2020年02月28日公開
2021年02月09日更新
会社売却・企業売却の準備18選!高く売却するポイントを解説!
会社売却・企業売却を行うにはさまざまな準備が必要であり、何をすべきか把握しておかなければ苦労することもあります。当記事では、会社売却・企業売却を行うために必要な18の準備について解説します。また、会社・企業を高値で売却するポイントも紹介します。
目次
1. 会社売却・企業売却とは
会社売却・企業売却とは、会社が有するあらゆる資産・権利・契約などの所有権を売却することです。事業用資産・株式・取引先・従業員との雇用契約だけでなく、ノウハウ・ブランド力などの無形資産も含めて、他社に譲渡し、対価を受け取ることが可能です。
会社売却・企業売却は、従業員や取引先なども含めて考えると非常に多くの要素が関わるため、簡単に行えるものではありません。
2. 会社売却・企業売却の理由
会社売却・企業売却を行う主な理由には、以下の5つが挙げられます。
- 後継者問題を解決するため
- 従業員の雇用問題を解決するため
- 売却・譲渡益を獲得するため
- 個人保証・債務・担保などを解消するため
- 廃業しないため
①後継者問題を解決するため
経営者の高齢化に伴い事業を引き継ぎたくても、親族や役員に後継者となる人物が見当たらないケースが多いです。
そのため、後継者問題を解決する手段として会社売却・企業売却を行い、会社・事業の経営権を譲渡するケースも見られます。
「親族の自由を尊重する」「経営者としての能力が不十分」などの理由から、経営権を社外へ譲る割合も増えています。
②従業員の雇用問題を解決するため
会社売却・企業売却を行うことにより、従業員はその後も継続して働くことが可能です。経営者の高齢化などが原因でリタイアし、廃業してしまうと従業員は職を失くします。
「自社のために働いてくれた従業員の仕事をなくすのは心苦しい」と感じる経営者は非常に多いです。しかし、会社売却・企業売却であれば従業員の雇用も確保できます。
③売却・譲渡益を獲得するため
会社売却・企業売却を行うことにより、売却・譲渡益を獲得できます。会社売却・企業売却の売却価格は案件により異なりますが、おおよその目安は経常利益の5倍程度です。
そこから会社が入っていたテナントを入居時の状態に戻す原状回復費用などを差し引き、残った金額が売却・譲渡益です。
売却・譲渡益を得ることにより新たに事業を行うことも可能になるなど、さまざまな使い方ができます。
④個人保証・債務・担保などを解消するため
会社売却・企業売却を行うと、個人保証や担保などの負債も譲受企業が引き継ぎます。
「引退を考えているが、債務や担保のことが不安で躊躇してしまう」というケースでも、会社売却・企業売却を行うことにより解消できるのです。
⑤廃業しないため
2019年版中小企業白書によると、中小企業の休廃業総件数は2013年は34,800件でしたが、2018年には46,724件と、5年間で約1万件もの急激な増加が見られます。
会社売却・企業売却で資金力のある企業に買い取ってもらうと、経営者は利益を確保したうえで引退することが可能です。
また、事業自体は別の経営者が継続するため、従業員や顧客など周囲への影響も少なくて済みます。
3. 会社売却・企業売却の準備期間
会社売却・企業売却の準備期間は、売却で希望する条件や買い手側の状況などによりさまざまですが、最短では3ヵ月、最長では2年程度かかるといわれています。
書類などの準備をし、希望に合った売却先がスムーズに見つかった場合でも最低3か月はかかるので、それより短い準備期間では会社売却・企業売却を行うのは難しいといえるでしょう。
また、2年程度を必要とするのは、事業成長が見込まれる案件の場合です。今後の事業成長が見込まれる場合は、短期間での会社売却・企業売却だけではなく、長期の売却も視野に入れて準備を進める必要があります。
4. 会社売却・企業売却の準備18選
ここでは、会社売却・企業売却を行うために必要な準備を、以下の3つに分けてそれぞれ解説します。
- 買収・譲渡関係の準備
- 税務・財務関係の準備
- 人材・労務関係の準備
①買収・譲渡関係の準備
会社売却・企業売却の買収・譲渡関係の準備として、下記の10項目があります。
M&A仲介会社などと契約
会社売却・企業売却を行うためにはいろいろな準備が必要であり、漏れのないように進めるには専門家のサポートが不可欠です。
特に、会社売却・企業売却の場合は、法務・財務面での準備や手続きも多いため、M&A仲介会社などの専門家に助言をもらいながら進めましょう。
会社・企業・事業の売却・譲渡スケジュールの決定
会社売却・企業売却を行う際は、準備をしっかりと行い、スケジュールを決定しておくことが重要です。
具体的には、自社の現状・強み・市場価値を分析し、どのくらいの価額で売却するのか、効力発生日までの手続きの流れなどスケジュールを決定します。
特に以下の3点については、方針をしっかり固めましょう。
- 会社売却・事業売却が最善の経営判断であるかどうか
- どのような企業に事業を売却するのか
- いつまでに会社売却・事業売却を完了させる必要性があるのか
企業価値評価を施行
企業価値評価とは、会社自体の価値やその株式の価値を算出することです。非上場企業は、株式が証券市場に出回っていないので、市場価値を知ることができません。そのため、企業価値評価を使用することにより自社にどれくらいの価値が付くか算出します。
自社の価値を算出することで、どれくらいの価格で会社売却・企業売却できるのか予測してスケジュールを決定できるのです。
企業価値評価は、簡単なものであれば個人で計算することも不可能ではありません。しかし、企業価値評価の数字は非常に重要であるため、会計士や弁護士などの専門家に算出を依頼するほうが無難です。
売却・譲渡条件の優先順位づけ
会社売却・企業売却を行う準備では、自社における売却・譲渡の条件で大事なことを検討し、順位付けを行うことが重要です。
会社売却・企業売却に求める優先条件は個々により異なりますが、行うことによってどれくらい資金が入るのか、買い手がきちんと事業承継を行ってくれるのかなど、優先すべき条件を決めておけばスムーズに交渉を進められます。
事業譲渡・売却先の選定
売却・譲渡条件の優先順位づけが終わったら、具体的に会社売却・事業売却を進めますが、その際は作成したスケジュールをしっかり確認しながら行いましょう。
M&A仲介会社に依頼している場合は、複数の事業譲渡・売却先の相手候補先を紹介してもらえるので、その中から候補先を絞り込みます。
各種契約書関係の作成・準備
会社売却・企業売却を行うためには、いくつかの書類を作成・準備しなければなりません。
その中でも下記の2つは、重要な書類です。
- 秘密保持契約書
- アドバイザリー契約
秘密保持契約書
秘密保持契約書とは、会社売却・企業売却に関する機密情報の漏えいを防止するため、会社売却・企業売却に関する情報開示前にM&A仲介会社と買い手候補、売り手の間で締結する契約書のことです。
秘密保持契約書には、秘密保持における内容の範囲や期間などの規定が記されます。
アドバイザリー契約
アドバイザリー契約とは、M&A仲介会社に会社売却・企業売却に関するアドバイザリー業務を依頼するときに結ぶ契約のことで、この契約には着手金や成功報酬などが規定されます。
コンプライアンスの確認
会社売却・企業売却の契約では、目的を達成できない場合に契約を解除できる条項を定めることが一般的です。
わずかなことで契約解除されると契約の安定性が損なわれるため、解除が合理的な理由に限定されているかなど、バランスが取れる内容か確認します。
M&A・売却戦略の策定
M&A・売却戦略の策定とは、M&A・売却を行う前に目的を明確にし、目的を達成するための戦略をいい、M&A・売却戦略の準備をすることで合理的なM&Aが成立します。
M&A・売却戦略の策定をする際は、以下の点を踏まえて作成すると良いでしょう。
- 自社に対する分析を行う
- M&A・売却の目的を決める
- 市場調査を行う
- 戦略オプション案をまとめる
- 財務や会計を点検する
業界動向に注視
業界動向を把握するためには、市場調査を行うことが効果的です。同業種内での会社売却・企業売却の場合は、同じ業界内の市場調査を行えば良いので情報も得やすいといえるでしょう。
しかし、新規参入を目的とした場合は買収対象の市場調査を行う必要があるため、経営者自身が行うのは難しいこともあります。
M&Aを成功させるための準備として業界動向の把握は重要であり、自身で市場調査を行うのが困難な場合は、M&A仲介会社などの専門家に調査を依頼する必要があります。
必要な書類関係の準備
会社売却・企業売却を進めるにあたり、さまざまな書類や資料が必要です。自社のデータをまとめたり、資料を整理したりするなど、事前に準備をすると実際の交渉がスムーズに進みます。
【事前に整理するべき書類・資料】
- 自社のことを知ってもらう資料
- 財務資料
- 基礎的な資料
- 人事資料
- 契約関連の書類
②税務・財務関係の準備
会社売却・企業売却を行うための税務・財務関係の準備には、以下の3つがあります。
- 不透明・不明な取引の整理
- 会社・企業・事業の業績調整
- 事業別や月次データの正確性を確認
不透明・不明な取引の整理
会社内の管理体制が上手く整っていない場合、不透明な取引が行われている可能性があります。
会社売却・企業売却を具体的に進める段階で不透明・不明な取引が出れば、相手先企業から信頼を得ることは難しくなるでしょう。
そのため、会社売却・企業売却を行う前には不透明な取引がないかを徹底的に調べ、万が一見つかった場合は整理することが必要です。
会社・企業・事業の業績調整
自社を高く売却するには、相手先企業に対し、自社を買収する明確な価値を示すことが重要です。会社の価値には、自社の売上(生み出す利益)と保有する資産の2点が大きく影響します。
会社売却・企業売却を行う際は、実績管理をするとともに中長期的な売上・利益計画もしっかり立てるなど、今後の成長を期待できる経営状況を整えることも大切です。
事業別や月次データの正確性を確認
会社売却・事業売却を行う前は、事業別や月次データの正確性をしっかり確認しましょう。正確なデータを元に自社の強みと弱みを分析することは、スムーズなM&A交渉のために重要な要素です。
例えば、自社の強みをアピールする際は、どの事業が一番利益を出しており、年間で業績が良いのはいつなのかなどを正確に把握すると良いでしょう。
買い手企業にとっては、その会社にどのような強みがあるのか、どうすればその弱みをカバーできるのかが買収のポイントです。
その弱みがどのような企業であればカバーできるかを明確に示せれば、候補先企業の条件などの方向性も見えます。
③人材・労務関係の準備
会社売却・企業売却を行うための人材・労務関係の準備には、以下の5つがあります。
- 優秀な人材の見極め
- 退職者の確認
- 売却後の経営者の心構え
- 社会保険未払いなど労務管理の確認
- 企業理念・経営理念の確認
優秀な人材の見極め
会社売却・企業売却では、優秀な人材を抱えていることが大切です。自社にとって優秀な人材は買収後の企業でのキーマンとなる可能性が高いため、優秀な人材を見極めましょう。
また、実際に売却を進める前にM&Aを行う(検討している)情報が漏えいすることにより、優秀な人材が離職するケースは避けなければなりません。
退職者の確認
会社売却・企業売却では、従業員との雇用契約は原則引き継がれません。売却側での雇用をいったん終了し、あらためて買収側が移籍・転籍する各従業員と個別に雇用契約を結ぶ必要があります。
買収側の会社で働き続けるのか退職するのかについては、個々の従業に確認しなければなりません。
しかし、優秀な人材がいて買収先の企業での継続勤務を希望する場合は、雇用条件を調整するなどの対策も必要です。
売却後の経営者の心構え
自社を売却した後の状況について「あの会社に引き継がせて安心だろうか」「お金だけで決めてしまったのではないだろうか」などと考える経営者は少なくありません。
しかし、会社売却は会社と従業員の雇用継続のためには最良な手段なので、前向きに捉えて計画を進めることも大切です。
社会保険未払いなど労務管理の確認
現在、労務関係は非常に厳しく見られる傾向にあるため、さまざまな点からチェックしなければなりません。特に、社会保険の加入状況と支払状況には注意が必要です。
社会保険未加入・未払いがあれば買い手企業へ迷惑がかかるため、基本的に売却は難しくなります。
また、社会保険未加入の会社でもし利益が出ていても、買い手企業は社会保険加入に必要な費用を計算したうえで買収金額を決定するため、売り手と買い手の間で希望金額に大きな開きが出ることも考えられます。
企業理念・経営理念の確認
企業理念・経営理念は、企業の顔ともいえる部分であり、個性的な経営理念はそれだけで会社のイメージを決定づけます。
企業理念・経営理念は、現在の方向性だけでなく今後の方向性も表す非常に重要なものです。
そのため、会社売却・企業売却を行う際は自社の企業理念・経営理念が買い手としっかり当てはまるか確認しましょう。
準備不足により失敗する例
会社売却・企業売却を行うための準備不足で、売却に失敗する例を見ておきましょう。
M&Aの専門家を適当に選ぶと、仲介会社が買い手候補を広げたことで情報漏えいし、企業価値の棄損によって会社売却に失敗するケースも少なくありません。M&A仲介会社などにより売却の成否が変わることもあるため、慎重に専門家を選んでください。
また、売り手は自社の潜在価値がある部分の整理を怠ると、買い手から低く評価されることもあります。潜在価値の実現に向けた行動を前もってとるなどして、企業価値を正しく評価してもらい目標金額での売却を行いましょう。
売り手が自社の企業価値を適切に評価せず高すぎる売却金額を設定すると、買い手と条件が合わず失敗となることもあり得ます。企業価値算定の条件を把握し、売却目標を立ててください。
5. 会社売却・企業売却で高く売るポイント
会社売却・企業売却を行う際に、「少しでも高く売却したい」と考えるのは当然のことです。この章では、会社売却・企業売却で高く売るポイントを解説します。
- 他社にはない強み・アピールポイントを持つこと
- 事前準備を入念に行う・タイミングを誤らないこと
- 会社売却の際の希望条件に優先順位をつけること
- 会社売却期間中は誠実な対応を取ること
- 会社売却の専門家に相談すること
①他社にはない強み・アピールポイントを持つこと
会社売却・企業売却を行う際は、戦略などを計画する前にまず自社の強み・アピールポイントを持つことが大切です。
会社売却・企業売却を成功させるためには、まず売却先を見つけなければならず、対策や戦略をあれこれ考えても売却先がなければ意味がありません。
自社に合った売却先を見つけるためには、強みやアピールポイントを持ち、上手に自社を売りこむことが重要です。
②事前準備を入念に行う・タイミングを誤らないこと
会社売却・企業売却を行うにはさまざまな手続きが必要となるため、スムーズに進めるためには事前の準備が欠かせません。
準備不足で対応できなかったり、交渉が途中で止まったりすれば、M&A自体が中止となる可能性もあります。
また、会社売却・企業売却を行うには時期やタイミングが重要なポイントになるため、準備不足によって失敗しないようにしてください。
③会社売却の際の希望条件に優先順位をつけること
会社売却を行う際、自社にとって大事な条件をあらためて考え、優先順位をつけることが重要です。
優先する条件は「最低この程度の売却益が欲しい」「従業員の雇用を引き継いでほしい」などさまざまですが、M&Aを成立させるためには売り手・買い手双方が納得のいく交渉を進めなければなりません。
自社の希望だけをすべてとおすのは難しい場面も出てくるため、優先順位を決めておけば譲歩する判断もしやすくなり、その結果スムーズに交渉を進めることが可能です。
④会社売却期間中は誠実な対応を取ること
会社売却を行うための事前の準備を十分に行っても、会社売却期間中に不誠実な対応をすれば、途中で交渉が打ち切られる可能性もあります。
買い手によっては、売却を行う会社だけではなく、会社を経営していた人物なども見ています。
会社売却時の対応が誠実でなければ買い手が不信感を持ってしまい、スムーズに交渉ができなくなる可能性もあるので、常に誠実な対応を取るよう心掛けましょう。
⑤会社売却の専門家に相談すること
会社売却・企業売却の手続きには複雑なものが多いため、M&A仲介会社など専門家のサポートは不可欠です。
M&Aに関する内容だけでなく、会計・財務・法務などに対する専門知識も必要になるため、一貫したサポートを行う実績豊富な専門家に相談することをおすすめします。
最近は無料相談を行う仲介会社も多いので、まずは相談してみるのも方法の一つです。
6. 会社売却・企業売却の際に選ばれる主な手法
会社売却・企業売却の際に選ばれる主な手法は、株式譲渡と事業譲渡の2つです。ここでは、2つの手法の特徴について解説します。
株式譲渡
株式譲渡とは、自社の株式を譲渡して会社の経営権を相手側に譲渡することをいい、株主が変わって経営権が移るだけの会社売却の方法です。
株式譲渡は、企業の資産・負債をすべて買い手企業が引き継ぎ、会社自体はそのまま存続するため、従業員や顧客、取引先への影響はほとんどありません。
株式を譲渡することにより、売り手企業の経営者は現金を手に入れることが可能です。
事業譲渡
事業譲渡とは、事業そのものを買い手に売却する方法で、一部分だけの事業の売却・すべての事業の売却のどちらも可能です。
譲渡できるものは土地・建物などの有形資産や、売掛金・在庫などの流動資産だけでなく、無形資産である営業権・人材・ノウハウなども譲渡対象です。
事業譲渡は株式譲渡に比べて手続きが複雑になるものの、買い手にとって欲しい事業や必要な部分だけを手に入れられるメリットがあります。
7. 会社売却・企業売却の相談先
会社売却・企業売却を行うにはさまざまな準備が必要で、専門的な知識も要するため、M&A仲介会社などの専門家に相談・依頼することをおすすめします。
M&A総合研究所は中小規模の案件を主に取り扱っており、会社売却・企業売却に精通したM&Aアドバイザーが親身になって案件をフルサポートいたします。
また、料金体系は着手金・中間金が無料の完全成功報酬制を採用しており、成約に至らなければ料金は一切かかりません。
無料相談を行っておりますので、会社売却・企業売却をご検討の際は、どうぞお気軽にお問い合わせください。
8. まとめ
会社売却・企業売却の準備に必要な事項について解説しました。会社売却・企業売却を行うには多くの準備が必要であるため、専門家のサポートを受けながら進めるのが効率的です。自社に適した専門家を探して、会社売却・企業売却の準備を進めてみてください。