事業承継5ヶ年計画の背景や概要を解説!中小企業庁の戦略とは?

2017年、中小企業庁は事業承継5ヶ年計画を策定しました。事業承継5ヶ年計画とは、後継者問題を抱える中小企業を対象として、策定から5年間集中的に事業承継支援をする施策です。本記事では、事業承継5ヶ年計画の背景や戦略内容の詳細を解説します。


目次

  1. 事業承継5ヶ年計画とは
  2. 事業承継5ヶ年計画が策定された背景
  3. 事業承継5ヶ年計画から見る中小企業庁の戦略
  4. 事業承継5ヶ年計画の概要と施策
  5. 事業承継に向けた集中的な取組に関する工程表
  6. 事業承継に関する資料一覧
  7. 事業承継の相談先
  8. まとめ

1. 事業承継5ヶ年計画とは

事業承継5ヶ年計画とは

出典: https://pixabay.com/ja/

事業承継5ヶ年計画とは、中小企業の事業承継支援を目的とする中小企業庁の施策であり、2017年の策定から5年間、集中的に事業承継支援を行うという内容になっています。

集中的な支援により地域事業の事業承継機会を増やすことで、後継者が経営革新などにチャレンジしやすい環境を整えることに繋がるとしています。

しかし、事業承継5ヶ年計画が広く認知されていないこともあり、5ヶ年計画の存在自体すら把握していない経営者の方も少なくありません。

そこで当記事では、事業承継5ヶ年計画の背景や中小企業庁の戦略について詳しく解説します。

中小企業庁とは

中小企業庁とは、中小企業の育成・発展に関する事務を手掛ける日本の行政機関です。全部で13個の任務を掲げており、いずれも中小企業の支援に関する内容になっています。

この度掲げられた事業承継5ヶ年計画も中小企業庁の数ある支援政策の一つであり、中小企業の繁栄を通して日本経済の健全な発展を目指します。

【中小企業庁の任務】

  • 中小企業の育成・発展を図るための企画・立案
  • 中小企業の経営改善・技術向上
  • 中小企業の新事業の創出
  • 中小企業に係る取引の適正化
  • 中小企業の事業活動の機会の確保
  • 中小企業の経営安定
  • 中小企業の円滑な資金供給
  • 中小企業の経営に関する診断・助言・研修
  • 中小企業の交流・連携
  • 中小企業の相談・行政
  • 中小企業に他の行政機関の所掌に属しない事務
  • 所掌事務に係る国際協力
  • 法律に基づき中小企業庁に属させられた事務

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2. 事業承継5ヶ年計画が策定された背景

事業承継5ヶ年計画が策定された背景

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事業承継5ヶ年計画が策定された背景には、中小企業が抱える経営課題があります。数十万者の中小企業が事業承継のタイミングを迎えるなか、それぞれが抱える経営課題によって後継者への引き継ぎが行えていない状況にあります。

抜本的な支援政策を行わなければ状況は悪化し続けるという判断から、事業承継5ヶ年計画が策定されています。

【事業承継5ヶ年計画が策定された背景】

  1. 中小企業経営者の高齢化
  2. 高齢化による業績の停滞を懸念
  3. 事業継承が進んでいない

①中小企業経営者の高齢化

中小企業庁によると、事業承継5ヶ年計画が策定された2017年から5年間で30万以上の経営者が70歳を迎えるというデータが明らかになっています。

中小企業の経営者の平均引退年齢は67~70歳前後とされており、中小企業の多くが事業承継のタイミングを迎えつつあることが分かります。

②高齢化による業績の停滞を懸念

経営者の高齢化は業績停滞に直結するため、早急に事業承継を進めなければならないことは分かっていても、なかなか難しいのが現状です。

日本企業における中小企業の割合は全体の99.7%であり、日本経済は中小企業が支えているといっても過言ではなく、中小企業の業績停滞は日本経済に大打撃を与えることが想定されます。

高齢化が進んで取り返しの付かない事態に発展する前に、事業承継を進めようというのが5ヶ年計画の概要です。

③事業継承が進んでいない

中小企業庁のアンケート調査によると、5年間で70歳を迎える経営者の内6割は後継者が未定であり、70代を迎える経営者も事業承継の準備を進めている経営者は約半数にとどまっていることが明らかになっています。

経営者として引退の時期が近づいていると分かってはいても、日々の経営に追われて後継者育成等の準備が進められていない現状があります。このような経営者の一助として、5ヶ年計画が機能することが期待されています。

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3. 事業承継5ヶ年計画から見る中小企業庁の戦略

事業承継5ヶ年計画から見る中小企業庁の戦略

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事業承継5ヶ年計画の戦略は「柱となる5つの取組みを定めて5年後のあるべき姿を目指す」というものです。

5ヶ年計画は現状の認識から始まり最終的に目指す形であり、事業承継を契機にベンチャー型事業承継などの経営革新などを目指す経営者が積極的にチャレンジしやすい環境を整えるというものです。

この一連の流れを5つの取組みに分散し、確実に進行させていこうというのが、5ヶ年計画の戦略です。5ヶ年計画の5つの取組みについては次章で詳しく解説します。

4. 事業承継5ヶ年計画の概要と施策

事業承継5ヶ年計画の概要と施策

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中小企業庁は事業承継5ヶ年計画で5つの取組みを掲げています。5年間以内の達成を目指すもので、2020年現在は既に形となっている取り組みも沢山あります。

内容としては、支援体制・支援成約を抜本的に強化するというものです。ここでは、5ヶ年計画における5つの観点の詳細な取り組みを解説します。

【事業承継5ヶ年計画の概要と施策】

  1. 経営者の「気付き」の提供
  2. 後継者が継ぎたくなるような環境を整備
  3. 後継者マッチング支援の強化
  4. 事業からの退出や事業統合等をしやすい環境の整備
  5. 経営人材の活用
 
中小企業庁「事業承継5ヶ年計画」
http://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/2017/170707shoukei1.pdf"

①経営者の「気付き」の提供

「気付き」の提供とは、プッシュ型の支援を通して地域の事業承継のニーズを掘り起こすことです。

事業承継の重要さを理解していながらも、日々の経営に追われることで事業承継に関する取り組みを後回しにする中小企業も少なくありません。

5ヶ年計画では、地域の支援者同士が連携できる支援プラットフォームを確立することで、事業承継に積極的な行動を起こしてもらいやすい環境を整え、事業承継の機会を増やすことを目的としています。

事業承継プレ支援のプラットフォームの構築

5ヶ年計画の事業承継プレ支援のプラットフォームとして、事業承継ネットワークが設立されています。

事業承継ネットワークは、後継者問題や事業承継に悩みを抱える経営者が気軽に相談できる環境を整えるために、政府と各地方自治体が連携して設立した公的機関です。

各都道府県の設置が進んでおり、事業承継の手順の案内や後継者候補の紹介を通して、地域の事業承継ニーズ掘り起こしに多大な貢献をもたらしています。

②後継者が継ぎたくなるような環境を整備

事業承継が進まない理由の一つに、中小企業の経営状態の悪化があります。事業承継5ヶ年計画の策定直前である2016年度の中小企業の赤字経営の割合は63.5%です。

赤字経営の企業が多いと、辛い経営が待っていることが容易に想定されるため、後継者は事業承継に対して前向きになれない問題があります。

5ヶ年計画では中小企業の経営改善を目指し、後継者が現れやすい環境整備を急ぐという目的もあります。

早期承継のインセンティブの強化

5ヶ年計画における中小企業の経営改善策の代表例は、「事業承継補助金」です。事業承継補助金とは、M&A・事業承継を通して経営革新等を目指す事業者に対して費用の一部を支援する制度です。

条件を満たすことで最大1200万円の補助金を受け取れる制度であり、事業承継5ヶ年計画の策定から毎年実施されています。

早期承継によって得られるインセンティブをアピールすることで、後継者が継ぎやすい環境整備を急いでいます。

【関連】事業承継の時に補助金は出る?応募の条件と採択率、金額を紹介!

③後継者マッチング支援の強化

中小企業の事業承継は親族に引き継ぐ親族内承継が一般的だったため、後継者を外部から探すという考え方に対してよい印象を持たない経営者も少なくありません。

中小企業庁は、5ヶ年計画の一環で後継者マッチング支援を強化することで、M&Aによる事業承継のメリットを強くアピールし、M&Aに持たれがちなネガティブなイメージの改善を目指します。

小規模M&Aマーケットの形成

5ヶ年計画のマッチング支援強化として、「事業引継ぎ支援センター」が挙げられます。地域の民間企業と連携することで中小企業の事業承継サポートを行う公的機関です。

事業引継ぎ支援センターが手掛ける事業には、独立を目指す起業家と後継者問題を抱える中小企業をマッチングさせる「後継者人材バンク」があり、小規模のM&A・事業承継も成立させやすい環境を整えています。

④事業からの退出や事業統合等をしやすい環境の整備

1つの中小企業が倒産・廃業すると、取引先や地域の経済に大きな影響を与えます。例えば、製造業の場合は製造ラインに狂いが生じてしまい、関連企業や取引先、消費者にも影響を及ぼしてしまいます。

廃業という選択肢を取るのではなく、関連企業や地域の連携を強めることで事業統合しやすい環境を整え、ノウハウ・技術の承継を推進させようという狙いもあります。

サプライチェーン・地域における事業統合等の支援

サプライチェーンとは、製品の製造から販売・消費までの一連の流れのことです。5ヶ年計画では地域における事業統合・共同化を集中的に支援することで、中小企業の経営力の底上げを推進します。

⑤経営人材の活用

事業承継は、後継者に引き継いだら終わりというわけではありません。中小企業の経営を引き継いだ後継者は、企業が抱えるさまざまな経営課題に向き合う必要があります。

経営者としての資質が問われるため、経営能力を携えている人材を派遣することで、事業承継後の事業安定までの支援を行います

経営スキルの高い人材を事業承継支援へ活用

事業承継5ヶ年計画では、経営スキルの高い人材を派遣して事業承継支援を行います。具体的には、人材紹介会社と事業引き継ぎ支援センターが連携することで、経営人材を必要とする中小企業に人材を派遣します。

あわせて、経営人材に対するインセンティブ策も検討することで、人材紹介会社と事業引き継ぎ支援センターの連携を推進させます。

5. 事業承継に向けた集中的な取組に関する工程表

事業承継に向けた集中的な取組に関する工程表

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中小企業庁は、事業承継5ヶ年計画の5つの取組みについて工程表を発表しています。5つの取組みの具体的な内容の進捗度が分かる内容となっており、既に実現している取り組みと今後の展開について確認することができます。

事業承継補助金や事業承継ネットワークなど、既に実現されているものも多く、5ヶ年計画はおおむね予定通りに進行していることが分かります。

3年目以降の見通しは漠然とした内容のものが多いので、5ヶ年計画の今後の展開にも注目が集まります。

5ヶ年計画の最終的目標として5年目以降の目指すべき姿を定めて、下記の工程表通りに支援政策の充実を図ります。

【事業承継5ヶ年計画の工程表】

  1年目 2年目 3年目 4年目 5年目
地域の支援体制確立 事業承継ネットワークの全国展開 事業承継診断と支援体制強化の実施
早期事業承継への
インセンティブ付け
事業承継補助金の活用 事業承継補助金等を促進
早期承継インセンティブ強化
事業承継税制の要件緩和 事業承継税制の更なる活用
小規模
M&Aマーケット育成
事業引継ぎ支援センターの体制強化 民間データベースとの連携強化
事業引き継ぎデータベースの開示範囲の拡大
小規模事業者の資産を起業家に引き継ぐマッチング支援
サプライチェーン
地域の事業統合支援
自主的な事業承継支援促進 自主行動計画のフォローアップ
  中小企業基盤整備機構・事業引継ぎ支援センターとの連携強化
事業承継ネットワークによるニーズの掘り起こし
事業統合促進制度検討 事業統合・共同化を促進するための制度実現と促進
経営人材の活用 事業引継ぎ支援センターと人材派遣会社の連携 経営者OB人材等をアドバイザーとして活用
経営人材の活用促進のためのインセンティブ策の実現と促進

6. 事業承継に関する資料一覧

事業承継に関する資料一覧

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中小企業庁では、事業承継5ヶ年計画以外にも積極的に中小企業の事業承継支援を行っています。事業承継に関する知識を広める目的で関連資料を公開しており、参考になるものも沢山あります。

5ヶ年計画に関する認識を深めることにも繋がるので、事業承継のタイミングを迎えている方や5ヶ年計画をきっかけに事業承継を考えている方は、目を通しておくことをおすすめします。

事業承継マニュアル

事業承継マニュアルは中小企業・小規模事業者を対象にした事業承継資料です。全4章で構成されており、全てを読み進めることで、事業承継の考え方や中小企業庁が行っている支援政策について知ることができます。

第1章のアウトラインを読むだけでも、中小企業が直面している事業承継問題について把握することができるので、目を通してみることをおすすめします。

【事業承継マニュアル】

  • 第1章:アウトライン
  • 第2章:事業承継計画
  • 第3章:事業承継を成功させるアクション
  • 第4章:中小企業の事業承継をサポートする取組
 
中小企業庁「経営者のための事業承継マニュアル」
https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/2017/170410shoukei.pdf

【関連】事業承継マニュアルって何?くわしく簡単解説!

事業承継ガイドライン

事業承継ガイドラインは、事業承継に向けた早期取組の重要性の認識を広めるために制作された資料です。

事業承継により技術・ノウハウを引き継ぐことの重要性や、周囲に相談先がいないことで行き詰まっている経営者の取りうる手段について知ることができます。

【事業承継ガイドライン】

  • 第1章:事業承継の重要性
  • 第2章:事業承継に向けた準備の進め方
  • 第3章:事業承継の類型ごとの課題と対応策
  • 第4章:事業承継の円滑化に資する手法
  • 第5章:個人事業主の事業承継
  • 第6章:中小企業の事業承継をサポートする仕組み
 
中小企業庁「事業承継ガイドライン」
https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/2016/161205shoukei1.pdf

「会社を未来につなげる-10年先の会社を考えよう-」

本資料は会社や事業の将来に焦点をあてた事業承継資料です。10年後の会社・事業の姿を想像することで、現在すべき行動を「見える化」することを目的としています。

会社の現状の確認から、経営の見える化を通して会社・事業の将来の見通しを立てます。会社・事業をできるだけ良い形で事業承継するためにも、早期から取り組んでおくことが大切です。

【会社を未来につなげる-10年先の会社を考えよう-】

  • 会社のいま
  • 経営の見える化
  • 会社の磨き上げ
  • 事業承継
  • 会社・事業の将来
 
中小企業庁「会社を未来につなげる-10年先の会社を考えよう-」
https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/2017/170327shoukei.pdf

事業承継税制(贈与税・相続税の納税猶予及び免除制度)について

本書は事業承継の納税猶予制度に関する資料です。事業承継税制の概要から始まり、相続税・贈与税の納税猶予制度の内容について知ることができます。

事業承継の際に税金を多く払うことになると、その後の事業に支障が出ることも考えられます。納税負担を少しでも抑えるためにも、本書を読み進めて早期から準備を進めておくことが大切です。

【事業承継税制の納税猶予制度】

  • 第1章:事業承継税制の概要
  • 第2章:都道府県知事の認定について
  • 第3章:都道府県知事への報告について
  • 第4章:認定の取消について
  • 第5章:認定後の組織再編について
  • 第6章:贈与者に相続が開始した場合
  • 第7章:⽤語・定義
  • 第8章:都道府県庁の担当窓⼝
 
中小企業庁「事業承継税制の納税猶予制度」
https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/2019/190516zouyo_souzoku_ikou.pdf

7. 事業承継の相談先

事業承継の相談先

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事業承継5ヶ年計画によりさまざま支援政策が充実してきており、取りうる選択肢も豊富になっています。5ヶ年計画の真っ只中にある今こそ、中小企業が事業承継する絶好のタイミングともいえるでしょう。

事業承継の際は、ぜひM&A総合研究所にご相談ください。M&A総合研究所は、M&A・事業承継のサポートを行っているM&A仲介会社です。

M&A総合研究所は、中小企業の経営者様から事業承継に関するご相談を受けており、数々の事業承継の実績を保有しています。

独自に保有するネットワークと5ヶ年計画の支援政策をフル活用するサポートにより、よりよい形での事業承継実現を目指します。

料金体系は完全成功報酬制を採用しています。事業承継が実現するまで一切の手数料が発生しないため、万一進行が途中で途切れた場合は手数料の支払いはありません。

無料相談は24時間お受けしています。事業承継や5ヶ年計画に関するお悩みなら、M&A総合研究所へお気軽にご連絡ください。

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電話で無料相談
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8. まとめ

まとめ

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当記事では、事業承継5ヶ年計画について解説しました。中小企業の後継者問題が深刻化するなか、集中的な支援政策が充実されつつあります。

事業承継を検討している中小企業にとっては、5ヶ年計画の期間中が勝負ともいえます。5ヶ年計画の支援政策をフル活用して経営改善を図り、最善の形での事業承継を目指しましょう。

【事業承継5ヶ年計画まとめ】

  • 事業承継5ヶ年計画とは中小企業の事業承継支援を目的とする中小企業庁の施策
  • 中小企業庁とは中小企業の育成・発展に関する事務を手掛ける日本の行政機関

【事業承継5ヶ年計画が策定された背景】
  1. 中小企業経営者の高齢化
  2. 高齢化による業績の停滞を懸念
  3. 事業継承が進んでいない

【事業承継5ヶ年計画の概要と施策】
  1. 経営者の「気付き」の提供
  2. 後継者が継ぎたくなるような環境を整備
  3. 後継者マッチング支援の強化
  4. 事業からの退出や事業統合等をしやすい環境の整備
  5. 経営人材の活用

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