2020年04月14日公開
2021年01月27日更新
M&Aのメリット・デメリットを買い手/売り手の両面で徹底解説
M&Aによって、売り手企業と買い手企業はともに大きなメリットを得られます。一方で、適切にM&Aを実行しなければ、大きなデメリットを被ることもあります。本記事では、M&Aのメリット・デメリットを買い手と売り手の両面から解説します。
1. M&Aの売り手と買い手
M&Aは、売り手と買い手がそれぞれ経営上の課題解決を図るために用います。M&Aを適切に用いられれば、大きなメリットを得ることが可能です。
しかし、M&Aの進め方を誤ってしまえば、大きなデメリットを被る可能性もあります。そのため、M&Aを行う際はどのようなメリット・デメリットが生じ得るかを把握したうえで、綿密な戦略を立てなければなりません。
本記事では、M&Aのメリット・デメリットを売り手と買い手の両面から解説していきますが、まずはM&Aの意味などを説明します。
M&Aとは
M&Aとは、Merger(合併)とAcquisition(買収)の略語であり、さまざまな手法を用いて経営統合や買収、提携を行うことをさします。
M&Aは、自社の努力だけでは解決が難しい課題を少ないリスクで解決できる、メリットの大きい手段です。
法律の改正や社会環境の変化などにより、現在では大企業だけでなく中小零細企業までM&Aによって課題解決を図るようになりました。また、M&Aは個別企業だけでなく、社会にとっても大きなメリットをもたらします。
M&Aが活発になることで産業の新陳代謝が進めば、地方創生にもつながります。国内市場の縮小や中小企業経営者の高齢化が進んでいく日本において、M&Aは今後さらに活発になっていくでしょう。
しかし、M&Aは適切に実施しなければ、大きな損失を被ることにもなりかねません。M&Aによって大きなメリットを得る企業がある一方で、M&Aの成功率は3割から5割といわれるように、M&Aを実施した結果デメリットを被る企業が多く存在することも事実です。
M&Aの売り手と買い手とは
M&Aの売り手と買い手はお互いが経営上の課題解決を図るためにM&Aを行いますが、その目的は売り手と買い手で異なります。以下では、M&Aにおける売り手と買い手それぞれの主な目的を解説します。
売り手とは
M&Aにおける売り手は、自社を売却することで会社を存続させることを主な目的としています。会社を存続させるためにM&Aを用いるのには、大きく分けて2つの理由があります。
ひとつは経営戦略としての売却です。市場が縮小し業界再編が進むなかで、企業は生き残りをかけてM&Aを利用します。
もうひとつは、後継者問題解決を目的としたM&Aです。後継者がいないことで経営者の高齢化が進み、廃業を免れるためにM&Aを利用せざるを得ない状況となっています。
これら2つのニーズが増加していることから、M&Aにおける売り手の数も増え続けています。
買い手とは
M&Aにおける買い手は、M&Aを利用することで事業を育てる時間を買えます。自社の限られた経営資源のなかで短期間に大きな成長を図るためには、M&Aの活用が有効です。
買い手がM&Aを行う目的にはさまざまなものがあり、買収先企業との事業シナジーを最大限高めるため、買収戦略を立ててM&Aに臨みます。
M&Aの目的や業界特性、自社の事業ステージなどによってM&Aによるメリット・デメリットは変わってくるため、買収戦略は重要です。
【買い手がM&Aを行う主な目的】
- 新規事業獲得
- 事業規模拡大
- 経営の加速
- 人材・技術・ノウハウの獲得
2. M&Aのメリット・デメリット
M&Aによって得られるメリットや被るデメリットは、売り手と買い手で異なります。売り手と買い手はM&Aを行う目的やメリット・デメリットが違うため、多くの場合において条件交渉では利益相反関係となります。
そのため、M&A相手の目的や求めているメリットを理解することが重要です。ここでは、M&Aのメリット・デメリットを売り手と買い手の両面から解説します。
売り手側のメリット・デメリット
以前まではM&Aによる会社売却に対してネガティブなイメージを持っていた中小企業経営者も、近年はメリットを重視して前向きに活用するようになっています。まずは、売り手側のメリット・デメリットを紹介します。
メリット
売り手側は、M&Aによって以下6つのメリットを得られます。
- 後継者問題の解決
- 従業員の雇用先の確保
- 倒産・廃業・清算の回避
- 創業者利益の獲得
- 将来性の不安からの解放
- 一部事業の売却による主要事業への注力
後継者問題の解決
中小企業の場合、後継者問題を解決する目的でのM&A活用が多数を占めています。現在、中小企業の半数以上が後継者問題を抱えているといわれています。
後継者問題を抱えている中小企業の多くは、後継者候補となる親族や従業員がいないわけではありません。
しかし、子どもに他の仕事を辞めさせてまで事業を継がせることに躊躇したり、従業員に経営者としての育成を施す余裕がなかったりするオーナー経営者が多くなっています。
また、子どもや従業員も事業を継ぎたがらないケースもみられます。そこで、オーナー経営者は第三者へ事業承継を行うことで、後継者問題解決というメリットを得ることが可能です。
従業員の雇用先の確保
近年は、買い手にとっても人材確保がM&Aを行う重要な目的のひとつとなっているので、特別なケースを除いてM&A後も従業員の雇用は確保され、待遇も維持されるか良くなることがほとんどです。
そのため、売り手は廃業ではなくM&Aによる売却を選択することで、相手企業へ会社とともに従業員も任せられるメリットがあります。
なお、従業員の待遇に関しては交渉の際に入念に詰めておき、契約書に明確に盛り込む必要があります。
倒産・廃業・清算の回避
倒産や廃業をする前に、他社の支援を得ることで会社の存続が可能となります。しかし、倒産や廃業せざるを得ないギリギリの状況になってから専門家に相談するケースも少なくありません。
倒産や廃業寸前の状態では十分な準備ができないので、売却相手を見つけられない可能性も高くなります。
倒産寸前の場合、負債があっても買ってよいと思えるようなメリットがなければ、なかなか買い手は付かないため、早めに専門家に相談して会社売却のための体制を整えることが大切です。
創業者利益の獲得
オーナー経営者が会社をやめる理由は業績の悪化だけでなく、会社経営へのモチベーション低下や、ほかにやりたい事業ができたといったケースも少なくありません。
そのような場合、会社の収益力が高いうちにM&Aを行い、売却益を得ることで会社をやめた後の資金を得られます。
ただし、比較的若い会社の場合はオーナー経営者がすべての株式を持っていることも多いでしょうが、社歴の長い会社の場合は株式が分散していることも少なくありません。
株式が分散している場合はM&Aの準備が煩雑になるので、あらかじめ株式を集めておくなどの準備が必要です。
将来性の不安からの解放
まだ著しい業績の悪化はないものの、将来性の不安から早めに会社を売却しようと考える経営者は、近年増えています。倒産・廃業寸前でのM&Aとは違い、このケースではM&Aがスムーズに進む可能性は高くなります。
また、廃業と違い売却益が得られるので、当面の資金についても安心です。M&Aはタイミングが非常に重要といわれています。会社の将来性や自身の健康面など、不安を感じたら早めに動くことも重要なポイントです。
一部事業の売却による主要事業への注力
経営資源が限られている中小企業にとって、事業の選択と集中は会社が生き残っていくために大事な戦略です。
そのため、不要な事業を畳むだけでなく、M&Aによって売却することで売却益を獲得し、主要事業に投資できれば大きなメリットになります。
M&Aによって事業が最適な企業に渡り、さらに成長してくれれば、その事業にとってもメリットがあります。
また、M&Aによって事業規模を縮小し、細々と主事業を続けていきたいといったような選択をすることも可能です。
デメリット
売り手側は、M&Aによって以下4つのデメリットを被る可能性があります。
- 希望する条件で売れない
- 買い手側の企業文化に馴染めない
- 給与や待遇などが変わる
- 取引先や顧客離れ
希望する条件で売れない
M&Aが希望条件で成立するかどうかは、さまざまな要素が影響します。売り手と買い手双方にとって納得のいくものになれば希望条件でまとまりますが、そうでなければ希望条件での売却はできません。
【M&Aが希望条件で成立するための要素】
- 会社の業績
- 財務状況
- 組織体制
- 業界特性・事業特性
- 事業の成長性
- M&Aの交渉対応
特に、売り手と買い手で認識のギャップが起きやすいのは、組織体制とM&Aの交渉対応です。売り手は当たり前に思っていても、買い手から見ると組織体制に問題点を多く感じるケースは少なくありません。
また、普通に交渉対応しているつもりが、相手に不信感を与えていることもあります。そうならないためにも、M&Aの専門家による客観的で専門的なアドバイスは重要です。
買い手側の企業文化に馴染めない
M&Aの失敗原因を少なからず占めているのが、企業文化の融合失敗です。
買い手側が統合を急いだり、売り手側の企業文化を尊重しなかったりすると、従来の顧客や取引先が離れてしまう、従業員が離職してしまう、統合作業に経営資源が奪われて業績が悪化するなどのデメリットを被ることがあります。
企業文化の違いによる摩擦を回避するためにも、M&Aの交渉時点で統合プロセスについて話し合っておいたり、専門家のアドバイスを得ながら統合を進めていく必要があります。
給与や待遇などが変わる
通常であればM&Aによって売り手側の待遇が下方修正されることは少ないでしょうが、会社再建目的などのM&Aである場合は、待遇が下方修正される可能性があります。
待遇の急激な変化は、売り手側の役員や従業員が大量に離職する可能性があるので、売り手と買い手双方にとってデメリットになります。
待遇については、M&A契約の際にまとめられた文書の文言が重要になるため、解釈によって不利な待遇を受けないよう、専門家監修のもと慎重に作成しなければなりません。
取引先や顧客離れ
M&Aに伴う取引先や顧客離れは、特に小規模の中小企業・ベンチャー企業ほど注意が必要です。
売り手側経営者との関係性や経営者自身の魅力で成り立っていることも少なくないので、M&Aをきっかけに取引先や顧客が離れてしまうケースもみられます。
M&Aによって商品やサービスがどう変わるのか、経営方針に変化はあるのかなどを取引先や顧客に示す必要があります。
買い手側のメリット・デメリット
M&Aは経営戦略のひとつとして、重要な武器となります。しかし、使い方を間違えれば、大きなデメリットを被ることもあるでしょう。売り手側のメリット・デメリットに続いて、買い手側のメリット・デメリットを解説します。
メリット
買い手側は、M&Aによって以下6つのメリットが得られます。
- 事業規模・店舗網・取引網の拡大
- 新規事業への参入
- 事業の多角化
- 人材・ノウハウ・技術の獲得
- 節税対策
- スムーズな事業成長
事業規模・店舗網・取引網の拡大
自社の経営戦略に合った会社を買収することで、既存事業の規模拡大を図れます。
具体的には、店舗網や取引網を広げ、売り手企業と買い手企業の商品を乗せることで、販売力・提案力の強化が可能です。
また、仕入れや配送の効率化が図れるので、利益率が上がります。そのほかにも、統合に成功すればさまざまな事業シナジーを得られる可能性は高まるでしょう。
ただし、統合戦略によっては一時的に業績が落ち込んだり、シナジー効果が出るまでに時間がかかる場合もも考慮しておかなければなりません。
新規事業への参入
M&Aによって、新規事業参入にかかる時間を大幅に短縮できる点も大きなメリットです。
新規事業開始に伴い店舗や工場を開設する場合、土地・建物の準備から従業員集めと教育、取引先の開拓などが必要です。
また、新規サービスを軌道に乗せるまでは、広告費など多くの初期投資も必要です。このように新規参入のために多くの投資をしても、投資が回収できるまで事業が育つかどうかはわかりません。
しかし、M&Aによってすでに軌道に乗っている事業を買い取れば、これらのリスクを減らせます。
ただし、軌道に乗っている事業であればどのような買収先でもよいわけではなく、経営戦略に合った企業を選ぶことが大切です。
事業の多角化
M&Aによって、主要事業とは関連のない事業を広げることも可能です。一般的に事業の多角化は、関連事業を広げていくよりもリスクが高くなるとされています。
M&Aの場合でも綿密な買収戦略は必要ですが、自社の経営資源だけで多角化を進めていくよりもリスクを減らせるメリットがあります。
かつてM&Aによる多角化は、大企業や中堅企業が主に行ってきた経営戦略でした。しかし、さまざまな業界で再編が進んでいる近年は、中小企業でも生き残りをかけて、M&Aによる事業の多角化がみられます。
人材・ノウハウ・技術の獲得
近年はM&Aによる人材確保の重要性がさらに増してきています。新規事業へ参入する際に買い手企業が事業ノウハウを持っていない場合、M&Aによって買収先企業の人材を獲得し、事業運営を任せることが可能です。
また、既存事業を成長させる場合でも、自社従業員と買収先企業従業員の技術・ノウハウの融合によって、新しいシナジーが生まれる可能性があります。
人材・ノウハウ・技術獲得目的のM&Aニーズは年々高まっていることから、優良な売り手企業ほど買い手が決まるスピードは速くなっています。
情報ネットワークの豊富な専門家に依頼するなどして、素早く的確な情報を仕入れることが重要です。
節税対策
営業権(のれん)の焼却費に伴う節税や、繰越欠損金のある会社を買収することでの節税など、大企業はさまざまなスキームを用いて節税を行っています。
M&Aのスキームをうまく活用すると節税は可能です。しかし、近年大企業による行き過ぎた節税方法が問題となり、監視の目が厳しくなっています。
あきらかに節税目的のM&Aは処罰対象となることもあるので、M&Aによる節税効果はあくまでおまけとして付いてくるものと考え、事業シナジーを得ることを中心に進めたほうが、結果的に節税のメリットも得られるでしょう。
スムーズな事業成長
自社の経営戦略に合致したM&Aであれば、スムーズな事業成長を実現できるメリットがあります。しかし、M&A自体が目的化した、方向性の見えない買収は逆に事業成長を阻害するかもしれません。
M&Aによる事業成長のメリットを享受するには、まず核となる経営戦略を綿密に構築し、そのうえでM&Aの目的を明確にする必要があります。
また、事業の成長は外部要因も大きく関係してくるので、特に経営環境の変化が速い現代では、いかに社会や業界における変化の波を読みながらM&Aを行えるかがポイントです。
デメリット
買い手側は、M&Aによって以下5つのデメリットを被る可能性があります。
- 統合プロセスに失敗する可能性
- 想定したシナジー効果が発揮されない
- 簿外債務などの発覚
- のれんの減損リスク
- 人材の流出
統合プロセスに失敗する可能性
M&A成約までは順調に進んでも、M&A後の統合プロセスで失敗するケースは少なくありません。
特に中小企業の場合はもともと管理体制が整っていないケースも多いので、より統合作業に時間を要することになりがちです。
統合プロセスは、売り手企業と買い手企業が協力し合ってはじめて成功に至ります。そのため、M&Aの初期段階から統合プロセスに向けた合意形成が重要です。
想定したシナジー効果が発揮されない
M&Aの際は、買収後どの程度事業シナジーが得られるかも加味しながらM&A価格を決めていきます。
しかし、買収後に想定していた事業シナジーが得られなかった場合、買収価格は割高だったことになり、その分の金額がデメリットとなります。
また、想定していたシナジー効果が発揮されないだけでなく、マイナスのシナジーが生じるケースも少なくありません。
マイナスのシナジーとは、M&Aによって逆に業績が下がったり、管理コストが増加したり、経営陣や従業員同士の衝突が起きたりすることです。また、想定していた期間内にシナジーを得られないケースもあります。
事業シナジーが得られるかどうかはさまざまな要因が複雑に関係しあうので、完全に想定し切ることは簡単ではありません。不確定要素も含め、どこまで柔軟に対処できるかが重要です。
簿外債務などの発覚
M&Aを実施する際は、簿外債務が埋もれていないか入念なチェックが必要です。特に中小企業の場合、管理体制の不十分さから簿外債務が発生しうることを失念していることもあります。
簿外債務などのリスクを評価するため、買い手側はデューデリジェンス(企業監査)を行いますが、デューデリジェンスを行うためのデータ資料が揃っていない会社も少なくありません。
また、簿外債務のほかにも、税金の滞納や連帯保証、訴訟案件、従業員との労働問題など、調査しなければならないリスクはいくつにも及ぶので、デューデリジェンスは弁護士や会計士などのサポートのもと、丁寧に行う必要があります。
のれんの減損リスク
のれんの減損は、特に規模の大きいM&Aを行う際に注意が必要です。のれんの減損は、想定した事業シナジーが得られなかったり買収先企業の業績が悪化したりした場合に発生します。
M&Aを繰り返している企業ほどのれんの減損リスクを負う確率は高くなり、M&Aの規模が大きいと会社が傾くほどのダメージを負うことにもなりかねません。
のれんの減損リスクを減らすには、買収戦略の入念な策定や徹底したデューデリジェンス、買収後の綿密な統合作業の遂行が必要です。
これらの対策を適切に実施するには専門家の知識と経験が欠かせないため、早い段階でPMIについても専門家に相談しておくとよいでしょう。
人材の流出
M&Aに伴ってキーマンとなる人材の離職や従業員の大量離職が発生すると、事業シナジーが得られないばかりか、事業自体が成り立たなくなる恐れもあります。
いくら好条件での買収提案を行っても、実際に統合作業が進むまでは、買収先企業の従業員は不安を抱え続けるでしょう。
M&Aを行う際は人材の流出を防ぐため、売り手企業と協力しながらPMI(M&A後の統合作業)を綿密に行うなどの対応策が必要です。
適切なPMIを実施するには、最初のM&A戦略策定時点でM&A後の統合プロセスについても戦略を練っておく必要があります。
3. M&Aのメリット・デメリットまとめ
下表は、ここまで解説したM&Aのメリット・デメリットを売り手・買い手別にまとめたものです。
売り手 | 買い手 | |
メリット | ・後継者問題の解決 ・従業員の雇用先の確保 ・倒産・廃業・清算の回避 ・創業者利益の獲得 ・将来性の不安からの解放 ・一部事業の売却による主要事業への注力 |
・事業規模・店舗網・取引網の拡大 ・新規事業への参入 ・事業の多角化 ・人材・ノウハウ・技術の獲得 ・節税対策 ・スムーズな事業成長 |
デメリット | ・希望する条件で売れない ・買い手側の企業文化に馴染めない ・給与や待遇などが変わる ・取引先や顧客離れ |
・統合プロセスに失敗する可能性 ・想定したシナジー効果が発揮されない ・簿外債務などの発覚 ・のれんの減損リスク ・人材の流出 |
M&Aの際は売り手・買い手ともになるべく多くのメリットが得られ、デメリットがないことを求めます。しかし、実際には売り手と買い手は利益相反関係にあるので、必ずしもすべての希望が叶うとは限りません。
そのため、M&Aの際はメリット・デメリットを考慮しながら求める条件に優先順位を付け、妥協できるラインなどを明確に定めておくことが大切です。
4. M&Aによるメリットを活かすには
M&Aによるメリットを活かしデメリットを減らすためには、以下5つのポイントを押さえておく必要があります。
- M&A戦略を事前に練る
- 譲れない条件を明確に決める
- 情報漏えいに気をつける
- 会計のミスなどをきちんと確認する
- M&Aの専門家に相談する
M&A戦略を事前に練る
M&A手続きを進めていく前に、まずはM&A戦略を入念に練ることが大切です。
買い手側は、M&Aの目的や買収分野、どのような企業を対象にするか、最適なスキームの構想などを初期段階で決めます。
また売り手側は、M&Aの実現可能性の評価やM&Aを実施する際の課題抽出、M&A以外の選択肢との比較、簡易的企業評価などを行います。
また、これらの戦略を的確に進めるために、M&Aの専門家に早めに相談しておくことも大事です。
譲れない条件を明確に決める
M&Aでは、すべてにおいて満足のいく結果になることはなかなかありません。そのため、強すぎるこだわりはなるべく捨てるようにし、無理のない範囲での条件交渉を行う必要があります。
そのためには、あらかじめ優先順位を付けて交渉を行い、譲れない条件と妥協できる条件のラインを明確にしておくことが大事です。
しかし、実際の交渉の場では感情が先立つこともしばしばあります。冷静な交渉を行うためにも、専門家とコミュニケーションをとりながら心の準備をしておくこともポイントのひとつです。
情報漏えいに気をつける
M&Aでは従業員や取引先への情報漏えいに注意しなければなりません。経営危機にあるのではないかなど不要な噂と混乱を招き、M&A成立に支障が出る可能性があります。
M&Aについての情報公開日を決めたら、その日までは絶対に情報を漏らさない徹底さが求められます。
逆に、会社に顧問税理士や弁護士がいる場合は早めに協力を得ておく必要があります。報告が遅れると反感を買って協力が得られなくなったり、M&Aを依頼した他の専門家と摩擦が起きたりしかねません。
会計のミスなどをきちんと確認する
買い手企業は売り手企業から提出された資料などをもとにさまざまな判断をしていくので、会計処理のミスなどが発見されると、会社の信用を落とすことにもなります。
買い手に不要なリスクを感じさせないためにも、事前に計算書類などの確認は入念に行っておく必要があります。
特に、ポイントカードのポイントなど会計処理を忘れがちなものに関しては、専門家に細かく確認してもらうことが大切です。
M&Aの専門家に相談する
適切なM&Aの専門家を選び適切に活用していくことは、M&Aのデメリット部分を減らしメリットを大きくできます。
現在M&Aの専門家の数は、小規模なものも含めると全国で数多く活動しています。専門家によって強みも違うので、どの場面で活用するかも重要です。
特にM&A仲介会社は、主に中小企業のM&Aを総合的にプロデュースするM&A専業の専門家です。どのようなM&A仲介会社を選ぶかによって、M&A全体の流れは大きく変わるでしょう。
5. M&Aの相談におすすめの仲介会社
さまざまなM&A専門家の中でも、M&A仲介会社は売り手と買い手の関係調整役やM&A全体のコーディネート役を担います。また、弁護士は法務面、会計士・税理士は財務面・税務面のサポートに欠かせない専門家です。
M&Aの実行にはM&A仲介会社と弁護士、会計士による円滑な連携が必要なので、M&Aを依頼する際は、M&A仲介会社と弁護士、会計士によるトータルサポートを受けられることが重要な条件となります。
M&A専門の弁護士と会計士が所属しているM&A総合研究所では、M&Aのトータルサポートを高い質で受けられます。
また、M&A総合研究所ではM&A成立までのスピードが速く、希望価格以上での成約も実現するので、依頼者から高い評価を得ている仲介会社です。
無料相談は随時お受けしておりますので、M&Aの専門家をお探しの際はぜひお気軽にお問い合わせください。
6. まとめ
本記事では、M&Aのメリット・デメリットを売り手と買い手双方から解説しました。M&Aを行う際は、メリットとデメリットをしっかり確認したうえで、戦略を練ることが大切です。
【M&Aによって売り手が得られるメリット】
- 後継者問題の解決
- 従業員の雇用先の確保
- 倒産・廃業・清算の回避
- 創業者利益の獲得
- 将来性の不安からの解放
- 一部事業の売却による主要事業への注力
【M&Aによって売り手に生じ得るデメリット】
- 希望する条件で売れない
- 買い手側の企業文化に馴染めない
- 給与や待遇などが変わる
- 取引先や顧客離れ
【M&Aによって買い手が得られるメリット】
- 事業規模・店舗網・取引網の拡大
- 新規事業への参入
- 事業の多角化
- 人材・ノウハウ・技術の獲得
- 節税対策
- スムーズな事業成長
【M&Aによって売り手に生じ得るデメリット】
- 統合プロセスに失敗する可能性
- 想定したシナジー効果が発揮されない
- 簿外債務などの発覚
- のれんの減損リスク
- 人材の流出
【M&Aによるメリットを活かしデメリットを減らすポイント】
- M&A戦略を事前に練る
- 譲れない条件を明確に決める
- 情報漏えいに気をつける
- 会計のミスなどをきちんと確認する
- M&Aの専門家に相談する
M&Aの実行には、M&A仲介会社・弁護士・会計士による円滑な連携が必要なので、M&Aを依頼する際はこれらのトータルサポートを受けられることが重要な条件ともいえるでしょう。
M&A総合研究所にはM&A専門の弁護士と会計士が所属しており、質の高いトータルサポートを提供しております。