総合研究所では、豊富なM&A支援実績を持った会計士と弁護士、アドバイザーがTOB(株式公開買付)などのM&Aをトータルサポートします。

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7. まとめ

まとめ

本記事では、TOB(株式公開買付)が不成立になる理由や事例、ディスカウントTOBが行われる理由と事例をご紹介してきました。

【今回紹介したTOB(株式公開買付)の不成立事例】

  1. 廣済堂のTOB不成立事例
  2. ソレキアのTOB不成立事例
  3. 夢真ホールディングスのTOB不成立事例
  4. ドン・キホーテのTOB不成立事例
  5. 王子ホールディングスのTOB不成立事例

【今回紹介したディスカウントTOBの事例】
  1. NRIによる自社株のTOB
  2. コカBJHによる自社株のディスカウントTOB
  3. 三菱商事による三菱自動車工業のディスカウントTOB
  4. 三井化学によるアークへのディスカウントTOB
  5. ジョイフル本田による自社株のディスカウントTOB
  6. RIZAPグループによるジーンズメイトのディスカウントTOB
  7. TBIホールディングスによるホリイフードサービスへのディスカウントTOB

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