負ののれんとは?発生原因と会計処理、税務を徹底解説【事例あり】

M&Aで負ののれんが発生するということは、割安で企業の買収ができることを意味します。しかし、割安な買収の裏にはリスクの可能性があることも忘れてはなりません。本記事では、負ののれんの基本情報や負ののれん発生原因、発生事例などを解説します。


目次

  1. 負ののれんとは何か?
  2. 負ののれんの発生原因
  3. 負ののれんの会計処理・税務を解説
  4. 負ののれんが発生した事例を紹介
  5. まとめ

1. 負ののれんとは何か?

負ののれんとは何か?

M&Aや会社買収を実施する際に注意すべき項目のひとつに負ののれんがあります。M&A後の業績悪化の原因にもなり得る負ののれんとはどういうものなのでしょうか。

本章では、負ののれんと正ののれんとの違い、負ののれんの計算方法など、のれんについての基本的なことを詳しく解説します。

のれんとは

のれんとは、企業間のM&Aにおいて、買い手企業がある会社を買収する際に支払う金額(M&A価格)からその会社自体の評価額(純資産の時価)を差し引いた差額のことで、会計上の勘定科目のひとつです。

M&Aにおいては、売り手企業の純資産に付加価値がついた価格での売買が成立するケースが多いため、差額であるのれんはプラスになることが一般的です。

これを正ののれんといい、売り手企業の「ブランド的価値」や「見えない資産価値」と言い換えることができます。

負ののれんとは

負ののれんとは、M&A価格が売り手企業の純資産の時価よりも安い場合に発生するマイナスののれんのことです。

負ののれんが発生するということは、実際の価値よりも安い価格で買収できるということであるため、買い手企業にとってはメリットにもなり得ます。

負ののれんは、会計処理上の特別利益に計上されるため、実際に事業で利益を上げているわけではないにもかかわらず、業績がかさ上げされることになります。

正ののれんとの違い

負ののれんと正ののれんでは、M&Aを実施する際に実際の評価額よりも安く買収するのか、あるいは高く買収をするのかの違いがあります。

また、会計上の取扱いにも違いがあり、負ののれんは特別利益に該当し、M&Aが実施された事業年度に一括で計上します。

一方で、正ののれんは無形固定資産として計上します。日本会計基準によると、正ののれんは最大20年かけて減価償却を行うことができます。

負ののれんの計算式

では、負ののれんおよび正ののれんはどのような計算式で算出されるのでしょうか。ここでは、設例を用いて解説します。

【のれんの計算式】

  • のれん=M&A価格-(対象会社の資産-対象会社の負債)×取得持分比率

上記の計算式で算出されたのれんがプラスの場合には正ののれん、マイナスの場合には負ののれんとなります。

例えば、A社が10億円でB社の株式を80%取得する取引において、B社の資産が20億円、負債が5億円の場合、のれんは以下のようになります。
 
10億円-(20億円-5億円)×80%=-2億円

のれんがマイナスになることから、この場合は2億円の負ののれんが生じることが分かります。

日本会計基準では、負ののれんが生じると見込まれる場合は間違いや計算ミスがないよう、資産や負債を再確認して適切に行われているか見直すことが定められています。

【関連】M&Aにおけるのれんとは?事例を交えて償却・減損も詳しく解説!

2. 負ののれんの発生原因

負ののれんの発生原因

負ののれんが発生するということは、売り手企業は自社の純資産よりも安い評価額で会社を売却するということです。

純資産よりも安く売却するくらいなら、会社を廃業・清算して現金化した資産を株主に分配するなどしたほうが売り手企業にとってはメリットになります。

しかしながら、M&Aにおいて負ののれんは実際に発生しています。なぜ、売り手企業にとってメリットが少ないようにみえる負ののれんが発生するのでしょうか。ここでは、負ののれんの発生原因について詳しく解説します。

負ののれんはなぜ発生するか

負ののれんが発生する原因には、主に以下の4点を挙げることができます。それぞれの理由について詳しくみていきましょう。

【負ののれんの発生原因】

  1. 簿外債務がある
  2. 損害賠償を請求されるリスクがある
  3. 赤字経営である
  4. 経済合理性に反する経営者の強い想いがある

1.簿外債務がある

バランスシート(賃借対照表)に記載されていない債務のことを簿外債務といいます。簿外債務がデューデリジェンスなどにより判明した場合、売り手企業の評価額を下げることになります。

その結果として負ののれんが発生する場合もあり、主な簿外債務には、債務保証・未払い給与・退職給付引当金・賞与引当金などがあります。

【関連】簿外債務とは?見つけ方と対策を解説!事例5選!

2.損害賠償を請求されるリスクがある

将来的に損害賠償や慰謝料の支払いのような法務リスクを抱えている会社の買収は、負ののれんの原因のひとつとなります。

そのような法務リスクを抱える会社を買収して実際に損害賠償などを請求された際は、買い手企業に支払いの義務があります。

リスクを引き受ける代わりに売り手企業の評価およびM&A額が下がるため、負ののれんが生じやすくなります。

3.赤字経営である

赤字企業の買収は、買収後の買い手企業の健全な経営に影響を与えることになります。また、買収後に赤字事業の経営立て直しやリストラなどに費用がかかる場合もあります。

赤字企業の買収には大きなリスクがあるため、M&A額が純資産を下回る負ののれんの発生原因になります。

リスクがあるにもかかわらず赤字企業を買収する理由には、事買収後の業・販路の拡大やシナジー効果、節税効果などがあります。

4.経済合理性に反する経営者の強い想いがある

経済合理性とは、企業は投資に対して利益が上がるような行動をとることです。純資産を下回る評価額で会社を売却し負ののれんを発生させることは、売り手企業にとって損なことなので経済合理性に反しているといえます。

しかし、全ての経営者が経済合理性に沿った行動をとっているわけではありません。例えば、会社を廃業させて従業員を解雇したり、取引先との契約を解除するくらいなら、会社や経営者、株主が多少は損をしてでも従業員や取引先を守りたいという経営者もいます。

そのような場合には、負ののれんが発生すると分かっていながらも、低い評価額で会社を売却することになります。

このように、経営者の強い想いにより経済合理性に反する会社売却が行われ、負ののれんが発生するケースもあります。

負ののれんは何に影響するか

通常のM&Aではめったに発生しない負ののれんですが、買い手企業にどのような影響をもたらすのでしょうか。

負ののれんが買い手企業にもたらす影響について、ポジティブな影響とネガティブな影響に分けて解説します。

ポジティブな影響

負ののれんの発生するM&Aでは、お得に事業や販路の拡大やシナジー効果を得ることができたり、売り手企業がもつ事業の経験やノウハウ・ブランド力・従業員などを手に入れることができます。

また、赤字企業を買収した場合は買収後に赤字部分を損失として計上することになるため、それにより法人税を節税することができます。

ネガティブな影響

M&Aで負ののれんを発生させるような企業は、赤字経営などの大きな問題を抱えているケースが大半です。

買収後に赤字事業を再生することができなければ赤字が膨らみ、健全だった元の事業にも影響を与える可能性もあります。そのため、負ののれんは株主や従業員への不信感をもたらす原因となります。

負ののれんが発生したら何をすべきか

日本会計基準によると、負ののれんが発生した場合には、まず、対象企業の負債や資産などに間違いがないかなどを再度確認して計算し直します

資産や計算の見直しが会計基準に定められているのは、負ののれんの発生が経済合理性に反しているためです。

再計算の結果、負ののれんがあることが確定された場合は、特別な会計処理と税務処理が必要になります。会計処理および税務処理の方法や勘定科目などについては、次の章で詳しく解説します。

M&Aのリスク回避や負ののれんのご相談はM&A総合研究所へ

負ののれんが生じるような会社には、赤字経営や損害賠償請求のリスクなどの大きな問題を抱えているケースもあるため、M&A後の会社経営に大きな影響を与える可能性もあります。

M&Aのリスク回避や負ののれんのご相談はM&A総合研究所にご相談ください。M&A総合研究所には、負ののれんについて詳しい専門家が多数在籍しています。

M&Aの相手先企業の選定・紹介からM&A契約締結まで、経験豊富なアドバイザーがつき丁寧にサポートいたします。

無料相談は随時承っておりますので、お電話またはメールフォームよりまずはお気軽にご連絡ください。

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3. 負ののれんの会計処理・税務を解説

負ののれんの会計処理・税務を解説

企業間でのM&Aや会社買収において、負ののれんが生じた場合には会計処理および税務処理が必要となります。

本章では、それぞれの処理作業において、負ののれんがどのように取り扱われるのかを詳しく解説します。

負ののれんの会計処理方法

負ののれんは、会計処理上の特別利益として、M&Aが実施された事業年度に一括で計上されます。

実際にはM&Aの対価を支払っているにもかかわらず、なぜ会計上は利益が上がっているとみなされるのでしょうか

これは、負ののれんは経済合理性に反しており、経済合理性に基づく会計基準との間にゆがみが生じるためです。

買い手企業にとっては、M&Aを行うことはシナジー効果やノウハウの習得などのメリットがあり、売り手企業の純資産以上の価値があります。

一方で、売り手企業は実際の純資産よりも低い評価額で売却することに、経済合理性上のメリットはありません。純資産よりも売却額が安いのであれば、廃業または清算して資産を現金化したほうが得だからです。

しかしながら、M&Aにおいて負ののれんが発生することは珍しいことではなく、生じたゆがみを会計上に反映させるために負ののれんは特別利益として計上します。

負ののれんの償却期間

前述したように負ののれんは特別利益であるため、負ののれんに償却という概念は適用されません

そもそも償却とは、固定資産など取得にかかった費用を少しずつ分割して計上していくことです。負ののれんは利益であり資産ではないので、かかった費用を償却することはできません。

一方で、正ののれんは固定資産として計上されるので減価償却の対象となり、最大20年かけて償却することが可能です

税務会計上の負ののれん

税務上は、負ののれんや正ののれんという資産分類はありませんが、負ののれんは「差額負債調整勘定」という名目で益金として、正ののれんは「資産調整勘定」という名目で損金として取り扱われます。

法人税法により、のれんは5年間かけて均等償却するように定められています。例えば、負ののれんが1億円であった場合、M&Aを実施した事業年度から5年間は毎年2000万円を差額負債調整勘定として、益金に計上します。

負ののれんは益金として取り扱われるため、負ののれんが生じると益金が増え、法人税も増加することになります。

4. 負ののれんが発生した事例を紹介

負ののれんが発生した事例を紹介

経済合理性上は発生しないとされている負ののれんですが、上場企業のM&A案件でも発生した例があります。本章では、過去に発生した負ののれんの事例を紹介します。

【負ののれんが発生した事例】

  1. RIZAPの事例
  2. 三重銀行と第三銀行の経営統合
  3. 日本空港ビルデングによるTIATの連結後会社化

1.RIZAPの事例

RIZAPの事例

出典: https://www.rizap.jp/

RIZAPは、純資産が株価よりも低い会社を買収することで、急成長を遂げてきた会社です。2018年3月期には、収益約150億円のうちの30%近くを負ののれんによる特別利益が占めていました。

経営不振の会社を数多く買収してきたRIZAPの戦略は、赤字事業を黒字に転換させて経営を立て直すことであり、それが成功して初めてRIZAP全体の健全な経営が成り立つものでした。

しかしながら、全ての企業を黒字化させることは困難なことで、いくつかの事業において赤字が拡大することになり、結果的に2019年にはグループ全体での営業利益が赤字に転落しました。

RIZAPの事例は、負ののれんが引き起こした大きな問題として、多くのメディアでも取り上げられています。

【関連】負ののれんとは?ライザップの事例から問題点や会計処理を解説!

2.三重銀行と第三銀行の経営統合

三重銀行と第三銀行の経営統合

出典: https://www.33fg.co.jp/

2018年、三十三ファイナンシャルグループは、傘下の第三銀行と三重銀行を経営統合し、第三銀行を存続会社とする吸収合併を行うことを発表しました。三十三銀行として2021年5月から新しくスタートする予定です。

この経営統合により、親会社である三十三ファイナンシャルグループは、2019年3月期に負ののれん発生益として約463億円の特別利益を計上しています。

3.日本空港ビルデングによるTIATの連結子会社化

日本空港ビルデングによるTIATの連結子会社化

出典: https://www.tokyo-airport-bldg.co.jp/company/

2018年、日本空港ビルディングはTIATの第三者割当増資を引受けました。これにより、日本航空ビルディングの持分比率が51%となったため、連結子会社となりました。

この第三者割当増資の引受けにかかった費用は、TIATの純資産よりも安く、2019年3月期に約200億円の負ののれん発生益を計上しました。

5. まとめ

まとめ

本記事では、負ののれんについてやその発生原因、計算方法、会計処理方法、負ののれんの発生事例などを詳しく解説してきました。

経済合理性上は発生することがないとされている負ののれんですが、実際にM&Aによって発生しているケースもあります。

【負ののれんとは】

  • M&A価格が対象企業の純資産の時価よりも安い場合に発生するマイナスののれんのこと

【のれんの計算方法】
  • のれん=M&A価格-(対象会社の資産-対象会社の負債)×取得持分比率

【負ののれんの発生原因】
  1. 簿外債務がある
  2. 損害賠償を請求されるリスクがある
  3. 赤字経営である
  4. 経済合理性に反する経営者の強い想いがある

【負ののれんが発生した事例】
  1. RIZAPの事例
  2. 三重銀行と第三銀行の経営統合
  3. 日本空港ビルデングによるTIATの連結後会社化

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