2020年05月12日公開
2021年02月04日更新
50代の早期リタイアに必要な貯金は○千万円?【55歳/56歳/57歳】
昨今は、50代のうち55歳・56歳・57歳あたりで、独身でも家族がいても、定年退職を待たずに早期リタイア(早期退職)をする人が増えてきました。55歳・56歳・57歳の早期リタイア(早期退職)に必要な資金や後悔談などを紹介します。
目次
1. 50代が早期リタイアする理由
50代といえば、まだまだ働き盛りでバリバリ仕事をこなせる年代ですが、55歳・56歳・57歳と定年が近づくにつれて、早期リタイアを考える人の割合も高くなっています。
早期リタイア(早期退職)とは
早期リタイア(早期退職)とは、定年より早く退職することです。定年については、「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」(高年齢者雇用安定法)の改正により、2021(令和3)年4月からは定年70歳時代が訪れることでも話題になっています。
高年齢者雇用安定法の改正内容は、あくまでも企業努力とする内容であるため、希望者の全てが70歳まで雇用されることを保証するものではありませんが、就業年数や機会の増加につながるのは確かです。
このような流れの中でも、55歳・56歳・57歳で早期リタイア(早期退職)し、自由な暮らしを送りたいと考える人が増えています。
50代が定年を前にして早期リタイア(早期退職)する理由
50代の早期リタイア(早期退職)で共通する理由は、「仕事からの解放による自由な暮らし」となっています。55歳・56歳・57歳と定年を目前にしている状況でも、少しでも早く自由に暮らしたいと考える人が多いでしょう。
その後の暮らしはさまざまで、家族と過ごす時間を増やしたり、趣味の時間にしたりと、これまで仕事に費やしていた時間を、自分や家族のために使いたいと考えることで早期リタイアを実践しています。
2. 50代の早期リタイアに必要な貯金・資金
50代で早期リタイアする場合、退職後や老後を生き抜くだけの貯金・資金が必要です。55歳・56歳・57歳の早期リタイアで実際に必要になる貯金・資金について見ていきましょう。
55歳・56歳・57歳では必要な貯金額は変わる?
早期リタイアにおいては、年齢が1歳変わるだけでも必要な貯金・資金は大きく変動します。主に影響を及ぼすのは、退職金と年金です。
退職金は、勤続年数に比例して積み立てされていく仕組みになっています。勤続年数20年を境に退職所得控除措置が適用されることになるため、55歳・56歳・57歳あたりの1年の違いは資金に大きく影響するでしょう。
一方、年金は受給金額で大きな違いが生じます。一般的なサラリーマンは厚生年金と国民年金の2階建ての年金となっており、通常であれば定年まで2階建ての積み立てを続けます。
しかし、早期リタイアをした場合は国民年金だけの1階建てとなるため、将来、受け取れる年金の受給金額が目減りしてしまい、必要な資金が多くなってしまうかもしれません。
このように、将来への積み立てはさまざまな形で行われています。早期リタイアはこれらを途中で切り上げてしまうことを意味するものです。したがって、55歳・56歳・57歳での必要な貯金・資金にも、大きな影響を及ぼします。
55歳・56歳・57歳が早期リタイアをするおすすめのタイミング
55歳・56歳・57歳は、早期リタイア年齢が1年変わるだけでも必要な資金に大きな違いがあります。早期リタイア後に資金不足に悩まされないためにも、早期リタイアするタイミングに注意が必要です。
【55歳・56歳・57歳が早期リタイアをするおすすめのタイミング】
- 貯蓄額・投資利益が目標を超えたとき
- 早期割増退職が募集されたとき
①貯蓄額・投資利益が目標を超えたとき
早期リタイアするならば、資金的な問題をクリアしなければなりません。早期リタイアのプランは、「貯蓄・資金を元手に生活する」「貯蓄・資金を元手に投資を行って不労所得で生活する」の2つに分けられます。
50代より若い年代の早期リタイアは貯蓄・資金が不十分なことが多いため、ほぼ投資が必須ですが、55歳・56歳・57歳の場合は貯蓄・資金が十分であることが多いため、そのまま現金預金で生活している人も少なくありません。
自分が目指す生活を決めたうえで目標の資金・投資利益額を設定しておけば、到達した際に早期リタイアの1つの目安にできます。
②早期割増退職が募集されたとき
早期割増退職とは、希望退職者を募って早期退職してもらう制度です。企業の整理解雇を回避するために実施されており、多くの場合は退職金の上乗せや再就職のあっせんなどのサポートがつけられます。
55歳・56歳・57歳前後は対象にされることが多いので、勤務先の企業が実施する際は、現在の貯蓄・資金を考慮したうえで応募するとよいでしょう。
応募によって希望退職が認められると、通常よりも多額の退職金を受け取れます。早期リタイアにおいて、退職金は資金運用を支える大きな要素です。資金的に余裕を生むためにも、早期割増退職のタイミングを狙えるとよいでしょう。
また、資金以外の利点として、企業の募集に対して応じる形ですので円満退職も実現できます。
50代の早期リタイアに必要な貯金額はズバリ○千万円!
ここまで50代の早期リタイアのタイミングや退職金について触れてきましたが、具体的に必要となる貯金・資金はいくらになるのでしょうか。
早期リタイアに必要な資金はさまざまな要素が影響するため、ここでは4つの基準を設けたうえで55歳・56歳・57歳別に必要な資金をまとめます。
【50代の早期リタイアに必要な資金算出の基準】
- 総務省の家計調査報告「独身世帯の年間平均支出289万円」
- 年数は早期リタイアから30年間
- 一般的なサラリーマンの退職金
- 一般的なサラリーマンの年金受給額
節制生活 (月額20万円) |
ゆとりある生活 (月額30万円) |
余裕ある生活 (月額35万円) |
|
---|---|---|---|
55歳 | 4,000万円 | 7,600万円 | 9,400万円 |
56歳 | 3,500万円 | 7,100万円 | 8,800万円 |
57歳 | 3,200万円 | 6,700万円 | 8,100万円 |
55歳・56歳・57歳の早期リタイアで、必要な資金を一覧表にすると上記にようになります。もちろん退職金や年金受給額は人によってさまざまです。退職金や年金受給額に大きな違いがある場合、計算結果も全く変わってきます。
3. 50代独身者と既婚者では早期リタイアに必要な貯金額は変わる?
50代の早期リタイアは、独身者と既婚者という点でも、必要な資金に大きな違いがあります。ここでは、独身者と夫婦二人世帯で必要な貯金・資金額を比較しました。
50代独身者が早期リタイアに必要な貯金額
50代独身者の早期リタイアは、55歳・56歳・57歳のいずれにおいても8,000万円前後の資金があれば生活に困ることはないでしょう。
ただし、必要な貯金・資金は求める生活水準によって異なります。余裕のある生活を送りたい場合やお金のかかる趣味を継続する場合は、1億円以上の資金は確保しておきたいところです。
50代既婚者が早期リタイアに必要な貯金額
50代既婚者の早期リタイアは、独身者よりも必要な資金は多くなります。夫婦そろって年金を受け取れるから資金面で楽になると考える人もいるでしょう。
サラリーマンは厚生年金と国民年金の2階建て、専業主婦は国民年金の1階建てとなるため、夫婦それぞれが同額の年金を受け取れるケースはほとんどありません。
平均受給額は、厚生年金が145,000円、国民年金は56,000円となっています。合計すると年金受給額は約20万円です。
また、単純に月々の支出が増えるという要素もあります。月々の生活費を40万円と仮定すると、1億3,000万円前後の貯蓄・資金が必要です。
ただし、夫婦共働きの世帯であるなら条件は全く変わります。それぞれが厚生年金の平均受給額を受け取れると仮定すると、年金だけで約30万円を受け取れることになり、必要な貯蓄・資金は大幅に減少するでしょう。
節制生活を送るか、もしくはマイホーム持ちであるならば、月々の生活費を年金だけで賄うことも不可能ではありません。これまで蓄えた貯金・資金は、病気や事故などの備えに残しておけます。
4. 50代で早期リタイアした人が後悔していること
50代で早期リタイアに踏み切ったものの、想像していた生活と実際の生活の違いに違和感のある人も少なくありません。ここでは、50代の早期リタイアを実施した例から、資金を始めとしたさまざまな後悔の念を抱く人たちの声を紹介します。
【50代で早期リタイアした人が後悔していること】
- 時間を持て余す
- 趣味がない
- 貯金の消耗に不安
- 人と交流することがなくなった
- 家族ともっと話しておくべきだった
①時間を持て余す
50代の早期リタイアの後悔でよく見受けられるのは、「時間を持て余す」ことです。これまで大半の時間を仕事に費やしていたものの、早期リタイアで急にポッカリ時間が空いてしまったことで、することがなくなってしまいました。
特にこの傾向は、仕事をやめた後にしたいことがはっきりしていない人に多く見受けられます。55歳・56歳・57歳で早期リタイアした人も、暇だからという理由で再就職したり、フリーランスや契約社員で働く人がいたりするほどです。
②趣味がない
趣味がないことで時間を持て余してしまうのは、通常の定年退職でもよく見られる傾向です。50代の早期リタイアにおいても同様で、することがなくてだらだらとした生活を送ってしまう人も少なくありません。
③貯金の消耗に不安
早期リタイア計画当時の想定よりも、貯金・資金の消耗が激しいという後悔も、中には見られます。
早期リタイア後は労働収入がなくなってしまうので、基本的に貯金・資金を切り崩しながらの生活になり、毎月のように貯金・資金が減っていくことに不安や後悔を募らせる人も多いでしょう。
資金不足になる原因としては、生活費の支出が激しい、病気や事故の特別出費などが挙げられ、これら資金の問題を考慮できなかったことを後悔している人も少なくありません。
④人と交流することがなくなった
早期リタイアで仕事をやめたことによって、人と交流する機会がなくなってしまったというケースもあります。人とのコミュニケーションが苦手だから問題ないという人もいますが、全く会話をする機会がないというのも問題です。
こうした生活が続くと異常な孤独感を感じたり、認知症リスクが上がったりというデメリットがあります。早期リタイアは資金的な問題に気を取られがちですが、精神面にも注意が必要です。
⑤家族ともっと話しておくべきだった
50代の早期リタイアした人の後悔の中には、家族への相談をせずにほとんど独断で決めてしまったというものも見受けられます。
早期リタイアが計画的なもので、たとえ資金的な問題がないとしても、家族からすれば寝耳に水です。毎日、働いていた夫が突然、退職して毎日を自宅で過ごすとなれば家族間のトラブルも発生します。
中には、早期リタイア後は、自宅でのんびり過ごすつもりが家族に疎まれてしまったというケースもあるほどです。
5. 50代で早期リタイアする前にしておくべきこと
50代の早期リタイアは、失敗したらすぐに再就職というわけにもいきません。資金不足などに後悔しないためにも、準備しておくべきことの把握が大切です。
【50代で早期リタイアする前にしておくべきこと】
- 趣味を見つけておく
- リタイアした後の計画を立てる
- 貯金と投資のバランスを考える
- 近所づき合いや趣味のつき合いを作っておく
- 早期リタイアすることを家族に理解してもらう
①趣味を見つけておく
趣味を持たない人は仕事を生きがいとする傾向が強いので、早期リタイア後の生活で時間を持て余します。
現在、趣味を持っていない人は、55歳・56歳・57歳から始められる趣味を探しておくと、生きがいを見つけて楽しい早期リタイア生活を送れるでしょう。趣味の中にはお金がかかるものもあるので、貯金・資金を考慮したうえで探すことをおすすめします。
②リタイアした後の計画を立てる
早期リタイア後の健康面に関する対策も必要でしょう。一般的なサラリーマンは、毎日の勤務において一定の生活リズムを保っており、健康面において健全な状況です。
しかし、早期リタイアすると、生活リズムの乱れから体調を崩してしまう恐れもあります。最悪の場合は病気を患ってしまうこともあるので、早期リタイア後の生活リズムについて計画しておくことが大切です。
健康を保つためのウォーキングをしたり、スポーツジムに通ったりと、運動も並行できるものが好ましいでしょう。
③貯金と投資のバランスを考える
早期リタイア後の資金不足については、計画的な資金運用が求められます。50代の早期リタイアは、資金運用を行わず現金預金だけで生活する人も少なくありませんが、投資による利益や不労所得もあると、安定した資金形成が可能です。
ただし、全ての現金預金を投資に回すのは非常に危険な行為なので、最低限必要な生活資金と余裕のある投資資金に分類したうえで資金運用することをおすすめします。
④近所づき合いや趣味のつき合いを作っておく
独身者の早期リタイアの場合、人との交流機会は大幅に減ってしまうことが多いです。町内会のつき合いや気軽に飲みにいける友達がいると、孤独感を感じずに適度な気張らしができます。
また、趣味を見つけておくと、同じ趣味を持つ仲間との交流を持つことが可能です。積極的につき合いを作っておくと、第2の人生の生きがいになる可能性もあります。
⑤早期リタイアすることを家族に理解してもらう
50代の早期リタイアには、家族の理解が必須でしょう。仕事先の現状や、早期リタイア後の生活に関する計画を家族全員と共有することで、早期リタイアに関する理解を得ておくことが大切です。
特に子どものいる家庭では、今後も養育費がかかるケースもあるので、資金の面についても話し合いを進めておきましょう。
6. まとめ
定年より早くに仕事をやめる早期リタイア(早期退職)は、実践するうえでの最も大きな課題は資金です。50代になると貯蓄・資金も十分な額に到達していることが多く、55歳・56歳・57歳で早期リタイア(早期退職)を実践している方も増えてきました。
ただし、55歳・56歳・57歳と早期リタイア(早期退職)の時期が1年違うだけでも、必要な資金は大きく変わります。そして、早期リタイア(早期退職)は、年齢と資金を目安にしたうえで、計画的に実施すれば成功率が上がるでしょう。