事業承継の計画はどう作る?作成前の準備やタイミングも解説

会社の事業承継に向け、分かりやすく具体的な計画を立てることは必要です。しかし事業承継計画をいつ、どんな風に立てるべきか知らない方は多いでしょう。この記事では、事業承継計画の立て方や準備の仕方、作成のタイミングと内容について解説していきます。


目次

  1. 事業承継計画とは?作成の意義と目的
  2. 事業承継計画作成のメリット3つ
  3. 事業承継計画の書き方は?ひな形を活用しよう!
  4. 事業承継計画作成のタイミング
  5. 事業承継計画を作るまでに必要な準備
  6. 事業承継計画に記すべき内容
  7. 事業承継計画作りを成功させるには?
  8. 事業承継計画はM&A仲介会社への相談で解決しよう!
  9. まとめ

1. 事業承継計画とは?作成の意義と目的

円滑に会社を引き継ぐため、事業承継計画の策定は必須です。しかし事業承継計画が具体的にどんなものなのかよく分からないという方もいるでしょう。

ここからは事業承継計画、計画作成の意義について解説していきます。

1-1.そもそも事業承継計画とは?

中小企業庁の発表した事業承継ガイドラインによると、事業承継計画とは「事業承継計画とは、中長期の経営計画に、事業承継の時期、具体的な対策を盛り込んだもの」です。

簡単にまとめると、事業承継という一大プロジェクト実行のための具体的なスケジュールを立てることが、事業承継計画策定の大きな目的だと言えます。

関係者全員が事業承継に向けたビジョンを共有できるよう、事業承継計画は第三者にも理解できるよう作成するのが基本です。

1-2.事業承継計画の意義

事業承継計画があれば、事業承継手続きに向けやるべきことが明確になります。計画なしでの引継ぎも可能ですが、事前に計画を立てれば「いつまでにどんなことをすべきか」、具体的に見えてくるので引継ぎは一層スムーズになるでしょう。

また計画策定の途中で会社の現状分析もできるので、経営課題が判明し今後の改善点も見えてくるはずです。綿密な計画の策定には時間がかかりますが、事業承継の指針を早めに作ることで、無駄なく承継を進められます。

以下では事業承継計画のさらに細かいメリットについて、解説していきます。

2. 事業承継計画作成のメリット3つ

事業承継計画の策定には時間がかかってしまうため、「通常の業務に悪影響が出そう」と不安に感じる方もいるでしょう。しかし時間をかけてでも計画を作るべき理由は複数あります。

事業承継計画を策定するメリットは、以下の通りです。
 

  1. 不備なく事業承継ができる
  2. 会社の現状を把握できる
  3. 後継者と事業承継の認識を合わせられる

メリットを理解し、適切な承継計画を立てましょう。

メリット1.不備なく事業承継ができる

計画をきちんと作っておけば、手続きの漏れなどが起こりにくく不備の無い事業承継が可能です。

事業承継には、数多くの手続きが必要です。ごく近しい親族に承継をする場合でも、名義の書き換えや相続、贈与の手続き、従業員や関係者に対する説明などやらなければならないことがたくさんあります。

特に相続税、贈与税ついては支払い忘れがあると、後にペナルティが発生することもあるので専門家と共にしっかり計算しなければいけません。

事業承継計画を立てることで、必要な手続きが事前に分かるため不備の無い承継が可能になります。チェックリストや一覧表も作成しておけば、手続きの進行度合いもしっかり把握できるでしょう。

メリット2.会社の現状を把握できる

計画書を作ることで、今の経営を見直すきっかけができます。事業承継計画の策定では、最初に経営状況の把握・分析を行い経営課題を把握するのが理想とされています。

通常の業務をこなしているだけでは見えてこない会社の課題も、計画策定を機にチェックできるので経営の改善にもつながるでしょう。

また経営上の課題について関係者が共通の認識を持つことができるので、現経営者が退職した後でも業務改善の方針が立てやすくなります。

メリット3.後継者と事業承継の認識を合わせられる

事業承継計画を紙に残すことで、後継者との考えの違いをあらかじめ認識しておくことができます。

後継者がすでに決まっている場合でも、事業承継の途中で「想像していたものと違う」「事前に説明されていない業務があった」などの理由で引継ぎを拒否されるケースも少なくありません。

育成途中で後継者がいなくなれば、また後継者探しから始めなければいけないため、非常に長い時間がかかってしまいます。

また後継者と現経営者の考え方が大きく違う場合、会社方針について対立が起き社内の派閥争いに発展することもあるはずです。

こうしたトラブルを防ぐため、計画の作成段階で後継者と事業承継に関する認識をある程度揃えておくことが大切です。後継者と共に計画作りを行えば、お互いの考えが分かり妥協点を見つけやすくなるでしょう。

3. 事業承継計画の書き方は?ひな形を活用しよう!

事業承継計画の策定方法は様々ですが、どの企業も利用できるよう中小企業庁が策定しているひな形・記入例もあります。作成前の準備事項に関するひな形はこちら、実際の計画表についてはこちらからダウンロードできます。

後に詳しく紹介する親族内承継、親族外承継で会社の引継ぎをしたいと考えている方は、これに沿って必要事項を決めていくと良いでしょう。

ただしM&Aでの承継を考えている場合、相手企業の状況によって計画は大きく変わります。M&Aを検討している会社は先にM&A仲介会社などに相談し今後の見通しについて聞くのがおすすめです。

また中小企業庁のHPからダウンロードできるひな形は大まかなものですので、詳しい計画策定については専門家と相談しながら進める必要があります。

手法に関わらず、会社の引継ぎを考えている方は早めに税理士や会計士、事業承継コンサルタントなどに相談してみましょう。

4. 事業承継計画作成のタイミング

事業承継計画は、遅くとも60歳を迎える前に作り始めましょう。

後継者教育などを含めると、事業承継には長くて10年以上の時間がかかります。そのため「会社を引き継ぎたい」「廃業ではなく、今後も会社を残したい」と感じた時には事業承継に向けて動き出さなければいけません。

特に小規模な企業においては、事業承継は親族内だけの問題と認識され専門家や社員などへの相談が遅れがちです。一つの目安として、病気のリスクが高まる60歳の時には事業承継準備に着手すべきでしょう。

また一方中小企業庁の調べによると、事業承継の時期に関して「ちょうどよい時期だった」と回答した経営者の平均年齢は43歳ほど。できるだけ早い時期に計画の策定を始めることで、事業承継の成功率があがります

ここからは、早めの事業承継計画実行に向けて必要な準備について解説していきます。事業承継について少しでも考えている方は、ぜひ参考にしてください。

5. 事業承継計画を作るまでに必要な準備

事業承継計画を作る前に、最低限やっておくべき準備は以下の通りです。
 

  1. 事業承継の方法を決める
  2. 後継者を決定する
  3. 会社の経営状況を把握する
  4. 後継者以外の相続人に残す資産を決める
  5. 会社の経営状況を改善する

以上5つは計画の根幹にかかわる部分ですので、社内外で話し合いを行い早めに準備を進めましょう。

準備1.事業承継の方法を決める

事業承継の方法を先に決めることで、計画の大まかな見通しを立てることができます。

経営者の交代を考えている会社が事業承継を行う方法は、以下の3つです。
 

  1. 親族内承継
  2. 従業員承継
  3. M&A

例えば、親族内承継では、早めに後継者としての育成を始めやすく、一緒に働きながらノウハウなどを引き継いでもらうことができます。

親族外承継は、働いている従業員の中から最適な人材を見つけて育成することで後継者とできるため、業務を知っていることから育成がスムーズです。

M&Aは、会社を売買することで後継者を買い手から用意してもらえます。これにより、親族や従業員が頼りないケースでも選択肢として選べるわけです。

どの手法で事業承継をするのかを決定していくことで、今後の動きや目標を決めることができます。まずはどのように引き継いでいきたいのかを検討するところから始めてみましょう。

準備2.後継者を決定する

事業承継計画の根幹とも言えるのが、後継者の決定と教育です。後継者教育には長い時間がかかるため、計画策定に取り組む前に後継者を決定しましょう。

しかし後継者の決定について、トラブルが起きることも少なくありません。後継者選びが原因で社内に派閥が出来てしまい円滑な経営が出来なくなるケースもあります。

後継者を決める際は必ず第三者の意見を聞き、客観的な視点を持ちましょう。もし親族内で後継者がいない場合、従業員に会社を引き継いでもらうかM&Aで経営統合を行うのがおすすめです。

M&Aの詳しい内容や、後継者不在の会社がM&Aを選択するメリットは、以下の記事で解説しています。

【関連】M&Aとは?メリットや流れ・費用を解説!仲介会社ランキングや成功事例も紹介!

準備3.会社の経営状況を把握する

事業承継計画を策定する前に、資産や負債など引き継がなければならないものを正しく把握しましょう。承継後に知らない負債が判明した場合、後継者と深刻なトラブルになることも少なくありません。

また事業を後継者に渡すためには、会社が現在抱えている経営課題を把握しておく必要があります。

会社の現状が分からないまま「会社を引き継いで」とお願いしても、快諾してくれる人は少ないでしょう。会社の経営課題、会社の持つ資源などを第三者にもわかるようはっきりと示してから、今後の事業承継について話し合うことが大切です。

会社の現状を把握するには、会社経営に詳しい専門家の知見が欠かせません。顧問税理士、会計士だけでなく経営コンサルタントや金融機関への相談もおすすめです。

準備4.後継者以外の相続人に残す資産を決める

相続問題を避けるため、後継者以外の相続人に残す資産は事前に決めておきましょう。中小企業経営者の場合、個人の資産と会社の資産の区別があいまいになっており遺産相続で問題が発生することもあります。

特に親族外承継の場合、経営者の個人資産を多く確保したい親族と、会社資産を手に入れたい新経営者との間でトラブルになるケースが少なくありません。

こうしたトラブルを防ぐには、現経営者が存命のうちに会社資産と個人資産をはっきり区別することが必要です。弁護士など相続に詳しい専門家と相談しつつ、後継者以外の相続人に残す資産を決めておきましょう。

準備5.会社の経営状況を改善する

会社の課題を見据えて経営状態を改善していくことに動きだしましょう

ただ簡単に課題を解決できれば経営状態が良い方向に向かうというわけではありません。経営状態を良い方向に向けるための施策や体系を整えていかなくてはならないのです。

ですから、今後も安定した収益が見込める状態作りを考えてみてください

後継者にとっては、経営状態の悪いまま引き継ぐことは大きなリスクとなります。ブランドイメージから経営方針の変更、商品の見直しなど多くの視点を持つことが改善につながるはずです。

以上が、事業承継計画策定前に決めるべきポイントでした。具体的な計画の内容については、次の見出しで説明しているのでぜひチェックしてください。

6. 事業承継計画に記すべき内容

ここまで事業承継計画について解説しましたが、具体的な書き方や書くべき内容が分からず悩んでいる方も多いのではないでしょうか。

一般的な事業承継計画で書くべき内容は、以下の通りです。
 

  1. 事業承継の基本事項
  2. 後継者教育の進め方
  3. 株式や財産の譲渡計画
  4. 関係者への説明方法
  5. 年ごとの実行内容
  6. 将来の展望

理想的な計画の作り方を学び、会社を円滑に承継しましょう。

6-1.事業承継の基本事項

まず最初に、事業承継の概要について計画書に記載します。

概要として書かなければいけない内容は、以下の通りです。
 

  • 現経営者の氏名・年齢
  • 後継者の氏名・年齢・続柄
  • 承継方法(親族内承継、親族外承継など)
  • 承継時期

承継時期については、「○○年△月」と明確な年月を記しましょう。

6-2.経営理念、中長期目標

後継者と今後の経営方針について共通の認識を持つため、経営理念、事業の中長期目標について明記しましょう。

経営理念はこれまでと同じでも構いませんし、後継者や経営陣と話し合い新たなものを決めるのもおすすめです。

また中長期目標は、「コスト削減を行う」などあいまいなものではなく、具体的な目標数値を定めましょう。中小企業庁の作成した事業承継計画のひな形では、「売上高」「経常利益」について明確な目標を定めるよう記されています。

6-3.後継者教育の進め方

事業承継の中で最も時間がかかるのが、後継者教育です。後継者教育に関する方針を早めに立てることで、引継ぎにかかる時間を短縮できるでしょう。

後継者教育の方法は、社内、社外で異なります。社内の場合、各部門をローテーションさせる、責任ある地位に就けるなどの方法があります。

社外で教育を行う場合、他社での勤務を経験させる、子会社・関連会社の経営を任せるなどの方法が一般的です。どちらの場合も、何歳の時にどんな場所でどのように働くのか、明記しておきましょう。

6-4.関係者への説明方法

関係者の理解を得るため、説明方法や説明時期についても早めに決めておきましょう。

事業承継前、関係者に対しすべきことは以下の通りです。
 

  1. 社内で事業承継計画を発表
  2. 取引先などに後継者を紹介
  3. 今後の勤務体制や待遇、役職について説明
  4. 後継者教育の方法について説明

特に長期間の後継者教育には、現経営者だけでなく会社の様々な人が関わります。後継者が社内でどんな役職を経て会社の代表となるのか、あらかじめ説明しておくことが大切です。

6-5.株式や財産の譲渡計画

問題が起きやすい株式や財産については、第三者にも分かるよう明確な計画を立てておきましょう。

特に株式は事業承継をきっかけに分散することが多くあるので、後継者が過半数の株式を取得できるよう定款の変更などを行う必要があります。

また相続でのトラブルを防ぐため、後継者以外の相続人に対する遺留分を決定しておくことも大切です。

6-6.年ごとの実行内容

以上の内容が定まったら、今から1年ごとにどんな手続きをするか一覧にまとめましょう

中小企業庁の公式HPに載っているひな形』では、記入用の表がダウンロードできるのでぜひ利用してみてください。

以上が、事業承継計画で書くべき内容でした。不明点が出てきたら税理士や会計士など専門家に相談し、一緒に計画作成を行いましょう。

ここからは事業承継計画作りで意識すべきポイントについて、解説していきます。

7. 事業承継計画作りを成功させるには?

事業承継計画を立てたからと言って、事業承継が必ず成功するとは限りません。実際に事業承継をしていく中で、数々のトラブルに見舞われることもあります。

しかし計画策定の段階で起きがちなトラブルへの対処法を考えておけば、スムーズな承継が実現できます。

事業承継計画作りを成功させるためのポイントは、以下の通りです。
 

  1. 従業員や後継者と話し合って計画を作る
  2. 支払う税金の額を把握しておく
  3. 事業承継に詳しい専門家に相談する

ここからはそれぞれのポイントを解説するので、ぜひ計画策定前にチェックしてください。

7-1.従業員や後継者と話し合って計画を作る

計画策定までに関係者との話し合いをきちんと行わなければ、後のトラブルにつながることもあります。

ワンマン経営の会社だと、社長の意見に反対する人がおらず独善的な承継計画が出来上がってしまうことも少なくありません。

経営者が一人で勝手に計画を決めると、のちに関係者と認識の違いが明らかになり事業承継に行き詰ってしまいます。事業承継計画を策定する際には、従業員や後継者、取引先など関係する人にきちんと意見を求めるようにしましょう

どうしても経営者以外の人から意見が出にくい場合、第三者である専門家を同席させ討論の場を設けるのがおすすめです。

7-2.支払う税金の額を把握しておく

事業承継で発生する贈与税、相続税の負担は想像以上に大きなものですので、早めに支払い額を把握し対策を立てておくことが重要です。

しかし、どうしてもすぐに支払いができないこともあるかと思います。そんなときには『事業承継税制』について知っておくべきです。

事業承継税制とは、中小企業における事業承継で発生した税金の支払いに猶予を設けてくれる制度となっています。特例に当てはまる事例であれば、全額免除される可能性もあるのでこちらも検討してみましょう。

支払う税金の額が高くなることもありますから、計算して把握しておくようにしてみてください。

※事業承継税制について詳しくは以下の記事でまとめていますので参考にしてみてください。

【関連】事業承継税制とは?メリットと要件、手続きの流れを解説!

7-3.事業承継に詳しい専門家に相談する

事業承継を終えた後も、トラブルが発生する可能性は十分にあります。承継後の社内分裂を防ぐため、承継後の経営について相談できる環境を整えておくべきです。

事業承継の計画作りから承継後のサポートもしてくれるM&Aアドバイザーであれば、会社の事情をよく理解しているため安心して相談できるでしょう。

以下では、事業承継計画について相談できる専門家について詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。

8. 事業承継計画はM&A仲介会社への相談で解決しよう!

事業承継計画を作るときには「M&A仲介会社に相談する」ようにしましょう

事業承継計画作りについて考えるときは、ガイドラインや税制の利用を含め様々な観点から会社にとってベストな決定をしなければいけません。経営計画に承継時期、対策から方針まで丁寧に作りこまなければ失敗してしまうからです。

ですが、中小企業に限らず大企業でも事業承継計画作りには専門知識が必要となることから、簡単に進めていくことは難しいといえます。あいまいな計画のまま進めることで、承継に失敗して経営に大きな打撃を与えてしまうことは少なくないのです。

ですからM&Aの専門知識を持ち、多数の実績を残しているM&A仲介会社に相談して進めていくことは、安全かつスピーディに作成するためのポイントと言えます。

もし、M&A仲介会社選びにお困りの際は『M&A総合研究所』にご相談ください。

事業承継計画の作成に必要な知識も豊富にありますので、細かい点までアドバイスやサポートが可能です。

相談料は無料ですから、わからないことがあれば気軽にお声掛けください。

9. まとめ

事業承継を成功させ会社を残すためには、前もって事業承継計画を作りしっかり準備を進めることが大切です。計画を決定しないで進めていくと後々トラブルを引き起こしかねません。

しかし少数の経営陣で全ての計画を作り実際の引継ぎまで行うのは、非常に難しいと言えるでしょう。

事業承継の計画づくりや実務については、事業承継に詳しい専門家や、M&A仲介会社に相談するのがおすすめです。

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