2019年02月14日公開
2019年02月14日更新
M&Aと投資の違いは?投資ファンドのM&Aに関しても解説!
M&Aと投資の違いについて、それぞれの定義や種類(株式投資など)を取り上げて、特徴を比較し解説しています。また、投資ファンドの特徴や、投資ファンドが行うM&A、投資ファンドを利用したスモールM&Aについても説明しています。
1. M&Aと投資の違い
M&Aと投資には、どのような違いが見られるのでしょうか。この章では、それぞれの特徴や、違いの比較をしながら解説します。
そのほかにも、投資ファンドが行うM&Aや、活発な取引が行われているスモールM&Aについても、触れています。
M&Aの定義とは
M&Aは、合併と買収のことです。合併を意味する英語は「merger」で、買収は「acquisition」と表されます。そのためM&Aの英字には、合併・買収の頭文字が用いられているのです。
M&Aに該当する行為には、事業の吸収・消滅や、対象企業の株・事業の承継などが挙げられます。合併のスキームを用いると、他社の事業を吸収したり、自社の事業を消滅させたりして、ひとつの会社に変わるため、M&Aと定義されるのです。
また、買収のスキームを利用すれば、事業や株式の譲渡・譲受が行われます。他社の事業を獲得したり、会社の経営権を握ったりすることで、M&Aの手法と認識されるのです。
投資の定義とは
投資は、自社・自己の資金を、資本や金融資産につぎ込むことを指します。資本とは、事業に使う機械・設備、建物、原材料・在庫のことです。対して、金融資産は株式や債券などを対象としています。
投資の種類は2つあり、投下する資本の種類により、物的投資と金融投資に分けられます。事業を営む企業が、自社の設備を新調したり、新しい工場を建てたりする場合は、物的投資に分類。生産性を高めたり、将来の利益を見据えたりして、資本を投下するのです。
一方、株式や債券に資金をつぎ込む場合は、金融投資に分けられます。企業や投資家が、株式投資や、債券投資、投資信託を行うことで、株式の配当を得たり、利子を得たりする手法です。
株式投資
金融投資のひとつに挙げられる株式投資は、企業から発行された株式を買い取り、配当を得ることを指します。株式投資を利用することで、投資家や企業は会社の解散に合わせて、残余財産を得たり、所有する株式の数に応じて、経営方針の決定に力を持ったりすることも可能です。
多くの投資家・企業は、配当などの利益を目的とするほか、株価の上昇に合わせた売却のために、株式投資を選択しています。購入したときと現在の株価を比べ得られる利益を計算し、差額による利益を獲得するのです。
つまり、投資家や企業は、株式投資を利用することで、投資資金・事業資金の確保しているといえます。
株式投資のメリット・デメリット
株式投資のメリットは、収益率の高さです。短期間の投資では、高い収益を上げることも珍しくありません。ただし、株式投資にはデメリットも存在します。変動が激しいため、収益の安定性に欠けるのです。
株式投資・企業が発行者の場合
企業による株式投資では、資金調達を目的とするケースも見られます。新株を発行し、不特定多数の投資家・特定の第三者・既存の株主から、資金を集めるのです。
企業は株式を発行しても、株主(投資家)に対して、配当金を還す義務はありません。金融機関からの借り入れのように、元本と利子の支払いで困窮せずに済みます。株式投資は、新株を買い手側に買い取ってもらうなど、M&Aの取引で利用されることもあるのです。
債券投資
2つ目の金融投資は、債券投資です。債券投資とは、国や企業が発行する債券を買い、利子を得る手法を指します。投資家たちは資金の運用に応じ、一定期間ごとに利子を獲得します。満期を迎えれば、預けたお金も手元に戻ってきます。
債券投資は株式投資と比べて、収益率が安定しています。とはいえ、利回りが低いので、長期間の投資を余儀なくされるのです。
債券投資・企業が発行者の場合
企業による債券投資の利用では、利子を得るばかりではありません。債券を発行し、投資家たちからまとまった資金を集める目的でも、利用されています。
理由は、資金調達による負担を減らせるため。金融機関からお金を借りるよりも金利が低く、利子の返却も年に数回と少ないので、債券投資を選択し、M&Aなどに必要な資金を確保しているのです。
投資信託
3つ目の金融投資は、投資信託です。投資家たちから集めた資金を、専門家が運用し、得られた利益を投資家たちに分配します。投資信託の特徴は、いくつかの金融商品を抱き合わせて提供されていること。
国内外の株式や、債券、不動産などを組み合わせることで、被るリスクを減らしているのです。また、数百円・数千円からでも買えるため、一般の投資家でも投資信託を利用して、資産を増やせます。
投資信託・企業の関わり方
企業が投資信託と関わるケースには、資産を増やすことのほかに、M&Aによる買収を挙げられます。第三者への事業承継でM&Aを利用し、承継先を事業承継ファンドに決めた場合です。
事業承継ファンドが、売り手企業の株式・債券の購入を決めると、売り手企業の金融資産が投資ファンドへと移転します。すると、取引による売却益が、売り手企業に入るため、企業と事業承継ファンドの間でも、M&Aによる取引が成立するのです。
M&Aと投資の接点・資金とM&A投資枠
M&Aと投資の接点は、資金とM&A投資枠です。買い手は、M&Aを行うために、まとまった資金を必要とします。一般的に、十分な資金が手元にない場合は、株式や債券を発行し、M&Aに必要な資金を集めているのです。
もうひとつの接点は、M&A投資枠の設置。資金を集める方法は、先に取り上げた例のほかにも、M&A投資枠を設けて、買収に必要な資金を確保しています。
M&A投資枠とは
M&A投資枠とは、経営に差し障りのない範囲で確保した、M&Aに必要な資金のことを指しています。所有する資産にM&A投資枠を設定し、買収に必要な資金を自社で賄うのです。
M&A投資枠を設けていれば、株式や債券を発行したり、投資ファンドとの取引に応じたりする必要がありません。また、資金不足により、M&Aの機会を逃してしまう事態も避けられます。
そのほかにも、M&A投資枠を設定していれば、資産の有効利用が可能です。M&Aで投資を実行に移す用意が整っているため、投資家の関心を引いたり、既存の投資家に対し資産の使い道を説明できたりと、投資への意欲を示せます。
そのため、M&Aと投資には、M&A投資枠という接点があることを認識しておきましょう。
M&A投資枠は自己資金のみでM&Aを実行できる
M&A投資枠を設けていると、M&Aに必要な資金を金融機関や投資ファンドから集める必要がありません。M&A投資枠により、自己資金だけでM&Aを進められるため、借入金の返還義務を負ったり、経営権を第三者に手渡したりといった不都合を避けられるのです。
M&A投資枠の設定は、大企業を中心に広がりを見せています。自社のみで新事業を立ち上げるよりも、M&Aによる買収の方が、費用・時間などのメリットが得られるためです。M&Aの実行までに余裕がある場合は、M&A投資枠を設けることも検討してみてください。
M&A投資枠を設定するだけの資産がない場合には、融資や増資、M&Aを伴う資金調達を行い、M&Aに必要な資金を確保しましょう。M&A投資枠は、自社の資産に応じて利用の可否を判断してください。
M&Aと投資の違いを比較
M&Aと投資には、どのような違いが見られるのでしょうか。
M&Aを利用した買収や、事業承継で事業・会社の譲渡を望む方は、2つの違いを知って、自社に見合った方法を選択しましょう。M&Aと投資の違いは、次のような内容です。
- 株式の取得
- ビジネスへの関与
- 資金提供の意味合い
- 直接投資と間接投資
①株式の取得
ひとつ目に紹介するM&Aと投資の違いは、株式の取得です。M&Aで株式を取得する理由は、対象企業の経営権を握るためや、対象企業が所有する事業や資産を獲得・吸収するためです。
対して、投資による株式の取得では、自社の資産を増やすことを目的としています。投資家のように企業の株式を買い、株価が上がったところで売却して差額を得るのです。
②ビジネスへの関与
2つ目に紹介するM&Aと投資の違いは、ビジネスへの関与です。M&Aでは、対象企業の経営に関与したり、事業を傘下に収めたりすることを目的とします。
また、株式の1/3以上を取得すれば、拒否権の行使も可能なため、M&Aの手法には、ビジネスへの高い関与が見られるのです。
対して、投資は企業や投資家によって、株式の取得が行われます。ただし、M&Aよりも一度に取引される株式の数は少なく、一般的には、企業の経営に参与するほどの株式を得ていません。
そのため、豊富な資金を持つ投資家を除けば、投資によるビジネスへの関与は低いといえるのです。
③資金提供の意味合い
3つ目に紹介するM&Aと投資の違いは、資金提供の意味合いです。M&Aは対象企業の経営権を獲得したり、事業や資産など承継したりして、企業価値の上昇・シナジー効果などを望みます。
M&Aでは、対象企業のほかにも自社のために資金を使っているのです。そのため、資金提供の意味合いは弱いと捉えられています。
一方、投資は企業・投資家によって、対象企業の株式を取得し、資産を増やすことを指しています。投資家などが企業の株式を取得するケースでは、一般的に、経営に参加するだけの株式を取得できていません。
大口の投資家や、投資ファンドを除外すれば、投資家たちは実際に経営に関わったり、事業を引き継いだりしません。そのため、投資を選択した場合には、資金提供の意味合いが強いと判断されるのです。
④直接投資と間接投資
4つ目に紹介するM&Aと投資の違いは、直接投資と間接投資です。直接投資は、経営への参加を目的にして株式を取得することを指しています。つまり、M&Aによる株式の取得は、直接投資に分類されるのです。
直接投資では、経営への参画を図り、事業を行います。直接投資は主に、高い関税を回避するため、海外企業へのM&Aに用いられているのです。
一方、間接投資は、投資家による株式・債券の取得を意味しています。投資家たちの狙いは、経営への関わりを目的とせず、株価の上昇による売却益や、配当・利子を得ることです。
このように直接投資と間接投資では、投資を行う目的によって、2つの種類に分けられます。M&Aや事業承継で投資を利用する場合は、経営への参加を判断材料にして、直接投資・間接投資を選ぶようにしましょう。
直接投資を選ぶ理由
直接投資を選ぶ理由は、高い関税を避けるほかにも、高い投資収益率と低コストが挙げられます。直接投資を行う相手を、景気のよい地域(アジア圏・アフリカなど)に定めることで、日本企業への投資よりも、高い収益性がもたらされるのです。
また、低コストによる直接投資の選択では、原材料が現地で調達できたり、労働者への賃金を抑えられたりと、日本で生産するよりもコストを下げられます。直接投資は、このような理由により海外の企業に対して行われているのです。
間接投資を選ぶ理由① リスクの分散
間接投資を選ぶ理由には、対象企業の利子・配当・株価の上昇による売却益などのほかに、リスクの分散が挙げられています。直接投資のように特定の投資先にだけ資金をつぎ込んでしまうと、対象企業の破綻や株価の暴落などにより、資産の大幅な減少が予想されます。
そこで投資家たちは、間接投資を選択。投資の対象を株式や債券などに分けて、被るリスクを回避するのです。経営への関わりを目的としないなら、間接投資を利用手段に挙げてみましょう。
ただし、間接投資では直接投資よりも、低い配当・利子しかもらえない事態が想定されます。間接投資は事業の進め方によって、企業の価値が上がらなかったり、思うように利益が出なかったりするのです。
間接投資は、企業や投資家が経営に関わることができず、事業のかじ取りを対象会社に任せなければいけません。そのため、間接投資を選択する場合は、投資先の経営手腕や将来性などを考慮することが求められます。
間接投資を選ぶ理由② 安定した配当と利子
間接投資を選ぶ理由には、安定した配当と利子を得られることも挙げられます。投資の運用を専門家に任せれば、複数の投資先を選んで、株式や債券を購入。資金の運用を行います。
そのためリスクが分散され、投資家たちは配当や利子の増減を抑えられるのです。
2. 投資ファンドのM&Aについて
M&Aに関わるのは、譲渡・譲受企業だけではありません。投資ファンドもM&Aと関わりを持っているのです。M&Aを検討される方は、投資ファンドのM&Aを理解しておきましょう。
投資ファンドとは
投資ファンドとは、金融機関・投資家から集めた資金を運用し、得られた利益を還元すること。資金を運用する組織にも、投資ファンドという呼び名が使われています。
投資ファンドの種類は、大きく分けて2つ。資金を集め方によって、種類が分けられます。ひとつは公募型の投資ファンドで、もうひとつの投資ファンドは、私募型と呼ばれています。
それぞれの特徴は、以下の通りです。ここから、投資ファンドの性質を理解してください。
- 公募型の投資ファンド
- 私募型の投資ファンド
公募型の投資ファンド
公募型の投資ファンドは、投資家を問わず、不特定多数から資金を集めて、運用を行う方法です。いわゆる投資信託が、公募型の投資ファンドに当てはまります。
公募型の投資ファンドに見られる特徴は、いくつかの金融商品を合わせて、投資家などに提供する点です。株式投資や債券投資などを組み合わせた金融商品を購入して、運用を行います。
私募型の投資ファンド
もうひとつの投資ファンドは、私募型と呼ばれています。投資家を限定して資金を収集、集めた資金を元に、運用を行うやり方です。ヘッジファンドと呼ばれ、短期間による売り買いを行うことで、高い利回りを実現させています。
そのため、私募型の投資ファンドの利用では、大口の投資家が目立ちます。彼らは、高い配当・利子・売却益による還元を目的に、私募型の投資ファンドを活用しているのです。
M&Aを行う投資ファンドの種類
M&Aを行う投資ファンドには、どのような手法があるのでしょうか。投資ファンドの種類は、買収対象の企業に応じて、いくつかに分類されています。M&Aで投資ファンドによる資金提供を考えている方は、次に挙げる投資ファンドのタイプを把握しておきましょう。
- バイアウトファンド
- 再生ファンド
- ベンチャーキャピタル
①バイアウトファンド
ひとつ目のM&Aを行う投資ファンドは、バイアウトファンドです。バイアウトファンドでは、対象企業の株式を購入し、M&Aを実行します。投資ファンドが経営に関わり、株価を上げたところで株式を売却。得られた利益を投資家に還します。
対象とされる企業は、赤字を出していたり、業績が落ちていたりする企業です。投資ファンドがM&Aを通じ、低迷している企業を選択。今後の成長を見込み、対象企業を決めて、株価の上昇から売却・売却益の還元を目指します。
バイアウトファンドには、経営への関わり方やM&A後の対応により、いくつかの種類が存在します。
投資ファンド・バイアウトファンドの種類
バイアウトファンドには、経営への関わり方やM&A後の対応により、次のように分類されています。
投資ファンド/バイアウトファンドの種類 | 内容 |
マネジメントバイアウト(MBO) | 既存の経営陣と投資家が手を組み、株式を買収、経営権を獲得すること |
マネジメントバイイン(MBI) | 外部の経営者と投資家が株式を買収し、経営を担うこと |
レバレッジバイアウト(LBO) | 買収する企業の資産・キャッシュフローなどを担保に、金融機関などから買収に必要な資金を調達すること |
株式公開買い付け(TOB) | 公募により対象企業の株式を取得、M&A後に非公開会社に変え株主から要求を遮ることで、会社の価値を高める手法 |
②再生ファンド
2つ目のM&Aを行う投資ファンドは、再生ファンドです。再生ファンドは、事業の継続が困難になった企業に対し、投資家から集めた資金で株式・債券を買い、企業の再建を図ること。
投資ファンドが経営に加わり、事業の縮小・売却などを行い、収益を得られる状態へと改善させます。業績が回復したら、株式・債券を売却し、投下した資本を回収。資本家に売却益を還元させます。
REVIC・中小企業を対象とした再生ファンド
REVIC(地域経済活性化支援機構)は、中小企業を対象とした再生ファンドです。官民による出資で設立された株式会社で、金融機関と共同してファンドの運営を行っています。
REVICは、金融機関に貸し付けている債権や、新しく発行する社債などを買い取ることで、中小企業への出資・融資を行っているのです。
③ベンチャーキャピタル
3つ目のM&Aを行う投資ファンドは、ベンチャーキャピタルです。ベンチャーキャピタルは、投資家から資金を募り、起業して間もないベンチャーの株式を取得する投資ファンドのこと。
取得する株式は経営権を握るほどでありません。企業のサポートや助言を行う程度に留めて、企業価値の向上に努めます。ベンチャーの成長や上場やM&Aに合わせ、株主たちへ得られた利益を還元するのです。
投資ファンドの資金調達方法
投資ファンドは、個人投資家や機関投資家から、資金を集めます。公募型の投資ファンドで資金を集める場合は、個人投資家から資金を調達。少額の資金を集め、投資信託などで資産を増やしているのです。
私募型の投資ファンドの場合には、1,000万単位・億単位の資金を持つ大口の投資家や、機関投資家(親会社の金融機関・保険会社など)から資金を調達しています。そのため、私募型の投資ファンドには、取り扱う金額が大きい、長期に渡る運用などの特徴が見られるのです。
投資ファンドがM&Aをする目的
投資ファンドによるM&Aの目的は、売却による利益を得るためです。投資家たちから資金を集め、対象企業の株式を取得すると、企業の経営に加わり業績を回復させます。
不採算事業などを売り払い、資本の選択と集中を実行。経営が軌道に乗ったら、会社を上場させたり、企業の株式を売却したりして、利益を獲得するのです。
投資ファンドの目的は上場による差益
投資ファンドがM&Aを行う場合、対象企業の上場を狙っています。非上場企業が株式を上場させると、株価が一気に上がり、購入時との差額が生まれるのです。ここで、所有する株式を売却すれば、大きな利益が得られるため、投資ファンドは投資先に、非上場企業を選んでいます。
もちろん、投資ファンドの対象は非上場企業だけではありません。ベンチャー企業や、業績が落ちた上場企業、設備投資がままならない会社など、資金の確保により今後の成長が見込める企業も対象としています。
投資ファンドがM&A対象とする会社
投資ファンドがM&Aの対象に据える会社には、どのような特徴が見られるのでしょうか。投資ファンドは、以下のような特徴から、M&Aの対象企業を決めています。
- 資源配分や経営戦略を変えることで、企業の価値を上げられる会社
- 時代の流れ・技術の進歩による影響が少ない会社
- 収益性が安定している会社
- 競合の少ないニッチな市場で事業を営む会社
- M&A・株式公開・資金提供で、株価の上昇を見込める会社
- 経営権を取得できる会社
- 事業の規模が小さい会社
- 創業して間もないベンチャー企業
投資ファンドによるM&A戦略と手法
投資ファンドは、M&Aを行う場合、どのような戦略と手法を用いるのでしょうか。投資ファンドのM&A戦略・手法には、次のような方法が挙げられます。
- ロールアップ戦略
- MBO
- MBI
M&Aの戦略と手法① ロールアップ戦略
ロールアップ戦略は、いくつかの非上場企業から株式を買い取り、企業の価値を高めた後、株式を売却する方法です。
株式の買収先には、ほかの買収対象とシナジーを得られる会社を選びます。相乗効果により、買収したそれぞれの企業が業績を上げて、株価が上昇。売却による利益を高められるのです。
ロールアップ戦略・買収企業を統合する
投資ファンドによってロールアップ戦略が行われた場合、買収した企業の統合を図ります。まずは上場に満たないが、もう少しで基準に達しそうな非上場会社をピックアップし、統合の要となる企業(プラットフォーム会社)を選定します。
投資ファンドは、統合の基盤となるプラットフォーム会社へ資金を提供し、株式の交換で必要になる現金を用意します。
そして、プラットフォーム会社と、シナジーを想定する同業者が株式交換を実施して、プラットフォーム会社が、複数の企業を傘下に収めます。これで、同業者によるシナジー効果を得るのです。
ロールアップ戦略の注意点
投資ファンドがM&Aの戦略に、ロールアップを選ぶケースでは、以下の点に注意をしておきましょう。対象企業の業種や、投資ファンドの判断により、想定された利益を得られないことがあります。
【ロールアップ戦略の注意点】
- 市場の規模が大きいと、統合による優位性が現れない
- ルールの統一化に反対意見が噴出すると、シナジー効果を得られにくい
- 対象事業の範囲を広くすると、相乗効果が発揮されない
M&Aの戦略と手法② MBO
2つ目に紹介するM&Aの戦略と手法は、MBOです。MBOでは、買収を希望する経営陣へ資金を提供し、M&Aを支援します。
投資ファンドは、対象企業の資産や、将来のキャッシュフローなどを目安に支援を決定。M&A後に実施する資源の選択と集中や、上場廃止などで、業績の回復を図ります。
財務状況が改善し、安定した利益を上げられるようになったら、株式の売却・上場により、投資した資金を回収するのです。
M&Aの戦略と手法③ MBI
3つ目に紹介するM&Aの戦略と手法は、MBIです。MBIでは、投資ファンドや、投資ファンドと外部の企業が共同して買収する会社に、経営陣を送り込む手法です。対象となる企業には、独自の技術やブランド力を備えていることが求められます。
企業に送り込む人材は、経営についての専門的な知識を持ち合わせている人物です。経営の改善を図れば、企業が備えた力を発揮でき、業績の回復が見込めます。
投資ファンドは株価の上昇に合わせて、株式の売却を行いますが、これはMBIの手法を用いて、差益を得られるためです。
M&A達成後の投資ファンドの戦略
投資ファンドは、M&Aを終えた後に、どのような戦略を取るのでしょうか。対象企業の株式を取得し、経営に関わるようになった投資ファンドは、次のような動きを見せて、投資家へのリターンを実現させています。
- 組織の変革
- 中期に拡大した投資
- 事業の選択と集中
M&A後・投資ファンドの戦略① 組織の変革
ひとつ目に挙げるM&Aの後に投資ファンドが取る戦略は、組織の変革です。企業は無難な方法を選択して、経営の一時的な悪化を避けようとします。これでは、根本的な問題が解決されず、企業価値の向上には結び付きません。
そこで、投資ファンドは組織の変革を実行。現在よりも企業の価値を上げられる組織構造に変えようとするのです。
外部や投資ファンドから人材を送り込めば、既存の経営陣よりも思い切って、改革に着手できます。こうして、企業の価値向上を図り、投資家へ利益を還元しているのです。
M&A後・投資ファンドの戦略② 中期に拡大した投資
2つ目に挙げるM&Aの後に投資ファンドが取る戦略は、中期に広大した投資です。企業は3カ月から1年ほどの期間を目安に、事業の見直しを行います。しかし、事業の形態や内容によっては、長い期間の観測が必要なケースも少なくありません。
そこで、投資ファンドは投資を行う期間を、中期にまで拡大(3~5年)し、対象事業のキャッシュフローやコストなどを予想するのです。
こうすれば、企業価値を上げられなかった会社でも、正確な価値を見出すことができ、数年後の業績回復や、株式上場によって株価の上昇が見込めます。
M&A後・投資ファンドの戦略③ 事業の選択と集中
3つ目に挙げるM&Aの後に投資ファンドが取る戦略は、事業の選択と集中です。投資ファンドは、対象企業から不採算事業などを切り離し、主力の事業に資源を集中させます。
しかし、ノンコア事業に成長力があり、資源の不足により成長が止まっている場合には、事業から撤退したり、売却したりといったことは行いません。ノンコア事業に分配する資源を増やして、成長を促し、企業価値の向上に取り組むのです。
3. スモールM&Aでファンドを利用した会社
投資ファンドを利用した会社は、大きな企業ばかりではありません。スモールM&Aの取引が増えていることで、小・中規模の会社も資金提供の対象とされているのです。
では、どのような会社がスモールM&Aで投資ファンド利用しているのでしょう。実際にスモールM&Aでファンドを利用した会社をご紹介します。
【スモールM&A・ファンドを利用した会社】
- 製造会社
- 建設会社
- 動画配信のサポート会社
スモールM&A・ファンドを利用した会社① 製造会社
ひとつ目に挙げるスモールM&Aでファンドを利用した会社は、製造業を営む会社です。M&Aのコンサルティング会社を通じてMBOを実行し、親族へ株式を譲渡するために投資ファンドから出資をしてもらい、株式の譲渡を行っています。
スモールM&Aでは、株式を買い取るための資金集めが、譲渡の障壁となっているのです。親族が資金を集められない場合は、投資ファンドの手を借りたスモールM&Aを視野に入れてみましょう。
スモールM&A・ファンドを利用した会社② 建設会社
2つ目に挙げるスモールM&Aでファンドを利用した会社は、冷蔵・冷凍装置を手掛ける建設会社です。再生ファンドに、秀でた冷却装置の制御技術を買われて、資金の提供を受けました。提供された資金により、滞っていた支払いを済ませ、経営に必要な資金を確保しました。
特許を活かした業態に変えて、業績の向上を図っています。このように、ファンドを利用したスモールM&Aでは、資金繰りを改善したり、企業の強みを活かしたりすることで、経営効率を高められるのです。
スモールM&A・ファンドを利用した会社③ 動画配信のサポート会社
3つ目に挙げるスモールM&Aでファンドを利用した会社は、動画配信のサポート事業を行う会社です。事業を拡大する過程で、資金が必要となり、資金提供先にベンチャーキャピタルを選びました。
支援を受けた後、会社は株式上場を果たしています。このように、スモールM&Aでは、起業してから間もない会社にも活用例が見られました。
外部の人材を経営に関わらせたくない場合は、スモールM&Aでベンチャーキャピタルからの資金提供を検討してみましょう。これで経営方針に、自社の意向が反映されます。
4. M&Aのご相談は仲介会社まで
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5. まとめ
M&Aと投資の違いや、投資ファンドのM&Aについて紹介しました。M&Aと投資には、株式を取得する点や、ビジネスに関与する度合などに違いが見られます。
また、投資ファンドのM&Aについては、ファンドから提供された資金をもとに企業価値の向上を行い、株式の売却や上場により利益を還元するスキームだとわかりました。
そのため、買収のための資金が手元なくても、投資家が行う株式投資などを通じて、資金を提供してもらえます。設備投資や株式を譲り受ける資金が不足していても、諦めることはありません。投資ファンドを介したM&Aも視野に入れ、検討していくといいでしょう。
投資ファンドM&Aの利用を考える方は、M&A総合研究所へお問い合わせください。無料で相談を受け付けて、親身なサポートを提供します。