2019年01月14日公開
2020年12月09日更新
EC・通販業界のM&Aの動向や流れ、相場を解説!成功ポイント10選【事例あり】
EC・通販業界は年々成長を続けています。そのためEC・通販事業に参入する企業も多く、競争が激化していることから、M&Aによる売却・買収も活発化しています。本記事では、EC・通販業界のM&Aによる売却・買収の動向や相場などについて、事例と共に解説します。
目次
1. EC・通販業界とは
EC・通販業界とは、インターネットや各種メディア・広告媒体などをつうじて商品を販売する業界のことです。ECサイトの代表的な企業には、Amazonや楽天、ZOZOなどがあります。また通販では、ジャパネットたかたやディノス・セシール、ベルーナなどが有名です。
ECサイトとは
ECサイトとは、インターネット上に店舗を設置してさまざまな商品を販売しているサイトのことです。ECサイトは販売形態によって数種類に分類されます。
- メーカーが運営するECサイト
- モールタイプのECサイト
- 小売タイプのECサイト
- ドロップシッピングタイプのECサイト
これらのECサイトの特徴について解説します。
メーカーが運営するECサイト
1つ目は、ECサイトをメーカーが直接運営しているケースです。ECサイトをメーカー自身が運営することで、商品の利幅が大きくなります。また、ECサイトで販売する商品ラインナップやECサイトのカスタマイズなどを自由に管理運営できます。
しかしECサイトの保守管理に手間とコストがかかり、専門の技術者やデザイナー、マーケティング担当者などが必要です。
モールタイプのECサイト
モールタイプのECサイトとは、ショッピングモールのように複数の店舗を集めて運営しているECサイトのことです。代表的なプラットフォーム(場所の提供者)にAmazon や楽天市場があります。
モールタイプのECサイトでは、知名度の高いプラットフォームを利用することで、質の高いサービスが提供できたり、高い集客力を得たりします。
しかしプラットフォームに依存するため、プラットフォーム提供側に支払う手数料の負担が大きく、急なルールの変更にも従わなければならないなどのデメリットもあります。
小売タイプのECサイト
小売タイプのECサイトでは、他社から仕入れた商品をECサイトで販売します。メーカーのようにオリジナル商品はありませんが、さまざまな商品を揃えることで独自性を出すことが可能です。しかし仕入れコストが大きく、在庫を抱えるリスクもあります。
ドロップシッピングタイプのECサイト
ドロップシッピングタイプのECサイトとは、ECサイトでは他社メーカーの商品販売のみを行い、商品の管理や発送はメーカーが行う仕組みのことです。
ECサイト側は在庫を抱える必要がないのでリスクを抑えたECサイト運営ができます。しかし仕入れ販売よりも利幅が小さいので、より多くの商品を売る必要があります。
通信販売とは
通信販売とは、各種メディアや広告媒体などをつうじて商品を販売する方法のことです。通販には以下のような方法があります。
- テレビ・ラジオを利用した通販
- カタログを利用した通販
- DMなどを利用した通販
- 新聞広告を利用した通販
- ECサイトなどを利用した通販
それぞれの特徴について解説します。
テレビ・ラジオを利用した通販
テレビ通販、ラジオ通販はそれぞれテレビショッピング、ラジオショッピングとも呼ばれます。テレビ通販・ラジオ通販には、自社で通販部門を持って放送する方法と、企画会社に依頼して放送する方法があります。
人気のある販売員や芸能人を用いて、短時間に多くの商品を売ることが可能です。しかし放送する時間帯や放送局によって費用に大きな差があります。
カタログを利用した通販
カタログを用いた通販は、無料のカタログをコンビニやスーパー、ドラッグストアなどの店舗に置いてもらう方法や、有料の雑誌として書店に置いてもらう方法などがあります。
以前までは通販といえばカタログ通販をさしていましたが、現在ではインターネット通販が急激な伸びを見せています。
DMなどを利用した通販
会員情報などのリストからDM(ダイレクトメール)を送る方法があります。DMによる通販には、インターネットを活用する方法とオフラインで送る方法があります。
新聞広告を利用した通販
新聞広告や折込チラシで通販を行う方法もあります。新聞広告や折込チラシによる通販は首都圏よりも地方での費用対効果が高いため、地方に本社のある企業が地元地域で行う通販方法として最適です。
ECサイトなどを利用した通販
ECサイトを利用した通販の代表的なサイトにはAmazonや楽天市場、ZOZOTOWNなどがあります。ECサイトなどを利用した通販は伸び続けている反面、競争が激しい分野でもあります。
2. EC・通販業界の動向
EC・通販業界の近年の動向については以下の傾向があります。
- 売上高は増加傾向
- スマホの普及により身近なものに
- アプリの充実も市場拡大の助けに
- コンテンツマーケティングの確立
それぞれの動向について解説します。
①売上高は増加傾向
EC・通販業界の売上高は年々増加傾向にあり、大幅な増収を続けている企業がいくつもあります。
2020年に「月刊ネット販売」が行った売上高調査「ネット販売白書」では、アマゾンジャパンが圧倒的に他社を引き離してトップであり、2位がヨドバシカメラ、3位がZOZOとなっています。
②スマホの普及により身近なものに
以前までEC・通販のインターネットショッピングといえば、パソコン上のサイトで行うものでした。しかしスマホが普及してから消費者の動向も変化し、現在ではスマホからの購入が多くなっています。
スマホでいつでもどこでもショッピングができるようになり、EC・通販はより身近になりました。
③アプリの充実も市場拡大の助けに
スマホの普及と共に、EC・通販関連のアプリも充実しました。今ではEC・通販事業を行っている企業の大半が自社のアプリを持っています。
また、広義のEC・通販アプリであるヤフオク!やメルカリ、ラクマなどのフリマアプリが急成長したことによって、EC・通販業界の市場拡大にもつながっています。
④コンテンツマーケティングの確立
EC・通販業界では商品を並べて紹介するだけで売れていた時代もありました。しかし消費者の動向が変化し、商品ができるまでのストーリーや使用者の口コミ、インフルエンサーによる紹介など、コンテンツマーケティングが重要視されています。
ECサイトの運営企業やメーカーは会社や自社の商品をアピールするためのオウンドメディアを持つようになりました。また通販会社は、商品を愛用している有名人がブログやSNSで宣伝を兼ねた紹介をするなどのマーケティング戦略を取っています。
3. EC・通販業界のM&Aに見られる特徴
EC・通販業界のM&Aに関する動向は近年変化を続けています。
これらEC・通販業界のM&Aに関する動向について解説します。
- 小売業のM&Aが活性化
- ECサイトのM&Aも人気
- 他業種からのM&Aが増加
- 国外からのM&A
①小売業のM&Aが活性化
EC・通販業界のM&Aは、大手の流通企業によって活発化しています。国内の消費が減少し、消費者の消費動向が激しく変化する中、流通・小売大手は生き残りをかけてM&Aを積極的に行っています。
競争が激しい流通・小売業界で販売網を確保するため、M&Aの対象はEC・通販業界にまでおよんでいます。
②ECサイトのM&Aも人気
近年はECサイト自体のM&Aも人気です。ECサイトをM&Aによって売買するメリットは後述しますが、ECサイトは一時期の流行によって急激に増え、現在は競争の激化によってサイトの売買需要が高くなっています。
買収側にとってもメリットが大きいことから、ECサイトのM&Aによる売買は活発化しています。M&Aによるサイト売買の環境が整ったこともECサイトの売買を後押ししているのです。
③他業種からのM&Aが増加
EC・通販業界のM&Aは、他業種との売買も増えています。前述した消費者動向の変化から、販売チャネルを増やすためにEC・通販関連会社を買収する動きが増加し、今後も売買は増えていくと予想されます。
④国外からのM&A
国外から日本のEC・通販会社をM&Aによって買収する動きもあります。特に中国とアメリカの企業によるM&Aが増加しています。
中国のEC・通販業界は現在急激な成長率で伸び続けており、消費者の旺盛な購買意欲は中国国内だけでなく日本にも向くようになりました。日本の販売チャネルを確保するため、中国企業のM&Aによる買収が活発になっています。
アメリカからも過去何度か大手企業が参入したのですが、最終的に撤退するケースが多くありました。しかし再び参入するケースが出ています。
4. EC・通販業界のM&A・買収・売却の流れ
EC・通販業界のM&Aによる買収・売却の基本的な流れを、買収側、売却側に分けて解説します。
買収側の基本的な流れ
買収側の基本的なM&Aの流れは以下のように進みます。
- M&A仲介会社への相談
- 買収先の選定
- 買収額の交渉・調整
- 買収決定
それぞれの手続き内容について解説します。
M&A仲介会社への相談
一定規模以上のM&Aによる買収を行う場合、M&A仲介会社の協力が必要です。
M&A仲介会社は、買収の目的に合わせてM&Aスキームを選択し、買収先の選定から買収先との交渉、契約書の作成、デューデリジェンス(企業調査)、PMI(買収後の統合計画)など、M&Aに関する手続きを一貫してサポートします。
M&A仲介会社のサポートによって売買の成功率は大きく変わります。
もし、M&A仲介会社をお探しの場合は、ぜひM&A総合研究所にお任せください。
M&A総合研究所には、M&Aの知識や経験が豊富なM&Aアドバイザーが在籍しており、案件をフルサポートいたします。また、最短3ヶ月でのスピード成約を強みとしております。
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買収先の選定
M&A仲介会社との契約が決まったら、M&A仲介会社のネットワークを利用するなどして、買収先を選定します。最近ではAIを活用したマッチングプラットフォームを運用するM&A仲介会社もあり、安価で最適な買収先を探せるようになりました。
買収額の交渉・調整
買収先が決まったら、秘密保持契約を結び買収額の交渉を行います。買収額の算定方法にはさまざまな方法がありますが、相場などを参考に目安となる買収額を算定したうえで、最終的な買収額は交渉で決定します。EC・通販業界の相場については本記事で後述します。
買収決定
買収交渉が成立したら、デューデリジェンスや公告、株主総会での決議、最終契約書の締結などを行います。手続きが済んでM&Aの効力発生日を迎えれば、買収手続きは完了です。効力発生日以降は業務の引き継ぎなどを進めます。
売却側の基本的な流れ
続いて売却側の基本的なM&Aの流れについて解説します。売却側の手続きは以下の流れで進みます。
- M&A仲介会社への相談
- 売却先の選定
- 合意交渉・売却額の決定
- 売却決定
M&A仲介会社への相談
売却側も買収側と同じく、ある程度規模の大きい企業の場合、まずはM&A仲介会社に相談します。売却側は市場の相場を基に自社の企業価値を算定したり、M&A市場での価値を上げる方法を策定したりします。
売却先の選定
M&A仲介会社と今後の売却方針を策定したら、譲渡先の選定です。複数の企業から買収のオファーがきた場合は、M&A仲介会社の仲介で交渉するなどして譲渡先を絞り込みます。
合意交渉・売却額の決定
譲渡先が決定したら、条件交渉をして基本合意契約書を結びます。M&Aの方法や売却価額、事業を譲渡する日などを取り決めます。
売却決定
株主や債権者への公告・通知、株主総会での承認などを経て買収側と最終契約書を結び、効力発生日を迎えたらM&Aによる売却手続きは完了です。効力発生日以降は事業の引き継ぎを進めます。
5. EC・通販業界のM&A・買収・売却のメリット
EC・通販業界のM&Aによる買収・売却のメリットを、買収側と売却側に分けて解説します。
買収側のメリット
買収側には以下のメリットがあります。
- スタートの早い事業参入が可能
- EC・通販業界のノウハウを入手可能
- EC・通販業界で自社商品の販売が可能
スタートの早い事業参入が可能
EC・通販業界にゼロから参入して軌道に乗るまでは、多くの時間とコストがかかります。特にブランドを定着させることは簡単ではありません。
しかし、M&Aによって、すでにインフラが整った状態で事業をスタートできれば、軌道に乗るまでの時間を短縮でき、事業参入初期の失敗リスクを抑えることが可能です。
EC・通販業界のノウハウを入手可能
M&Aで買収することによって、EC・通販業界のノウハウを手に入れることができます。EC・通販業界のトレンドは年々変化しており、トレンドについていけるかどうかが生き残りに大きく影響しています。
専門のノウハウを持った人材などの知的財産をM&Aで手に入れることによって、EC・通販業界の速い流れについていくことができます。
EC・通販業界で自社商品の販売が可能
EC・通販事業を自社で運用できれば、自社ブランドとして他社と差別化できます。また、商品の製造から販売までを自社で一貫して行えるので、コストを下げて利幅を増やすことが可能です。
売却側のメリット
続いて売却側のメリットについて解説します。売却側には以下のメリットがあります。
- 売却益を手にできる
- 事業承継問題の解決
- 従業員の雇用確保
売却益を手にできる
M&Aで売却することによって、売却側は売却益を得ることができます。手に入れた売却益で新規事業を始めたり、既存事業に集中投資したり、経営からリタイアしたりと、さまざまな選択が可能です。
事業承継問題の解決
M&Aによる事業売却で、売却側の経営者は後継者不在問題を解決できます。
中小企業庁による「2020年版 中小企業白書・小規模企業白書」によると、休廃業・解散企業のうち約6割が黒字企業となっています。
そして、経営者が高齢にもかかわらず後継者不在の企業が多く、経営者の年齢が60代で約半数、70代で約4割、80代で約3割が後継者不在の状況です。
継続・成長可能な企業の廃業は、経営者や取引先、顧客、地域にとって大きな損失です。しかし、M&Aによって売却先が事業を引き継ぐことで、事業承継問題を解決できます。
従業員の雇用確保
経営者にとって心配事の1つが、従業員の雇用です。廃業となると、自社で長く働いてきた従業員の今後に頭を悩ますことになりますが、M&Aで売却先に従業員も引き継ぐことで、従業員の雇用を確保できます。
ただし、M&Aの手法や契約内容によっては従業員の雇用を確保できないこともあるので注意が必要です。
6. EC・通販業界のM&A・買収・売却のデメリット
M&Aはメリットばかりではありません。続いては、EC・通販業界のM&Aによる買収・売却のデメリットについて解説します。
買収側のデメリット
EC・通販事業を買収する場合、以下のデメリットが発生するリスクがあります。
- 債務などがある可能性
- 人材の流出
- ポイント引当金の会計処理
債務などがある可能性
M&Aで事業を買収する場合、M&Aの手法によっては債務ごと引き継ぐ必要があります。あらかじめ引き継ぐ債務がわかればリスクも許容できますが、売却側が簿外債務を抱えている場合は注意が必要です。
簿外債務とは、帳簿上に現れない隠れた債務のことです。簿外債務によって思わぬリスクを抱えないように、M&Aの際はしっかりとデューデリジェンスを行ったり、簿外債務が見つかった場合の補償契約を売却側と明確にしたりする必要があります。
人材の流出
M&Aで買収した側が気を付けなければならないのが、引き継いだ人材の流出です。M&Aでよくあるケースが、買収側と売却側の従業員がなかなか馴染めないケースや、待遇の違い、社内風土の違いに不満を持つケースです。
EC・通販のM&Aでは人材が持つノウハウが重要なため、買収側にとって人材の流出は大きな損失となります。M&A後の人材流出を防ぐためにも、PMI(統合後のマネジメント計画)を綿密に準備することが重要です。
ポイント引当金の会計処理
EC・通販事業のM&Aでは、ポイント引当金についてよく確認する必要があります。ポイント引当金は、買い物をしたときに付与するポイントの会計処理項目です。
ポイント引当金は負債に割り当てられますが、このポイント引当金を売却企業が会計処理していないケースがあります。会計処理していないことに気付かず買収してしまった場合、偶発債務が発生します。
売却側のデメリット
売却側には以下のデメリットがあります。
- 希望売却額に達しない可能性
- 名前が消失する可能性
- 従業員の待遇に対する不安
希望売却額に達しない可能性
EC・通販のM&Aに限らず、売却側は希望の売却価額に達しない可能性があります。事業売却によって得た資金を借金の返済やリタイア資金に充てようと計画していた場合、予定が狂うでしょう。
M&Aを仲介する会社の業務形式には、売却側か買収側どちらかと専属契約を結ぶアドバイザリー形式と、売却側と買収側両方と契約を結んで間に入る仲介形式があります。
どちらの形式を採用しているM&Aの専門家に依頼するかで売却額も変わるので、事前によく確認することが大事です。
名前が消失する可能性
M&Aの条件交渉によっては、社名や事業名が変わります。名前にこだわりがなければ問題ありませんが、名前に思い入れがある場合は経営者にとって苦しい選択を強いられます。
名前の変更は買収側の経営判断次第なので、どうしても今の名前を譲れない場合は交渉するか、名前を変えなくても良い売却先を探すことになります。しかし売却先をあらかじめ絞るのは売却機会の損失となるため、慎重な判断が必要です。
従業員の待遇に対する不安
会社が買収されることに従業員は不安を持ちます。他社の子会社になる、または事業が吸収されるとなると、待遇や業務内容が変わる可能性があります。中にはM&Aを機に退社する従業員もいるでしょう。
従業員に説明するタイミングや説明内容に、十分気を付けなければなりません。
7. EC・通販業界のM&A・買収・売却の相場
ECサイトや・通販サイトをM&Aで買収、売却する場合の相場は、営業利益の2年分から3年分が一般的な相場です。単純計算で月の営業利益が500万円だった場合、2年分だと1億2,000万円、3年分だと1億8,000万円です。
実際には、営業利益の5年分や6年分での売買に成功している事例もあります。相場よりも高く売買できるかどうかは、事業のブランド力や将来性、交渉内容によって変わります。売却側の経営者をスカウトする代金として相場よりも多めに支払うケースもあります。
8. EC・通販業界でのM&A成功のポイント
EC・通販業界でM&Aを成功させるには、以下の項目を満たす必要があります。
- 人気のオリジナル商品がある
- すでに自社で技術者を抱えている
- 相場をしっかりと調べる
- 買収先の取引先を引き継げる
- 買収先がシステムの更新・修正履歴を管理している
- ECサイトのUX・UIを考える
- システムの見直しを行う
- ランキングやレビュー機能をつける
- レスポンシブ化する
- 信頼性を確保するため商品詳細も記載
①人気のオリジナル商品がある
EC・通販業界は競争が激しいので、オリジナルブランド商品が無ない場合は大手企業に商品ラインナップや価格などで負けてしまいます。しかしオリジナルブランドで人気商品を作り出すことは簡単ではありません。
そこでM&Aによってオリジナルブランド商品を持った企業を買収することで、独自性を持ち他社と差別化することが可能です。
②すでに自社で技術者を抱えている
EC・通販サイトの運営は常に保守管理が必要です。またEC・通販業界の技術も進歩しているため、新技術のトレンドに対応できる技術者を確保しなければなりません。
一昔前まではログイン機能とショッピングカート機能くらいだったECサイトですが、現在ではAIやビッグデータなどの先端技術を用いる企業があります。M&AでEC・通販事業を買収する場合は、トレンドに対応できる技術者を確保できるかどうかも成否を分けます。
③相場をしっかりと調べる
EC・通販事業では技術力やブランド力などの無形資産が重要です。EC・通販事業の売買を行う際は、売上高や営業利益だけでなく、無形資産の相場をどのように算定するかも大切です。
例えば、AIプログラマーの数は少ないですが需要が多いので、相場は高くなっています。しかし相場よりも高いからといってAIプログラマーを獲得しなければ、今後のEC・通販業界の流れについていけない可能性が高くなるのです。
EC・通販事業では、将来性を見越した相場をしっかりと把握して売買することが必要です。
④買収先の取引先を引き継げる
事業を売買する際には、取引先が契約を継続してくれるかも重要です。特に小規模のEC・通販事業の場合、経営者同士の人間関係で取引が成り立っていることもよくあります。事業の売買手続きに入る際は、取引先への説明、確認をしっかりと行わなければなりません。
⑤買収先がシステムの更新・修正履歴を保有している
EC・通販サイトのシステムは、現在ではバージョン管理が当たり前です。しかしシステムが古い場合や技術者が個人で開発している場合、プログラマーがバージョン履歴を管理していない可能性があります。
バージョン管理されていないプログラムはつぎはぎだらけになっていて、可読性が低くなります。その結果、システムの管理運営が難しくなり、改修に大幅な手間と費用がかかるのです。
買収の際はプログラムの中身を専門家にしっかりと確認してもらい、譲渡する側は譲渡価額にも影響するので、普段からバージョン管理を徹底することが重要です。
⑥ECサイトのUX・UIを考える
近年のECサイトは、UX・UIが非常に重要です。UI(ユーザーインターフェイス)とは、ボタンや画像などの操作、見た目に関わる部分のことで、UX(ユーザーエクスペリエンス)とは、サイトで得られる体験のことをいいます。
近年のWEBデザインでは、ボタン1つの形や位置の違いでも結果が大きく変わるため、多くの企業がデータの分析やデザインの改良に力を入れています。
効果的なUX・UIを作れる会社を買収できるか、譲渡側はUX・UIの作成技術をアピールできるかが、M&Aの成功を左右します。
⑦システムの見直しを行う
EC・通販事業を買収したら、システムをそのまま流用するのではなく、自社に合わせたシステムの見直しが必要です。目に見えるサイトデザインの修正にばかり意識が行きがちですが、データベースやサーバーなどバックエンドの見直しを行う必要もあります。
⑧ランキングやレビュー機能をつける
近年の売れているEC・通販サイトには、商品のランキングやカスタマーレビュー、関連商品の表示などが付いています。もしそのような機能が事業を売買する時点で付いていなければ、事業の譲渡完了後すぐに機能を追加する必要があります。
⑨レスポンシブ化する
カスタマーはパソコンやスマホ、タブレットなど、さまざまなデバイスからサイトに訪れます。そのため、それぞれの画面に合わせたレスポンシブ対応が必要です。
レスポンシブ対応とは、デバイスや機種に合わせてデザインを自動的に最適化することです。特にスマホは機種によって画面サイズが違うので、入念な確認が必須です。
⑩信頼性を確保するため商品詳細も記載
現在は良い商品を並べておけば売れる時代ではありません。同じ商品、同じ値段でも、カスタマーはより信頼できるところで購入する傾向があります。商品を紹介するテキストコンテンツで売れ行きは大きく変わります。
9. EC・通販業界のM&A・買収・売却の成功事例
EC・通販業界のM&A成功事例として、以下の事例を紹介します。
- ロコンド
- エディオン
- オールアバウトライフマーケティング
①ロコンド
1つ目の事例は、ロコンドです。
2020年5月、ロコンドは、ワールド傘下のFashionwalkerを全株式取得により子会社化しました。Fashionwalkerは、レディースファッション通販サイトを行っている会社です。
このM&Aにより、ロコンドは靴とファッションの自社通販サイトとの相乗効果、アパレル領域のEC事業強化を狙っています。
そしてワールドは、自社ブランドのEC事業や外部向けEC受託事業を拡げ、競争激化のECモール事業の切り離しを行い、収益を上げることを見込んでいます。
②エディオン
2つ目の事例は、家電量販店のエディオンです。
2017年7月、家電量販店のエディオンは、EC事業を行うフォーレストを株式譲渡によって買収しました。エディオンはEC事業の強化を中期経営計画で掲げています。
計画の一環としてフォーレストを買収することで、ノウハウの獲得やスケールメリット、シナジー効果を得ています。
③オールアバウトライフマーケティング
3つ目の事例は、オールアバウトライフマーケティングです。
さまざまな商品のサンプル品を扱うサイト「サンプル百貨店」を運営する、オールアバウトライフマーケティングは2017年5月、女性向けファッション通販サイト「MUSE&Co.」を運営する、ミューズコーを株式譲渡によって買収しました。
オールアバウトライフマーケティングは、EC・通販業界でも特に成長分野であるファッション分野に参入し、既存事業とのシナジー効果を得ています。
10. 今後のEC・通販業界動向
今後のEC・通販業界で押さえておくべき動向はいくつかありますが、その中でも特に大きな流れとなる以下の動向について解説します。
- グローバル対応
- キャッシュレス決済
- パーソナライズ
- 動画マーケティング
- オムニチャネル戦略
①グローバル対応
アメリカと中国、特に中国のEC・通販業界は急速に成長しています。消費者の購買意欲も高く、中国の購買意欲は日本にも向かっています。今後は英語・中国語への対応や、外国のEC・通販会社との協力など、グローバルな対応が求められます。
②キャッシュレス決済
2019年に、日本のキャッシュレス化が進みました。実店舗のキャッシュレス化は、EC・通販サイトのキャッシュレス化に影響します。PayPayやLINE Pay、楽天ペイなど主要な決済ブランドへの対応は必須です。
③パーソナライズ
個々のカスタマーに合わせた対応をするEC・通販サイトが増えています。閲覧履歴や購入履歴など、カスタマーの行動から最適な情報を提供し、コミュニケーションをとるパーソナライズ機能は今後必須です。
パーソナライズ機能の導入にはAI技術も必要なため、技術を持つ企業と技術を持たない企業で大きく差が開く可能性があります。
④動画マーケティング
動画を使ったマーケティングは近年盛り上がりを見せています。スマホの利用時間に占める動画コンテンツの割合は年々増加し、さまざまな分野で動画関連サービスが立ち上げられています。
今後はEC・通販サイトでもうまく動画コンテンツや動画広告を導入するノウハウが必要です。
⑤オムニチャネル戦略
オムニチャネルとは、実店舗とインターネットの垣根を超えて、すべての販売経路を駆使して行う販売戦略のことです。
近年はインターネットショッピングが普及したことで、実店舗での販売機会を損ねるケースが増えています。例えば街の書店で欲しい本を探し、Amazonでその本を購入する、といったケースです。
このような販売機会の損失を避けるには、実店舗やイベント、カタログ、SNS、WEBサイトなどあらゆるチャネルで自社と顧客の接点を増やし、一貫したサービスを提供するノウハウが必要です。
このオムニチャネル戦略を効果的に行えるかどうかが、今後の成長戦略に大きく影響します。
11. EC・通販業界のM&A・買収・売却の相談は専門家へ
EC・通販業界は成長産業ですが、競争も激しく、参入する企業も撤退する企業も多く存在します。また技術が年々進化しトレンドの変化も速いので、M&Aによる売買には業界の専門知識を持つアドバイザーの協力が必要です。
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12. まとめ
EC・通販業界のM&A動向について、成功事例と共に解説しました。本記事の内容を簡単にまとめます。
ECサイトには、以下の事業形態があります。
- メーカーが運営するECサイト
- モールタイプのECサイト
- 小売タイプのECサイト
- ドロップシッピングタイプのECサイト
また、通信販売には以下の手法があります。
- テレビ・ラジオを利用した通販
- カタログを利用した通販
- DMなどを利用した通販
- 新聞広告を利用した通販
- ECサイトなどを利用した通販
近年のEC・通販業界の動向は以下です。
- 売上高は増加傾向
- スマホの普及により身近なものに
- アプリの充実も市場拡大の助けに
- コンテンツマーケティングの確立
またEC・通販業界のM&Aは、以下の変化があります。
- 小売業のM&Aが活性化
- ECサイトのM&Aも人気
- 他業種からのM&Aが増加
- 国外からのM&A
EC・通販事業の買収には、以下のメリット・デメリットがあります。
メリット
- スタートの早い事業参入が可能
- EC・通販業界のノウハウを入手可能
- EC・通販業界で自社商品の販売が可能
- 債務などがある可能性
- 人材の流出
- ポイント引当金の会計処理
メリット
- 売却益を手にできる
- 事業承継問題の解決
- 従業員の雇用確保
- 希望売却額に達しない可能性
- 名前が消失する可能性
- 従業員の待遇に対する不安
EC・通販サイトのM&Aを成功させるには、以下の施策を打つことが重要です。
- 人気のオリジナル商品がある
- すでに自社で技術者を抱えている
- 相場をしっかりと調べる
- 買収先の取引先を引き継げる
- 買収先がシステムの更新・修正履歴を管理している
- ECサイトのUX・UIを考える
- システムの見直しを行う
- ランキングやレビュー機能をつける
- レスポンシブ化する
- 信頼性を確保するため商品詳細も記載
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