内部統制が握るM&A、事業承継の成功ポイント、導入方法を徹底解説!

内部統制とは、企業における組織的な運営体系を構築するために用いられる制度です。会社の評価を大きく変えることができるため、M&Aの成否にも直接影響します。本記事では、M&A・事業承継における内部統制の重要度や導入方法を解説します。


目次

  1. 内部統制とは
  2. 内部統制が握るM&A、事業承継の成功ポイント
  3. 内部統制の導入方法
  4. なぜ今、内部統制が求められているのか?
  5. まとめ

1. 内部統制とは

内部統制とは

内部統制とは、企業としての形態を守るための社内ルールや仕組み作りを指します。企業のずさんな管理体制による不祥事を防ぐために、内部統制の重要性が高くなっています。

例えば「業務に使用するデバイスは持ち出し不可」などの規定をしている会社は多いですが、これも内部統制の一種です。

この例は秘密情報保護の観点による規定ですが、こうした規定が集合体となって内部統制が構築されていきます。

本記事では、M&A・事業承継における内部統制の重要度を解説しますが、この章ではまず、内部統制や内部監査の概要に触れていきます。

内部統制とはなに?

内部統制(内部統制報告制度)は、上場企業は事業年度ごとに「内部統制報告書」を提出することを義務付けられる制度です。

米国の大型企業の不祥事が相次いだことで米国内でSOX法が制定され、日本ではJ-SOX法として制定されました。

金融庁の「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準」では、J-SOX法における内部統制の目的を以下の4つに定めています。

【内部統制の4つの目的】

  • 財務報告の信頼性・・・財務書類における情報の信頼性の確保
  • 法令等の遵守・・・事業活動に関わる法令遵守の促進
  • 資産の保全・・・資産の取得・使用・処分が正当な手続・承認の下に行われるよう保全
  • 業務の有効性・効率性の構築・・・事業活動の目的達成のため、業務の有効性・効率性を高める

上記4つの目的を達成していることを証明する書類が「内部統制報告書」です。企業の健全な管理体制の構築や、財務書類が適切に作成されたものであることを対外的に表明することができます。

「内部統制報告書」が適正であることを証明するには、公認会計士もしくは監査法人の監査を受ける必要があります。

組織内部で作成された書類について外部の監査を受けることで、一般に公正妥当と認められる書類とすることができます。

ただし、一定の規模を除く会社以外は、新規上場の負担を軽減する目的で上場後3年間は監査証明の免除措置が取られています。

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内部統制と内部監査

内部監査とは、業務上の不正防止や業務の効率化を目的に行われる組織内部の監査です。内部統制を構成する6つの要素の1つ「モニタリング」が内部監査に該当します。

経営環境の分析・調査に始まり、改善活動のフォローアップまでを行い、内部統制の効率化を手助けする役割を持っています。

【内部統制の6つの要素】

  • ITへの対応・・・内部統制目的達成のためのIT対応と導入
  • モニタリング(内部監査)・・・内部統制が適切に機能しているかを継続的に監査
  • 情報と伝達・・・必要な情報の伝達機能の確認
  • リスク評価と対応・・・内部統制目的達成を阻害する恐れがあるリスクの調査と対応
  • 統制活動・・・経営者の示す規定を実行するための方針とプロセスの体制確立
  • 統制環境・・・内部統制により健全な管理体制になることを関係者全員が認識すること

組織内部に設置されている内部監査部門により、業務・会計の状況を主体的に調査・分析を行います。上場会社においては調査結果を株主に対して報告する義務があるため、内部監査も必ず行わなければなりません。

内部統制の目的や要素を達成することは、会社の健全な運営をするうえでとても大切ですが、M&Aという場面においても大きく影響します。

適切な管理体制であることの証明は企業価値向上に繋がるため、M&Aにおける買い手からの評価も高くなることが期待できます。

内部統制の機能の有無でM&A売買契約が決定されることも珍しくないため、非常に重要な役割を持っています。

2. 内部統制が握るM&A、事業承継の成功ポイント

内部統制が握るM&A、事業承継の成功ポイント

内部統制を徹底することで会社の健全化を図ることができますが、M&A・事業承継においても高い評価に繋げることができます。

通常の業務だけでなくM&A・事業承継にも影響するということから、内部統制が義務付けられている上場企業だけでなく、中小企業の間でも内部統制の重要性が増してきています。

内部統制はM&A・事業承継にどのような影響を与えるのでしょうか。この章では、内部統制が握るM&A・事業承継の成功ポイントを解説します。

【内部統制が握るM&A、事業承継の成功ポイント】

  1. M&A・事業承継における内部統制の役割を理解
  2. 経営者が率先して内部統制を進める
  3. 必要に応じて社外人材をまねく
  4. 社員・従業員に意識付けを行う
  5. 社員・従業員にはきちんと説明する

1.M&A・事業承継における内部統制の役割を理解

1つ目のポイントは、M&A・事業承継に内部統制の役割を理解することです。何のために内部統制を実施するのかを明確化していないと、ただの徒労に終わってしまう可能性が高くなります。

M&Aは会社を成長させるための経営戦略として広く活用されていますが、メリットばかりではなく当然大きなリスクが伴います。M&A前に想定していたシナジーが発揮できず、失敗に終わってしまうM&A事例も少なくありません。

これらのリスクを最小化するための方法として、内部統制を活用することができます。M&A対象の管理体制に関する適切な情報を、売り手側と買い手側の双方で共有することができるため、M&A交渉や統合プロセスを進めやすくなります。

これは事業承継においても同様であり、経営者交代という会社にとって重要な局面で、会社の管理体制が不健全だと事業承継後の経営に影響を与える可能性が高くなってしまいます。

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2.経営者が率先して内部統制を進める

2つ目のポイントは、経営者が率先して内部統制を進めることで仕組み作りを徹底することです。仕組み作りが行えておらず、一部の人間に依存してしまう属人的な業務体制は、組織としてあまり好ましいとはいえません。

特に中小企業の場合、経営者のリーダーシップによって会社全体を引っ張っているケースが多いです。それ自体は悪いことではありませんが、M&A・事業承継で次の経営者に変わったとき、リーダーシップが維持できなくなる恐れがあります。

先代の経営者のリーダーシップに依存していた場合は、業務に支障がでたり従業員の自主退職者がでたりする可能性が高いです。このような事態を避けるためにも、内部統制を徹底した組織の仕組み作りが重要になります。

3.必要に応じて社外人材をまねく

3つ目のポイントは、必要に応じて社外人材をまねくことです。社外取締役を設けて、業務執行や監督を行う役員として社外人材を招くと、内部統制の信頼性を向上させることができます。

社外人材の候補には、税理士や弁護士などが挙げられます。税務や法務は内部統制の目的を達成するために必要不可欠な要素となるので、内部統制の効率化に大きく貢献してくれます。

この記事で述べているのはM&A・事業承継における内部統制についてですが、社外人材の招へいは企業が抱える課題解決の方法として広く活用されています。

中小企業であれば顧問税理士、上場企業なら会計士やメインバンクなど、企業が抱える課題にあわせてさまざまな人材を社外から招いています。

4.社員・従業員に意識付けを行う

4つ目のポイントは、社員・従業員への意識付けです。経営者のリーダーシップによって内部統制を実行したとしても、社員・従業員の意識を変化させることができなければ、結果的に失敗に終わる可能性が高くなります。

社員・従業員の意識をすぐに変えることは難しいので、急激な変化を求めるのではなく時間をかけて徐々に浸透させていくことが大切です。

まずは経営者より社員・従業員に対して、内部統制の重要性を訴えることです。内部統制に意識を向けてもらったうえで、部署ごとの役割・業務分担のマニュアルを作成して、組織的な業務体制にスライドさせていきます。

5.社員・従業員にはきちんと説明する

5つ目のポイントは、社員・従業員への説明の徹底です。内部統制を徹底することで健全な管理体制になることを、会社全体で共有することが大切です。

意識付けの段階で、業務・役割分担に抵抗を感じる社員・従業員も現れてきます。これは、複数人で仕事を分担するよりも、一人で完結させた方が自身の価値を高められるという考えからです。

事実、優秀な人材に任せたほうが業務を効率的に行えることも多いですが、属人的な体制は組織にとってリスクが大きくなります。

転職などの流動性が高まっている時代において、特定の人材に頼った業務体制は危険です。業務・役割分担によるリスク分散化という重要性を、時間をかけて説明していくことが大切です。

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3. 内部統制の導入方法

内部統制の導入方法

内部統制は、M&A・事業承継の場面において、とても重要な役割を果たします。内部統制で会社の価値を高めることができれば、M&A・事業承継の成功率の向上にも期待することができます。

しかし、内部統制を計画的に進めるために、何から手をつけていいか分からないことも多いでしょう。そこでこの章では、内部統制の導入方法の3つのポイントを解説します。

【内部統制の導入方法】

  1. 1人に任せず、複数の社員・従業員に役割を分担する
  2. 導入までのスケジュールを決める
  3. 内部統制を導入するための計画を作る

1.1人に任せず、複数の社員・従業員に役割を分担する

内部統制を導入する上で重要になるのが、複数社員・従業員の業務・役割分担です。特定の社員・従業員に業務を集中させる属人的な体制ではなく、部署全体で取り組むように改革させていくことが大切です。

最初は複数人によるチェックから始めるのもよいでしょう。例えば、会社の経理を一人に任せている場合、事業資金の不正利用のリスクなどがありますが、複数人でチェックすると経理の透明性を格段に向上させることができます。

そのほかには、経営者の業務の一部を社員・従業員に任せるだけでも、内部統制のきっかけを作ることができます。業務・役割を単独で行うのではなく、広く共有することを意識付けていけば、内部統制は着実に進みます。

経営者の業務を社員・従業員が代行できるようになれば、M&A・事業承継による経営者交代の影響を抑えることにもつながるので、属人的な体制からの脱出は組織として好ましい状態といえるでしょう。

2.導入までのスケジュールを決める

内部統制は数年がかりで導入するものなので、スケジュールは入念に立てる必要があります。

特に、M&A・事業承継のために導入する場合は、実質的な期限が定められていることになるため、実施日を逆算してスケジュールを決定しなくてはなりません。

この場合、M&A・事業承継の実施日をゴールとして内部統制を導入することになります。一般的なM&Aのスケジュールは6~12ヵ月なので、両方を考慮したうえで全体スケジュールを決めていきます。

実施日までに組織としての仕組み作りを完了することができれば、万全の体制でM&A・事業承継に臨むことができます。

3.内部統制を導入するための計画を作る

最後のポイントは、内部統制を導入するための計画策定です。経営者のリーダーシップだけで進めようとすると内部統制の全体像を社内全体で共有しづらくなってしまうので、計画書を作成しておく必要があります。

内部統制は全部で4つの目的で成り立っていますが、すべてを同時に導入しようとすると社員・従業員が混乱してしまう恐れもあるため、一つ一つ順番に進めていくほうがよいでしょう。

1年目は内部統制計画策定と業務の有効性・効率性の構築、2年目は資産の保全など、じっくりと導入を進めていきます。時間がかかる方法ですが、着実に健全化を図ることができます。

時間がない場合は社外人材をまねく方法が有効です。各分野を率先して行える人材がいれば、同時進行することも可能です。

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4. なぜ今、内部統制が求められているのか?

なぜ今、内部統制が求められているのか?

内部統制が求められるのは、内部統制報告制度の義務化だけではありません。義務化されていない中小企業も主体的に内部統制を導入する時代が訪れています。この章では、内部統制が求められている理由を解説します。

J-SOX法の成立

1つ目の理由は、J-SOX法の成立です。財務報告における信頼性の確保を目的に2006年に成立、2008年に適用された制度です。

すべての上場企業は事業年度ごとに「有価証券報告書」と共に「内部統制報告書」を提出しなくてはなりません。

J-SOX法とは

J-SOX法は、米国で制定されたSOX法にならって日本で制定した制度です。SOX法の日本版ということから、J-SOX法として広く認識されています。

なお、J-SOX法は金融商品取引法の制度の一つです。J-SOX法はあくまでも俗称であり、そのような名称の法律が存在しているわけではありません。

経営の円滑化

内部統制で企業の管理体制を整えることで、経営の円滑化を図ることができます。経営者に集中していた業務を分散すると、組織的に業務・役割を分担させることとなり、経営ひいては業務全体が円滑化します。

業務・役割の分担は、M&A・事業承継による承継の際にも大きく影響します。経営の円滑化が行えているかどうかは、とても重要なポイントになります。

財務諸表などの信用度

内部統制で作成する内部統制報告書は、会計士や監査法人のチェックが必要です。外部監査を受けることで対外的な信用度を大きく向上させることができます。

財務諸表などの信用度が向上すると、組織全体が健全であることを証明することになります。結果的に企業価値の向上に繋がることになるので、経営面はもちろんM&A・事業承継においても有利に働きます。

経営陣に対する統制

内部統制には、経営陣に対する統制という働きもあります。経営陣が行う業務は社員・従業員や外部からは不透明になりがちですが、外部監査を受けることで透明性を強めて不正を防止する効果が期待できます。

不正リスクの引き下げは、M&A・事業承継においても高い評価に繋がります。M&Aの際は税務・財務・法務などのあらゆる観点からリスク調査されることが一般的なので、内部統制がしっかり機能している企業は強みとして押し出すことができます。

内部統制・M&Aでおすすめの相談先

内部統制を導入するためには、入念な準備が必要です。特にM&A・事業承継のための内部統制はさらに計画的に行う必要があるため、専門家のサポートは不可欠といえるでしょう。

M&A総合研究所は、M&A仲介の豊富な実績があるM&A仲介会社です。内部統制に精通したアドバイザーにより、内部統制の導入からM&Aの成約まで一貫したサポートを行います。

M&Aの直接サポートを担当するのは、M&A経験豊富なアドバイザーと弁護士です。M&A戦略策定や法務チェックを徹底することで、万全の体制でM&A・事業承継に臨みます。

M&Aの料金体系は完全成功報酬制を採用しています。M&Aの初期コストに不安がある場合も安心してご相談いただけます。

無料相談は24時間体制でお受けしていますので、内部統制・M&Aでお悩みの際は、M&A総合研究所までお気軽にご連絡ください。

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5. まとめ

まとめ

内部統制の概要やM&A・事業承継における重要性について解説しました。内部統制で組織の管理体制の健全化を図ることができれば、M&Aにおいても買い手からの評価を高めることができます。

M&A・事業承継を前提とした内部統制の導入は、中長期的な計画が必要になります。M&A・事業承継の成功率を高めるためにも、必要に応じてM&Aの専門家に相談することをおすすめします。

【内部統制の4つの目的】

  • 財務報告の信頼性・・・財務書類における情報の信頼性の確保
  • 法令等の遵守・・・事業活動に関わる法令遵守の促進
  • 資産の保全・・・資産の取得・使用・処分が正当な手続・承認の下に行われるよう保全
  • 業務の有効性・効率性の構築・・・事業活動の目的達成のため、業務の有効性・効率性を高める

【内部統制の6つの要素】
  • ITへの対応・・・内部統制目的達成のためのIT対応と導入
  • モニタリング(内部監査)・・・内部統制が適切に機能しているかを継続的に監査
  • 情報と伝達・・・必要な情報の伝達機能の確認
  • リスク評価と対応・・・内部統制目的達成を阻害する恐れがあるリスクの調査と対応
  • 統制活動・・・経営者の示す規定を実行するための方針とプロセスの体制確立
  • 統制環境・・・内部統制により健全な管理体制になることを関係者全員が認識すること

【内部統制が握るM&A、事業承継の成功ポイント】
  1. M&A・事業承継における内部統制の役割を理解
  2. 経営者が率先して内部統制を進める
  3. 必要に応じて社外人材をまねく
  4. 社員・従業員に意識付けを行う
  5. 社員・従業員にはきちんと説明する

【内部統制の導入方法】
  1. 1人に任せず、複数の社員・従業員に役割を分担する
  2. 導入までのスケジュールを決める
  3. 内部統制を導入するための計画を作る

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