JTのM&A戦略まとめ!成功・失敗事例15選!

JTは元々は日本国内のたばこ専売公社でしたが、民営化後の国内たばこ市場の環境はとても厳しいものでした。そこで1990年代後半から積極的に行ったのが、海外でのM&Aです。JTのM&Aについて、成功・失敗事例と共に解説します。


目次

  1. JTのM&Aを解説!
  2. JTのM&A戦略
  3. JTが海外M&Aを行う背景
  4. JTがM&Aを成功させる秘訣とは
  5. JTのM&Aの買収失敗例
  6. JTによるM&A成功事例
  7. JTのM&Aの不安材料
  8. JTのM&Aの今後の展望
  9. M&Aの相談は専門家へ!
  10. まとめ

1. JTのM&Aを解説!

JTのM&Aを解説!

JTの前身は日本専売公社で80年にわたって続いた歴史がありましたが、1985年に民営化されました。ただし現在も、財務大臣が33.35%の株式を持っています。

そんなJTですが、1999年にRJRナビスコの海外たばこ事業(RJRI・アメリカ)を約9,400億円、2007年にギャラハー(イギリス)を約1兆7,310億円でM&Aで買収しています。いずれも、当時の日本企業の外国企業買収としては史上最高額でした。

JTはこれらを買収する以前の海外売上高比率は7.4%(1998年)と低く、基本的には国内をターゲットにたばこ販売の歴史がありましたが、こうした大型案件に代表されるように、ここ20年ほどは積極的にクロスボーダーM&Aを行い、海外に打って出ています。

2018年においてはロシアでM&Aを行い、またバングラディッシュでM&Aをすることも発表されました。

国内のたばこ市場は縮小する中、海外でのたばこ売上を順調に伸ばしていますし、今ではたばこ事業の売上の2/3は海外で獲得していますので、概ねJTのM&A戦略は成功しているものと考えられます。

そんな、JTのM&Aを解説していきます。

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2. JTのM&A戦略

JTのM&A戦略

JTのM&A戦略のカギとなるキーワードは、「時間を買う」ことと、「主体性及び謙虚さ」です。

世界と戦うために時間を買う

JTのM&A戦略のカギとなるのは、「時間を買う」です。またこれはJTに限らずとも、M&Aを行う際の大きなメリットです。

全く新しい事業を立ち上げる場合や、また事業自体は既存のものであってもそれまでつながりのなかった未知のエリアに進出する場合などは、そのやり方を確立させ、事業を軌道に乗せるまでにとても時間がかかります。このやり方の確立というのは、事業や市場の調査から、人材集め、設備投資、顧客の開拓、ノウハウの蓄積などによって行われるものです。

これらはM&Aで他社を買収することで、一挙に手に入れることができます。つまり、圧倒的に時間短縮につながるわけです。またこれは、事業のリスクが小さくなるメリットもあります。

JTの場合は、後述の理由から、このM&Aメリットを海外展開に活かしました。

「主体性」と「謙虚さ」をキーワードに

JTの場合は時間を買うメリットを、主に海外展開において活かしていったわけですが、M&Aのまた別のメリットとして、シナジー効果(相乗効果)というものがあります。これは、企業が合体することによるM&Aの効果を、1̟+1=2ではなく3にも4にもしていける効果のことです。

そして、シナジー効果を生み出すためのカギは、2つの企業を、企業文化ややり方も含めて、上手に融合させることです。しかしこれは、国内の企業同士のM&Aでも神経を使って進めなければ、なかなか進めることができないものです。

海外企業を買収する場合はそれに加え、そもそもその海外の企業が属する国自体の文化ややり方が、日本とは大きく異なるというハードルも出てきます。したがってより難しさが増してくる面は否めません。

そこでJTの採る方針は、買収した海外企業には大きな権限、つまり「主体性」を与え、またJT自体がそこには「謙虚さ」をもって一緒に事業を進めていくことです。後述しますが、JTのこの方向性は概ね成功していると考えられます。

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3. JTが海外M&Aを行う背景

JTが海外M&Aを行う背景

JTの積極的なM&A戦略の背景にあるのは、国内における競争環境の激化とたばこ市場の縮小です。

1985年に専売公社の民営化によりJTが発足した当時、その主戦場となる市場は圧倒的に国内のたばこ市場に限られていました。当初は競合となる輸入たばこの関税措置が残っており、価格面で優位なJTのたばこはダントツのシェアを誇っていましたが、当時の国際環境から、輸入たばこの関税引き下げと、たばこ増税時のJTのたばこの値上げが行われました。

その結果、JT発足から数年後には価格面での優位性は全くなくなり、国内シェアを落としました

また1990年代に入ると、国内市場自体も縮小していくことが明白になります。これは、国内外の、特に先進国における成年人口の減少と、たばこを取り巻く強い風当たりと共に増税が重なる方向にあったからです(事実そうなっています)。

こうして、国内たばこ事業の経営環境が一層厳しさを増す中で、合理化の実施や事業の多角化を進める方針も取られましたが、それらが決して成功したとは言えず、やはり事業の柱はたばこであり続けました。国内市場でそれまで通り戦っていたら厳しいですから、今度は海外たばこ事業の拡大を進め、事業基盤の強化を図る方向に向かいます。

そしてその方法として取られたのが、M&Aでした。

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4. JTがM&Aを成功させる秘訣とは

JTがM&Aを成功させる秘訣とは

JTのM&Aの進め方には、中小企業のM&Aにおいても参考になる部分があります。またそれが、M&Aの貴重な成功体験談でもありますので、それをご紹介します。

①経営の多角化による失敗の歴史

JTは1985年の民営化後、国内のたばこ事業の成長が見込めないなか、事業の多角化戦略を始めた歴史があります。

多角化の歴史の中には、スッポンの養殖、野菜・果物の栽培、バーガーキングの経営、スポーツクラブの運営、不動産業等も含まれましたが、結果的にはほぼ失敗に終わったまま撤退しています。

多角化の失敗についての最も最近のトピックとしては、2015年の飲料事業の撤退です。飲料事業においては、1998年に自販機運営大手の株式会社ユニマットコーポレーション(現・株式会社ジャパンビバレッジホールディングス)を買収して、販路拡大のテコ入れを図っていた歴史もありました。

しかしながら商品自体では、「桃の天然水」や缶コーヒー「ルーツ」といったヒット商品を生み出しましたが、それ以降は目立ったヒットもなく赤字が続き、存在感がなくなったままサントリーグループに売却し、撤退となっています。

それ以外にも、医薬事業は継続中ではありますが、長年赤字でJTの業績を押し下げていました。こちらも、1998年に鳥居薬品を買収するなどして、研究開発のテコ入れを図ってきた歴史があります。

医薬事業は2017年に何とか、2度目の黒字化を達成しましたが、事業開始から約30年の歴史のほとんどで赤字を垂れ流している形でした。

②積極的な海外M&Aと成功

多角化の失敗から、会社の存続はたばこ事業にかかっていた形ですが、それまでほぼ国内にのみ販売していた歴史のたばこの市場は、縮小していくのが明白です。

そこでJTは、海外に活路を見出すための、海外でのM&A(クロスボーダーM&A)に積極的に出ました。

1999年にRJRナビスコの海外たばこ事業(RJRI・アメリカ)を傘下に収めたの買収を皮切りに、各国のたばこ事業の買収を重ねる歴史を積み上げていきます。

最も買収規模が大きかったのは、2007年のギャラハー買収の1兆7,310億円です。

2018年には、すでにロシアでドンスコイ・タバックを買収しました。

JTはM&Aを「成長の時間を買う」手段と位置づけていますが、もはやM&AはJTのお家芸となった感もあります。

なお、参考までにですが、たばこ市場でJTがシェア1位となっている国は日本、ロシア、台湾です。

③自社独自のM&Aプロセス

海外でのM&Aを繰り返してきた歴史のあるJTですが、M&Aにおいてよく登場する投資銀行やコンサルタントはあまり利用しません。つまり、独自のM&Aプロセスで進めています。

自社内で日頃からM&Aの候補となりそうなところを検討し、現地や候補先の情報収集からシナジー効果の検討までも、ほぼ自社内でやってしまいます。

投資銀行やコンサルタントには、例えば発展途上国などで地元の投資銀行でしか得られない情報を得たい時などの、情報収集のために適材適所で入ってもらうのみです。また、サポートに入ってもらうのも、買収が成立するまでで、その後の統合は全て自分たちで進めていきます。

JTのM&Aプロセスにおいて大切にしている点を要約すると、JT独特の理念も入っているので抽象的ですが、以下の通りとなります。
 

  • 買収・統合に関わる社員には、当事者意識を強く持つようにする
  • 「進駐軍」にはならず、買収先の人的な側面を大切にする
  • 買収した後の、顧客、株主、従業員、社会の4者の満足度を高めていくとする経営理念「4Sモデル」から目を離さない

④買収後の統合プロセス

JTでは、買収後の統合プロセスをとても大事にしています。

反省材料としてあるのは、クロージングから統合計画の完成までに8カ月を要したRJRI買収の時の失敗です。その間、RJRIの社員や役員たちは、自分たちの将来について不透明な状況に置かれ、その間に人のモチベーションが大きく下がってしまった苦い経験が、JTにはありました。

これは組織運営上大きな問題となり、この経験から「もっと早く統合計画をつくるべきだった」という教訓が生まれます。

次の大型買収であるギャラハー買収の時には、M&Aでの統合のスピードを加速するために大きく以下二つの工夫をし、実際にクロージングから100日で統合計画を作成しています。
 

  • JTからJTI(RJRI買収時に誕生したJTの海外たばこ事業を担う組織)に大幅な権限委譲をし、「JTI主体の統合」を行うこと
  • 統合における基本原則を買収発表前から準備し、コミュニケーションを繰り返しながら、全社での遵守を徹底してくこと

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5. JTのM&Aの買収失敗例

JTのM&Aの買収失敗例

JTのM&Aでは、国内のM&Aに買収失敗事例があります。

株式会社ユニマットコーポレーションの買収

1998年の、自動販売機事業の株式会社ユニマットコーポレーション(現・株式会社ジャパンビバレッジホールディングス)の買収(正確には、過半数の株式取得と資本・業務提携)です。

そもそもこの買収は、事業多角化で参入したものの、振るわなかった飲料事業の販路拡大のテコ入れを目的としたものでした。

しかしながら、自動販売機に頼りっきりになったせいか、コンビニエンスストアをはじめとする他の販路開拓は全く振るわず、またそのせいか同社の飲料製品のブランドの認知度は低いままで育っていきませんでした(飲料業界では自販機の販路別構成比で3割程度なのに対し、JTは5割以上でした)。

飲料事業は赤字を続け、結局、2015年に飲料事業の売却と共に、この現・ジャパンビバレッジホールディングスの持ち株も、サントリーグループに売却することになっています。

何のシナジー効果も発揮できないまま終わった、JTのM&買収失敗事例と言えます。

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6. JTによるM&A成功事例

JTによるM&A成功事例

海外M&Aについては、概ね成功したものと考えられいます。以下、JTの海外M&Aの事例を紹介します。

①イギリスのマンチェスター・タバコを買収

1992年に、イギリスのマンチェスター・タバコを買収しました。

マンチェスター・タバコは事業規模は小さいですが、製造拠点から販売拠点までバリューチェーンのすべては揃っていました。なお、JTとして初となる海外製造拠点は、このM&Aで獲得しています。

またこの買収後にマンチェスター・タバコに送り込まれた人材が、後述のRJRナビスコからの買収で大きく活躍することになります。JTにとってはパイロット的買収と言えるでしょう。

②アメリカのナビスコ社米国外たばこ事業部を買収

1999年に、アメリカ食品大手RJRナビスコから、アメリカ国内以外のたばこ事業を約9,400億円で買収しました。これは、当時の日本企業のM&Aとしては、過去最高額でした。

金額が示す通りですが、この買収は社運を賭けたプロジェクトであった一方で、JTが海外展開に踏み出した大きな一歩ともなりました。世界でも有名なCamel, Winston, Salemのブランドを獲得し、国際的なたばこ市場での存在感は一気に強くなりました

③イギリスのギャラハー社を買取

2007年にイギリスのたばこ大手ギャラハーを買収しています。

買収価額は約1兆7,310億円で、ギャラハーの純有利子負債を含めた買収総額は約2兆2,530億円と、けた違いに大きいものです。

ギャラハーの買収は、外部資源の獲得を通じた規模の拡大を狙ったものです。JTは世界3位のタバコ製造会社でしたが2位とはまだ差があったため、ギャラハーを買収してより競争力を高めることが必要との結論に達していました。

ギャラハーは世界5位のたばこ製造会社で、英国・北欧諸国など5市場に40%以上のシェアを持っていました。日本・台湾・マレーシアの3市場だったJTの主要市場ですが、ギャラハー買収によってシェア2位以上の市場の数が一気に10になるまでに大きく躍進しています。

競争力がどうかについては議論の分かれるところですが、その後のJTの世界戦略を鑑みれば、ギャラハー買収によるこの規模の拡大自体は大きな意味を持つ成功事例だったと考えられます。

④ロシアのドンスコイ・タバック社を買収

2018年には、ロシア4位のたばこメーカー、ドンスコイ・タバックを1,900億円で買収しました。

ただし、JTはロシアでは、1999年のRJRI買収とその後のギャラハー買収によって、既に33%のシェアを持つ最大手にはなっていました。この買収は、ロシア国内のシェアを40%まで引き上げ、ロシアでのたばこ事業の盤石化を図る狙いで行われたものです。

また、同社は低価格帯製品に強みを持っていますが、この買収によってJTの収益が大幅に拡大する期待はあまり持てないものと考えられています。

現時点でのロシアのたばこ市場は世界第2位ととても大きいのですが、最近のロシアではたばこの規制が強化されています。たとえロシア国内でのシェアは上がったとしても、長期的にはロシアでのビジネス拡大ができるかどうかは、要注目です。

⑤フィリピンのマイティー・コーポレーションを買収

2017年には、フィリピンのたばこ大手のマイティー・コーポレーションの製造設備や流通販売網、またたばこ事業に関する知的財産権などを、約1,048億円で買収しています。

マイティーはフィリピンで2位のたばこメーカーで、フィリピン市場でのシェアは約23%でした。

一方で、元々JTはフィリピンで「ウィンストン」などの製品を展開していましたが、現地でのシェアは5%以下と低迷していました。

この買収の結果としてフィリピンでのシェアは、ちょうど両者を足した29%に一気に上がっています。

⑥バングラディッシュのアキジグループのたばこ事業を買収

2018年8月に、バングラディッシュのたばこ市場シェア2位の、地場アキジグループのたばこ事業を買収することを発表しました。

買収額は1,645億円となる見込みで、これまでのバングラディッシュへの日本企業の投資額としては最大となる予定です。また、このM&Aが完了すれば、日本の対バングラディッシュ投資残高は米国、英国に次いで3位ともなります。

バングラディッシュはたばこ市場としては世界8位規模を持っています。また市場成長率も2%と他国に比べて高いです。JTは2015年からバングラディッシュ市場に参入していますが、バングラディッシュでのJTのプレゼンスは低いままでした。

バングラディッシュ政府は近年、農村部の開発・所得向上に力を入れており、JTは政府のこの方針と足並みをそろえる予定です。買収したアキジグループで働く1万4,000人以上の従業員の雇用を維持しながら、さらにたばこ農家の所得向上も目指します。

バングラディッシュ中央銀行のカビール総裁はこの点を高く評価していますし、JTの投資により輸出産業としてのたばこ産業の成長にも期待をされるなど、バングラディッシュからは歓迎されています。

⑦スーダンのハガー・シガレット&タバコ ファクトリーを買収

2011年に、スーダンと南スーダンで事業を展開している「ハガーシガレット&タバコファクトリー(北スーダン)」社と同(南スーダン)社の全発行済株式を、約350億円で取得しています。

ハガーはスーダンでは80%超のシェアがあります。新たな市場へ事業展開を始め、新興国市場で収益力強化を目指します。

なお、スーダンはこの年、南北に分離しています。いわば転換期にあり、両国経済の発展も期待しての買収です。

⑧エジプトの水タバコ製造会社ナハラを買収

2012年には、エジプトの水たばこ会社、ナハラを買収しています。

水たばこは液体状の糖分などを混ぜた葉たばこを、細長いつぼ状の専用機具で熱しながら煙を吸引するもので、日本ではなかなか見られないですが中東、北アフリカでは現在でも人気が高いものです。

エジプトのたばこは3割は水たばこで、かつ中東と北アフリカ地域にはこの水たばこの需要も多いことから、成長が見込めると判断したものです。ただ、水たばこ事業、エジプトでの事業(紙巻きたばこ含む)ともにJTにとっては初めてですので、M&Aにより新市場への参入を図ったものと理解できます。

⑨ブラジルのタバコ物流専門企業フラクソを買収

2016年には、ブラジルのフラクソを買収しています。

ただし、フラクソはたばこや喫煙具などを扱う流通会社です。JTは南米や東南アジアが手薄となっており、南米で最も人口が多いブラジルで流通面も含めて事業基盤を強化し、海外たばこ事業の成長につなげるためのものです。

JTはブラジル市場には2014年に再参入し、「キャメル」や「ウィンストン」などの銘柄を販売しています。しかしながら、ブラジルのたばこ市場規模は約730億本ととても大きい一方で、JTのシェアは1%未満でした。。買収を足掛かりに流通を強化し、現地生産でさらに競争力を高めて、さらなるシェア向上を狙うものです。

⑩ドミニカ共和国のタバコメーカーラ・タバカレラを買収

2016年には、ドミニカのラ・タバカレラを買収しています。

同社の個人株主から、約16億円で50%の株式を取得します。49.5%を出資するドミニカ政府と共同のジョイントベンチャーです。

JTは中南米地域は手薄なため、販路拡大を狙うものです。ブラジルのフラクソの買収と同じ戦略の一環と考えられます。

⑪アメリカのR.J.レイノルズ・タバコ・カンパニーを買収

2016年、JTは米たばこ大手のレイノルズ・アメリカンから、たばこブランド「ナチュラル・アメリカン・スピリット」(アメスピ)の米国以外(日本、ドイツ、スイス、イタリア、スペイン、英国等)での事業を、約6000億円で買収しています。買収額としてはとても大きいです。

なお、アメスピは1982年発売のブランドで、ネイティブアメリカンのイラストが描かれたパッケージで知られています。その他、香料や保存料などの添加物を使用せず、たばこ葉も天然で高品質なものだけを採用しています。また、一般的な商品と比べて約25%多くたばこ葉を使っているのが特徴です。

JTは多角化の失敗から、事業の柱はたばこ事業に落ち着きつつありますが、たばこは広告宣伝や販売促進に関する規制が厳しく、新たなブランド立ち上げも難しくなっています。

そこでのアメスピの買収は、海外市場の開拓と言うよりは、日本を含む成熟市場での売上増加とプレゼンス強化を狙ったものと言えます。

⑫インドネシアのタバコ関連会社2社を買収

2017年に、インドネシアのたばこメーカーと流通会社を、合わせて約1,100億円で買収しています。

一つは、インドネシアでタバコ製造を手掛ける、カリヤディビア・マハディカ(KDM)です。葉タバコに香辛料などを混ぜたインドネシア特有の「クレテックたばこ」を主に生産しており、2016年の売上高は約560億円で同国での市場シェアは2.2%でした。

もう一つは、KDMの製品を販売する流通会社のスーリヤ・ムスティカ・ヌサンタラです。

インドネシアは中国に次ぐ世界2位のたばこ市場で、紙巻きたばこの販売本数は約2850億本と巨大な市場です。また、今後も市場の拡大が見込まれています。

JTはメビウスなどの製品を展開していましたが、シェアは1%に満たない程でした。買収で現地の生産設備や販売網を手に入れることで早期のシェア向上を目指すものです。

⑬エチオピアのナショナル・タバコ・エンタープライズを買収

2017年には、エチオピアのたばこ専売会社ナショナル・タバコ・エンタープライズの株式40%を5約530億円でエチオピア政府から取得しています。

この株式取得により、JTグループは筆頭株主になりました。エチオピアは、9,700万人と大きな人口を抱えている上、2011~2015年の実質経済成長率が年平均約10%と高成長が続いており、市場が拡大しているアフリカでの販売体制の強化を目指しています。

⑭ベルギーのグライソン社を買収

2012年、ベルギーのタバコ会社であるグライソン社を、約510億円で買収しています。

グライソン社は、主にヨーロッパ市場において、手巻きたばこの事業基盤を強く持っていました。この買収で収益性の高い手巻きたばこをポートフォリオに入れることができ、またそれは、顧客の求める幅広いたばこ製品カテゴリーに対応できるようになることに繋がりました。

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7. JTのM&Aの不安材料

JTのM&Aの不安材料

2016年のアメスピの買収で特に話題になったのが、買収で発生する「のれん」です。

JTは6000億円でアメスピを買収したのに対し、買収の実質的な買収価値は約4700億円ではないかと言われました。また、アメスピの税引き前純利益は21億円でしたから、実に利益の286倍の金額を投じる計算です。

実際、株式市場ではこの買収は高値づかみと判断されたため、買収の発表翌日、株価は約10%も下がりました。

本来考えられる価値より高い金額で買収した場合に、特に問題になってくるのが「のれん」です。JTの場合、買収を繰り返した結果、こののれんが2017年決算で1兆6,000億円を超えています。

こののれんですが、買収した事業が計画通りに進み成功すれば、特に問題はありません。ただ、問題はないとは言うものの、のれんがJTのように膨大な金額になってくると、不穏な時限爆弾に見えるのも事実です。

なぜかというと、JTが採用しているIFRSの会計では、買収した事業が計画通りにいかなかった場合、その買収で積み上げたのれんは、一気に損失処理しなければなりません。

つまり、ある時突然、まとまった金額の損失が発生してしまうかもしれないのです。

JTにおいてはそのようなことはまだ発生していませんが、注意しておく必要があります。

アメスピの買収においても、買収してからまだ年月が浅いとはいえ、日本国内に限っては2017年での販売数量や収益、利益は前年比落ちています。ただ、アメスピの新製品の投入や改良を続けて行っているようですので、買収が成功だったかどうかはこの先の展開による思われます。

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8. JTのM&Aの今後の展望

JTのM&Aの今後の展望

JTのこれまでのM&Aを見た場合、その初期はイギリスおよびアメリカの先進国が舞台でした。しかし、2010年代に入ってからは、東南アジアやアフリカを中心とする、新興国に軸足を置いたM&Aになってきています。

新興国のたばこ市場においては、今に至るまで、JTのプレゼンスはとても小さいものでした。また先進国に比べればまだまだ喫煙率は高いことに加え、人口増加や可処分所得の伸びにより、たばこ市場が伸びることも確実だと言われています。

つまり新興国はJTにとっては、市場が伸びる可能性が高いのに、まだ何もしていないのと同じような、完全な穴の状態です。そこに飛び込んでいくのは当然の決断と言えますが、そこで現地のたばこ会社を買収するM&Aの手段を取れば、販売や製造の拠点、人材、現地のブランド力などを一気に手に入れることができるわけです。つまり、「時間を買う」ということです。

また、手に入れた現地の拠点を通して、JTにおける既存ブランドを浸透させていくことも行われています。これはシナジー効果を狙ったものと言えますが、一挙両得のこのM&Aの流れをJTは、今後も続けていく方針です。

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9. M&Aの相談は専門家へ!

M&Aの相談は専門家へ!

M&Aを進めるには、専門家の協力が欠かせません。M&Aアドバイザーは法律や税金、会計など幅広い知識を持っています。

また、優秀なM&Aアドバイザーは、さまざまなM&Aに携わってきた経験から、高い実務能力と、経営者とも対等に交渉ができるコミュニケーション能力を持っています。M&Aしたいあなたの、力強い味方です。

M&A総合研究所に在籍するM&Aアドバイザーは、M&Aの経験豊富な人材が揃っています。

着手金、中間報酬は無料で、成功報酬は業界最安値水準のシンプルな料金設定になっています。M&Aを行う際は、M&A総合研究所へまずはお気軽にご相談ください。相談は無料です。

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10. まとめ

まとめ

JTは旧・たばこ専売公社で、1985年に民営化されました。JT発足当時は国内たばこ市場でダントツのシェアを持っていましたが、国際環境の変化とたばこ市場の縮小により、多角化経営を目指したものの失敗続きでした。

1990年代に入ってからは、海外でのたばこ事業に邁進していきます。その手段として使われたのがM&Aで、そのメリットは一から事業をスタートさせるよりも、圧倒的に時間がかからない上に、リスクも小さいことです。

国内でもM&Aを行ったことはありましたが、明らかな失敗もありました。一方で海外でのM&Aは、バングラディッシュなどの新興国でのM&Aは狙った通りの効果を発揮するのにまだ時間がかかると想定されますが、着々と新興国市場進出の足掛かりとなる施策を打っているものと考えられます。一連のJTの海外M&Aの歴史も紹介しました。

海外M&Aについても、M&A総合研究所にお尋ねください。ご協力させて頂きます。

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