2020年09月22日公開
2020年09月22日更新
飲食店の廃業手続きを徹底解説!廃業届の書き方、借金を残さない方法
飲食店の約7割が開業から3年以内に廃業するほど、飲食業界は競争が激しいことで有名です。経営を継続することができず、廃業を余儀なくされた場合は、廃業手続きや廃業届の提出が求められます。本記事では、飲食店の廃業手続きについて詳しく解説します。
1. 飲食店の廃業手続きを徹底解説
飲食店業界は、参入障壁が低く個人経営の小さい店などが毎年多数開店していますが、そのうち約7割が開業から3年以内に廃業しています。
また、社会の変化に伴い、飲食店数自体も減少傾向にあり、今後はますます飲食店の廃業数が増加することが予想されています。本章では、飲食店が廃業を決める理由や廃業手続きについて詳しく解説します。
飲食店が廃業を決める理由
飲食店経営者が、夢と希望をもって開業した飲食店を廃業させる背景には、さまざまな理由があります。そのなかでも、廃業の原因として多く挙げられる理由について解説します。
【飲食店が廃業を決める理由】
- 経営がうまくいかない
- 運転資金がなくなる
- 従業員が集まらない
- 経営戦略がなかった
- 味や接客の質が落ちて客離れが起きた
1.経営がうまくいかない
経営がうまくいかず、赤字となったり利益がないという状況に陥れば、飲食店を継続することが難しくなります。
飲食店の経営には、食材費・光熱費・店舗の家賃・人件費などさまざまな経費がかかりますが、売り上げが低く収益が上がらなければ、それらの経費を支払うことができなくなります。
それによって廃業を余儀なくされるケースも多く、飲食店廃業の大きな理由のひとつとなっています。
2.運転資金がなくなる
経営が悪化して赤字となったとしても、蓄えがあれば赤字部分を補てんして経営を続けることができます。また、蓄えがなかったとしても、銀行などから融資を受けるという選択肢もあります。
しかしながら、赤字が続くなどして蓄えが底をついたり、融資をこれ以上受けることができないという状況にに陥れば、運転資金がなくなって廃業せざるを得ないことになります。
運転資金がなくなる前に経営を健全化して収益を上げることが、廃業を避けるためには重要なポイントです。
3.従業員が集まらない
少子高齢化や労働人口の減少などに起因する人材不足は、社会的に大きな問題となっています。飲食店も例外ではなく、人材の確保が難しい状況が続いています。
たとえ収益性が高く健全な経営を行っている飲食店であっても、従業員が集まらなければ店を継続することができなくなり、廃業に追い込まれる可能性もあります。
従業員の確保には、賃金を上げるなどの労働条件の改善が求められますが、経営をひっ迫することにもなり、人件費などで赤字経営となれば最終的には廃業の危機に瀕することになります。
4.経営戦略がなかった
競争の激しい飲食店業界で生き残るためには経営戦略を立て、経営目的を達成することが重要です。
ターゲット顧客のニーズをキャッチし、ニーズに応えるためのメニュー改良や新メニューの開発、また、ライバル店との差別化や認知を高めるための広告宣伝など、さまざまな戦略を立てることができます。
戦略がない飲食店は、たとえおいしい料理と丁寧な接客があったとしても生き残ることができず、閉店や廃業に追い込まれる可能性もあります。
5.味や接客の質が落ちて客離れが起きた
味や接客の質は、飲食店の顧客満足度と直結しています。そのため、味や接客の質が落ちれば自然と客足も遠のき、結果的に収益を上げることができなくなって閉店や廃業を余儀なくされます。
味や接客の質は、料理人の技術や従業員の教育不足、食材の質の低下などさまざまな要因が考えられます。
人手不足や人件費・食材費の高騰などのように解決が難しい問題もありますが、収益性を維持するためには戦略や計画を立てて確実に実行していくことが重要です。
飲食店の廃業手続き
飲食店を廃業する際は、リース契約の清算や店舗の賃貸借契約の解約通知、従業員・取引先への廃業の通知、借入のある金融機関への報告・相談などさまざまな手続きが必要となります。
また、飲食店の開店時に開業届を提出したり、必要な許認可を取得した行政機関には、廃業時に廃業届などを提出しなければなりません。例えば、保健所には「廃業届」の提出と「飲食店営業許可証」の返納を行います。
深夜0時以降にお酒を提供している飲食店の場合には、警察署に「深夜酒類提供飲食店営業の廃止届」を提出します。
税務署には「個人事業の廃業届」や「給与支払事務所等の廃止届出書」、「所得税の青色申告の取りやめ届出書」など、飲食店の営業形態に合わせた届出の提出が求められます。
2. 飲食店の廃業届の書き方
廃業届は、飲食店が所在する地域を管轄している行政機関や自治体がフォーマットを提供している場合が多いので、必要な書類を自治体のホームページなどからダウンロードして記載することになります。
廃業届のフォーマットの内容は日本全国どこの自治体も概ね同じで、以下のような項目を記載することになります。
【飲食店の廃業届への記載事項】
- 届出者の住所・氏名
- 営業所の所在地・名称
- 廃業年月日
- 営業許可の番号および年月日
廃業届に営業許可証の添付が必要となる自治体もあるので、各自治体の様式に従って廃業届の記載および提出を行う必要があります。
また、多くの自治体では、飲食店の廃業から10日以内に廃業届を提出することが定められているので、事前によく確認しておきましょう。
3. 飲食店の廃業する際に借金を残さない方法
廃業時に借金が残れば、飲食店廃業後の生活に大きな影響を及ぼすことになるため、多くの飲食店経営者が借金を残さないように閉店したいと考えています。
では、どうすれば借金を残すことなく、飲食店を廃業することができるのでしょうか。本章では、飲食店の廃業時に借金を残さないためのポイントについて解説します。
【飲食店の廃業する際に借金を残さない方法】
- 余力があるうちに閉店
- 居抜き店舗の活用
- キャッシュフロー表を作成する
余力があるうちに閉店
賃貸物件で営業している場合、閉店・廃業する際には店舗の原状回復費や空家賃などのコストがかかります。
特に原状回復費は高額であり、原状回復の程度などは賃貸借契約によって異なりますが、一般的に坪単価3~5万円程度の工事費用がかかります。
そのため、閉店時に余力がなければ、たとえ借金がなかったとしても、原状回復費と空家賃を支払うために借金をしなければならないというケースもあります。
賃貸物件の場合は、賃貸借契約の内容をしっかり把握し、飲食店の閉店時にかかるコストを理解したうえで、余力を残した状態での廃業を決断することが重要です。
居抜き店舗の活用
居抜き物件の活用は、厨房設備や排気ダクトなどの高価な設備コストを削減できるだけではなく、飲食店の閉店時に借金を残さないという点でも経営者にとっては大きなメリットとなります。
例えば、次の借主が早く決まれば空家賃を削減することができ、家主との契約内容にもよりますが、内装設備をそのままにした居抜きの状態で明け渡すこともできるので、原状回復のための内装工事費を支払う必要もなくなります。
さらに、飲食店の設備などの造作一式を次の店主に譲渡することで、譲渡益を得ることができるケースもあります。
ただし、居抜き物件には内装やレイアウトなどに制限があったり、設備が古くて使えないなどのデメリットもあるので、居抜き物件での飲食店開業の際は慎重に検討を行う必要があります。
キャッシュフロー表を作成する
キャッシュフロー計算書とは、飲食店の経営によって得られた売上金とその売上金がどのような目的でいくら使用されたかを把握し、手元にいくら残るのかを算出するためのツールです。
キャッシュフロー計算書を毎月丁寧に作成することで、運転資金がどのくらい増えているのか、どのくらい減っているのかが一目瞭然になります。
運転資金が減ってきている状況に陥ってしまった場合は、毎月のキャッシュフロー計算書からいつ資金がショートするのかを予想することができ、事前に廃業や閉店の準備を進めることができます。
これにより、余力を残したまま廃業ができるので、借金を残すことなく廃業することが可能となります。
4. 飲食店の廃業に潜むデメリット
飲食店を廃業するにあたって、思いがけない費用がかかり、経営者にとって大きな負担となるケースもあります。
特に、賃貸物件での飲食店を営業している場合は廃業時の費用が高くなる傾向にあるため、賃貸借契約の内容をしっかり理解して必要経費を準備しておくことが円滑な廃業には重要です。
【飲食店の廃業に潜むデメリット】
- 空家賃の発生する可能性
- リース契約の違約金が発生する可能性
- 原状回復工事費用
1.空家賃の発生する可能性
物件の賃貸借契約書には、解約予告期間が定められているケースが一般的です。住居用の物件であれば1ヶ月のケースが多いですが、飲食店では一般的に6ヶ月の解約予告期間が設定されています。
つまり、飲食店の廃業を決意後も、貸主に解約を通知してから6ヶ月間は家賃を支払い続けなければならないということになります。
解約通知後すぐに飲食店を閉店した場合、飲食店での売り上げはゼロとなりますが、解約予告期間が終わるまでは家賃を支払う必要があり、これを空家賃といいます。
廃業を決意してもすぐには閉店せず、店舗を明け渡すための準備期間を見積もり、それまでは営業を続けることにより空家賃を防ぐことができます。
2.リース契約の違約金が発生する可能性
厨房機器や排気ダクトのような設備は高額であるため、初期費用を抑えるためにリースを選択することは開業にあたっては大きなメリットとなります。
しかし、リース契約は基本的に途中解約ができないことが多く、一般的には6年間が契約期間であるため、途中で廃業したとしても開業から6年間はリース費用を払い続けなければなりません。
また、途中解約ができる場合でもリースの残りの代金と同程度の違約金が発生する可能性があるので、注意が必要です。
3.原状回復工事費用
賃貸物件で営業していた飲食店を廃業するにあたっては、店舗の内装や厨房設備などを撤去して開業前の状態に戻して明け渡す必要があります。
この時にかかる工事費などを原状回復工事費用といい、スケルトンにするためにかかる工事費用の相場は、坪当たり3~5万円程度とされ、廃業費用のなかでも大きな割合を占めることになります。
ただし、居抜き物件はそのままで退去することができることが多いため、その場合は高額の原状回復費用がかかることはありません。
飲食店廃業時にどのような状態で物件を明け渡すかは賃貸借契約に記載されているので、廃業前に確認して原状回復費用を見積もっておく必要があります。
5. 飲食店を廃業する前にM&Aの検討がおすすめ
飲食店の廃業には思いがけない費用がかかったり、煩雑な廃業の手続きを行ったりと、経営者にとって大きな負担となります。
しかし、飲食店を廃業させずにM&Aにより売却すれば、店の経営状況や飲食店の種類にもよりますが、高い値段で売却することも可能となります。
M&A契約内容次第では、経営者が築き上げてきた店の味や内装も変わることなく営業が続けられることもあり、常連客や飲食店で働く従業員、取引先にとってもメリットとなります。
飲食店のM&Aでおすすめの仲介会社
飲食店を廃業せずにM&Aによる売却を検討する場合は、まず買い手となるオーナーを探さなければなりません。また、基本合意契約や表明保証のような専門的な知識も必要になります。
飲食店の営業を継続しながらM&Aを進めていくことは簡単なことではないため、M&A仲介会社などの専門家に依頼することが一般的です。
M&A総合研究所は、多くの飲食店M&Aの実績を有する仲介会社です。専門的な知識と豊富な経験を有するM&Aアドバイザーが担当につき、飲食店の買い手探しから完了までをしっかりサポートいたします。
料金体系は、着手金・中間金は無料の完全成功報酬制を採用しております。お電話またはメールによる無料相談は随時お受けしておりますので、飲食店を廃業するか、M&Aによる売却をするかでお悩みの経営者様は、M&A総合研究所までお気軽にご連絡ください。
6. まとめ
本記事では、飲食店の廃業理由や、廃業手続き、保健所に提出する廃業届に記載内容、飲食店の廃業時に借金を残さない方法、飲食店の廃業に潜むデメリットなどを解説してきました。
参入障壁が低く個人でも容易に店を経営することができるため、毎年多くの飲食店が開業している一方で、そのうちの約7割の飲食店が3年以内に廃業しています。
競争の激しい飲食店業界で生き残ることは難しく、廃業に追い込まれた場合は廃業手続きや廃業費用などがかかるため、経営者に大きな負担となっています。
廃業ではなくM&Aを実施すれば、店の味やノウハウ、従業員の雇用を守ることもできるので、廃業を決断する前にまずはM&A仲介会社などの専門家に相談してみることをおすすめします。
【飲食店が廃業を決める理由】
- 経営がうまくいかない
- 運転資金がなくなる
- 従業員が集まらない
- 経営戦略がなかった
- 味や接客の質が落ちて客離れが起きた
【飲食店の廃業届への記載事項】
- 届出者の住所・氏名
- 営業所の所在地・名称
- 廃業年月日
- 営業許可の番号および年月日
【飲食店の廃業する際に借金を残さない方法】
- 余力があるうちに閉店
- 居抜き店舗の活用
- キャッシュフロー表を作成する
【飲食店の廃業に潜むデメリット】
- 空家賃の発生する可能性
- リース契約の違約金が発生する可能性
- 原状回復工事費用