簿外債務とは?見つけ方と対策を解説!事例5選!

簿外債務はM&A取引において問題になることが多く、簿外債務がM&Aに与える影響が大きくなり、多額の損失を被るケースもあります。本記事では、簿外債務とはどのようなものなのか、発生の原因や見つけ方、対策方法について解説します。


目次

  1. 簿外債務とは
  2. 簿外債務が発生する理由
  3. 簿外債務となる可能性のある主な物
  4. 簿外債務の見つけ方と対策
  5. 簿外債務により経営難に陥った会社事例5選
  6. 簿外債務対策におすすめはM&A仲介会社に相談すること
  7. まとめ

1. 簿外債務とは

簿外債務とは

貸借対照表に計上されない債務のことを簿外債務といい、偶発債務や退職給付債務・役員退職慰労引当金・賞与引当金などが該当します。

簿外債務の発生は、中小企業を中心に決して珍しいことではなく、全て悪質ということではないことは念頭に置く必要があります。

偶発債務について

偶発債務とは、簡単にいえば「現在は発生していない債務だが将来的に発生する可能性の高いもの、但し発生時期や金額は不確定な債務」の総称です。

偶発債務も簿外債務のひとつであり、主なものには債務保証や損害賠償義務などが該当します。

飛ばしについて

飛ばしとは、含み損のある有価証券などを簿価額で他社に売却したようにみせかけて、通期損益を多めに計上することをいい、決算書の見栄えをよくしようという意図で行われます。

これは簿外債務の仕組みを悪用したものであり、現在は金融証券取引法で禁止されています。

決算期到来前に、実態のない資産管理会社などへ当該資産を簿価額で売却し、その際同額以上での買い戻し特約を設定し決算期を跨いだら買い戻す、といった方法が代表的な手法です。

飛ばしは、実質的に抱えている債務を未計上にしているので、簿外債務にあたります。

2. 簿外債務が発生する理由

簿外債務が発生する理由

中小企業経営において、簿外債務が発生することは決して珍しいことではありませんが、なぜ簿外債務が発生するのでしょうか。この章では、簿外財務が発生する理由について解説します。

原因は税務会計方式にある

決算書作成にあたり、多くの中小企業が採用している「税務会計方式」という処理が、簿外債務の発生に大きく関わっています。

損金計上を最大化したい(所得を減らし税金納付額を減らしたい)企業側の思惑と、損金計上を最小化させたい(多くの税金納付をうけたい)税務署側の思惑の交錯が簿外債務発生の引き金になっています。

税務会計方式による簿外債務発生のメカニズム

企業側は納税額を減らすために、まだ実損が発生していない債務なども損金計上をしたいと考えます。一方で税務署側は、実際に損害負担の起きていないものを損金計上することは認めていません。

債務保証などがわかりやすい例ですが、保証を引き受けた時点では将来発生する連帯保証額は不明であり、そもそも保証履行の有無すら確定はしていないため、債務保証額を引当金として計上することを税務署は否認しています。これが簿外債務発生のメカニズムです。

このような状況下では、当該勘定を貸借対照表には計上せず、注記などの項を用いて偶発債務あるいは簿外債務などの記載をします。

しかし、企業側としては貸借対照表に計上できない簿外債務にあたるため、管理を疎かにしてしまうことも少なくなく、貸借対照表にも注記にも記載のない簿外債務をつくってしまうことも多いです。

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3. 簿外債務となる可能性のある主な物

簿外債務となる可能性のある主な物

簿外債務を発生させないためには、まずどのようなものが該当するのかを把握しておく必要があります。この章では、簿外債務になりうる代表的なものについて解説します。

【簿外債務となる可能性のある主な物】

  1. 賞与引当金
  2. 退職給付引当金
  3. 社会保険の未加入
  4. 回収が見込めない売掛金
  5. 買掛金の計上漏れ
  6. 未払いの残業代
  7. 金融派生商品の含み損
  8. 債務保証人(連帯保証人)
  9. 訴訟リスク
  10. リース債務

①賞与引当金

賞与制度がある企業では、従業員に「将来支払う予定の賞与」という負債を抱えており、それに伴い計上する引当金が賞与引当金です。

税法上、賞与引当金は損金算入が認められておらず、企業としては管理を疎かにしてしまう恐れがあるため、簿外債務となる可能性も高くなっています。

②退職給付引当金

退職金制度を導入している企業では、従業員に「将来支払う予定の退職金」という負債を抱えており、それに伴い計上する引当金が退職給付引当金です。

賞与引当金と同じく、退職給付引当金も損金算入は認めれられていないため、未計上になりやすい(簿外債務となりやすい)勘定です。

③社会保険の未加入

契約社員やパート社員、試用期間中の従業員などの社会保険未加入は、中小企業を中心に発生しやすいものです。

未加入が発覚した場合は2年間遡って保険料を払う必要がありますが、発覚までは基本的にはどこにも計上されないため、簿外債務になりやすい一つです。

④回収が見込めない売掛金

何年も同じ内容の売掛金を計上している場合、それは回収が見込めない債権となります。売掛金が回収できないということは売上高の過剰計上を意味しますが、決算書に顕在化されているわけではないので、当該金額が簿外債務となります。

貸倒引当金を積んでいるから簿外債務は発生しないというわけではないので、注意が必要です。

⑤買掛金の計上漏れ

買掛金は決算書の負債項目です。買掛金の計上漏れは負債の漏れと同意であり、つまり簿外債務ということになります。

また、買掛金のほか、未払金や未払費用の計上漏れなどにも、同様に簿外債務発生の原因になります。

⑥未払いの残業代

従前より日本国内では、賃金が支払われない時間外労働、いわゆるサービス残業が横行しています。これは表面化していない未払いの費用であり、言い換えればば簿外債務になります。

働き方改革の推進などにより徐々に是正はされてきているものの、未だ多くの現場ではサービス残業の払拭ができておらず、M&Aにおけるデューデリジェンスの際に簿外債務として判明することの多い事項でもあります。

⑦金融派生商品の含み損

為替予約や通貨オプション、通貨スワップといった金融派生商品(デリバティブ商品)は、決算日における時価評価を行い決算に反映させる必要があります。

しかしながら、商品のスキームが複雑で仕分けの取り扱いも簡単ではなく管理をしきれないことがあり、それが結果として簿外債務の発生につながるケースがあります。

特に、契約が長期のものにはついては簿外債務になる可能性が高く、金額も多額になるので注意が必要です。

⑧債務保証人(連帯保証人)

これは、企業が別の企業や個人の連帯保証人となっているケースが該当します。債務者である別企業・個人が債務履行をできていれば問題ありませんが、債務不履行に陥った場合は連帯保証人が債務履行する必要があります。

債務の肩代わりに備えて計上する引当金を債務保証損失引当金といいますが、決算書に計上されない場合が多い(連帯保証人である旨と保証金額を注記に記載する程度が多い)ため、簿外債務になる可能性が高いものです。

⑨訴訟リスク

何らかの事由で訴訟され敗訴とれば賠償請求を追う形になるので、訴訟のリスクが考えられる場合には係る引当金計上をする必要があります。

しかし、計上し忘れるケースが多く、簿外債務の発生につながりやすくなっています。

⑩リース債務

ファイナンスリース取引時に発生する債務がリース債務です。リース取引には、売買処理と賃貸借処理2つの仕訳方法がありますが、後者の賃貸借処理がなされる場合に簿外債務が発生する可能性が高まります。

リース取引は長いものだと数年の債務履行を追うため、リース債務は長期借入金の様相が強い勘定ですが、通期の支払リース料のみを費用計上する賃貸借処理の場合は、長期債務が決算書に表面化されません。そのため、簿外債務が認識されることがあります。

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4. 簿外債務の見つけ方と対策

簿外債務の見つけ方と対策

簿外債務はなるべく避けたいものではありますが、構造上発生確率を0%にするのは不可能です。

そのため、簿外債務の発生を防ぐ策や早期にみつける方法を知っておくことが大切です。この章では、簿外債務のみつけ方と対策について解説します。

簿外債務の見つけ方

前述した訴訟リスクや債務保証などに関連する簿外債務は、企業が意図しなくても発生してしまうことがあります。したがって、外部の専門家による調査などを定期的に行なっておくことが大切です。

会計事務所や会計監査人、M&A仲介会社などに定期的に調査を依頼しておけば、簿外債務の未然防止に取り組むことができます。

簿外債務の対策

簿外債務の見落としを防ぐために、M&Aの買い手企業はデューデリジェンスを徹底して行うことが重要です。

M&Aが実行されてから簿外債務が発覚すると買い手企業は大変な損失を被ることになるので、最適な業者を選んだうえでしっかりとデューデリジェンスに取り組む必要があります。

もし、M&A後に簿外債務を隠していたことがわかれば、買い手企業と売り手企業の関係は墜落してM&Aが失敗に終わってしまう恐れもあります。

まずは、交渉の段階で売り手企業が損失隠し(故意的な簿外債務の発生)をしない姿勢を持っているかどうかを確認し、またデューデリジェンスにしっかりと行って簿外債務の有無確認に取り組みましょう。

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5. 簿外債務により経営難に陥った会社事例5選

簿外債務により経営難に陥った会社事例5選

簿外債務により経営難に陥った企業は、これまでに数多くあります。この章では、簿外債務が企業に大きな影響を与えた5つの事例を紹介します。

①シャープによる簿外債務事例

2016年、台湾の鴻海精密工業が日系大手電器機器メーカーのシャープを買収しました。

鴻海精密工業の来日時に突如案件化した本M&Aですが、交渉段階でシャープは鴻海精密工業に対して約3500億円の偶発債務(簿外債務)があることを報告し、M&A実行が延期になりました。

退職金や契約違約金など、合計100以上もの項目が該当していたとされており、M&Aにおける簿外債務の影響度の大きさが伺える事例です。

②山一證券による簿外債務事例

かつて四大証券会社といわれていた山一証券は、投資家に一定の運用利回りを約束すると「利回り保証」行為と、山一証券が投資家の代わりに有価証券の資産運用を行う「売買一任勘定」を同時に行う違法取引で収益をあげていました。

しかし、バブル崩壊に伴う市場混乱で、多額の損失を被ります。その含み損の隠蔽のために、山一証券はペーパーカンパニーを複数設立し、当該資産の転売を繰り返す「飛ばし(簿外債務の悪用)」を行います。

関係各社はそれぞれ異なる決算日を設定し、各社の決算日到来に合わせて含み損のある資産の保有先を移すことで簿外債務をつくり、損失をごまかし続けたのです。結果として、簿外債務は約2600億円まで膨らみ、山一証券は倒産に追い込まれました。

③モード・ファムの簿外債務事例

2016年、婦人用バッグの製造・卸売業を展開するモード・ファムは、多額の簿外負債を抱えたまま自己破産しました。

大口売上債権の焦げ付きをきっかけに、大幅な資金繰りの悪化と業績の急落に歯止めがかからなくなり、モード・ファムは経営難に陥り、外部からの資金調達を行うためにモード・ファムは粉飾決算に手を染めてしまいます。

売上高や棚卸資産の過剰計上、また借入金の未記載といった粉飾を10年以上に渡り続け、売上高の2倍以上にあたる約35億円の簿外債務が積み上がり、最終的に債務不履行となり、自己破産申請に至りました。

④オリンパスによる簿外債務事例

2011年、オリンパスで損失隠蔽のための飛ばし(簿外債務)商品購入が行われていたことが明らかになり、当時の経営陣が逮捕される事件がありました。

ことの発端は従前から保有していたデリバティブ商品の損失であり、その損失を取り返すために含み損のある資産を一度簿価で売りオリンパスの帳簿から消し(簿外債務をつくり)、別のデリバティブ商品の運用益をあげようと考えました。

しかし再運用先でも赤字となり、それを補うためにまた別の飛ばしを実行する(別の簿外債務をつくる)という泥沼状態に陥り、10年以上も損失隠蔽を続けた結果、最終的に簿外債務は約1000億円にのぼりました。

⑤エンロンによる簿外債務事例

かつて、アメリカの一大企業であった総合エネルギー会社エンロンは、保有していた有価証券の値下がりによる損失を連結決算対象外の特定目的会社(SPC)に付け替えて含み損隠蔽を行うなどし、多額の簿外債務をつくっていました。

この事件はエンロン事件・エンロンショックと呼ばれており、エンロンに続いて様々な企業の粉飾決算・簿外債務が明らかににでたことで企業の倒産が相次ぎました。

これをきっかけに、簿外債務や飛ばしなど企業の不祥事に対する厳しい罰則を盛り込んだ、SOX法が制定されました。

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6. 簿外債務対策におすすめはM&A仲介会社に相談すること

簿外債務対策におすすめはM&A仲介会社に相談すること

M&Aを行う際は簿外債務に注意しておかなければ、買い手側は負債によって将来の事業運営に支障をきたす可能性があります。

また、売り手側にとっては売却価格を下げられたり場合によっては取引自体が中止になることもあります。

M&Aにおいて簿外債務対策は必須ですが、それには会計・税務に関する専門知識が不可欠です。M&Aをご検討中の際は、ぜひM&A総合研究所へご相談ください。

M&A総合研究所は、豊富な経験をもつM&Aアドバイザーや会計士・弁護士によるフルサポートのもと、M&Aの相談からクロージングまで高水準のサービスを提供しております。

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ご相談は無料でお受けしておりますので、M&Aをご検討の際はどうぞお気軽にご連絡ください。

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7. まとめ

まとめ

当記事では、貸借対照表には計上されない負債である簿外債務について、発生する理由や対策などを解説しました。

簿外債務全てが悪ということではありませんが、M&A取引において簿外債務は、交渉の円滑化や取引価額を左右する重要な要素になるので、売り手企業・買い手企業とも簿外債務対策を講じることが大切です。

【簿外債務と偶発債務】

  • 簿外債務:貸借対照表に計上されない債務のこと、偶発債務や退職給付債務・役員退職慰労引当金・賞与引当金などが該当する。
  • 偶発債務:現在は発生していないが将来的に発生する可能性の高い債務

【簿外債務となる可能性のある主な物】
  1. 賞与引当金
  2. 退職給付引当金
  3. 社会保険の未加入
  4. 回収が見込めない売掛金
  5. 買掛金の計上漏れ
  6. 未払いの残業代
  7. 金融派生商品の含み損
  8. 債務保証人(連帯保証人)
  9. 訴訟リスク
  10. リース債務

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