事業承継における自社株買いとは?上手に承継する方法を徹底解説

事業承継を行うと贈与税や相続税がかかりますが、堅調な会社の事業承継では高額な納税額が大きな問題となっており、廃業に追い込まれる中小企業もあります。廃業を回避し、円滑な事業承継を行うためには自社株買いが有効な手段です。本記事では、自社株買いについて解説します。


目次

  1. 事業承継における自社株買いとは
  2. 自社株買いの他にもある株価の引き下げ方法
  3. 事業承継を上手に行う方法
  4. まとめ

1. 事業承継における自社株買いとは

事業承継における自社株買いとは

現在、後継者不足や高額な相続税・贈与税などの問題により事業承継ができず、廃業に追い込まれる会社が増加しています。

会社や従業員を守るために廃業ではなく事業承継を求める経営者も多く、国や地域にとっても廃業により中小企業の貴重な財産や技術を失うことは大きな損失であるため、円滑な事業承継は社会的に大きな問題となっています。

それらの問題のなかでも、事業承継によって高額な相続税・贈与税が課せられるケースでは、自社株買いを行うことで納税が可能となり廃業を回避できる可能性があります。

この記事では、事業承継における自社株買いの活用や、上手に事業を引き継ぎ廃業を回避する方法を解説します。

自社株買いとは

自社株買いとは、自社の株式を株主から会社が買い戻すことです。以前は、自社株買いは原則禁止とされていましたが、平成13年の商法改正により自社株買いの規制緩和が行われ、簡単に自社株買いができるようになりました。

自社株買いを行う目的としては、敵対的買収の阻止・株価の上昇・少数株主の整理・市場の株価調整などが挙げられます。

株式非公開の中小企業では、主に事業承継時の納税対策などに自社株買いが利用され、廃業リスクを避けて円滑な事業承継を行う一助となります。

自社株買いが認められる要件がある

自社株買いを実行するためには、会社法第155条に定められている要件を満たす必要があります。

法令では、自社株買いの要件として、株主との合意や定款に基づいた株主からの請求、定款に基づく強制取得など様々な要件が定められていますが、実際は株主との合意によって自社株買いが行われるケースが大半を占めています。

経営者自身や親族が株主となっている中小企業では株主の合意が得やすく、事業承継対策としての自社株買いを容易に実行できるため、高額な納税が原因となる廃業を回避できる可能性が高いといえるでしょう。

株主との合意に基づく自社株買いでは、株主総会で取得する株式数・交付する金銭等・株式を取得できる期間(1年以内)の3点を決議します。

自社株買いは会社に影響を与える

自社株買いでは、会社は対価として株主に現金を支払うことが一般的です。そのため、会社の資産が減少することになります。

また、社外に出回っている株式数が減ることで、会社の株主資本も減少することになるため、純資産もマイナスとなります。

その結果、資産のうちの負債の比率が上がることになり、会社としての価値が下がる可能性があります。

後継者不足などにより事業承継を行えない場合は、廃業を避けるためにM&Aなどを実施しますが、会社としての価値が低いとM&Aにおいては不利となり、買い手が現れず廃業となる可能性もあるので注意が必要です。

事業承継の際に自社株買いをすすめる理由

事業承継対策としての自社株買いには、廃業リスクを回避し、会社と従業員を守るという大きな目的があります。

ここでは、中小企業が事業承継の際に自社株買いをどのように利用しているのかについて、詳しく解説します。

スムーズな事業承継を行うため

事業承継後のスムーズな会社経営には、2/3以上の株式を後継者に贈与または相続させることが重要となります。これを実現するために、自社株買いを行うケースがあります。

例えば、経営者の死去による相続で、株式の半数を後継者以外の関係の薄い親族などが相続すると、会社の意思決定に支障をきたす可能性があります。

この状況を放置しておくと、次の世代では更に関係の薄い株主ができてしまい、株主との関係がより複雑となって会社経営が行き詰まり、最悪の場合は廃業となるかもしれません。

そうようなケースを回避するために自社株買いを行います。自社株買いにより、一旦会社が株式を買い戻した後に後継者に売却することで、関係の薄い親族への相続を防いで廃業を回避することができます。

事業承継する際に自社の株価を引き下げるため

自社株買いを実施すると純資産が減り、PER(株価収益率)が上昇することになります。PERの上昇は株式の割高感を増加させるため、結果として株価の低下につながります。

自社株の株価低下は会社の評価額を下げることになり、事業承継に必要な相続税や贈与税の減額につながるため、円滑な事業承継の大きなポイントとなります。

ただし、後継者不在などによるM&A実施の場合は会社の評価を下げることは得策とはいえず、買い手がいなければ廃業となる可能性もあるので注意が必要です。

相続税・贈与税対策となるため

事業承継の際は保有している株式を後継者に相続または贈与することになり、後継者は相続税や贈与税が課せられます。

優良企業であればあるほど株価が高額になり、それに伴う多額の相続税や贈与税が後継者の大きな負担となります。

自社株買いを行えば、後継者は株式売却の対価として会社から現金を受け取ることができ、受け取った現金を相続税や贈与税の支払いに充てることができます。

ただし、自社株買いの費用が高額になりすぎると、事業承継後の会社の経営に大きな影響を与える可能性もあります。

事業承継後の経営悪化で廃業となることを防ぐためには、自社株買いの実施は慎重に検討する必要があります。

【関連】相続で円滑に事業承継するには?トラブルを防ぐ方法や相続税対策も解説

2. 自社株買いの他にもある株価の引き下げ方法

自社株買いの他にもある株価の引き下げ方法

会社の経営が順調であれば会社の株価が高くなり、それに合わせて贈与税・相続税も高額になります。そのために支払いが難しく、廃業を選択せざるを得ないケースもみられます。

廃業を避け円滑な事業承継を行うためには、株価を引き下げることが重要です。廃業を免れ、円滑な事業承継を成功させるためには、株価の引き下げ対策を行っておくことも必要です。この章では、自社株買い以外の株価を引き下げる方法について解説します。

類似業種株価

類似業種比準方式で算定した株価を類似業種株価といいます。類似業種比準方式とは、類似の事業を行っている上場企業の株価を参考に株価を算定する方法です。

自社の配当金や利益、純資産額が類似業種株価の算定に大きく影響します。この類似業種株価を引き下げる簡単な方法は配当金を引き下げることです。

配当金の引き下げは、株主総会で参加株主の過半数の賛同があれば可決されるので、経営者が一定数以上の株式を保有している場合は容易に決議を得ることができます。

配当金の引き下げは株主の不利益となりますが、株主の理解を得るために特別配当を提案することができ、この特別配当は類似業種株価には影響しません。

純資産株価

純資産価額方式により算定した株価を純資産株価といいます。純資産価額方式とは、会社の資産から負債や法人税などを引いた金額を自社株の株価として算出する方法です。

純資産を下げるか負債を増やせば資産が減少するので、純資産株価を引き下げることができます。

純資産を下げるためには、自社株買いに加えて、不動産の購入や経営者への退職金支払い・設備投資・保険への加入などが挙げられます。

【関連】事業承継の株価引き下げ対策まとめ!自社株評価の計算方法を徹底解説!

3. 事業承継を上手に行う方法

事業承継を上手に行う方法

中小企業が廃業する理由で最も多いのは、経営の悪化によるものではなく、後継者の不在や経営者の健康上の問題によるものです。

つまり、事業承継を円滑に行うことができれば、廃業を免れ経営を継続できるという中小企業が多いのが実情です。本章では会社・従業員・取引先を守るために、事業承継を上手に行う方法を解説します。

事業の将来性に期待できる状態とする

事業の将来性は、事業承継後の堅調な経営に大きな影響を与えるため、円滑な事業承継において非常に重要なポイントとなります。

もし、事業に将来性がなければ、事業承継が成功したとしても、将来的に経営難に陥り、廃業や倒産の危険をはらむことになります。

後継者探しやM&Aにおいても重要な指標となるため、事業の将来性を期待できる状態にしてから事業承継を行うことが、事業承継成功の秘訣といえるでしょう。

【関連】会社を売ります。買います。M&A・事業承継の流れと成功ポイント【案件あり】

後継者の育成を行っておく

経営者が若いうちから事業承継のことを考えて後継者を育成しておくことは、廃業リスクを回避し、円滑な事業承継を行うためには重要なポイントです。

現在は、少子高齢化や人口減少の影響を受けて、さまざまな業界で労働力不足が深刻な問題となっています。高齢や健康問題で事業承継に直面してから後継者を探し始めても、簡単に後継者をみつけることはできません。

後継者がいないことが原因となり、経営が堅調でも廃業に追い込まれるというケースもあります。廃業リスクを避け、円滑な事業承継を成功させるためには、後継者の育成は必ず考えておかなければならない項目です。

自社株買いを活用する

自社株買いの最大の目的は、事業承継時に必要となる相続税や贈与税の対策です。特に、経営が順調な会社では株価評価が高く、納税額も高額になります。

納税は分割も可能ですが、基本的に現金での納付が義務付けられています。そのため、相続財産に現金がない場合や後継者に現預金がない場合は納税ができません。

納税が困難な場合、事業承継を諦めて廃業の選択を余儀なくされるというケースもあります。

もし現金での納税が難しいのであれば、自社株買いを活用することで、現金を手に入れることができます。現預金がなくても廃業を免れ、円滑な事業承継を実施することが可能となります。

事業承継の専門家に相談する

前述のように、高額な相続税や贈与税の納付は事業承継の大きな問題となっています。相続税や贈与税は自社株の株価と連動しているため、株価を引き下げることができれば減税することが可能です。

株価の算定には、類似業種比準方式・純資産価額方式・配当還元方式などがありますが、どれも複雑で専門的な知識がなければ難しいケースもあります。

重大なミスにより株価の算定を間違えれば、相続税や贈与税の支払いが困難になり、廃業しなければならないということになりかねません。

そのような廃業リスクを避け、円滑な事業承継を行うためには、事業承継の実績や知識が豊富な専門家への相談が必要不可欠といえるでしょう。

1.M&A仲介会社

M&A仲介会社は、事業譲渡や株式譲渡のようなM&Aの仲介をメインに行っていますが、事業承継についても専門的な知識を有している会社が多いです。

親族・従業員・役員など、身近に後継者をみつけることができない場合は、廃業を回避するためにM&A仲介会社を利用して第三者に会社を売却するという選択もあります。

M&A仲介会社は、経営者の想いに沿った最適な買い手企業の選定を行い、会社の存続を手助けします。後継者不在による廃業を避け、第三者への売却を可能にしてくれる点が大きなメリットです。

事業承継のご相談はM&A総合研究所へ

廃業ではなくM&Aによる事業承継をご検討の際は、ぜひM&A総合研究所へご相談ください。M&A総合研究所は、事業承継の実績が豊富なM&A仲介会社です。

事業承継の豊富な知識を持つ専門家が、廃業を避けてスムーズな事業承継が行える徹底的にサポートいたします。

ご相談からM&Aのクロージングまで、アドバイザー・会計士・弁護士が3名体制で丁寧にサポートいたしますので、円滑な事業承継の実現が可能です。

料金提携は、着手金や中間金は無料の完全成功報酬制を採用しています。無料相談は24時間お受けしておりますので、廃業ではなくM&Aによる事業承継をご検討の際は、どうぞお気軽にご相談ください。

電話で無料相談
03-6455-5875
WEBで無料相談
M&Aのプロに相談する
M&A・事業承継ならM&A総合研究所

2.各地の公的機関

各都道府県には、中小企業庁が運営する事業承継支援センターがあり、廃業に直面している中小企業の雇用や技術などを守るための事業承継をサポートしています。

事業承継支援センターもM&A仲介会社と同様に、第三者への譲渡を目的にした事業承継を中心に中小企業の支援をしています。

経営者の高齢化問題や後継者不足で廃業となれば、中小企業がもつ貴重な資源や技術を失うことにもなります。国としても大きな損失となるため、国を挙げて中小企業の支援を行っています。

3.顧問弁護士などの士業

弁護士・公認会計士・税理士など、事業承継や税金について詳しい専門家に相談することも、円滑な事業承継の助けとなります。

特に、会社のことや経営者のことを長年みてきた顧問弁護士や顧問税理士であれば、会社の状況を十分に理解しているので、廃業することなくスムーズな事業承継を実現することができます。

突然の経営者の死亡のような不測の事態に陥ったとしても、顧問として専門家を雇っていればよりよい事業承継に導き、廃業を防ぐことができる可能性も高くなります。

ただし、不測の事態に備えて日ごろから事業承継について顧問弁護士などに相談しておく必要があります。

4.取引先の金融機関

最近では、金融機関も専門家として事業承継の支援をするケースが増加しています。金融機関が支援する目的のひとつに、廃業による取引先を失うことを防ぐ点があります。

地方の堅調な中小企業が後継者不在などで廃業すれば、その廃業により地域経済に大きな影響を与えることになります。

地域に根差した金融機関にとっては、単純に廃業でひとつの取引先を失う以上に大きなダメージを受けることにもつながります。

金融機関の事業承継支援の特徴は、取引先として会社の状況をよく知っていることから、経営体制や経営環境、地域の特性などを活かした支援を行う点にあります。

そのほかに、コンサルティングやセミナーなどを行うケースもあり、廃業を防ぐための事業承継支援をが中心となります。

4. まとめ

まとめ

現在の日本では中小企業の事業承継が大きな問題となっており、後継者不在などにより廃業に追い込まれるケースも多いため、国を挙げた事業承継の支援や廃業回避のサポートを行っています。

事業承継の大きな問題のひとつに多額の相続税や贈与税の支払いがありますが、自社株買いにより解決できるケースもあるので、上手に活用することが廃業せずに事業承継を円滑に進めるために有効です。

【事業承継の際に自社株買いをすすめる理由】

  1. スムーズな事業承継を行うため
  2. 事業承継する際に自社の株価を引き下げるため
  3. 相続税・贈与税対策となるため

【事業承継を上手に行う方法】
  1. 事業の将来性に期待できる状態とする
  2. 後継者の育成を行っておく
  3. 自社株買いを活用する
  4. 事業承継の専門家に相談する

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