2020年09月29日公開
2020年09月29日更新
廃業(清算)よりもM&A、事業承継を!徹底比較で違いを分かりやすく解説
M&A・事業承継にはメリットが多いにもかかわらず、よく分からないなどの理由により廃業(清算)を選んでしまうケースも少なくありません。本記事では、廃業(清算)とM&A・事業承継の違いについて、メリット・デメリットを始め、費用や期間などさまざまな点から比較します。
目次
1. 廃業(清算)とは
廃業とは、会社や個人事業の営業を終了し、資産と負債を整理して会社や個人事業を消滅させることです。
会社の廃業は、具体的には解散手続きと清算手続きの総称だと理解することができます。解散手続きは清算手続きに移る前の段階であり、破産などで強制的に行われる強制解散と、株主総会の決議で任意に行われる任意解散とがあります。
清算では、資産と負債を整理することで資産を全て現金化して負債を弁済し、残った資産を株主に分配します。清算は資産超過の場合は通常清算、債務超過の場合は特別清算か破産手続きがとられます。
個人事業の廃業は手続きとしては廃業届を提出することですが、実際はそれに加えて、従業員の雇用や税金に関連した各種書類の提出、および資産と負債の整理などを行うことになります。
2. 廃業(清算)とM&A、事業承継の違いを徹底比較
会社や個人事業を消滅させる廃業(清算)と、存続させるM&A・事業承継は全く違う手続きなので、両者のメリット・デメリットを比較することが大切です。
この章では、廃業(清算)とM&A・事業承継について、それぞれのメリット・デメリット、および費用と期間などを比較します。
メリットとデメリット比較
まずは、廃業(清算)とM&A・事業承継それぞれのメリットとデメリットを比較します。
廃業(清算)とM&A、事業承継のメリット
廃業(清算)は会社や個人事業を消滅させるので、経営について今後悩まなくて済むという精神的なメリットがあります。
中小企業や個人事業の経営は厳しい状況の連続であることも多く、経営者は精神的に休まることがありません。さらに、もしつぶれてしまったら個人保証による借金が残るというプレッシャーもあります。
こういった精神的な重荷から解放されたいという理由で、会社や個人事業を廃業(清算)するのは全く悪いことではありません。
M&A・事業承継の場合は、会社や個人事業を存続させられるのがメリットとなります。存続できれば従業員の雇用を守ることができ、取引先や顧客との関係も維持されます。
また、M&Aでは売却益が得られるのも大きなメリットです。資金の獲得を主な目的として、M&Aを行う事例は実際に多くみられます。
【廃業(清算)のメリット】
- 経営について今後悩まなくて済む
- 個人保証のプレッシャーから解放される
【M&A・事業承継のメリット】
- 会社や個人事業を存続できる
- 従業員の雇用を維持できる
- 取引先や顧客との関係を維持できる
- 売却益を得られる
廃業(清算)とM&A、事業承継のデメリット
廃業(清算)すると会社や個人事業が消滅するので、従業員が雇用を失うとともに、取引先・顧客・地域社会との関係がなくなるのがデメリットだといえます。
さらに、廃業(清算)はM&Aに比べて売却益が得られない、または得られても額がM&Aの場合より少なくなる傾向があります。
M&A・事業承継のデメリットとしては、手間と費用がかかるにもかかわらず必ずしも成功するとは限らない点が挙げられます。多大なコストをかけた結果、納得いく売却先・承継先がみつからないことも決して少なくありません。
M&A・事業承継は経営者が交代する大きな出来事であるため、従業員や取引先から反発を受ける可能性があるのも注意しておきたい点です。
【廃業(清算)のデメリット】
- 従業員が雇用を失う
- 取引先との関係がなくなる
- 顧客や地域社会との関係がなくなる
- 売却益を得にくい
【M&A・事業承継のデメリット】
- 適切な承継先が見つかるとは限らない
- 費用や期間がかかる
- 従業員や取引先の反発を受けることがある
費用と期間で比較
廃業(清算)とM&A・事業承継を比較する際は、メリット・デメリットだけでなく、費用や期間を比較することも大切です。ここでは、廃業(清算)とM&A・事業承継それぞれについて、かかる費用と期間を解説します。
廃業(清算)とM&A、事業承継の費用
廃業(清算)に必要な費用は、登録免許税や官報公告、税理士などへの報酬、そして在庫・施設の処分や物件の原状回復費などです。なお、個人事業の場合は登録免許税や官報公告の必要はありません。
M&Aにかかる費用は、主にM&A仲介会社へ支払う手数料です。手数料体系は仲介会社によって違うため、初期相談の時点で手数料体系をしっかり確認しておく必要があります。また、M&Aでは売却益が生じるので、所得税や法人税の支払いも考慮しておく必要があります。
社員など親族でない人へ事業承継する場合は、株式の取得費用が大きな負担になります。社員による株式の取得費用は、金融機関などから借入れて調達するケースが一般的です。
親族へ贈与や相続で事業承継した場合は、贈与税や相続税についても計算にいれておかなくてはなりません。
【廃業(清算)の費用】
- 登録免許税約40,000円(法人の場合)
- 官報公告約40,000円(法人の場合)
- 税理士などへの報酬数十万円程度(法人の場合)
- その他施設の処分費用などの実費
【M&A・事業承継の費用】
- 仲介会社などへの手数料(M&Aの場合)
- 株式・資産の取得費用(事業承継の場合)
- 税金
- 株券印刷費などの諸経費
廃業(清算)とM&A、事業承継の期間
M&Aは売却先を探して交渉する期間がかかり、事業承継では後継者の教育期間などに時間がかかります。一方で廃業(清算)の場合は、清算手続きにかかる時間や株主や債権者の同意がうまく得られるかなどによって、かかる期間に幅がでます。
廃業(清算)の期間は、さらに会社の場合と個人事業の場合で分けて考える必要があります。会社の廃業(清算)は会社法に定められた手続きに従うため、個人事業の廃業(清算)よりも期間がかかる傾向があります。
会社法で廃業(清算)の公告は2か月以上とると定められているので、会社の廃業(清算)を2か月以内に済ませることは制度上できません。
また、資産が十分あって負債を全額弁済できるかどうかによっても、廃業(清算)にかかる期間は変わってきます。一般に、債務超過で特別清算や破産手続きにより廃業(清算)する場合は、期間が長くなる傾向があります。
【廃業(清算)にかかる期間】
- 清算手続きなどにより期間に幅がでる
- 株式会社は制度上最低2か月かかる
【M&A・事業承継にかかる期間】
- M&Aは3か月から1年程度
- 事業承継は教育期間も含めると数年程度
手続きの難しさで比較
廃業(清算)やM&A・事業承継の手続きは、経営の傍らで進めていかなくてはならないため、手続きの難しさというのも大事な比較要素となってきます。この節では、廃業(清算)とM&A・事業承継それぞれについて、手続きの難しさを解説します。
廃業(清算)の手続き
法人と個人事業主における廃業(清算)の手続きは、おおむね以下のようになります。法人の廃業(清算)手続きは、会社法に則って株主総会の開催・清算手続き・登記などを行うので、個人事業主の廃業(清算)より手続きが難しくなります。
個人事業主の場合は、廃業届を提出すれば廃業することができますが、そのほかに取引先や従業員への報告、資産と負債の整理などの手続きが必要になります。
【廃業(清算)の手続き(法人の場合)】
- 解散決議と清算人選出
- 解散登記と清算人登記
- 官報での解散公告
- 決算書類の作成
- 解散確定申告
- 清算手続き
- 決算報告書の承認
- 清算結了登記
【廃業(清算)の手続き(個人事業主の場合)】
- 廃業届等書類の提出
- 取引先への報告
- 従業員への解雇通知
- 資産と負債の整理
M&A、事業承継の手続き
M&Aの手続きは概要だけ記すと以下のようになり、手続きにかかる期間は短くて3か月程度、長くて1年程度で、選定・交渉がスムーズにいくかどうかで大きく変わってきます。
M&Aの場合は、株式譲渡か事業譲渡かで手続きの難しさが変わってくるという特徴があります。事業譲渡では事業資産を個別に売買しなければならないので、一般に株式譲渡よりも手続きが難しくなります。
親族への事業承継は、贈与や相続の手続きに加えて、ほかの親族とのトラブル回避や後継者教育などの手間もあるので、一概にM&Aより手続きが楽といえない面もあります。
【M&Aの手続き】
- 仲介会社との契約
- 買い手候補の選定・交渉
- デューデリジェンス
- 最終交渉・成約
- 統合プロセス
引退後の生活で比較
廃業(清算)またはM&A・事業承継すると、経営者は引退することになります。引退後の生活がどうなるか比較することは、廃業(清算)とM&A・事業承継どちらを選択するかにおいて重要です。ここでは、引退後の生活という面で、廃業(清算)とM&A・事業承継を比較します。
廃業(清算)の引退後
廃業(清算)すると会社や個人事業が消滅するので、引退後は経営に気をもむことなく安心して生活することができます。
一方で、仕事一筋で生きてきた経営者の方が引退すると、その後の生きがいを見失ってしまうといったケースもあるので注意が必要です。
引退後の生活資金については、廃業(清算)はM&A・事業譲渡より不利な場合が多いといえます。
理由としては、M&Aは赤字企業でも売却益が得られる可能性があるが、廃業(清算)では資産超過の場合しか売却益が得られない点が挙げられます。
また、廃業(清算)での資産売却はM&Aのような「のれん(営業権)」がつかず、価値を安く見積もられるのも不利な点といえるでしょう。
【廃業(清算)の引退後】
- 経営に気をもまず安心して生活できる
- 生活資金の面ではM&Aより不利
M&A、事業承継の引退後
M&A・事業承継の引退後は、経営から退くという点では安心して暮らせるものの、会社自体は存続するので、その後の会社の行く末が気になってしまうケースもあります。
引退後の生活資金の面においては、売却益が得られるM&Aのほうが廃業(清算)より有利だといえるでしょう。
【M&A・事業承継の引退後】
- 会社の存続が精神的負担になることもある
- 売却益を得られるM&Aは生活資金の面では有利
3. 廃業(清算)とM&A、事業承継の徹底比較
ここまで解説してきた、廃業(清算)とM&A・事業承継の比較を表にすると以下のようになります。
廃業(清算)とM&A・事業承継は、メリット・デメリットをさまざまな角度から検討したうえで、どちらがよいのかを判断することが重要です。
【廃業(清算)とM&A・事業承継の比較】
廃業(清算) | M&A・事業承継 | |
メリット | ・経営について今後悩まなくて済む ・個人保証のプレッシャーから解放される |
・会社や個人事業を存続できる ・従業員の雇用を維持できる ・取引先や顧客との関係を維持できる ・売却益を得られる |
デメリット | ・従業員が雇用を失う ・取引先との関係がなくなる ・顧客や地域社会との関係がなくなる ・売却益を得にくい |
・適切な承継先が見つかるとは限らない ・費用や期間がかかる ・従業員や取引先の反発を受けることがある |
費用 | ・登録免許税約40,000円(法人の場合) ・官報公告約40,000円(法人の場合) ・税理士などへの報酬数十万円程度(法人の場合) ・その他施設の処分費用などの実費 |
・仲介会社などへの手数料(M&Aの場合) ・株式・資産の取得費用(事業承継の場合) ・税金 ・株券印刷費などの諸経費 |
期間 | ・清算手続きなどにより期間に幅が出る ・株式会社は制度上最低2か月かかる |
・M&Aは3か月から1年程度 ・事業承継は教育期間も含めると数年程度 |
手続の難しさ | ・法人:解散手続きと清算手続き ・個人事業主:廃業届等の提出 ・法人の方が手続きが難しい |
・M&Aは事業譲渡の方が株式譲渡より手続きが難しい ・事業承継は親族間トラブルなどで手続きが手間取ることがある ・手続き自体は一般にM&Aの方が事業承継より難しい |
引退後の生活 | ・経営に気をもまず安心して生活できる ・生活資金の面ではM&Aより不利 |
・会社の存続が精神的負担になることもある ・売却益を得られるM&Aは生活資金の面では有利 |
4. 廃業(清算)よりもM&A、事業承継がおすすめ!
廃業(清算)とM&A・事業承継はそれぞれメリット・デメリットがありますが、全体としては会社を残すM&A・事業承継のほうがメリットが多いといえるでしょう。
特にM&Aであれば赤字企業でも売却益を得る可能性があり、黒字企業なら高値で売却してイグジットを果たすチャンスもあります。そのほか、雇用の確保や取引先・顧客との関係維持も、廃業(清算)にはない大きなメリットです。
中小企業や個人事業では、M&A・事業承継のことがよく分からないために、M&Aすべきケースで廃業(清算)してしまうことも少なくありません。
しかし、M&A・事業承継のメリットを理解しておくことが、全ての経営者・個人事業主にとって重要だといえるでしょう。
5. M&A、事業承継を検討する際におすすめの仲介会社
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6. まとめ
廃業(清算)とM&A・事業承継はそれぞれメリット・デメリットがあり、使う手法によってかかる費用や手間なども変わってきます。
全体としてはM&A・事業承継のメリットが多く、廃業(清算)する前に一度M&Aの可能性を検討してみることが、中小企業経営者や個人事業主にとって重要といえるでしょう。
【廃業(清算)とM&A・事業承継の比較】
廃業(清算) | M&A・事業承継 | |
メリット | ・経営について今後悩まなくて済む ・個人保証のプレッシャーから解放される |
・会社や個人事業を存続できる ・従業員の雇用を維持できる ・取引先や顧客との関係を維持できる ・売却益を得られる |
デメリット | ・従業員が雇用を失う ・取引先との関係がなくなる ・顧客や地域社会との関係がなくなる ・売却益を得にくい |
・適切な承継先が見つかるとは限らない ・費用や期間がかかる ・従業員や取引先の反発を受けることがある |
費用 | ・登録免許税約40,000円(法人の場合) ・官報公告約40,000円(法人の場合) ・税理士などへの報酬数十万円程度(法人の場合) ・その他施設の処分費用などの実費 |
・仲介会社などへの手数料(M&Aの場合) ・株式・資産の取得費用(事業承継の場合) ・税金 ・株券印刷費などの諸経費 |
期間 | ・清算手続きなどにより期間に幅が出る ・株式会社は制度上最低2か月かかる |
・M&Aは3か月から1年程度 ・事業承継は教育期間も含めると数年程度 |
手続の難しさ | ・法人:解散手続きと清算手続き ・個人事業主:廃業届等の提出 ・法人の方が手続きが難しい |
・M&Aは事業譲渡の方が株式譲渡より手続きが難しい ・事業承継は親族間トラブルなどで手続きが手間取ることがある ・手続き自体は一般にM&Aの方が事業承継より難しい |
引退後の生活 | ・経営に気をもまず安心して生活できる ・生活資金の面ではM&Aより不利 |
・会社の存続が精神的負担になることもある ・売却益を得られるM&Aは生活資金の面では有利 |