DCF法(ディスカウント・キャッシュ・フロー)とは?計算式や割引率の目安、NPV法との違いを徹底解説

DCF法とは、事業価値を評価する手法の一つです。独自のメリット・デメリットがあり、ほかの評価手法とは計算式や割引率が全く異なるので、有効活用するためには詳細を把握しておく必要があります。本記事では、DCF法の計算式や割引率の目安、NPV法との違いを解説します。


目次

  1. DCF法(ディスカウント・キャッシュ・フロー)とは?
  2. DCF法の計算式を解説
  3. DCF法による割引率の目安
  4. DCF法(ディスカウント・キャッシュ・フロー)とNPV法(正味現在価値)との違い
  5. まとめ

1. DCF法(ディスカウント・キャッシュ・フロー)とは?

DCF法(ディスカウント・キャッシュ・フロー)とは?

M&Aを検討する際、売却側と買収側の双方がM&A対象の価値を知らなくては、交渉を進めることができません。どの程度の価値になるのか、どのような評価方法が存在するのかを把握しておくことで、M&Aに備えることができます。

M&Aにおける事業価値を評価する方法には、時価純資産法や類似会社比較法など、いろいろなものが存在します。いずれもメリットがあるものですが、特に合理性の高いものにDCF法(ディスカウントキャッシュフロー)という計算方法があります。

M&Aを検討する際は、あらゆる計算方法を使って試算することになるので、DCF法(ディスカウントキャッシュフロー)についても把握することが大切です。本記事では、DCF法(ディスカウントキャッシュフロー)について詳しく解説します。

DCF法は事業価値を評価する手法

DCF法とは、事業価値評価に用いる計算方法です。ディスカウントキャッシュフローの略称であり、日本語では「割引キャッシュフロー法」などと呼ばれています。

DCF法は、将来的な収益価値を現在価値に換算する方法です。この事業に投資した場合に将来的にどのくらい回収できるのかという考え計算される方法なので、適正な価値を事業価値に反映させやすい特徴があります。

株式や不動産など投資が伴うプロジェクトで幅広く活用されているので、M&Aの場面以外でも見聞きすることが多いです。

DCF法の計算式は難しい特徴がありますが、近年はM&Aが広く普及してきたこともあり、参考情報が多く出回っているのでファイナンスの知識がない場合でも計算しやすくなってきています。

時価純資産法との違いは?

時価純資産法とは、事業に関わる資産と負債について時価評価を行い、その差額を事業価値とする計算方法です。

事業を清算した場合にどれくらいの価値が残るかという考えの計算式になっているため、将来的な収益価値を加味するDCF法(ディスカウントキャッシュフロー)とはまったく異なる計算結果がでることになります。

時価純資産法は簡単に計算できるメリットがありますが、無形資産を考慮することができないデメリットもあります。適正な価値とは大きく乖離してしまう可能性があるため、M&A現場で利用されることはほとんどありません。

なお、時価純資産法+営業権(のれん)であれば無形資産も考慮することができ、計算が比較的簡便かつ無形資産を考慮できるという点から、M&Aにおける事業価値評価の場面で利用頻度が高いです。

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DCF法のメリット・デメリット

事業価値の計算方法にはそれぞれメリット・デメリットがあるように、DCF法(ディスカウントキャッシュフロー)にも、ほかの計算方法とは異なるメリット・デメリットが存在します。

それぞれの計算方法のメリット・デメリットを把握すると、状況に応じて使い分けることができるようになります。ここでは、M&AにおけるDCF法のメリット・デメリットを順番に解説します。

DCF法のメリット

DCF法のメリットは、評価方法における柔軟性の高さです。主観的な評価を行うことができるため、複雑な計算式が用いられる反面、注視する点によって計算結果が大きく変化するため、企業の状況に合わせた計算に対応することができます。

DCF法では、現在の売上や利益だけでなく、将来の期待値も反映させます。無形資産の割合が大きいIT系企業や新たなビジネスモデルを確立させたスタートアップなどについて、適正な評価を行いやすいメリットがあります。

また、将来を見据えた計算方法であるため、DCF法の活用は事業計画を策定することにも繋がります。より計画的なM&Aを実行しやすくなるので、DCF法は事業価値の計算方法として合理的とされています。

DCF法のデメリット

DCF法のデメリットとは、算出する価値について客観性を欠いてしまうことです。計算する者の視点次第でいくらでも計算結果を変えることができるため、交渉がまとまらなくなる可能性があります。

DCF法は合理性に優れた計算方法といえますが、M&A交渉においては売り手と買い手の双方が納得することができなければ成約させることはできません。

DCF法が使われるシーン

DCF法が最も使われるシーンはM&Aです。事業価値評価を行うシーンは、M&A以外にも清算や相続などがあります。

清算とは、資産・債務の整理を行い後始末をつけることなので、事業の存続を前提としたDCF法を利用することはまずありません。清算に最も適切な計算方法は時価純資産法です。

相続とは、会社や事業を包括的に特定の人に引き継ぐことです。事業の存続を前提としたものですが、主観的な評価を行うDCF法は相続税や贈与税について過度な節税対策が行えてしまうため、相続の場面には適切ではありません。

相続の際の事業価値評価は、上場企業であれば株価時価、非上場企業であれば配当還元方式・純資産価額方式・類似業種比準価額方式の3つのうちのいずれかを使用します。

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2. DCF法の計算式を解説

DCF法の計算式を解説

DCF法とは、事業が将来的に生み出す期待キャッシュフローを割引率で割り引くことで事業価値を計算する方法です。計算式にすると「事業価値 = フリーキャッシュフロー ÷ 割引率」となります。

計算式だけみると単純なように思えますが、実際に計算するためには、フリーキャッシュフローと割引率を求めるための計算も行わなくてはなりません。

割引率に関しては次章で詳しく取り上げますので、この章ではフリーキャッシュフローの求め方を解説します。

フリーキャッシュフローとは

フリーキャッシュフローとは、事業活動に自由に使うことができる資金のことです。フリーキャッシュフローが黒字であれば、資金的に余裕のある状態であることを意味しています。

DCF法は将来的な収益価値を考慮する計算方法であるにも関わらず、手元にあるキャッシュを重視する理由は、キャッシュの流入と流出は絶対的な事実となるためです。

フリーキャッシュフローの計算式は「FCF=税引前営業利益×(1 - 税率)+減価償却費-投資-運転資本の差分」です。

M&Aの際は、フリーキャッシュフローを高く維持することで事業価値を高めることができます。最大化を図るためには、売掛金の早期回収や設備投資資金の見直しなどが重要になります。

また、簡易的な計算方法として、「営業活動によるキャッシュフロー - 投資活動によるキャッシュフロー」がありますが、DCF法の評価においては適切ではありません。

事業価値の計算結果が正しいものではなくなってしまうため、目安として計算する時以外は正しい計算式を利用するほうがよいでしょう。

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3. DCF法による割引率の目安

DCF法による割引率の目安

割引率とは、フリーキャッシュフローを現在価値に換算するための割合です。DCF法で事業価値を算出する際に一番重要になる要素です。

通常、割引率の算出はWACC(加重平均資本コスト)の考え方を用いるのですが、非常に複雑な計算式であるため、手軽に事業価値を算出したい場合は割引率の目安を用いる方法も有効です。

下表は割引率の目安を一覧表にしたものです。よく分からないという場合は、一般的な非上場企業の割引率である4~7%を用いるのが無難です。
 

割引率 考え方
1~2% リスクがない時に使用する割引率
リスクゼロという状況はありえないため、1~2%の適用が一般的
4~7% M&Aにおいて最も一般的な割引率
TOPIX(東証株価指数)の平均的な期待収益率は6%前後
20~35% 事業成長が軌道にのり、上場直前の企業評価に適切な割引率
50%以上 非上場のベンチャー企業の平均的な割引率

DCF法の割引率を求めるには

M&Aを本格的に検討する前の段階であれば、DCF法の割引率は目安を用いた簡易的な計算でも十分ですが、実際に交渉フェーズに進むとなると、M&A交渉相手に納得してもらうために明確な基準を設けたうえで割引率を求める必要があります。

DCF法の割引率は、WACC(加重平均資本コスト)を用いるのが一般的です。WACCは、負債資本コストと株主資本コストを加重平均して算出します。

【割引率の計算式】

  • A = 有利子負債額 ÷ (有利子負債額 + 株式時価総額) × 負債資本コスト × (1 - 実効税率)
  • B = 株主資本時価 ÷ (有利子負債額 + 株式時価総額) × 株主資本コスト
  • 割引率 = A + B

上記の計算式であれば、目安の割引率よりも精度の高い値を算出することができます。計算式の難度は跳ね上がりますが、それぞれの値の意味を理解するとわかりやすくなります。それぞれの値の意味は以下のようになっています。
  • 有利子負債額・・・時価評価した有利子負債の残高
  • 株式時価総額・・・株式の総額(発行株数×株価)
  • 実効税率・・・法人の所得金額にかかる税率の合計値
  • 負債資本コスト・・・借入金や社債など、債権者より調達した負債に対するコスト
  • 株主資本コスト・・・株式を発行して調達する資金にかかるコスト

割引率の求める際の留意点

DCF法における評価方法は、割引率の計算を誤ると算出される事業価値が大きく変動してしまいます。時価純資産法などの簡便な評価方法とは異なり、非常に難解な計算式になっています。

DCF法で正しい計算結果を得るためには、確かな計算式と値を使用する必要があります。計算式だけではなく、それぞれの値に対する理解に必要なってくるでしょう。

DCF法や割引率の計算に不安のある場合は、M&A仲介会社に相談することをおすすめします。M&A仲介会社はM&A仲介に特化した専門家なので、事業価値の計算においても安心して任せることができます。

DCF法を用いたM&Aでおすすめの仲介会社

DCF法は適正な価値を算出しやすい方法ですが、DCF法や割引率の計算式は非常に難解です。正確な価値を算出したい方や難しい印象を受けた方は、ぜひM&A総合研究所にご相談ください。

M&A総合研究所は、M&A仲介の豊富な実績があるM&A仲介会社です。M&A経験豊富なアドバイザーにより、DCF法を用いた適切な計算により事業価値の最大化を図ります。

また、同時にDCF法以外の計算方法も比較検討します。DCF法とは異なる特徴やメリットを持つ計算方法があるので、事業の規模や業種によってはDCF法以外の計算方法が最適になることもあります。

最善のM&Aプランを模索するために、常に複数のパターンを考慮しながら事業価値の計算を行い、M&A成約に向けて進行します。

M&A仲介の料金体系は完全成功報酬制を採用しています。着手金や中間金などは発生しないので、M&Aが成約するまで仲介手数料をお支払いいただくことはありません。

無料相談は24時間対応しております。DCF法やM&Aに関してお悩みの際は、お気軽にM&A総合研究所までご連絡ください。

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4. DCF法(ディスカウント・キャッシュ・フロー)とNPV法(正味現在価値)との違い

DCF法(ディスカウント・キャッシュ・フロー)とNPV法(正味現在価値)との違い

ここまでDCF法の計算式について述べましたが、DCF法にはほかにもさまざまな考え方が存在しています。NPV・APV・EVA・IRRR・PIなどの計算方法が存在しており、何を目的に計算するかで適切な計算方法が変わります。

NPV法とは、投資対象事業が最終的に利益を生み出せるかどうかを数値化する方法であり、買収側の投資判断の指標として活用することができるので、M&Aにおいても多用されています。

この章では、NPV法(正味現在価値)の計算式や利用する目的や、DCF法との違いについて解説します。

NPV法とは

NPV法(正味現在価値)とは、投資により生み出せる利益を示す指標です。事業のフリーキャッシュフローの現在価値と初期投資額を比較することで、投資リスクを判断するために利用されます。

そのため、M&Aにおいては売却側ではなく買収側が利用する計算方法となっています。M&A以外にも、不動産や株式投資などの幅広い分野で利用されています。

単一の投資案件を判断するときに利用することもできますが、複数の投資案件を比較検討する際にも重宝します。差算出される値が大きいほうが収益性が高いという見込みのもと、最終的な投資判断をすることがあります。

NPV法の計算式

NPV法は、投資で将来発生するキャッシュフローの現在価値(PV)から投資額を差し引くことで計算します。

計算の順序としてはキュッシュフローの現在価値を求めてから、事業の投資額を差し引きます。投資額とは、M&AにおいてはM&A対象事業の取得費用(アドバイザリー費用込み)が該当します。

【NPV法の計算式】

  • PV(現在価値) = 将来受け取る金額(n年後に受け取る現金) ÷ (1 + 割引率)^n年後
  • NPV(正味現在価値) = PV - 投資額

上記の計算式で算出されたNPVの値が大きいほど高い収益性が見込める投資案件であることを意味しています。収益性が高ければ投資リスクが低い案件という判断を下すことができます。

ただし、割引率などは不変ではないため、数年後も同じ数値を示すとは限りません。現在の計算で得られた指標が何年後も正しいものとは限らないため、その都度計算しなおす必要があります。

NPV法を利用する目的

NPV法を利用する目的は、投資判断するためです。投資判断の指標となるポイントは、算出された値の正負です。

前述の計算式で算出された値がプラスならば、将来的に投資額を上回る利益を生み出せる見込みが高いことを意味しています。

逆に、算出された値がマイナスならば資金回収の見込みが低いことを意味するので、投資リスクが高いため、投資するべきではないという判断をすることができます。

NPV法はM&Aにおける買収判断にも活用することができます。複数の買収案件を検討する場合は、NPV法により比較検討することで一つの指標を得ることができます。

ただし、NPVの値がマイナスであっても投資すべきではないと言い切ることはできません。変化の激しい現代社会において、ライバル他社との競争に勝ち抜くためには、赤字覚悟で早期参入しなくてはならないこともあります。

例えば、新規市場の開拓においてはマイナスを示すことがほとんどです。この時リスクを嫌って参入が遅れると、NPVがプラスになる頃にはライバル他社の参入によるシェアの奪い合いが激化している状態になっている可能性が高いです。

現時点の評価がマイナスでもプラスに転じる可能性もあるため、ケース次第では投資したほうがよいという結果になることもあります。

DCF法とNPV法の違い

NPV法はDCF法のうちの一つの計算方法のことです。どちらも将来的な価値を現在価値として評価する方法ですが、それぞれに適切な利用場面があります。

NPV法は投資判断の指標を計算するための方法であり、DCF法は事業価値を算出する方法です。M&Aの場面においては、買収側の買収判断の際にNPV法を用い、M&A交渉の土台となる事業価値を算出する際はDCF法を用います。

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5. まとめ

まとめ

DCF法の計算式や割引率、NPV法との違いについて解説しました。DCF法はキャッシュフローの現在価値を算出することができるため、ほかの評価方法とは異なる計算結果が得られます。

その一方で、DCF法の計算式が複雑であるというデメリットもあります。割引率などを誤ると計算結果が大きく変わってしまうため、DCF法の計算はM&Aの専門家に任せてしまうのも有効です。

【DCF法まとめ】

  • DCF法とは将来的な収益を事業価値とする計算方法
  • 時価純資産法とは時価評価した資産から負債を差し引いた額を事業価値とする計算方法
  • DCF法のメリットとは主観的な評価を行える柔軟性の高さ
  • DCF法のデメリットとは客観性に乏しく双方の合意が得られにくい

【DCF法の計算式】
  • DCF法における事業価値 = フリーキャッシュフロー ÷ 割引率
  • FCF = 税引前営業利益 × (1 - 税率) + 減価償却費 - 投資 - 運転資本の差分
  • 割引率 = 有利子負債額 ÷ (有利子負債額 + 株式時価総額) × 負債資本コスト × (1 - 実効税率) + 株主資本時価 ÷ (有利子負債額 + 株式時価総額) × 株主資本コスト

【NPV法まとめ】
  • NPV法(正味現在価値)とは投資により生み出せる利益を示す指標
  • PV(現在価値) = 将来受け取る金額(n年後に受け取る現金) ÷ (1 + 割引率)^n年後
  • NPV(正味現在価値) = PV - 投資額

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