垂直型M&Aとは?目的やメリット・デメリットを解説【事例あり】

M&Aにはさまざまなスキームやタイプがあり、目的によって使い分ける必要があります。本記事では垂直型M&Aに焦点をあて、垂直型M&Aの特徴やメリット・デメリットなどについて解説します。そのほか、近年実現した垂直型M&Aの事例も複数紹介しています。


目次

  1. 垂直型M&Aとは?
  2. 垂直型M&Aの目的と効果
  3. 垂直型M&Aのメリット・デメリット
  4. 垂直型M&Aの事例
  5. 垂直型M&Aを成功させるポイント
  6. 垂直型M&Aを検討する際の相談先
  7. まとめ

1. 垂直型M&Aとは?

垂直型M&Aとは?

M&Aは、「買い手がどのジャンル(同異業、関連事業の有無等)の企業・事業を買収するか」という切り口でみると、3つに分類することができます。

そのなかで「サプライチェーンの最適化」を目的として行われる異業種間M&Aを「垂直型M&A」と呼びます。まずは、ほか2つのタイプとの比較も踏まえて、垂直型M&Aの特徴を解説します。

垂直型M&Aの特徴

垂直型M&Aとは、企画・製造~販売までの一連のサプライチェーンのなかで、異なる役割をもった企業が垂直的に統合する方法です。

例えば、販売店であるコンビニエンスストアが、運送を担っている流通会社を買収したり、自動車完成品メーカーが部品メーカーを買収したりするケースが、垂直型M&Aに該当します。

買い手企業は関係するサプライチェーンのなかで自社以外の分野を掌握することで、コスト削減や事業効率化を図ることが可能になります。

また、消費者に近い企業を買収することを「川下への垂直型M&A」、消費者から遠い企業を買収することを「川上への垂直型M&A」と呼びます。

水平型M&Aとの違い

垂直型M&Aとは対照的に、同業種企業などを買収することを水平型M&Aと呼びます。例えば、自動車完成品メーカー同士、コンビニエンスストア同士の統合などが該当します。

スケールメリットの最大化や、市場シェア拡大などが主な目的に取り組まれる点が、垂直型M&Aとの大きな違いです。

新規型M&Aとの違い

新規型M&Aは、異業種・異業態の企業・事業の買収のことを指します。何らかの関連性がある企業・事業の買収もあれば全く関係のないものもあり、そのタイプは千差万別です。

垂直型M&Aの主目的が「サプライチェーンの最適化」であるのに対し、新規型M&Aは「新市場への参入」や「革新的技術の開発」などといった目的で取り組まれます。

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2. 垂直型M&Aの目的と効果

垂直型M&Aの目的と効果

垂直型M&Aを取組む目的・効果には、どのようなものがあるのでしょうか。この章では、垂直型M&Aが行われる主な目的と効果を2つの点から解説します。

【垂直型M&Aの目的と効果】

  1. 内製化による自社強化 
  2. 人材や技術面の強化

内製化による自社強化

垂直型M&Aによって、別領域であった外部企業との利害関係がなくなります。その領域における裁量が拡大することで、自由な設備投資や事業構造の変革ができるようになります。

製造プロセスやサービスなどを自社用にカスタマイズすることで、自社に最適なサプライチェーンの構築を実現し、自社事業の強化に寄与します。

また、これまで生じていた流通費用・中間マージン等が削減・解消されるため、コストの削減にもつながる点も内製化の大きな効果のひとつです。

人材や技術面の強化

垂直型M&Aに伴って譲受する各種ノウハウや知識は、買い手企業にとっては基本的に特段の知見がない分野です。

垂直型M&Aによって、自社内だけでは獲得できなかった優秀な人材や技術を新たに獲得することができます。

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3. 垂直型M&Aのメリット・デメリット

垂直型M&Aのメリット・デメリット

この章では、垂直型M&Aのメリットおよびデメリットについて解説します。数多あるM&Aスキームのなかでなぜ垂直型M&Aが選ばれるのか、その理由をみていきます。

メリット

まずは、垂直型M&Aの主なメリットを6つ紹介します。

【垂直型M&Aのメリット】

  1. 仕入れのコストを削減できる 
  2. 市場競争力の強化につながる
  3. 事業戦略を多様化できる
  4. 従業員との関係性が発展
  5. 製品などの安定供給
  6. 規制などのリスク回避

1.仕入れのコストを削減できる

通常の商取引においては、納入業者と発注業者は利害関係にあるため、仕入れコストにマージンがのります。

しかし、仕入先を子会社化する垂直型M&Aを実施した場合、その利害関係は解消されるため、仕入コストの削減につながります。

2.市場競争力の強化につながる

垂直型M&Aによって、サプライチェーンにおける自社の裁量が拡大するので、さまざまな領域での意思決定に関与できるようになります。

例えば、研究開発の資本投下量増加や販売チャネルの拡大など、置かれている企業状況や外部環境などによって、自社以外の領域もコントロールしてサプライチェーン全体の最適化を図ることが可能になります。

サプライチェーンのマネジメントができない会社に比べて、市場競争力が強化されることは大きなメリットといえるでしょう。

3.事業戦略を多様化できる

垂直型M&Aは、買い手企業にとってはコア事業以外の分野への投資であり、新事業への資本投下と言い換えることもできます。

サプライチェーンの最適化という主たる目的の実現に注力しつつ、新たな市場への参入を検討するなど、垂直型M&Aは事業の多角化に資する投資戦略にもなります

4.従業員との関係性が発展

垂直型M&Aの実施に伴い、働くフィールドが広がることで従業員満足度があがり、従業員と企業の関係性が良化されるという副次的効果を見込むこともできます。

5.製品などの安定供給

サプライチェーン内の様々な領域のコントロールが可能になるため、不測の事態に直面しても生産ラインの維持・企業活動の継続をしやすい環境を整えることができます。

例えば、天災の影響で平時の50%の生産能力しか維持ができないメーカーがあった場合、自社への製品供給量が落ちるのは不可避ですが、垂直型M&Aによって自社の傘下としているのであれば、他納入先に優先して製品供給を行うことができます。

6.規制などのリスク回避

事業活動に大きく関係する法制度や各種規制の強化・緩和は、同じサプライチェーンの各企業にも大きく影響を及ぼします。

例えば、2年に一度実施されている薬価改定は薬品メーカー、流通業者、調剤薬局事業者など薬品の開発・販売にかかわる全ての事業者に影響を及ぼし、その度に仕入れ値や運送代金の交渉などを行う必要があります。

サプライチェーンのコントロールが可能であれば、法制度や規制の変化に対しても、各領域の企業と連携をして柔軟に対応することができるので、業績縮小リスクへの回避につながります。

デメリット

続いて、垂直型M&Aのデメリットを確認します。ここでは以下5つのデメリットについてみていきましょう。

【垂直型M&Aのデメリット】

  1. 内製化によりコスト削減効果がでない
  2. 事業拡大によりブランド力が低下
  3. 新しい技術や製品を導入しづらい
  4. 法的なコストがある
  5. 規模拡大による統合プロセス

1.内製化によりコスト削減効果がでない

垂直型M&Aの最大の効果の一つは内製化による各種コストの削減ですが、場合によってはその効果を享受できないことがあります。

例えば、M&A対象事業が実は採算割れをしていた場合は、内製化することで赤字のインパクトを直接受けることになってしまい、コスト削減は愚か事業継続すらままならなくなってしまいます。

2.事業拡大によりブランド力が低下

ニーズの多様化が進みかつ変化も激しい昨今の時代において、事業規模はひたすら拡大すればよいというわけではありません。

経営資源の「選択と集中」という言葉があるように、コアコンピタンスを活かした事業に集中していくというのも重要な考え方です。

事業拡大前に主力だったブランドも、資源投下の減少に伴い他ブランドとの差別化ができなくなり、新規事業への投資も十分にできず、結果的に共倒れという恐れがあることも認識しておく必要があります。

3.新しい技術や製品を導入しづらい

新規型M&Aに比べれば、垂直型M&Aは革新さや未知の領域の融合度という観点では劣る部分があり、抜本的なイノベーションは起こりにくいといえるでしょう。

4.法的なコストがある

垂直型M&Aに限らず、事業統合や企業買収には様々な法的対応が必要になります。事業活動にかかる許認可の再取得や資産の名義変更、仕入先・販売先との売買契約の巻き直しなどがその代表例です。

水平型M&Aと比較すると、異業種間の統合である垂直型M&Aは、新事業に関係する各種法的対応が必要になる可能性が高いといえるでしょう。

5.規模拡大による統合プロセス

国内市場においては、M&Aで最も大切なのはPMI(統合プロセス)だといわれています。M&Aは契約を締結して売買したら終わり、という単純な取引ではありません。

業務フローの最適化や労働規約の変更、企業文化の融合といった統合プロセスを適切に行えるかどうかがM&A成功の道です。

異業種の事業・企業の買収は、企業風土も文化も全く違うことが往々にしてあり、統合プロセスに難航する場合があります。

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4. 垂直型M&Aの事例

垂直型M&Aの事例

ここまでは垂直型M&Aの主な目的やメリット・デメリットなどを解説しました。この章では、実際に実行された3つの垂直型M&A案件を紹介します。

ホシザキ電機によるマレーシア現地法人の垂直型M&A

2015年、ホシザキ電機は、マレーシアのPOLAR SEAL社の事業を取得しました。ホシザキ電機は、製氷機や冷蔵庫・食器洗浄機等の製造販売を手がける企業で、マレーシア市場では代理店経由での販売を行なっていました。

POLAR SEAL社は同国でフードーサービス機器販売業を展開する企業であり、本件垂直型M&Aの実行によって、ホシザキ電機はマレーシアでの販売チャネルの強化や顧客の相互紹介などのシナジー創出を企図しました。

神戸物産によるシンガポール飲食店の垂直型M&A

2018年、業務用食品スーパー事業等を営む神戸物産は、海外子会社を通じてシンガポールのWIZ JOINT PTE. LTDの株式45%を取得し子会社化しました。取得価額は約800万円です。

WIZ JOINT PTE. LTDは、シンガポールで鉄板焼き店の運営を予定していた企業で、当時は開業準備中の段階でした。神戸物産は、自社商品の販売チャネルの拡充や海外レストラン事業の強化などを狙って、本件垂直型M&Aを実行しています。

アップルによるイスラエル現地法人の垂直型M&A

2017年、アップルは、イスラエルでフェイシャル3Dスキャニングソフトウェア事業を営むリアルフェイスを子会社化しました。取得価額は約2億2600万円です。

2014年設立のリアルフェイスは首都テルアビブに拠点を置くスタートアップ企業で、顔認識技術を核とした各種のソフトウェアを開発しています。

アップルはリアルフェイスの持つ技術を活かし、iPhone Xから顔認証システムを搭載することができるようになりました。

自社内での研究開発が基本であるアップルは本件以外にも、3DセンサーやAI開発関連などの企業を次々にM&Aをしており、垂直型M&Aで成功しているお手本のような企業といえるでしょう。

5. 垂直型M&Aを成功させるポイント

垂直型M&Aを成功させるポイント

国内・海外問わず、多くの企業が積極的にM&A戦略へ取り組んでいます。この章では、垂直型M&Aを実施するにあたり、どのような点に注力すべきかを解説します。

【垂直型M&Aを成功させるポイント】

  1. スキーム選びを慎重に行う
  2. アプローチや手順に気をつける

1.スキーム選びを慎重に行う

事業譲渡、株式譲渡、株式併合など、M&Aは数多くのスキームがあり、M&Aの目的やニーズに照らした適切なスキームを選択することが大切です。スキームごとに譲受(譲渡)する対象資産が違ううえ、法的手続きへの対応も全く異なります。

垂直型M&Aの場合は異業種同士のM&Aのため、同業社間でのM&Aに比べて売り手・買い手双方で調整すべき点や綿密なすり合わせが必要な点が多く、より慎重なスキーム選びが重要です。

2.アプローチや手順に気をつける

M&Aは、企業活動の中でも特に規模の大きい取引の一つであり、また会社の将来の行く末を握る重大な取引です。

売り手企業のオーナーや経営者の心情を踏まえれば、特に買い手から売り手への最初のアプローチは十分気をつけて行うべきでしょう。

また、M&Aはいくつもの法的対応などが求められるので、適切に対処をしていかなければコストばかりがかかってしまい、何のためにM&Aを実施したのかわからないという結果に陥る懸念もあります。

都度専門家と相談をするなどして、適切なアプローチや手順を心がけましょう。

【関連】国内のM&A動向「2019年は過去最多4,088件」過去の推移も解説

6. 垂直型M&Aを検討する際の相談先

垂直型M&Aを検討する際の相談先

垂直型M&Aを成功させるためには、まずスキーム選びを慎重に行わなければならず、さらにアプローチや手順にも注意が必要となるので、専門家のサポート下で進めることをおすすめします。

垂直型M&Aをご検討の際は、ぜひM&A総合研究所へご相談ください。M&A総合研究所は、着手金・中間金一切不要の完全成功報酬制を採用しているM&A仲介会社です。

M&Aアドバイザー・弁護士・会計士のフルサポートによる質の高いサービスを提供しており、相談から成約までの平均期間は約3ヶ月というスビード対応を実現しています。

無料相談は24時間お受けしておりますので、垂直型M&Aをご検討の際はどうぞお気軽にご連絡ください。

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7. まとめ

まとめ

当記事では、垂直型M&Aの特徴やメリットについて解説しました。国内・海外ともM&A市場への注目度は年々上昇しており、各企業ともM&A戦略を充実させていくことが、今後の事業活動の如何をうらなう重要なファクターになると考えられます。

垂直型M&Aは、異業種間M&Aの代表的な手法であるため、特徴やメリットを把握しておけばいざという時にも大いに役立ちます。

【垂直型M&Aの目的と効果】

  1. 内製化による自社強化
  2. 人材や技術面の強化

【垂直型M&Aのメリット】
  1. 仕入れのコストを削減できる
  2. 市場競争力の強化につながる
  3. 事業戦略を多様化できる
  4. 従業員との関係性が発展
  5. 製品などの安定供給
  6. 規制などのリスク回避
【垂直型M&Aのデメリット】
  1. 内製化によりコスト削減効果がでない
  2. 事業拡大によりブランド力が低下
  3. 新しい技術や製品を導入しづらい
  4. 法的なコストがある
  5. 規模拡大による統合プロセス

【垂直型M&Aを成功させるポイント】
  1. スキーム選びを慎重に行う
  2. アプローチや手順に気をつける

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