負ののれんとは?ライザップの事例から問題点や会計処理を解説!

M&Aで発生する可能性のある負ののれんについてまとめました。負ののれんの問題点として、消費税などの税務、特別損益としてのキャッシュフローと損益計算書との兼ね合い、償却方法やIFRSでの規定内容などについて解説しています。


目次

  1. 負ののれんとは
  2. 負ののれんが生じる理由
  3. 負ののれんの会計処理
  4. 負ののれんの税務上の扱いについて
  5. 負ののれんの消費税に扱いについて
  6. IFRS基準での負ののれんの扱いについて
  7. 負ののれんがもたらしたライザップの赤字事例とは
  8. ライザップの事例からもわかる負ののれんの問題点
  9. 負ののれんが発生しないようにする対策
  10. まとめ

1. 負ののれんとは

負ののれんとは

負ののれんは、M&Aの際に、対象企業の時価純資産額よりも低い価額で買収したときに生じます。そして、その差額が、負ののれんの金額です。

負ののれんがあるということは、時価純資産額より割安で取得できたことを意味しますが、同時に、買収対象企業が、会計上では見えない何かしらの問題点・リスクを抱えていることも意味します。

一般的な企業経営では想定しづらい取引ですが、これらの問題点を承知したうえでM&Aを実施するケースも存在するのです。

買収後の事業に影響をおよぼす可能性もあるうえ、通常ののれんとは異なる会計処理を求められます。したがって、負ののれんについて把握しておくことで、万全の体制でM&Aに臨めるでしょう。

通常ののれんと負ののれんの違い

通常ののれんは、時価純資産額より高い金額で買収したときに発生する差額です。つまり、買収対象の企業が高く評価された場合はのれん、安く評価された場合は負ののれんが発生します。

時価純資産額よりも高く評価される要因になるのは、企業が持つブランド力や技術・開発力、ノウハウなどの将来的な収益価値などです。

これらを有している企業は、買収後に純資産額以上の価値を生み出すと見なされ、その分が上乗せされた買収額となることから、その結果としてのれんが発生します。

【関連】M&Aにおけるのれんとは?事例を交えて償却・減損も詳しく解説!

2. 負ののれんが生じる理由

負ののれんが生じる理由

負ののれんは、時価純資産額から、マイナス要素相当の価値が差し引かれることで発生します。つまり、負ののれんは、買収後に収益価値を生み出すために、一定以上の資本を投じる必要があると見なされているということです。

それでは、どのような状況だと負ののれんが生じることになるのでしょうか。一般的に考えられる負ののれんの理由には、主に以下のようなものがあります。
 

  • 簿外債務
  • 訴訟リスク
  • 廃業・清算の回避

簿外債務

M&Aでは、デューデリジェンス(売却企業の調査)が実施されます。その際、貸借対照表には記載されていない偶発債務などの簿外債務が発覚することは珍しくありません。

簿外債務は、まさにマイナス要素そのものですから、簿外債務相当額が時価純資産額から差し引かれ、結果として負ののれんが生じるのです。なお、中小企業において発覚率が高い具体的な簿外債務としては、以下のようなものがあります。

  • 金融派生商品(デリバティブ)の含み損
  • 従業員の給与(残業代などの特別手当など)・退職金の未払い
  • 債務保証(外部の第三者の債務への連帯保証)

訴訟リスク

実際に損害賠償などの訴えを出されていて係争中であれば、それに敗訴したとき、会社は莫大な損害を被る恐れがあります。これは、まさしくマイナス要素です。

また、実際に係争中にはなっていなくても、外部との関係性において、何らかのトラブルに巻き込まれる可能性があるのであれば、その段階でもマイナス要素と見なされ、負ののれんが生じる可能性は十分にあります。

廃業・清算の回避

何らかの特殊な経営的事情により、廃業・清算せざるを得ないような会社であったとしても、技術力や知的財産、ブランド力などのいずれかを保持していれば、M&Aで買い手がつく可能性はあるものです。

廃業・清算では相応の出費が伴いますから、経営者としては、「何らかの特殊な経営的事情」がマイナス要素と見なされ、時価純資産額よりも安価な買収額であったとしても、M&Aでの売却を選択することは大いにあり得ます。

このような状況により、負ののれんが発生することも少なくありません。

【関連】負ののれんとは?発生原因と会計処理、税務を徹底解説【事例あり】

3. 負ののれんの会計処理

負ののれんの会計処理

負ののれんは、マイナス要素があると見なされることで発生するものですが、買収後に何かしらの放棄や支出を意味するものではないため、負債としては償却しません。この章では、負ののれんの会計処理について解説します。

負ののれんの償却

通常ののれんは20年以内の償却が定められていますが、負ののれんは一括で処理するという点が違いです。

負ののれんは、時価純資産額よりも割安で取得したことから、利益として判断されることになり、損益計算書では原則として特別利益に計上されます。特別利益は一括処理となるため、通常ののれんのように償却の必要性はありません。

特別利益とは

特別利益とは、通常の経済活動とは関わりのない、特例で発生した利益のことです。長い経済活動のなかで経常的に発生するものではなく、その期に限定した利益であることから、特別利益として一括処理が認められています。

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4. 負ののれんの税務上の扱いについて

負ののれんの税務上の扱いについて

負ののれんの税務上の扱いは、会計上のものとは異なります。税務上では、「差額負債調整勘定」として負債に計上され、5年間かけて償却することが定められているのです。

この際の会計基準は、日本会計基準とIFRS(国際会計基準)における違いはありません。税務上においては、どちらの会計基準を採用していても、同様の処理を行います。

【関連】M&Aの税務!株式譲渡・事業譲渡で税金は違う?税金対策はできる?

5. 負ののれんの消費税に扱いについて

負ののれんの消費税に扱いについて

M&Aの際に発生する消費税は、納めるのは売り手ですが、実際に負担するのは買い手です。クロージングの際に買い手が取得価額に消費税を加えた金銭を払い込み、後日、売り手が税務署に納めるという流れになります。

消費税は取得価額に準じた金額が発生することになるため、負ののれんが発生することにより、下がる価額に応じて納める消費税も減少するのは当然です。

【関連】事業承継の消費税に関して!個人事業主の場合はどうなる?

6. IFRS基準での負ののれんの扱いについて

IFRS基準での負ののれんの扱いについて

出典: https://pixabay.com/ja/

IFRS(International Financial Reporting Standards)は、国際会計基準という意味です。企業の会計基準を決める際に、日本の会計基準とIFRSのどちらかを選択できます。

IFRSを採用した場合の通常ののれんは、毎期ごとに時価評価を行い、価値が著しく下がった段階で賃借対照表上で減損処理を行うというものです。しかし、負ののれんについては、日本の会計基準とIFRSで全く違いはありません。特別利益として一括処理します。

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7. 負ののれんがもたらしたライザップの赤字事例とは

負ののれんがもたらしたライザップの赤字事例とは

負ののれんの代表的な事例に、ライザップの赤字事例があります。この章では、ライザップの事例から、負ののれんの問題点について見ていきましょう。

2019年度に発表された赤字による下方修正

芸能人を起用したインパクトのあるCM効果や、度重なるM&Aによって企業成長させ業績を伸ばしていたライザップですが、2019(平成31)年3月期の連結業績予想において、営業損益230億円の黒字から33億円の赤字という大幅な下方修正が行われました。

この背景にあるのは、「負ののれんによる特別利益のかさ上げ」です。業績の落ち込んでいる企業の割安な買収を繰り返していたライザップは、賃借対照表や損益計算書上は特別利益が計上されて、表上では黒字経営という状況を保っていました。

ライザップの営業利益中に負ののれんが占めていた割合

2019年の大幅な下方修正で、利益のうちの大半が負ののれんによる特別利益であることが判明し、各メディアでも大きく取り上げられ、世間を騒がすことになりました。

ライザップの意図的な利益のかさ増しという意見も多く見受けられますが、ライザップの負ののれんの会計処理は、会計基準に従って行われたものであり、不正行為ではありません。

ライザップに負ののれんが発生した原因

M&Aの際に負ののれんが発生するのは珍しいケースですが、ここまで大事になった背景には、ライザップのM&Aに対する積極的な姿勢があります。

ライザップは業績不振の企業の積極的な買収を続けており、本業と掛け離れた企業の買収も次々と行ってきました。

ライザップのキャッシュフローからわかる危険性

キャッシュフローとは、企業の収入や支出から、お金の流れを把握するための計算書です。キャッシュフローは、企業の活動状況や財務状況を把握するために活用されますが、難点は、キャッシュフローに負ののれんが計上されないことになります。

つまり、いくら特別利益を計上して損益計算書上では黒字経営だったとしても、キャッシュフローには反映されません。今回のライザップの事例は、損益計算書では黒字経営でも、キャッシュフローが順調とは限らないという典型例であることがわかります。

8. ライザップの事例からもわかる負ののれんの問題点

ライザップの事例からもわかる負ののれんの問題点

負ののれんが発生するM&Aは、買い手の経営資源を活用することで再建を目指すというものが一般的な流れです。しかし、再建後の収益価値を先に計上してしまっていることが、問題視されています。

M&Aの際に負ののれんは特別利益に一括計上されるため、その後の経営で再建がうまく行かなかった場合は、赤字に転落してしまうという仕組みです。

ライザップは、この負ののれんのM&Aを繰り返しており、深刻な状況に陥ってしまったことがわかります。

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9. 負ののれんが発生しないようにする対策

負ののれんが発生しないようにする対策

M&Aの際に発生する負ののれんを避けるためには、買収対象企業の適切な評価を行うことが必要です。この章では、負ののれんの対策を解説します。

【負ののれんが発生しないようにする対策】

  1. 買収価額の算定方法を見直す
  2. デューデリジェンスの徹底
  3. M&A・会計の専門家に相談する

①買収価額の算定方法を見直す

企業価値評価は、企業の業種や状況に合わせた手法を選択することで、適切な価値が算出可能です。裏を返せば、不相応な手法を選択してしまうと、正当な評価が行われずに不要の負ののれんが発生してしまうことになります。

負ののれんの発生が想定されるときは、適切な手法を選択しているか見直ししてみることも大切です。

②デューデリジェンスの徹底

デューデリジェンスは、売却企業の価値・リスクを調査するものです。賃借対照表や損益計算書に記載されていない簿外債務や、トラブルによる法務リスクなどを徹底的に調査することでマイナス要素を洗い出します。

負ののれんの発生を防ぐためのものではありませんが、事前に把握しておくことで負ののれんの対策を講じられるのです。

【関連】M&AでのDD(デューデリジェンス)の手続き方法!DD項目別に注意点も解説!

③M&A・会計の専門家に相談する

M&Aの際に負ののれんが発生することは、あまり多くはありません。しかし、それでも企業価値評価の見直しやデューデリジェンスの徹底は必要です。

また、賃借対照表や損益計算書を始めとした、財務状況の把握や通常ののれんとは異なる会計処理など、専門的な知識を必要とするため、負ののれんのことについてはM&A・会計の専門家に相談することをおすすめします。

M&Aのリスク回避や負ののれんのご相談はM&A総合研究所へ

M&Aのリスク回避や負ののれんのご相談はM&A総合研究所へ

出典: https://masouken.com/

負ののれんが発生するM&Aにおいては、のちの経営に影響が出る可能性があります。負ののれんのリスクを回避しながら、M&Aの成功と安定した事業を展開する相談先として、M&A総合研究所がおすすめです。

全国の中小企業のM&Aに数多く携わっているM&A総合研究所では、多様なケースのM&Aを実践してきた豊富な経験と知識を持つM&Aアドバイザーが多数、在籍しています。

M&A総合研究所では随時、無料相談を受けつけ中です。買収対象企業がリスクを抱えており、負ののれん発生が心配な際など、あるいは、M&Aに関する初期段階の確認など、どのような内容でも、お気軽にお問い合わせください。

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10. まとめ

まとめ

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負ののれんは、賃借対照表や損益計算書に特別利益として計上することで、経営・業績の実態が把握しづらくなる危険性があり、場合によっては深刻な状況に陥ってしまいます。

したがって、M&Aを検討する際には、負ののれんの発生にも注意しながら進めなければなりません。M&Aの成功をより高めるためにも、初期段階から専門家に相談してM&Aを進めることをおすすめします。

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