中小企業の廃業でも退職金は大丈夫?支給相場と受給条件を紹介

本記事では、中小企業が廃業する際の退職金について、全国の中小企業の退職金の支給相場や、廃業時に退職金を受給するための条件などを解説しています。そのほか、廃業を決めてしまう前にM&Aを検討すべき理由についても述べています。


目次

  1. 中小企業の廃業と退職金事情
  2. 中小企業が廃業した際の退職金の支給相場
  3. 中小企業が廃業した際の退職金の受給条件
  4. 中小企業が廃業した際の未支払金の請求
  5. 中小企業は廃業する前にM&A検討すべき理由
  6. 中小企業のM&A検討におすすめの仲介会社
  7. まとめ

1. 中小企業の廃業と退職金事情

中小企業の廃業と退職金事情

上場企業や大手企業では当たり前のように導入されている退職金制度ですが、中小企業においては未導入の会社も決して少なくはありません。

また、会社が廃業する際の退職金の取り扱いに関しては、受け取る側の従業員・役員自身がさまざまな制度や情報について把握しておくことが大切です。この章では、中小企業の廃業及び退職金事情について解説します。

中小企業とは

中小企業を定義する際に最も一般的に用いられるものは、中小企業基本法に定められている基準です。

同法では、下表の条件のうち資本金(出資金)もしくは、従業員数どちらか一方の基準を満たす企業を中小企業としています。

中小企業の企業数は日本全体の99%を優に超えており、また雇用も全体の7割以上を占めています。

【中小企業の定義】

業種 資本金または出資金 従業員数
製造業他 3億円以下 300人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
サービス業 5000万円以下 100人以下
小売業 5000万円以下 50人以下

【小規模企業の対義】
業種 従業員数
製造業他 20人以下
商業・サービス業 5人以下

廃業とは

会社あるいは事業を終わらせる(畳む)ことを廃業といいます。類似するものとして「休業」という言葉がありますが、こちらは廃業とは異なり会社あるいは事業を終わらせずに一旦「休む」ことを指します。

東京商工リサーチの「休廃業・解散企業」動向調査(2019年)によれば、同年に全国で休廃業・解散した企業は4万3348件でした。

休廃業・解散した企業の代表者の83.5%が60代以上であり、後継者不足や代表者の高齢化が休廃業・解散の大きな原因になっていると考えられます

また、2020年版中小企業白書によれば、廃業率は1996年以降増加傾向にあったものの、2010年に減少傾向に転じているとしています。

2018年度の廃業率3.5%は諸外国と比べて低位といえますが、開業率も同じく低位であり一概に日本の廃業率は他国より優れているとは言い切れない状況です。

従業員への解雇予告手当

廃業をする場合は、各種法制度に基づき手続きを行い、従業員を解雇する必要があります。その一つとして挙げられるのが「企業は従業員に対して、事前に廃業する旨を伝えるよう努める」ようにされていることです。

企業が従業員を解雇する際は、少なくとも30日以上前に解雇をする旨を予告しなければならないと、労働基準法で定められています。

30日以上前の解雇予告をしなかった場合は30日に足りない日数分の賃金を支払う必要があり、この賃金のことを解雇予告手当と呼びます。

このようなことを知らない従業員も多いため、突然廃業するとなったときは解雇予告手当について必ず確認しておき、しかるべき対応をとるようにしましょう。

退職金と解雇予告手当の違い

退職金とは従業員が退職する際に勤めていた企業から支払われる手当を指しますが、定年退職以外だけでなく転職・辞職の際にも支払われ、会社が廃業する際にも就労規則などに規定があれば受け取ることが可能です。

解雇予告手当は、廃業などの理由で従業員を解雇する場合のみ発生する可能性のあるものであり、支払いが発生するタイミングや計算方法などは退職金とは異なります。

共通点としては、退職金・解雇通知手当のどちらも税法上は退職手当に該当するため、税金面の取り扱いは同じであることが挙げられます。

中小企業が廃業した際の退職金事情

中小企業にとっては退職金の制度設計に対するハードルが高いうえ、かつ廃業を余儀なくされる場合は退職金支払いは想定通りにいかないケースが多く、トラブルとなることも少なくありません。

そのような事態に備え、小規模企業共済・国民年金基金・個人型確定拠出年金などを活用し、退職金制度の代用とすることが多いです。

退職金倒産について

国の年金制度が破綻しかけていることが明らかになってから、日本ではさまざまな企業年金制度や退職金制度が注目を集めるようになり、よく騒がれるようになったのは「退職金倒産」です。

退職金倒産とは、退職金支払い能力の欠如が原因で廃業・倒産に至ることを指しますが、実際は退職金の問題のみで廃業・倒産する会社はあまり多くありません。

多くの場合は、根本的に業績不振に陥っていたり財務基盤が脆弱であったことが主要因であり、退職金制度は副次的な要因として絡んでくるにすぎません。

退職金制度のみが原因となり廃業・倒産に至るのは、退職金元本の運用を大きく失敗した際などです。

近年は国内市場で低金利状態が続いており、退職金に限らず保険商品や投資信託なども予定利回りの確保に苦しむ状況であるため、運用は慎重に行うことが肝要といえるでしょう。

【関連】【中小企業】後継者不足の原因は?不在割合は55%で廃業を防ぐ事業承継が急務

2. 中小企業が廃業した際の退職金の支給相場

中小企業が廃業した際の退職金の支給相場

中小企業が廃業した際においても退職金が受給できますが、実際に企業が廃業する際はどのくらい退職金を受給できるのでしょうか。

この章では、中小企業が設けている退職金制度の内容や、退職金の支給相場について解説します。

中小企業の退職金制度について

東京都産業労働局の「中小企業の賃金・退職金事情(2018年度版)」によると、国内の中小企業のうち、全体の71.3%が退職金制度を設けており、退職金制度を設けている企業のうち75.9%が「退職一時金のみ設けている」状況です。

退職一時金制度とは、従業員が退職をする際にあわせて、所定の方法で計算された金額を一気に支給する制度です。退職一時金制度と並列で考えられるのが、企業年金制度や退職金共済制度です。

企業年金制度・退職金共済制度も、従業員の退職時期に合わせて大きな金額を支給する点では退職一時金制度と変わりありませんが、企業年金制度の場合は従業員が在職している時期から当人の退職に向け、計画的に積み立てた資金を元に退職金を支給する点が特徴です。

また、退職金共済制度とは、従業員の退職金を計画的に準備できる国の退職金制度です。企業が退職金共済制度本部と退職金共済契約を結ぶことで、安全かつ計画的に退職金の運用・支払を行うことができます。

退職一時金制度は事前に積み立てをする必要はないため、従業員の在職中は退職金制度に資金繰りを圧迫されることはない代わりに、退職金支給時には多額の資金繰り負担を負うことになります。

企業年金制度や退職金共済制度の場合、従業員在職中も退職金積み立てをしなければならないので、事業運営上の資金繰りに影響はでますが、従業員退職に伴う退職金支払い時には積み立て金を支給するだけなのでその時点での資金繰りへの影響はありません。

企業年金制度にはさまざまな税制優遇制度もあるので、大手企業を中心に導入を進めています。中小企業は、退職金積み立てる資金的な余裕のある企業が少ないため、退職金制度がある中小企業の70%以上が退職一時金制度のみ設けているという結果になっています。

中小企業が廃業した際の退職金の支給相場

東京都産業労働局の調査「中小企業の賃金・退職金事情(2018年度版)」によれば、中小企業の廃業による退職は会社都合退職に該当します。

下表は、自己都合退職時と会社都合退職時の退職金支給相場です。最終学歴と勤務年数によって退職金支給相場は大きく異なりますが、定年まで勤務した場合の支給額(会社都合退職)は1100~1200万円となっています。

【中小企業が廃業した際の退職金の支給相場】

学歴 勤続年数(年) 自己都合退職(万円) 会社都合退職(万円)
高卒 10 90 123
20 280 344
30 578 678
定年 - 1127
高専・短大卒 10 106 137
20 322 377
30 671 749
定年 - 1107
大卒 10 122 157
20 373 436
30 785 852
定年 - 1203


なお、退職金一時金制度のみを導入している企業の退職金支給相場は以下のようになります。上記と比べると支給額は若干下がり、定年まで勤めた際の退職金の支給額は1000万円前後となっています。

【中小企業が廃業した際の退職金の支給相場(退職一時金制度のみの場合)】
 
学歴 勤続年数(年) 自己都合退職(万円) 会社都合退職(万円)
高卒 10 81 109
20 245 303
30 504 600
定年 - 1025
高専・短大卒 10 92 120
20 271 326
30 549 644
定年 - 966
大卒 10 108 139
20 323 381
30 670 742
定年 - 1038

【関連】会社売却・M&Aの際の退職金と税金の算出方法!経営者、従業員で違う?

3. 中小企業が廃業した際の退職金の受給条件

中小企業が廃業した際の退職金の受給条件

中小企業が廃業しても退職金を受給することが可能であるとはいえ、必ずしも全員が退職金を受給できるというわけではなく、いくつかの条件を満たす必要があります。この章では、中小企業が廃業した際に退職金を受給するための必要な条件について解説します。

労働条件や就業規則に記載された退職金の条件

まず、会社に退職金制度や退職金支給基準が設けられているかどうかという点が、最も重要な条件です。

明確に条件が設けられているのであれば、たとえ企業が倒産しても退職金を受給する権利はありますが、経営者の裁量のみによる退職金支給が続いてきた企業などの場合、廃業をした時には退職金の受給が難しくなるリスクがあります。

社長や役員の退職金支給

従業員退職員と役員退職金は、制度設計や支払い金額、受給条件などが大きく異なることがあります。

特に、企業が廃業をする場合、経営者・役員はその責任を負わなければならないケースもあるため、従業員が退職金を受給できても社長や役員はできないということも考えられます。

対策としては、退職金制度を設計する際に廃業時のこともしっかりと盛り込んでおくことです。不要なトラブルを防ぐためにも、詳細な制度設計を心がけましょう。

4. 中小企業が廃業した際の未支払金の請求

中小企業が廃業した際の未支払金の請求

実際に企業が廃業する際、従業員は退職金受給のほかにもさまざまな権利を持っており、各種制度や法律に基づいて企業にそれらの権利を行使することができます。この章では、企業が廃業した際に請求できる各種権利について解説します。

未支払金の請求の正当性

企業が廃業する際、従業員は未払い賃金を受給する権利を有しており、これはほかの債権者に優先して受給できるとされています。

ただし、廃業時に選択する倒産手続によって請求可能な賃金額は異なり、また、廃業する企業に支払い能力が欠如している場合は未払い賃金の請求ができません。

有給休暇の請求が可能か?

事前に廃業することがわかっていて有給消化する期間が十分にある場合は、有給休暇の取得は可能です。有給休暇は従業員の権利であり、いくら廃業を控えている企業といえどその権利を犯すことはできません。

一方、急に廃業をすることになったケース、廃業日までに有給消化が不可能なケースは、その権利を行使することはできません

今の日本の法環境には有給休暇の買取りなどの制度もないので、この場合は有給休暇の請求は厳しいと考えられます。

ただし、企業独自に買取り制度などが設けられている場合もあるので、まずは制度確認を行うことが大切です。

破産した場合の対処法

会社が破産してしまった場合は、未払賃金立替制度という制度を利用することで、未払い賃金を受給することができます。

未払賃金立替制度とは、廃業する企業の代わりに国が未払い賃金を立て替える制度です。最大8割程度の回収が可能なので有効活用しましょう。

【関連】新型コロナの影響で中小企業の休廃業が増加!廃業件数と予測 【事例あり】

5. 中小企業は廃業する前にM&A検討すべき理由

中小企業は廃業する前にM&A検討すべき理由

東京商工リサーチの「休廃業・解散企業」動向調査(2019年)によると、2019年に全国で休廃業・解散及び倒産した企業の合計数は5万1731件であり、これは全企業358万9000社の1.4%にあたる数字です。

休廃業・解散等を選択する理由はさまざまであり、業績不振・後継者不足・連鎖倒産などが主たるものとして考えられますが、そのような状況に陥ったからといって選択肢が廃業や解散のみというわけではありません。

M&Aで他社の資本を受け入れる、合併・吸収されるといった方法で局面を打開することは十分可能です。この章では、廃業する前にM&Aを検討すべき理由について5つの観点から解説します。

【中小企業は廃業する前にM&A検討すべき理由】

  1. 従業員の雇用を守れる
  2. 会社を継続することが出来る
  3. 取引先や顧客に迷惑がかからない
  4. 後継者がいなくても大丈夫
  5. 売却益・譲渡益を獲得できる

1.従業員の雇用を守れる

廃業する前にM&Aを検討すべき大きな理由として挙げられるのは、従業員の雇用を守れることです。廃業をすれば従業員は仕事を失い、収入源を確保できないままの生活をしばらく送ることになるかもしれません。

廃業をすることによって、自分の仲間である従業員を路頭に迷わせてしまうことは、経営者にとって相当頭を悩ませるものです。一方、M&Aにより事業譲渡や株式譲渡を行えば、従業員の雇用を守ることができます

2.会社を継続することが出来る

廃業する前にM&Aを検討すべき理由の2つ目は、会社・事業を継続できるるということです。株主こそ代わるものの、株式譲渡であれば企業としての存続が可能です。

事業譲渡の場合は会社の看板は変わってしまいますが、それでも事業の継続は担保されます。廃業を選択してしまえば会社も事業もなくなるので、これまで積み上げてきた多くのものが失われてしまいます。

築き上げたノウハウや過去の蓄積を無駄にしないためにも、廃業ではなくM&Aを選択する意味は大きいといえるでしょう。

3.取引先や顧客に迷惑がかからない

廃業をすると、これまで取引先と結んでいた契約は全て白紙になるので、取引先は大きな損失を被むることになります。また、一般消費者も廃業以降は継続購買やアフターフォローなどは受けることができなくなります。

M&Aを行えば会社・事業が存続されるので従前同様のビジネスを続けることができ、取引先や顧客に対して大きな迷惑をかけることなく、会社・事業の再建を行うことが可能になります。

ただし、株式譲渡・事業譲渡などのM&A手法によって各種手続は異なり、なかには取引先と売買契約などの結び直しが必要になるものがあるので、注意が必要です。

4.後継者がいなくても大丈夫

日本の中小企業が抱える課題うち最も大きなものは後継者不足であり、経営者の親族や自社の役員・従業員に適切な後継者がみつからない企業は全国に多く存在します。

そのようななか、M&Aによって大手資本、同業他社などに株式を引き受けてもらい、事業を存続させる企業が増えています。

M&Aは親族外承継の代表的手法の一つであり、後継者不足や経営者の高齢化に悩んでいる場合は有効な解決手段になります。

5.売却益・譲渡益を獲得できる

M&Aをすることで、株式売却益あるいは事業売却益といった利益を得ることができます。企業の規模や事業内容、将来性によってもその金額は大きく異なりますが、一般的に中小企業の株式譲渡の場合、数千万~数億円単位の譲渡益を見込むことができます。

一方で、廃業を選択してしまうと、売却益や譲渡益のようなものは一切発生しません。事業面や雇用面だけでなく、資金面でもM&Aを選択する意義は大きいといえるでしょう。

【関連】事業承継で廃業を防ぐ!4つの承継先を徹底解説!

6. 中小企業のM&A検討におすすめの仲介会社

中小企業のM&A検討におすすめの仲介会社

廃業を考えている場合、決断する前に一度M&Aの可能性を検討することをおすすめします。M&Aに関するご相談は、ぜひM&A総合研究所へご連絡ください。

M&A総合研究所は、中小企業のM&Aを得意とするM&A仲介会社です。M&Aアドバイザー・公認会計士・弁護士の3名によるフルサポートを行っており、平均3ヶ月でのM&A成約を実現しています。

料金体系は完全成功報酬制を採用しているため、M&Aご成約まで費用は一切かかりません。業績不振・赤字企業であっても多くのM&Aが成立していますので、まずはお気軽に無料相談をご利用ください。

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7. まとめ

まとめ

出典: https://unsplash.com/

日本国内の廃業数は減少傾向に転じていますが、依然として国内全体の1.5%程度にあたる4~5万社が毎年廃業をしています。

企業が廃業しても退職金制度があれば、従業員は企業に対し退職金を請求できる権利があります。また、未払い賃金などの請求についてもさまざまな制度が整っているので、覚えておくといざという時に役立つでしょう。

企業にとっては廃業しても未払い賃金や退職金などの支払い義務があり、そのほかにも在庫処分などの費用もかかります。

企業存続・従業員雇用維持などの観点からもM&Aには多くのメリットがあるため、廃業の決断をする前に一度M&Aの実施を検討することをおすすめします。

【中小企業が廃業した際の退職金の支給相場】

学歴 勤続年数(年) 自己都合退職(万円) 会社都合退職(万円)
高卒 10 90 123
20 280 344
30 578 678
定年 - 1127
高専・短大卒 10 106 137
20 322 377
30 671 749
定年 - 1107
大卒 10 122 157
20 373 436
30 785 852
定年 - 1203

【中小企業が廃業した際の退職金や未払い賃金】
  • 労働条件や就業規則に記載されていれば退職金の受給は可能
  • 従業員は未払い賃金を受給する権利がある
  • 会社が破産した場合は未払賃金立替制度利用すれば8割程度受け取れる
【中小企業は廃業する前にM&A検討すべき理由】
  • 従業員の雇用を守れる
  • 会社を継続することが出来る
  • 取引先や顧客に迷惑がかからない
  • 後継者がいなくても大丈夫
  • 売却益・譲渡益を獲得できる

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