会社売却・M&Aの際の退職金と税金の算出方法!経営者、従業員で違う?

会社売却・M&Aにおける退職金の扱いは、M&A手法によって大きく変わります。経営者と従業員においても違いが生じるため、事前に把握する必要があります。本記事では、会社売却・M&Aにおける退職金の扱いと税金の算出方法について詳しく解説します。


目次

  1. 会社売却・M&Aとは
  2. 会社売却・M&Aの際の退職金は経営者と従業員では違う?
  3. 会社売却とM&A(事業売却)の際の退職金は違う?
  4. 会社売却・M&Aの際の退職金・税金の算出方法
  5. 会社売却・M&Aの際の退職金支払いの注意点
  6. 会社売却・M&Aの際の退職金に関する知識
  7. 会社売却・M&Aのご相談はM&A総合研究所へ
  8. まとめ

1. 会社売却・M&Aとは

会社売却・M&Aとは

会社売却M&Aとは、経営権を他者に移転して会社を売ることをさします。売り手は売却益の獲得、買い手は会社の事業や人的資産の確保などのメリットがあります。

会社売却は会社の行末を決める大きな取引であり、経営者や従業員にも労働環境を始めとしたさまざまな変化が起こります。

会社売却を行うと従業員は退職扱いになりますが、その際に従業員は退職金を受け取ることになるのでしょうか。本記事では、会社売却・M&Aにおける退職金の扱いと税金の算出方法を解説します。

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2. 会社売却・M&Aの際の退職金は経営者と従業員では違う?

会社売却・M&Aの際の退職金は経営者と従業員では違う?

会社売却・M&Aの際の退職金は、経営者と従業員では違うのでしょうか。この章では、会社売却・M&Aの際の経営者・役員と従業員における退職金の扱いを解説します。

経営者・役員の退職金の内訳

会社売却・M&Aをすると、経営者・役員はタイミングを見て退職するのが一般的です。

ロックアップで一定期間は会社に残ることがありますが、最終的には退職して譲渡企業より退職金を受け取ります。

従業員の退職金の内訳

株式譲渡による会社売却では、経営権が移転するだけで会社と従業員との雇用関係は変化しません。そのため、会社売却の際に従業員への退職金は発生せず、退職金制度が引き継がれます。

買収側企業は人的資産を高く評価するので、従業員がモチベーションを上げられるように待遇アップとなることも多く、退職金の条件が良くなることもあります。

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3. 会社売却とM&A(事業売却)の際の退職金は違う?

会社売却とM&A(事業売却)の際の退職金は違う?

会社売却で主に使われる手法は、大きく分けて「会社売却」と「事業譲渡・売却」の2つです。この章では、会社売却と事業譲渡・売却による退職金の違いを解説します。

会社売却の場合

会社売却とは、株式取得によって株式を売却して経営権を移転させる手法です。株式取得の手法には、以下の4つがあります。

いずれも経営者が変わるだけで、会社と従業員の間で新たな雇用契約を取り交わす必要はありません。会社売却前の雇用条件が引き継がれ、退職金制度においても変化は生じません。

【会社売却の際の株式取得の手法】

  • 株式譲渡
  • 第三者割当増資
  • 株式交換
  • 株式移転

会社分割の場合

M&Aには会社分割という手法もあります。会社分割とは、1つの法人格を2つ以上の法人格に分割する手法です。

会社分割をすると従業員は別の会社に転籍となり、その際は会社分割前の契約を包括的に承継するので、退職金制度や勤続年数もそのまま引き継がれます。

事業譲渡・売却の場合

事業譲渡・売却は事業あるいは事業の一部を切り離して譲渡・売却する手法です。対象範囲は会社が保有する資産(事業・資産・人材など)のなかから自由に選択できます。

建物や土地などの資産のみを譲渡・売却するケースもありますが、従業員も同時に転籍するのが一般的です。

売却側企業での退職手続きと買収側企業の雇用契約を行う必要が生じ、労働条件なども引き継がれないため、事業譲渡・売却の段階でリセットされます。その際の退職金の扱いは、下記のとおりです。

  • 売却側企業が事業売却前までの退職金を精算
  • 買収先企業に退職金を引き継ぐ

売却側企業が事業売却前までの退職金を精算

1つ目は、事業譲渡・売却によって雇用契約を更新する段階で退職金を精算する方法です。売却側の規定に基づき退職金を支払い、転籍後は買収側の規定に基づき退職金の積立をゼロから開始します。

売却側企業は、事業譲渡で転籍する全従業員に対して退職金を支払うため、必要経費として事前に見積もりを取りましょう。

買収先企業に退職金を引き継ぐ

2つ目は、買収先の企業に退職金を引き継ぐ方法です。売却側企業の債務を買収側企業に引き継ぐのと同義で、この費用は譲渡価格の一部から相殺処理します。

4. 会社売却・M&Aの際の退職金・税金の算出方法

会社売却・M&Aの際の退職金・税金の算出方法

退職金の扱いは、会社売却・M&Aの手法で大きく変わります。この章では、退職金と税金の算出方法をケース別に解説します。

経営者・役員の退職金・税金の算出方法

まずは、経営者・役員の退職金・税金の算出方法について、会社売却と事業譲渡・売却のケース別に解説します。

会社売却の場合

会社売却の場合、経営者・役員はロックアップなどの特例を除いて退職することになり、発生する退職金は適切な計算方法を用いて求めます。

一般的な従業員と大きく違う点は、功績倍率という貢献度が加味されることです。この処理が退職金の計算に大きく影響します。

【経営者・役員の退職金の算出方法】

  • 退職時の月額報酬×役員勤続年数×功績倍率=退職金

功績倍率とは

功績倍率とは、創業者や役員の会社への貢献度を基準に算出した倍率です。明確な基準は設けられておらず、2.0~3.0倍が妥当です。

昭和52年には功績倍率7.5倍が認められた事例もありますが、これは退職事情やその他役員への支払い状況を加味したうえでの極めて特殊な判例といえるでしょう。

なお、功績倍率に正当性がなく不当と判断された場合は、損金不算入となり退職金に法人税が課せられます。

税金の算出方法

経営者・役員の退職金は、これまでの功績に対する後払いと退職後の生活資金という性質を持ちます。そのため、通常の役員報酬よりも税制面で優遇される特徴があります。

【経営者・役員の退職金の優遇ポイント】

  • 退職所得控除(勤続年数に応じた金額の控除)
  • 1/2課税(退職所得控除後の金額の半分が課税所得金額となる)
  • 分離課税(他の所得と分離して計算する)

退職所得の受給に関する申告書を提出することで、退職所得控除や1/2課税が有効です。この退職所得控除額を活用して、所得税と住民税を計算します。

【経営者・役員の退職金にかかる所得税の算出方法】

  • (退職金-退職所得控除額)×1/2=課税退職所得金額
  • (課税退職所得金額×所得税率-控除額)×復興特別所得税=所得税額

【経営者・役員の退職金にかかる住民税の算出方法】

  • 課税退職所得金額×10%=住民税額

退職所得控除額は納税額に大きく得影響しますが、この求め方は勤続年数が20年以下と20年超えで計算式が変わります。

【退職所得控除額の計算式】

  • (勤続年数20年以下)40万円×勤続年数(最低80万円)
  • (勤続年数20年超)800万円+70万円×(勤続年数-20年)

事業譲渡・売却の場合

事業譲渡・売却は、事業あるいは事業の一部を譲渡・売却する方法であり、経営者が変わるものではありません。

経営者は事業譲渡・売却後も引き続き経営に携わるため、退職金は発生せず特別な手続きを取る必要はありません。役員も同様で、事業譲渡・売却による退職金は発生しません。

従業員の退職金・税金の算出方法

続いて、従業員の退職金・税金の算出方法を会社売却と事業譲渡・売却のケース別に解説します。

会社売却の場合

会社売却は株式の売却によって経営権を移転させる手法です。会社と従業員の雇用契約に変化がないため、退職金も税金も発生しません。

従業員はあくまでも会社と契約しているだけなので、経営者が変わってもそのあり方には変化が生じないのです。

事業譲渡・売却の場合

事業譲渡・売却によって、転籍扱いとなる従業員には退職金が発生します。その際の退職金の計算式は、以下のものが使われます。

【従業員の退職金の代表的な計算式】

  • 最終給与連動方式
  • 全期間平均給与方式
  • 別テーブル方式
  • 勤続年数別定額方式
  • ポイント制方式

最終給与連動方式

最終給与連動方式とは、退職時の基本給を基準に勤続年数や年齢、退職事由を加味して算出する方法です。

勤続年数が長いほど高くなるように設定されていて、退職理由が個人的な場合はマイナス要素と判断されます。

事業譲渡・売却に伴う転籍であれば、個人的な都合ではなく正当な退職理由と認定されるため、退職金が目減りすることはありません。

【最終給与連動方式の計算式】

  • 退職時の月額報酬×支給率×退職事由係数=退職金

全期間平均給与方式

全期間平均給与方式とは、全期間の平均給与を基準にした算出方法です。基本的に基本給は上がり続けるため、最新の基本給を基準に計算すると退職金が高くなる傾向にあります。

そこで平均給与を用いて平均的な退職金を算出します。ただし、比較的給与が少ない新入社員の時期の給与も計算に入るため、低くなることが多いです。

【全期間平均給与方式の計算式】

  • 全期間の平均給与×支給率×退職事由係数=退職金

別テーブル方式

別テーブル方式とは、退職金計算用の第二基本給を基準にした算出方法です。経済の変化による物価上昇などによって著しい変化が訪れたときに、急激に退職金が上がることを防ぐために活用されます。

【別テーブル方式の計算式】

  • 第二基本給×支給率×退職事由係数=退職金

勤続年数別定額方式

勤続年数別定額方式とは、積立額を基準にした算出方法です。基本給ではなく、毎月の積立退職金を用います。

【勤続年数別定額方式の計算式】

  • 積立額×支給率×退職事由係数=退職金

ポイント制方式

ポイント制方式とは、企業が従業員に対して付与するポイントを基準に計算する算出方法です。

ポイントの付与は1年ごとに行われ、退職時の累計ポイントにポイント単価や支給率、退職理由を加味して退職金額を求めます。

【ポイント制方式の計算式】

  • ポイント累積値×ポイント単価×支給率×退職事由係数=退職金

税金の算出方法

事業譲渡・売却によって従業員が受け取る退職金には、所得税と住民税が発生します。その際に用いる計算式は、以下のとおりです。

【従業員の退職金にかかる所得税の算出方法】

  • (退職金-退職所得控除額)×1/2=課税退職所得金額
  • (課税退職所得金額×所得税率-控除額)×復興特別所得税=所得税額

【経営者・役員の退職金にかかる住民税の算出方法】

  • 課税退職所得金額×10%=住民税額

【関連】会社売却にはどんな税金がかかる?税金の内容と節税対策を徹底解説

5. 会社売却・M&Aの際の退職金支払いの注意点

会社売却・M&Aの際の退職金支払いの注意点

会社売却・M&Aの際の退職金支払いでは、いくつか注意するべき点があります。高額の金銭のやり取りが行われるため、とてもデリケートな問題です。従業員の不満を募らせないためにも慎重に行わなければなりません。

【会社売却・M&Aの際の退職金支払いの注意点】

  1. 退職金を清算するタイミング
  2. 勤続年数に関する注意
  3. 勤続年数による所得税の控除金額
  4. 従業員への説明

①退職金を清算するタイミング

会社売却・M&Aの際の退職金支払いの注意点1つ目は、退職金の清算時期です。売却側企業が精算する場合は、会社売却・M&Aを実施する段階で売却側企業の規定に基づき退職金を算出し、支払いを行います。

転籍扱いとなる全ての従業員に対して退職金を支払う義務が生じるため、高額出費は避けられません。

買収側企業に引き継ぐ場合は、一見すると売却側企業の負担が軽減されるようですが、会社売却・M&Aの交渉段階において、買収側企業に引き継ぐ債務として扱われ売却価格より差し引かれます。

注意すべきなのは、買収側企業の退職金に関する規定です。万が一、退職金の引き継ぎが正しく行われなければ従業員が被る損失は甚大なものとなるため、買収側企業としっかり話し合いましょう。

②勤続年数に関する注意

会社売却・M&Aの際の退職金支払いの注意点2つ目は、勤続年数の取扱いです。所得税の控除が関わる勤続年数は、デリケートに扱う必要があります。買収先企業に引き継ぎをする場合は、勤続年数の引き継ぎに関する確認が必要です。

転籍前の退職金と合算する場合は、所得税法に基づき計算します。勤続年数の引き継ぎを前提として、交渉を進めましょう。

③勤続年数による所得税の控除金額

会社売却・M&Aの際の退職金支払いの注意点3つ目は、勤続年数による所得税の控除金額です。退職金の算出方法には、勤続年数が大きく影響します。

勤続年数1年ごとに、20年以下の場合は40万円、20年超えの場合は70万円が控除されます。この差はとても大きく、キャリアを積み重ねる利点の1つです。

もし勤続年数が会社売却・M&Aによって不当にリセットされてしまったら、従業員は丸損することになります。従業員自身の都合による退職ならともかく、経営陣の都合による退職では従業員も納得できないでしょう。

退職金の精算を買収側に引き継ぎをする場合は、勤続年数の引き継ぎがなされるのかしっかり確認する必要があります。

④従業員への説明

従業員は、勤務する会社が会社売却することを知ると、退職金について不安になります。務める年数が長ければ長いほど、待遇・退職金が気になるものです。

会社売却が決定したときは、従業員の不安を払拭させるために早い段階で退職金の扱いについて説明することが大切です。

今後の処遇・福利厚生なども併せて説明し、従業員からの質問も受け付けて、従業員のモチベーションを維持しましょう。

6. 会社売却・M&Aの際の退職金に関する知識

会社売却・M&Aの際の退職金に関する知識

会社売却・M&Aの際の退職金に関する知識について見ていきましょう。

【会社売却・M&Aの際の退職金に関する知識】

  1. 役員の退職金は損金にできない場合がある
  2. 役員が退職金を受け取るタイミングは変わる
  3. 退職金は譲渡益の節税テクニックに使える

①役員の退職金は損金にできない場合がある

会社売却・M&Aの際の退職金に関する知識1つ目は、役員の退職金は損金にできない場合があることです。損金とは、会社の経費として処理して法人税から控除できる費用です。

退職金も損金として処理することが一般的ですが、役員の退職金が不当に高すぎると判断された場合は損金不算入となることがあります。

そのような事態が発生するのは、創業者や役員の退職金は功績倍率を用いて退職金を算出するからです。功績倍率とは、創業者や役員の会社への貢献度を数値化したものです。功績倍率は通常2.0~3.0倍が妥当とされており、その範囲であれば損金算入が認められます。

この範囲を大きく超える場合、創業者や役員が自身の利益を優先していると捉えられ、損金不算入となる場合があるので、適切な判断のもとで適正な功績倍率を設定しなければなりません。

②役員が退職金を受け取るタイミングは変わる

会社売却・M&Aの際の退職金に関する知識2つ目は、役員が退職金を受け取るタイミングが変わることです。

1つ目と同様、損金に関係します。損金の算入時期をコントロールすることは、会社が納める法人税を抑えることにもつながります。

【役員の退職金の損金算入時期】

  • (原則)株主総会で決議された日の事業年度
  • (特例)実際に退職金を支払い経理上で損金処理した日の事業年度

来期まで実際の支払いを留めておけば、特例を活用して来期に損金算入することが可能です。逆に今期の損金を増やしたいのであれば、今期末までに株主総会で決議を取る必要があります。

③退職金は譲渡益の節税テクニックに使える

会社売却・M&Aの際の退職金に関する知識3つ目は、退職金は譲渡益の節税テクニックに使えることです。これは、退職金が通常の報酬と比較して税制面が優遇されるためです。

創業者・役員の退職金を買収側企業が支払うことを前提に交渉を進めた場合、会社の売却価格から退職金を差し引きます。

このテクニックを利用することで、会社の譲渡益にかかる税金を抑えつつ、創業者や役員が受け取る退職金にかかる税金を大幅に優遇もしくは無税とすることが可能です。

【関連】事業譲渡・事業売却の税金は株式譲渡より高い?節税対策はできる?

7. 会社売却・M&Aのご相談はM&A総合研究所へ

M&A総合研究所

出典: https://masouken.com/

会社売却・M&Aは、さまざまな手続きを要します。会社売却の際に発生する退職金の扱いだけでも、会計士や税理士の力が必要不可欠です。

また、退職金を活用した税制テクニックもあります。これらを経営者自身で行おうとすると、大きな負担となり経営に支障が出る恐れもあります。

会社売却・M&Aを円滑に進めるためには、会社売却・M&Aを専門的に請け負う専門家への相談をおすすめします。

M&A総合研究所には、会社売却・M&Aに精通したM&Aアドバイザーが在籍しており、会社売却・M&Aに必要な手続きや退職金の扱いについてフルサポートいたします。

無料相談を行っておりますので、会社売却・M&をご検討の際は、どうぞお気軽にお問い合わせください。

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8. まとめ

まとめ

会社売却・M&Aの際の退職金は、ケースによってその扱いが大きく変わります。基本給とは違って高額な金銭のやり取りが発生するため、その扱いは慎重に行う必要があります。

会社売却・M&Aの際の従業員の退職金の精算は、タイミングも重要です。買収側企業に引き継ぐ場合は、勤続年数をはじめとしたいくつかの注意点があり、従業員が不満を募らせないためにも適切な処理が求められます。

M&A総合研究所では、会社売却・M&Aの経験や知識が豊富なM&Aアドバイザーによる退職金の処理を含めた会社売却・M&Aのサポートが可能です。

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