吸収合併とは?新設合併との違いや会計・税務・法務の手続きを解説【事例あり】

合併(企業合併)とは、複数の法人格をひとつの法人格に統合するM&A手法です。本記事では、吸収合併とはどのような手法なのかについて、吸収合併と新設合併との違いや、吸収合併の手続きを会計・税務・法務面から解説します。また、吸収合併が行われた事例をご紹介します。


目次

  1. 吸収合併とは
  2. 吸収合併と新設合併の違いと共通点
  3. 吸収合併の会計手続き
  4. 吸収合併の税務手続き
  5. 吸収合併の法務手続き
  6. 吸収合併・事業譲渡・株式譲渡のM&A手法としての違い
  7. 吸収合併が選ばれるシーン
  8. 吸収合併が行われた事例
  9. 吸収合併のメリットとデメリット
  10. 吸収合併の手続きとスケジュール
  11. 吸収合併での登記
  12. 吸収合併の際の株主への通知について
  13. 吸収合併の際の社員の処遇
  14. 吸収合併の相談はM&A仲介会社がおすすめ
  15. まとめ

1. 吸収合併とは

吸収合併とは

吸収合併とは、どのような手法なのでしょうか。本記事では、吸収合併と新設合併との違いや、吸収合併の手続きを会計・税務・法務面から解説しますが、まずは吸収合併と新設合併の意味をご紹介します。

合併とは

合併(企業合併)とは、複数の法人格を単一の法人格に合体させる方式のことです。合併手続きを行う法人は「存続会社」と「消滅会社」とに分けられます。

存続会社とは合併によって事業を継続する側の法人を指し、消滅会社とは合併によって解散する法人のことです。

単一の法人に合体させることで、消滅会社が持つ経営資源は存続会社と合体し、消滅会社は解散します。合併は、手法の内容によって「吸収合併」と「新設合併」に分けられます。

吸収合併

吸収合併とは、合併を行う法人が存続会社と複数の消滅会社に分かれ、すべての消滅会社の経営資源が存続会社に融合する方式です。

また吸収合併を行った場合、ひとつの既存法人だけが残り、そのほかの法人は残りません。

新設合併

新設合併とは、既存法人とは別に法人を立ち上げ、既存の法人をすべて消滅会社として新たに立ち上げた法人に合体する方式です。

新設合併は吸収合併に比べて不便な面が多く、滅多に採用されることはありません。新設合併が用いられるケースは、国が統合に関わっているケースや、大企業が複数の子会社を新会社としてまとめるケースに限られています。

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2. 吸収合併と新設合併の違いと共通点

吸収合併と新設合併の違いと共通点

吸収合併と新設合併では吸収合併を用いるケースが多いですが、それぞれ異なる特徴を持つ手法であり、状況に応じて使い分ける必要があります。この章では、吸収合併と新設合併の違いと共通点について解説します。

  吸収合併 新設合併
違い ・既存の法人だけで合併
・許可・認可を引き継げる
・新たな法人に合併
・許可・認可を引き継げない
共通点 ・株主と債権者の保護が必要
・解散する会社がある
・株主と債権者の保護が必要
・解散する会社がある

吸収合併と新設合併の違い

吸収合併と新設合併では、既存の法人だけで合併を行うか、新たに法人を設立するかという点が大きな違いです。

吸収合併では新たに法人を設立する必要がなく、存続会社に消滅会社の許可・認可も継承されます。

対して、新設合併の場合、新設会社に消滅会社の許可・認可の継承はできません。
そのため、新たな法人が再び許可・認可を行政に申請しなければなりません。

吸収合併と新設合併の共通点

吸収合併と新設合併の共通点は、どちらも消滅する法人があることです。例えば、株式譲渡の場合は合併とは違い、株主が変わるだけで法人を解散することはありません。

また、吸収合併と新設合併は、どちらも株主や債権者の権利保護に関して、厳しく法令で定められています。

株主と債権者の保護に関しては後述しますが、吸収合併と新設合併は株主と債権者に大きな影響を与える可能性があるので、権利を保護しなければなりません。

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3. 吸収合併の会計手続き

吸収合併の会計手続き

吸収合併の会計手続きは、グループ企業内での吸収合併か、資本業務提携先や合弁会社による吸収合併か、それ以外のケースによる吸収合併かで会計処理方法が変わります。

グループ企業内での吸収合併や、資本業務提携先・合弁会社による吸収合併の場合は、帳簿残高で会計処理を行い、それ以外のケースでは市場価格を基にした会計処理を行います。

4. 吸収合併の税務手続き

吸収合併の税務手続き

吸収合併では、「適格合併」と「非適格合併」のどちらに該当するかによって、税務の処理方法が変わります。

適格合併とは、グループ企業内での組織再編や共同事業の再編を目的として、吸収合併を行った場合の税務処理方法です。一方、非適格合併とは、適格合併に該当しない再編行為です。

適格合併には税務上のメリットがあるので、吸収合併を行う企業は適格合併に該当するように準備しておくのが一般的です。

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5. 吸収合併の法務手続き

吸収合併の法務手続き

吸収合併は、株主や債権者に大きな影響を及ぼし得るので、株主や債権者に配慮した手続きを行わなければなりません。

そのため、株主や債権者が適切な情報を得られるようにしたり、吸収合併に反対する株主や債権者の権利を守ったりする手続きが必要になります。

【株主や債権者に対して行うべき手続き】

  • 吸収合併にかかわる書類の事前備置・事後備置
  • 株主総会での承認
  • 債権者保護手続き
  • 反対株主への株式買取請求通知

書類の事前備置・事後備置とは、株主や債権者が吸収合併に関する情報を平等に得られるよう、合併を行う企業の本店で公開しておく書類のことです。

株式買取請求権とは、吸収合併に反対する株主は対象企業に対して保有株式を買い取るよう請求できる権利です。

また、債権者保護手続きとは、吸収合併に異議のある債権者は対象企業に対して異議申立てができることを通知する手続きを指します。

6. 吸収合併・事業譲渡・株式譲渡のM&A手法としての違い

吸収合併・事業譲渡・株式譲渡のM&A手法としての違い

M&A手法には、吸収合併や新設合併のほかに事業譲渡や株式譲渡といった手法もあり、どちらも多く用いられます。ここでは、吸収合併と事業譲渡の違い、吸収合併と株式譲渡の違いについて解説します。

吸収合併と事業譲渡の違い

事業譲渡とは、事業部門や事業用資産の一部または全部を個別に取引するM&A手法です。

事業譲渡は吸収合併とは違い、売却側が解散する必要はありません。また、吸収合併とは違って許認可や各種契約を引き継ぐことができません。

事業譲渡は売買する事業や事業用資産を選べるので、買い手は不要な資産や偶発債務などのリスクが少なく、売り手は手元に残した事業に経営資源を集中させるなどの戦略をとることができます。

吸収合併と株式譲渡の違い

株式譲渡とは、買い手側が売り手企業の株主から株式を買い取ることで、経営権を取得するM&A手法です。株式譲渡の場合も吸収合併とは違い、売却側の企業が消滅することはありません。

また、株式譲渡は吸収合併とは違って株主が変わるだけなので、統合作業の負担が少なく済みます。株式譲渡は株主の移行だけで手続きができるので、企業のM&Aで多く採用されている手法です。

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7. 吸収合併が選ばれるシーン

吸収合併が選ばれるシーン

吸収合併は主に以下のような効果を期待して実行されます。

  1. 親しい業種の合併によるシナジー効果を期待する場合 
  2. 人材やノウハウがもたらすシナジー効果に期待する場合
  3. スケールメリットによるコスト削減

①親しい業種の合併によるシナジー効果を期待する場合

吸収合併は、同業種や関連業種の企業同士で行われることがほとんどです。株式譲渡よりも手間はかかりますが、吸収合併に成功すれば高いシナジー効果が期待できます。

また、株式譲渡は買収した側と買収された側という上下の関係ができやすいですが、吸収合併は同等の関係で行われることが多いので親密な関係を築きやすい手法です。

しかし、吸収合併は形式上同等の関係で行われるとはいえ、統合作業をうまく進めないと上下関係が実質生じることもあるので、手続きには注意が必要です。

②人材やノウハウがもたらすシナジー効果に期待する場合

吸収合併では、人材やノウハウも完全にひとつの法人に統合されるので、現場レベルで高いシナジー効果が期待できます。

例えば、株式譲渡の場合は買収して同じ企業グループになったとしても、現場レベルでは別々に仕事を続けるケースがほとんどです。その点、吸収合併は人材やノウハウの高い融合効果も期待できます。

ただし、違う企業文化のなかで仕事をしてきた人材同士が同じ現場で円滑に働いてもらうには、慎重で適切な統合作業が欠かせません。

③スケールメリットによるコスト削減

吸収合併によって、さまざまなスケールメリットが得られます。スケールメリットとは、簡単にいうと規模の拡大によって得られるメリットのことです。

例えば、1回の仕入れ量が増えれば、その分安く仕入れることができます。また、吸収合併前までそれぞれが行なっていた管理をひとつに統合できるので、管理コストも削減できます。

しかし、統合によって、店舗の商圏が重なったり事業部門に余剰人員が生まれたりなど、無駄な部分も生まれることもあります。吸収合併によって生まれる無駄については、事前によく分析・把握して対処しておくことが必要です。

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8. 吸収合併が行われた事例

吸収合併が行われた事例

ここからは、以下の吸収合併事例をご紹介します。

  1. ホットランドとL.A.Styleの吸収合併
  2. 日本梱包運輸倉庫と板東産業の吸収合併
  3. ケンコーコムと爽快ドラッグの吸収合併
  4. バイタルケーエスケーHDとVKシェアードサービスの吸収合併
  5. サンワカンパニーとサンワカンパニーPLUSの吸収合併
  6. サノヤス精密工業と加藤精機、ケーエスサノヤスの吸収合併
  7. マミヤ・オーピーとマミヤ・オーピー・ネクオスの吸収合併
  8. あすか製薬とあすかActavis製薬の吸収合併
  9. 昭文社とキャンバスマップルの吸収合併
  10. シュクレイとフランセの吸収合併

①ホットランドとL.A.Styleの吸収合併

吸収合併が行われた事例1

出典: http://www.hotland.co.jp/

吸収合併が行われた事例1件目は、ホットランドとL.A.Styleの吸収合併です。築地銀だこなどのチェーン店を展開するホットランドは、連結子会社でコーヒー店を運営するL.A.Styleを完全子会社化した後、吸収合併を行いました。

L.A.Styleは、イオンモールと設立した合弁会社で、2014年以降コーヒー店の出店を進めてきました。

ホットランドは、運営方針の根本的な修正とスピーディーな意思決定の実現を図り、L.A.Styleの吸収合併に至りました。

②日本梱包運輸倉庫と板東産業の吸収合併

吸収合併が行われた事例2

出典: http://www.nikkon-hd.co.jp/

吸収合併が行われた事例2件目は、日本梱包運輸倉庫と板東産業の吸収合併です。ニッコンHDの子会社で、自動車輸送業などを営む日本梱包運輸倉庫は、倉庫会社の板東産業を吸収合併しました。

ニッコンHDは、首都圏での物流拠点を求めていたところ、板東産業が首都圏に保有する土地が拠点として最適であったことから吸収合併に至っています。

③ケンコーコムと爽快ドラッグの吸収合併

吸収合併が行われた事例3

出典: https://corp.rakuten.co.jp/

吸収合併が行われた事例3件目は、ケンコーコムと爽快ドラッグの吸収合併です。IT大手の楽天は、子会社のケンコーコムと爽快ドラッグを吸収合併により統合しました。ケンコーコムが存続会社、爽快ドラッグが消滅会社として統合しています。

EC事業を営むケンコーコムと爽快ドラッグは、取り扱い商品が類似していることから、合併により事業運営の効率化を図りました。

④バイタルケーエスケーHDとVKシェアードサービスの吸収合併

吸収合併が行われた事例4

出典: https://www.vitalksk.co.jp/

吸収合併が行われた事例4件目は、バイタルケーエスケーHDとVKシェアードサービスの吸収合併です。医薬品卸売業を営むバイタルエスケーHDは、連結子会社のVKシェアードサービスを吸収合併しました。

VKシェアードサービスは、バイタルエスケーHDのシステム関連業務を受託してきましたが、バイタルエスケーHDのIT部門をさらに強化するため、吸収合併による統合を行っています。

⑤サンワカンパニーとサンワカンパニーPLUSの吸収合併

吸収合併が行われた事例5

出典: https://www.sanwacompany.co.jp/shop/

吸収合併が行われた事例5件目は、サンワカンパニーとサンワカンパニーPLUSの吸収合併です。

住宅用建材や設備機器の通信販売事業を営むサンワカンパニーは、連結子会社で設計・施工サービス事業を営むサンワカンパニーPLUSを吸収合併しました。

これにより、サンワカンパニーは、事業の効率化とスピーディーな意思決定の実現を果たしています。

⑥サノヤス精密工業と加藤精機、ケーエスサノヤスの吸収合併

吸収合併が行われた事例6

出典: http://www.sanoyas.co.jp/

吸収合併が行われた事例6件目は、サノヤス精密工業と加藤精機、ケーエスサノヤスの吸収合併です。

造船や各種機械製造などを行うサノヤスHDは、連結子会社のサノヤス精密工業と加藤精機、ケーエスサノヤスを吸収合併により統合しました。サノヤス精密工業が存続会社となっています。

サノヤスHDは、機械製造などを行う各子会社を統合することで、事業の効率化と経営体制の強化を図っています。

⑦マミヤ・オーピーとマミヤ・オーピー・ネクオスの吸収合併

吸収合併が行われた事例7

出典: https://www.mamiya-op.co.jp/

吸収合併が行われた事例7件目は、マミヤ・オーピーとマミヤ・オーピー・ネクオスの吸収合併です。

電子機器の製造などを行なっているマミヤ・オーピーは、完全子会社のマミヤ・オーピー・ネクオスを吸収合併しました。

マミヤ・オーピーの主戦場であるパチンコ業界は、市場規模の縮小が進んでおり、現状のままでは事業の成長が難しい状況にあります。

そのため、マミヤ・オーピーはマミヤ・オーピー・ネクオスを吸収合併することで、経営の効率化や事業ポートフォリオの見直しを進めています。

⑧あすか製薬とあすかActavis製薬の吸収合併

吸収合併が行われた事例8

出典: https://www.aska-pharma.co.jp/

吸収合併が行われた事例8件目は、あすか製薬とあすかActavis製薬の吸収合併です。医薬品の開発・製造・販売などを行なっているあすか製薬は、完全子会社のあすかActavis製薬を吸収合併しました。

あすかActavis製薬は、ジェネリック医薬品の製造・販売事業を行っていましたが、債務超過に陥っていました。あすか製薬はあすかActavis製薬を吸収合併することで、事業の効率化を図っています。

⑨昭文社とキャンバスマップルの吸収合併

吸収合併が行われた事例9

出典: https://www.mapple.co.jp/

吸収合併が行われた事例9件目は、昭文社とキャンバスマップルの吸収合併です。

地図や旅行情報誌の出版などを行っている昭文社は、連結子会社でカーナビゲーション用地図ソフトウェアの開発・販売を行うキャンバスマップルを吸収合併しました。

キャンバスマップルは、昭文社の開発した地図データ・ガイドデータを利用してカーナビゲーション事業を行っており、昭文社グループにとって重要なポジションを担っています。昭文社はキャンバスマップルの吸収合併により、事業シナジーの獲得を図っています。

⑩シュクレイとフランセの吸収合併

吸収合併が行われた事例10

出典: https://www.kotobukispirits.co.jp/

吸収合併が行われた事例10件目は、シュクレイとフランセの吸収合併です。お菓子の製造・販売を営む寿スピリッツは、連結子会社のシュクレイとフランセを吸収合併により統合しまし、シュクレイが存続会社、フランセが消滅会社となりました。

寿スピリッツは、地域ごとのお菓子や店舗を創り上げており、直近では首都圏での展開を計画していました。

シュクレイとフランセはともに関東エリアを拠点としていたことから、吸収合併により関東エリアでの事業展開を効率化し、事業強化を図っています。

9. 吸収合併のメリットとデメリット

吸収合併のメリットとデメリット

吸収合併を行う際は、さまざまなメリットとデメリットを考慮しておく必要があります。ここでは、吸収合併のメリットとデメリットについて解説します。

吸収合併のメリット

まずは、吸収合併のメリットを存続会社側と消滅会社側に分けてご紹介します。

買い手のメリット

買い手側となる存続会社のメリットは、統合によるシナジー効果の高さです。

【吸収合併で存続会社が得られるメリット】

  • 業界シェアの獲得
  • コスト削減
  • 人材・技術・ノウハウのシナジー効果
  • ブランド力の向上

自社よりも小規模の企業を買収することが多い株式譲渡などとは違い、吸収合併は同規模の企業同士が統合するケースがほとんどです。そのため、統合によるインパクトも大きいものになります。

売り手のメリット

売り手側となる消滅会社のメリットも、存続会社と同じく統合によるさまざまなシナジー効果が得られる点です。

消滅会社という手続き上の用語から、なくなってしまう会社という印象がありますが、実際には存続会社と対等な関係でひとつの法人に統合されるため、存続会社側のメリットは消滅会社側のメリットにもなります。

吸収合併のデメリット

続いて、吸収合併のデメリットをご紹介します。

買い手のデメリット

買い手側となる存続会社のデメリットは、統合コストとリスクの高さです。統合によるメリットが大きいということは、それだけ統合に失敗したときのリスクも高いということです。

【吸収合併に必要な統合作業】

  • システムの統合
  • ルールの統合
  • 人材の統合
  • 経営陣の統合
  • 技術・サービス・ノウハウの統合
  • 企業文化の統合

これらの統合作業を円滑に進め想定通りのシナジー効果を得るには、多くの時間と資金をかける必要があり、統合に失敗したときのダメージは大きいものとなります。

売り手のデメリット

売り手側となる消滅会社のデメリットは、会社が消滅する点です。存続会社の商号に消滅会社の商号を残すなどの配慮がなされるとはいえ、会社に思い入れの強い創業者一家や経営陣が強い抵抗感を示すことは少なくありません。

また、従業員も不満を感じることがあります。形式上は同等関係の吸収合併とはいえ、現場には「吸収された側」という雰囲気になるのはよくあることです。

それにより、存続会社側と消滅会社側の従業員間での関係構築が、なかなか進まないということも少なくありません。

10. 吸収合併の手続きとスケジュール

吸収合併の手続きとスケジュール

この章では、吸収合併に必要な手続きとスケジュールについて解説します。

吸収合併の手続き

吸収合併を行う際に必要となる手続きには、以下の6つがあります。以下では、それぞれの内容や注意点をみていきましょう。

  1. 吸収合併契約書の締結 
  2. 取締役会・株主総会での承認
  3. 官報への公告申請・債権者への通知
  4. 書類の事前備置
  5. 株主への通知
  6. 登記申請・各種手続き

①吸収合併契約書の締結

吸収合併を行う企業は、トップ面談などの交渉を重ねながら吸収合併の契約内容を決めていきます。

吸収合併契約書とは、契約内容を記載した最終契約書です。吸収合併契約書には、合併対価や吸収合併のスケジュール、吸収合併の目的などを記載します。

②取締役会・株主総会での承認

吸収合併を行うには、役員や株主から支持を得る必要があります。そのため、取締役会や株主総会の開催が法令で定められています。なお、簡易吸収合併や略式吸収合併の場合は、株主総会の省略が可能です。

簡易合併とは、存続会社よりも消滅会社の規模が一定基準よりも小さい場合に適用される合併方法で、略式合併とは存続会社が消滅会社の議決権の大半を持っている場合の合併方法を指します。

③官報への公告申請・債権者への通知

吸収合併を行う企業は、官報公告に掲載を依頼することで関係者への通知をします。

官報公告を行うことで関係者への個別通知は省略することができますが、通知先が多い場合は官報公告に加えて個別通知も行うケースもあります。

④書類の事前備置

吸収合併を行う企業は、吸収合併に関する情報や企業の情報を記載した書類を公開し、関係者がいつでも確認できる状態にしておきます。

また、これらの書類は、吸収合併完了後も半年間公開しておくことが法令で定められています。

⑤株主への通知

吸収合併を行う企業は、株主総会による採決を実施することや反対株主から株式の買取請求を受け付けることを株主へ知らせます。

株主に対する通知は、公開会社の場合は株主総会開催の2週間前まで、非公開会社の場合は1週間前までに発送しなければなりません。

⑥登記申請・各種手続き

吸収合併手続きの日程をすべて終えたら、存続会社は変更登記申請を行い、消滅会社は解散登記申請を行います。また、存続会社は半年間書類の事後備置を行う必要があります。

吸収合併のスケジュール

以下は吸収合併手続きのスケジュール例です。

日程 存続会社 消滅会社
3月中旬 消滅会社・大株主・債権者への説明・交渉 消滅会社・大株主・債権者への説明・交渉
4月上旬 吸収合併契約の締結 吸収合併契約の締結
4月中旬 官報公告の申請 官報公告の申請
4月下旬 債権者への通知 債権者への通知
5月上旬 株主総会招集通知の発送 株主総会招集通知の発送
5月下旬 株主総会の開催 株主総会の開催
6月上旬 吸収合併の効力発生・変更登記 吸収合併の効力発生・解散登記

11. 吸収合併での登記

吸収合併での登記

吸収合併の効力発生日を迎えたら、存続会社と消滅会社は速やかに登記申請を行う必要があります。登記の必要書類や登録免許税について解説します。

主な必要書類

登記申請に必要となる主な書類は以下の通りです。吸収合併手続きの状況によって他にも提出書類が必要となることがあります。

  • 変更登記申請書・解散登記申請書
  • 吸収合併契約書
  • 株主総会議事録
  • 取締役会議事録
  • 株主リスト
  • 消滅会社の登記事項証明書
  • 公告及び催告をしたことをしたことを証する書面
  • 資本金の額の計上に関する証明書
  • 許可書
  • 委任状

登録免許税

登記申請手続きの際、存続会社と消滅会社はそれぞれ登録免許税の支払いが必要です。

存続会社の変更登記では、吸収合併により資本金が変わらなかったときは30,000円を納めます。資本金が増えた場合は、資本金の増えた部分に0.0015をかけ合わせた金額を納めます。

ただし、計算した結果30,000円を下回った場合は30,000円を納めます。また、増えた資本金が消滅会社の資本金よりも大きくなった場合は、差額の部分に0.007をかけ合わせた税金がプラスされます。

一方、消滅会社の解散登記は、一律30,000円の登録免許税を納めます。

12. 吸収合併の際の株主への通知について

吸収合併の際の株主への通知について

吸収合併の際は株主総会を開催して吸収合併実施の承認を得る必要があるため、株主に通知を送ります。

【株主への招集通知に記載する内容】

  • 株主総会の場所と日時
  • 吸収合併に関する決議である旨
  • 株主総会に出席できない株主が、書面や電磁的方法によって議決権を行使できると定めている場合はその旨

招集通知の送付は、公開会社の場合は株主総会開催の2週間前まで、非公開会社の場合は1週間前までに行います。

13. 吸収合併の際の社員の処遇

吸収合併の際の社員の処遇

吸収合併を行うということは、社員の処遇も統合することになります。ここでは、吸収合併の際の社員の処遇について解説します。

給与面はどうなる?

吸収合併によって、社員の不利益となる給与面の変更を行うことは、基本的に認められません。

吸収合併の際は、存続会社と消滅会社で給与が高いほうに合わせたり、ゼロベースで給与面を見直したりします。

もし、吸収合併によって社員が不利益を被るような処遇にせざるを得ない場合、社員から同意を得なければなりませんが容易なことではありません。

社員の同意がなくても認められる方法もありますが、社員の不満などを考えると有効な手段とはいえないでしょう。ただし、人事異動などによって実質的に降格となることはあり得ます。

退職金は引き継がれるのか?

吸収合併は、すべての権利義務を引き継ぐ包括承継なので、退職金も原則満額引き継がれます。

給与面と同じく、退職金の減額などによって社員が不利益を被る場合は同意が必要ですが、同意を得ることは簡単ではありません。

社会保険・有給休暇の扱い

吸収合併では勤続年数も引き継がれるので、それに伴って社会保険や有給休暇も引き継がれます。

ただし、社会保険の引き継ぎには存続会社・存続会社ともに各関係機関への届出などの手続きが必要となり、手続きに遅れや不備があると問題となります。引き継ぎの手続きには注意が必要です。

14. 吸収合併の相談はM&A仲介会社がおすすめ

吸収合併の相談はM&A仲介会社がおすすめ

本記事でご紹介してきたように、吸収合併を円滑に行うにはM&Aの法務・会計・税務に精通した専門家のサポートが必要です。

M&A総合研究所では、M&A支援実績が豊富な会計士と弁護士がフルサポートいたしますので、M&Aの法務・会計・税務を的確なサポートが可能です。

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15. まとめ

まとめ

本記事では、吸収合併とはどのような手法なのかについて解説してきました。

吸収合併と新設合併には以下の共通点と違いがあります。

  吸収合併 新設合併
違い ・既存の会社に統合
・許認可や登録免許を引き継げる
・消滅会社の株主は現金対価の受取可
・新設の会社に統合
・許認可や登録免許を引き継げない
・消滅会社の株主は現金対価の受取不可
共通点 ・統合の結び付きが強い
・シナジー効果が得やすい
・統合の結び付きが強い
・シナジー効果が得やすい

吸収合併は主に以下のような効果を期待して実行されます。
  1. 親しい業種の合併によるシナジー効果を期待する場合 
  2. 人材やノウハウがもたらすシナジー効果に期待する場合
  3. スケールメリットによるコスト削減

今回ご紹介した吸収合併事例は以下の10件です。
  1. ホットランドとL.A.Styleの吸収合併
  2. 日本梱包運輸倉庫と板東産業の吸収合併
  3. ケンコーコムと爽快ドラッグの吸収合併
  4. バイタルケーエスケーHDとVKシェアードサービスの吸収合併
  5. サンワカンパニーとサンワカンパニーPLUSの吸収合併
  6. サノヤス精密工業と加藤精機、ケーエスサノヤスの吸収合併
  7. マミヤ・オーピーとマミヤ・オーピー・ネクオスの吸収合併
  8. あすか製薬とあすかActavis製薬の吸収合併
  9. 昭文社とキャンバスマップルの吸収合併
  10. シュクレイとフランセの吸収合併

吸収合併では主に以下の手続きで進められます。
  1. 吸収合併契約書の締結 
  2. 取締役会・株主総会での承認
  3. 官報への公告申請・債権者への通知
  4. 書類の事前備置
  5. 株主への通知
  6. 登記申請・各種手続き

吸収合併の手続きを円滑に行うには、M&Aの法務・会計・税務に精通した専門家のサポートが必要です。

M&A総合研究所ではM&A支援実績が豊富な会計士と弁護士がフルサポートするので、M&Aの法務・会計・税務を的確にサポートできます。

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