M&Aにおけるのれんとは?事例を交えて償却・減損も詳しく解説!

のれんについてお調べですね。会計や税務の専門用語であるのれんの知識は、M&Aの実施に不可欠です。この記事では、M&Aにおけるのれんの意味や、償却・減損について解説。のれんの理解を深め、M&Aの交渉を有利に進めることができるようになりますよ。


目次

  1. M&Aにおける「のれん」とは
  2. のれんの償却とは
  3. のれんの会計処理とは
  4. のれんを計算する3つの方法
  5. のれんの減損処理とは
  6. M&Aでのれん減損が起こる6つの原因
  7. M&Aの前に実施するべき4つののれん減損対策
  8. 売却側も覚えておくべきのれんの2つのポイント
  9. おすすめの相談先はM&A総合研究所
  10. まとめ

1. M&Aにおける「のれん」とは

M&Aにおける「のれん」とは

出典: https://www.photo-ac.com/

M&Aにおけるのれんとは、売却企業が保有する純資産額と、実際に支払われたM&Aの対価との差額のことです。M&Aにおいては、基本的に売却企業が保有する資産の総額と同じ額で売買されることはありません。その差額が、のれんと呼ばれているのです。

のれんの内容は、売却企業のブランド力や人材力、顧客との関係、立地条件などとされます。いわば、のれんとは無形固定資産の収益力につけられた価格なのです。

また、M&A実施前で考えるなら、のれんは財務諸表に載っていない企業価値ともいうことができます。ここでは、次の4つののれんに関する基礎知識を確認しましょう。

  1. のれんの由来
  2. なぜのれんが必要なのか
  3. 負ののれんについて
  4. M&Aにおけるのれんの事例

のれんの基礎を知れば、後ほど詳しく確認するのれんの償却や減損についてもイメージしやすくなります。それぞれの基礎知識を順番に確認しましょう。

1-1.のれんの由来

のれんの由来は、日よけや目隠しなどのために店先に掲げられる布です。特に「店ののれんに関わる」といった用法でののれんが由来となっています。つまり、店の評判やイメージが生む収益のことを指しているのです。

言い方を変えれば、目に見える有形固定資産とは別に、目に見えない無形固定資産のことをのれんと呼んでいるともいえます。また、財務諸表に明記されない企業価値ともいえるでしょう。

逆に、M&Aでの取引額が純資産額を下回るのれんは負ののれんと呼ばれます。

1-2.なぜのれんが必要なのか

のれんが必要な理由は、会計処理上なくてはならないからです。

M&Aには、オークションのような側面があります。売却企業の買収に複数の企業が乗り出すと、競りと同様の状況となるのです。売却企業は候補の中から最も買収額が高く、また信用に値する買収企業を選びます。M&Aにおいてのれんが生じるのは、以上のような仕組みからです。

ここで、会計上の問題発生します。それは、財務諸表に生じる歪みです。M&Aによる買収後、買収企業の賃借対照表は貸方がのれんの分だけ借方よりも大きくなってしまいます。

そこで、買収企業はこの差額を企業のブランド力や人的資源といったのれんとして勘定するのです。勘定科目はのれんですが、その意味するところは無形固定資産とされます。つまり、財務諸表の歪みは、目に見えない資産をのれんとして会計処理することで解消されているのです。

実は、のれんは以前、営業権と呼ばれる勘定科目の1つでした。営業権という言葉の意味合いからも、のれんの意味や必要性が感じられます。

1-3.負ののれんについて

負ののれんとは、M&Aでの取引額が純資産額を下回る場合の差額のことをいいます。一言でいえば、純資産額よりも安く買収するときに発生するのれんです。一般的なのれんのことを「正ののれん」とすると、負ののれんの意味が分かりやすくなります。

負ののれんが発生するのは、売却企業に何らかのマイナス要素がある場合が一般的です。たとえば、非常に大きな簿外債務や損害賠償請求のリスクを抱えている場合などがあります。

本来であれば、普通の方法で資産を売却した方が、負ののれんが課されないため得です。つまり、純資産額以下で企業を売却するということは、それだけの事情があるといえます。買収側は負ののれんに注意しましょう。

1-4.M&Aにおけるのれんの事例

M&Aにおけるのれんの事例としては、ソフトバンクによるアーム・ホールディングス社の買収が有名です。その理由は、のれんの巨額さにあります。

アーム・ホールディングス社の自己資本金は約2,500万円でしたが、最終的には3.3兆円で買収されました。つまり、のれんは3兆500億円にも上ります。のれんの相場は売却額の2~3割とされていることを考えると、その大きさが分かるでしょう。

アーム・ホールディングス社は、技術を知的財産としてライセンス販売を主事業とする企業です。アームアーキテクチャと呼ばれる自社開発のシステムが世界中の携帯機器会社に採用されていました。

ソフトバンクによるアーム・ホールディングス社の買収は、自社の携帯事業とのシナジー効果を狙ったものと見られています。

2. のれんの償却とは

のれんの償却とは

出典: https://www.photo-ac.com/

のれんの償却とは、のれんの資産額を毎年減価することです。具体的には、固定資産における減価償却と同じ方法で実施されます。

のれんの償却は賃借対照表に大きな影響を及ぼす会計処理なので、買収側は知っておかなければなりません。また、のれんの償却はM&Aのマッチングや企業の買収額といった交渉の進行にも影響を与えるため、売却側も知っておくべきことといえます。

ここでは、次の2点を確認しましょう。

  1. のれんの償却方法は固定資産の減価償却と同じ
  2. のれんの償却期間について

固定資産の減価償却のおさらいも含めて、それぞれ順を追って確認していきましょう。

2-1.のれんの償却方法は固定資産の減価償却と同じ

会計の視点から見ると、のれんの償却は固定資産の減価償却と同じ方法で実施されます。まずは、固定資産の減価償却について確認しましょう。

固定資産の減価償却

固定資産の減価償却は、一般的な会計処理方法といえます。固定資産の定義は、10万円以上で1年以上の期間にわたって使用できる資産です。固定資産には主に、建物、車、電子機器などが該当します。

固定資産の減価償却について考えるため、ある商品の生産工場を作った場合を考えてみましょう。

建物の建設費用として3億円を支払ったとすれば、資産も3億円増加します。しかし、建物をはじめとする固定資産には耐用年数があり、資産としての価値は徐々に目減りするのが普通です。そのため、資産の価値を毎年少しずつ減らします。

これが、固定資産の減価償却です。減価償却を行うことで、実態にあった会計処理が可能となります。ちなみに、固定資産の償却期間は耐用年数とイコールです。

のれんの償却

何度も触れている通り、のれんの償却は固定資産の減価償却と同じ方法で実施します。つまり、のれんの償却とは、無形固定資産の価値を少しずつ減価していくことなのです。

売却企業のブランド力や人的資源、立地といった無形固定資産が永遠に収益を生み続けると考えるには無理があります。実態に合った会計処理を行うため、そして企業の財務状況を把握するためにも、のれんの償却は重要な会計処理の仕組みといえるでしょう。​

2-2.のれんの償却期間について

のれんの償却期間は、日本会計基準において最長で20年間と定められています。20年以内であれば、償却期間は自由に設定することが可能です。

移り変わりの激しい業種であれば償却期間は5年など短い期間となりますし、逆に安定した業種であれば償却期間は長くなるといえるでしょう。

基本的に、のれんの償却は定額法で行われます。定額法とは、毎年一定額ののれんを費用として計上する方法です。たとえば、のれんが10億円で償却期間を20年とすると、年当たりの償却費は5,000万円となります。

定額法のほかにも定率法や級数法などがありますが、いずれの手法ものれんの償却では選択できません。注意しましょう。

3. のれんの会計処理とは

のれんの会計処理とは

出典: https://www.photo-ac.com/

ここまでは、のれんの意味や会計基準ごとに異なる償却方法について確認してきました。しかし実は、償却期間があるのは日本会計基準だけなのです。IFRS(国際会計基準)ではのれんの償却ではなく、減損テストと呼ばれる会計処理を実施します。

ちなみに、日本の企業も海外の会計基準を自由に採用することができますが、会計処理は必ず会計基準にのっとって実施されなければなりません。

ここでは、会計基準によって異なるのれんの会計処理方法について確認しましょう。

3-1.日本会計基準とIFRSの違いとは

のれんにおける日本会計基準とIFRSの最大の違いは、償却の有無です。日本の上場企業などは主に日本会計基準を採用していますが、近年はM&Aの増加を背景にIFRSを採用する日本企業も増えています。

ここでは、それぞれの特徴とメリット・デメリット、さらにIFRSを採用する企業が増加している理由を確認しましょう。

日本会計基準のメリット・デメリット

日本会計基準は、日本企業の95%が採用している会計基準です。グローバルに活躍するソフトバンクなどの一部を除き、ほとんどの企業は日本会計基準を採用しています。

日本会計基準において、のれんは償却を行わなければなりません。のれんを償却することで得られるメリットは、「減損のリスクを抑制できる」ということです。

M&Aによって買収した企業の収益性が期待以下だった場合、買収企業は買収価額と時価評価額との差額を損金として処理します。こうすることで、急な株価の変動や資金繰りの悪化を抑制することができるのです。

これを減損処理といいますが、日本会計基準は減損が発生しても償却によって価値が目減りしている分ダメージが少なく済みます。これはIFRSにはないメリットです。

一方のデメリットは、毎年の償却費支払いによる資金繰りの悪化です。償却費は利益から費用として支払うので、日本会計基準はM&Aを活発に行いたい企業などには不向きといえます。

IFRSのメリット・デメリット

IFRSは、国際会計基準委員会によって設定された会計基準です。一般的に、アイファースやイファースと呼称されます。

IFRSを採用する日本企業は年々増加しており、2019年時点で200社超です。これらの時価総額を足し合わせると全体の3分の1にもなることから、時価総額の大きなグローバル企業が中心となって採用している基準であることが分かります。

IFRSの会計処理方法では、のれんの償却が不可能です。その代わりに、毎年のれんの減損を行うかどうかを検討します。なぜなら、IFRSは時価主義をもとに設計された会計基準だからです。

時価主義は文字通り、その時の時価で資産価値を判断します。そのため、決まった価格で償却するのではなく、そのときの収益性を基準に資産価値を決定するのです。

償却しないことで得られるメリットは、償却費が利益を圧迫しないという1点に尽きます。特にこのメリットが活きるのはM&Aにおいてです。時価が下がらなければ償却費のような支払いは一切発生しません。そのため、M&Aを活発に行いたいと考えている企業の多くは、IFRSを採用しています。

また、そもそも収益性の変動が少ない無形固定資産であれば、むしろ償却することが実態にそぐわないともいえるでしょう。

IFRSのデメリットは、減損によるダメージが大きいことです。収益性の予測を大きく外し、倒産寸前にまで追い込まれたという企業も存在します。

4. のれんを計算する3つの方法

のれんを計算する3つの方法

出典: https://www.photo-ac.com/

ここまでは、日本会計基準とIFRSにおける会計処理の違いについて確認しました。続いては、のれんを計算する方法について確認していきましょう。

のれんを計算する方法とは、一言でいえば企業価値評価です。のれんを含む企業価値の評価方法は、主に次の3つに大別することができます。

  1. インカムアプローチ
  2. コストアプローチ
  3. マーケットアプローチ

いずれも基準が異なる企業評価の方法です。利用場面やメリット・デメリットも異なるため、それぞれ順番に確認しましょう。

評価方法1.インカムアプローチ

1つ目の評価方法は、インカムアプローチです。インカムアプローチでは、事業計画に基づいて将来的な利益やキャッシュフローを予想し、その数値をもとに企業価値を評価します。

インカムアプローチの特徴は、のれんの特性や将来にわたる収益性を検討に含めることです。これによって、M&Aの事業計画を定量的に数値化し、企業価値を評価することができます。なかでも、DCF(ディスカウンティッド・キャッシュフロー)法は代表的な方法です。

ただし、事業計画の客観性が問題となります。事業計画通りに経営が運べばいいですが、それは現実的とは言えません。また、あくまで事業を継続することを前提とする評価方法でもあります。

評価方法2.コストアプローチ

評価方法の2つ目は、コストアプローチです。コストアプローチでは、賃借対照表の純資産をベースに企業価値を評価します。純資産は客観的な数値なので、評価も適正になりやすいのが特徴です。

しかし、将来の収益性は含まれず、事業計画の将来性や価格変動などの諸要素も除外されます。そのため、売却のなかでも事業を継続しない売却に最適な評価方法です。

近年では、事業承継が盛んな中小企業を評価する際に使用されるケースが多くなっています。

評価方法3.マーケットアプローチ

評価方法の3つ目は、マーケットアプローチです。マーケットアプローチでは、買収対象企業の同業他社の時価総額を参考にしたり、似たような買収事例がないかを参照して企業価値を評価します。

客観性や、市場での取引環境が反映される点が特徴です。ただし、対象企業の経営方針やビジネスモデルといった会社固有の性質は反映させられません。

以上のデメリットがあることから、マーケットアプローチはインカムアプローチやコストアプローチの企業評価が適正かどうかをチェックするための方法として活用されることが多いです。

5. のれんの減損処理とは

のれんの減損処理とは

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すでに触れた通り、のれんの減損処理とは無形固定資産の減価です。無形固定資産として計上しているのれんが、それだけの価値を持っていないと判断されたときに行われます。

のれんの減損処理は、会計だけでなく経営上も必須といえるでしょう。なぜなら、資産の価値が著しく下落しているにもかかわらず減損処理を行わないでいると、減価償却費が利益を大きく圧迫してしまうからです。

ここでは次の3つに分けて、のれんの減損処理について詳しく確認していきましょう。

  1. のれんの減損処理を行うタイミング
  2. IFRSの減損テスト
  3. のれん減損処理の事例

のれんの減損処理について詳しく知れば、M&Aについてより具体的なイメージが持てるようになります。順番に確認しましょう。

4-1.のれんの減損処理を行うタイミング

のれんの減損処理は、買収額が回収不可能と判断したタイミングで行います。これは会計基準を問わず同じです。

しかし、回収不可能と判断する前に調査が必要です。調査は、一般的に次のような兆候が表れたときに行われます。

  • M&A後の資金繰りの悪化
  • 不祥事等によるのれん価値の著しい下落
  • 景気の著しい悪化

M&A後に資金繰りの悪化が続いている場合、のれんの資産価値が実態以下である可能性を調査しなければなりません。また、不祥事等によってブランド力が著しく低下しても、減損処理が必要です。

景気の後退によるのれんの減損処理は、主に経営上のリスク回避が目的といえます。というのも、減損処理を行い賃借対照表の資本を減らすことで、自己資本利益率(RO)や総資本事業利益率(ROA)といった指標を向上させ、経営の安全性を高めることができるのです。

適切なタイミングで減損処理を行うことで、財務諸表を実態に合ったものとすることができます。

4-2.IFRSの減損テスト

IFRSの減損テストとは、IFRSを採用している企業が減損処理を行うかどうかを判断することです。減損テストは減損すべきときにいつでも行うことができますが、基本的には毎期行うことが求められます。

すでに触れた通り、IFRSの減損処理方法はM&Aに最適です。買収した企業が予定通り収益を上げている場合、償却することなく同じ価値を保ったまま資産を保持することができるからです。

このように、収益性に問題がなければリスクの大きさは日本会計基準とさほど変わりません。しかし、前期に比べてあまりにも大きく業績が下振れしてしまった場合には、たとえば株価の大下落を招くリスクなどがあります。

のれんの減損によるリスクを回避したい場合は、IFRSではなく日本会計基準を採用すべきといえるでしょう。

4-3.のれん減損処理の事例

のれんの減損処理の事例として、東芝と東芝の子会社であるウェスティングハウス社について確認しましょう。

2006年10月、東芝は三菱重工などの大企業に競り勝って、6,600億円でウェスティングハウス社を買収しました。ウェスティングハウス社は、イギリスの原子力関連企業でした。

しかし、ウェスティングハウス社が2015年に買収した企業の原子力事業が不採算となり、減損を発表。2016年3月に2600億円の現存損失を計上しました。

さらにその1年後には、ウェスティングハウス社が連邦破産法11条の適用を申請し破産します。結果的に、東芝は1兆円を超える減損処理を行いました。

6. M&Aでのれん減損が起こる6つの原因

M&Aでのれん減損が起こる6つの原因

出典: https://www.photo-ac.com/

ここまでは、のれんの減損処理について確認してきました。続いては、のれんの減損が起こる原因について確認しましょう。

のれんの減損が起こる原因は、主に次の6つです。

  1. 予測を下回る業績の伸び
  2. ブランド価値の著しい低下
  3. 生産性の見込み違い
  4. デューデリジェンス不足
  5. 買収金額のつり上げ
  6. 現実と乖離した事業計画

のれんの減損が大きい場合、倒産や廃業の危機に至ることもあります。いずれも交渉の前提となる事項なので、順番に詳しく確認しましょう。

原因1.予測を下回る業績の伸び

1つ目の原因は、予測を下回る業績の伸びです。買収対象企業が期待通りの業績を上げられない場合、減損処理をして償却費を抑えることが経営者の合理的な判断となります。

原因2.ブランド価値の著しい低下

2つ目の原因は、ブランド価値の著しい低下です。ブランド価値の低下は、基本的に不祥事やスキャンダル、衛生問題などをきっかけに発生します。

特に、のれんのほとんどをブランド価値が占めているような場合は注意が必要です。1つの不祥事が多額の減損を招くことになります。

特に、買収後すぐに多額の減損を行う場合や、IFRS基準で前期との資産評価額の差が大きくなる場合は、減損のリスクが高いです。ブランド価値の大きな企業は減損のリスクが高いことを覚えておきましょう。

原因3.生産性の見込み違い

3つ目の原因は、生産性の見込み違いです。東芝の事例では、生産性の低い子会社が不採算事業を抱えていたことで減損が発生しました。

ほかにも、買収後に優秀な従業員が離職してしまうことで生産性が下がってしまうといったリスクがあります。このような買収後の生産性低下を予防するためには、デューデリジェンスの時点から統合プロセスの準備を進めておくことが大切です。

原因4.デューデリジェンス不足

4つ目の原因は、デューデリジェンス不足です。買収後、財務諸表に載っていなかった簿外債務が発覚することがあり、減損が必要となります。

原因5.買収金額のつり上げ

5つ目の原因は、買収金額のつり上げです。交渉によって吊り上げられることもありますが、基本的には買収企業同士の競りによって買収金額は吊り上がります。

しかし、実際に買収金額程度の収益が上げられなければ、減損が必要です。

原因6.現実と乖離した事業計画

6つ目の原因は、現実と乖離した事業計画です。M&Aは企業のトップのみの少人数で検討されることが多いため、事業計画の客観性が損なわれやすいといえます。

たとえば、ワンマン経営者による事業計画は、チームで考案していない分不確実で実現性に欠けるものとなりがちです。

7. M&Aの前に実施するべき4つののれん減損対策

M&Aの前に実施するべき4つののれん減損対策

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ここまでは、減損の原因を確認してきました。しかし、M&A後に減損リスクに対処することはほぼ不可能です。そのため、M&Aを行う前に対策を打つ必要があります。

ここでは、減損の原因に対してどのように対処すればいいのかを確認しましょう。M&Aの前に実施するべきのれんの減損対策は、主に次の4つです。

  1. 売却対象企業の実力を把握する
  2. 収益性の向上
  3. デューデリジェンスの徹底
  4. 有利な会計基準を採用する

減損の原因と同様、対策も交渉の大前提です。順番に、具体的な対策方法を確認しましょう。

減損対策1.シナジー効果を定量的に分析する

減損対策の1つ目は、シナジー効果の定量的な分析です。分かりやすく言えば、買収後に期待できると想定する売却企業との相乗効果を数値で表現することといえます。

シナジー効果を定量的に分析することで、のれんの収益性のモニタリングが可能です。また、M&Aの戦略を練る段階で、現実的でない事業計画を策定してしまうリスクも回避されます。

しかし、実際にシナジー効果の分析を行っている企業は多くありません。世界4大会計事務所の1つであるKPMGが2011年に行った調査によると、シナジー効果の分析に力を入れている企業はわずか半分程度でした。

つまり、ほとんどの企業はのれんが予定通り収益を生んでいるかを把握することはおろか、収益性の予測すらできていないということです。したがって、のれんの減損が起こるのもやむを得ないのが実情といえます。

M&Aを行う前には、まずはシナジー効果の定量的な分析を行いましょう。そして、減損が起こるリスクにまとめて対処することが大切です。

減損対策2.収益性の向上

2つ目の減損対策は、売却企業の収益性向上です。当然ですが、買収前に収益性が改善すれば、その分減損のリスクも回避することができます。

収益性の向上を実現する方法は、主に次の2点です。

  1. 人員整理による人件費カット
  2. 人材の再配置による効率性アップ

それぞれ、順番に確認しましょう。

人員整理による人件費カット

買収前に人員整理することで、人件費をカットすることができます。特に企業の規模が大きくなればなるほど、人員整理による人件費カットは収益性の向上につながりやすいです。

人材の再配置による効率性アップ

人材配置によって効率性をアップすれば、収益性の向上が見込めます。こちらも、ポストの多い大企業で効果を発揮しやすい方法といえるでしょう。

減損対策3.デューデリジェンスの徹底

3つ目の減損対策は、デューデリジェンスの徹底です。すでに触れた通り、減損はデューデリジェンスの不足によっても起こりやすいといえます。

デューデリジェンスの調査項目は主に、財務・税務・人事・法務・事業・ITの6種類です。これらすべてをチェックするには、それぞれに詳しい税理士や社会労務士などの専門家が必要といえます。

そのため、デューデリジェンスを徹底するうえでは、各調査項目ごとに複数の専門家へ依頼することも効果的です。

減損対策4.有利な会計基準を採用する

減損対策の4つ目は、有利な会計基準の採用です。特に日本会計基準を選ぶことで、のれんの減損を回避できる可能性が高まります。

なぜなら、すでに確認してきた通り、日本会計基準はのれんの償却が義務付けられているからです。毎年決まった額の償却を行うことで資産額は目減りを続け、減損のインパクトが抑えられます。これによって、期間損益を最小限に留めることができるのです。

また実際にも、日本企業ののれんの減損事例は、IFRSや米国基準を適用しているケースが多いとされています。あるいは、財務諸表は日本基準で作成しているものの、子会社がIFRSや米国基準を採用しているケースも同様です。

以上のことから、純粋な日本会計基準の減損件数は全体の半数以下となっています。のれんの減損を回避するうえで、日本会計基準の採用は大きな効果を発揮するといえるでしょう。

8. 売却側も覚えておくべきのれんの2つのポイント

売却側も覚えておくべきのれんの2つのポイント

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ここまでは、主に買収側の視点からのれんについて確認してきました。しかし、売却側も知っておくべきポイントがあります。なぜなら、のれんは買収価額や取引方法にも大きな影響を及ぼしているからです。

ここでは、売却側も覚えておくべきのれんのポイントを確認しましょう。ポイントは、次の2つです。

  1. 事業譲渡の圧倒的な節税効果
  2. アーンアウト条項

いずれも、売り手として交渉を有利に進めたいときに活用できる方法です。それぞれ順番に確認しましょう。

ポイント1.事業譲渡の圧倒的な節税効果

日本会計基準においては、取引の方法によって節税効果が大きく変わります。たとえば中小企業の一般的なM&A手法である株式譲渡と事業譲渡を比べると、事業譲渡の方が圧倒的に節税効果が高いのです。事業譲渡のほかに、非適格合併等も同様に節税効果があります。

その理由は、償却費の税務処理の仕方が異なるからです。株式譲渡ではのれんの償却費を損金算入できませんが、事業譲渡では損金算入ができます。なぜなら、事業譲渡ののれんは損金計上できる資産(資産調整勘定)に含まれるからです。

すでに確認してきた通り、のれんの償却費は費用として計上するのが会計上一般的とされます。そう聞くと損金計上されているようですが、会計上の処理と税務上の処理は同じではありません。実は、税務計算ではのれんの償却費が再度足し戻されてしまうのです。

売り手は、買い手サイドの気持ちを知ることで交渉を有利に進められます。税務上ののれんの扱い方を覚えておき、さらに節税に協力する姿勢を見せれば高い信頼が得られるはずです。

ポイント2.アーンアウト条項

アーンアウト条項とは、買収後の一定期間内で売却企業が特定の目標をクリアすることを条件に、買収価額を支払うという条項です。主に、最終契約書において買い手がリスク回避のために設けます。

条件として選ばれることが多いのは、主に次のような財務指標です。

  • 純利益
  • 売上高
  • キャッシュフロー
  • 営業利益

以上のような財務指標に一定の達成目標を設定することで、買い手はのれんの減損等のリスクを避けつつM&Aを実施することができます。

買収対価の支払いは、分割払いとするのが一般的です。たとえば、M&Aを50%の金額で成立させ、業績目標の達成に応じて順次対価が支払われます。

特にベンチャー企業のような新興企業は、業績の失速を懸念してアーンアウト条項を設けることが多いです。買い手企業が不安を抱いているように見える場合も、売り手はアーンアウト条項を提案することでM&A成立の可能性を高めることができます。

9. おすすめの相談先はM&A総合研究所

おすすめの相談先はM&A総合研究所

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M&Aの相談は、M&Aに強い会計士がフルサポートしてくれるM&A総合研究所がおすすめです。

M&A総合研究所は、実績豊富かつ分かりやすい料金体系で圧倒的な顧客満足度を得ています。2019年5月の調査では、次の全ての実績で1位を獲得しました。

  • 月間相談数
  • 仲介手数料
  • 相談したい会社

他にも強みはたくさんあります。まず、手数料は完全成功報酬制を採用しているので、M&A成立まで費用が一切かかりません。また、M&Aは成約まで平均して半年以上かかるとされていますが、M&A総合研究所なら平均3~6か月でスピーディーに成約させることができます。

いずれの強みも、優秀なアドバイザーや会計士が在籍していることの証拠です。また、買い手に有利な仲介型と売り手に有利なアドバイザリー型の両方の業務を行っているため、買い手・売り手を問わずおすすめできます。

のれんの償却やのれんの減損に不安がある買い手企業経営者の方も、のれんの適正な評価額が知りたい売り手企業経営者の方も、まずはM&A総合研究所の無料相談を利用してみてはいかがでしょうか。

10. まとめ

M&Aにおけるのれんとは、ブランド力や地理的条件、従業員、顧客との関係といった無形固定資産の価額のことです。

買収側は将来的な利益を見込んで、のれんを含む金額での買収を決断します。しかし、大きく予測が外れてしまうというリスクも存在するのです。そうなると、東芝のように減損会計を行い、巨額の赤字を計上しなければならないことにもなりかねません。

M&A総合研究所には、徹底的なデューデリジェンスや、企業価値を正しく見定めるための専門的な会計処理のノウハウがあります。またクロージング・統合までをスピーディに実施してくれます。

減損が起きる原因や減損対策について理解を深めることは重要ですが、戦略を練ったり実際に対策を実施したりするのは企業内だけでは大変です。

自社の企業評価額が分からないとお悩みの売り手経営者の方や、のれんの支払いも考慮してM&Aを実施したい買い手経営者の方は、気軽にM&A総合研究所に相談してみましょう。

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