事業承継の税金計算方法や節税対策まとめ!会社、個人事業で変わる?

事業承継を実行すると、後継者に相続税が課せられます。効果的な節税を行わなければ、負担が大きくなってしまうので税金対策が必要不可欠です。本記事では、事業承継の税金計算方法、相続税を節税する税金対策について解説しています。


目次

  1. 事業承継とは
  2. 事業承継の際にかかる税金一覧
  3. 事業承継税制について
  4. 事業承継の際の税金計算方法
  5. 事業承継の際の節税対策
  6. 事業承継の際の会社と個人事業との課税の違い
  7. 個人事業主の事業承継特例とは
  8. 個人事業主の事業承継特例に節税効果はある?
  9. まとめ

1. 事業承継とは

事業承継とは

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事業承継とは、会社の経営理念と一緒に経営や事業を後継者に引き継ぐことです。若い世代に引き継ぐことで会社や事業を存続させることを目的としており、会社・個人事業の両方で活用されています。

事業承継の際は税金が発生しますが、税目と対象は会社と個人事業で異なります。税金対策を施さずに事業承継を行うと、高額の税金が発生して引き継ぎ後の事業展開に支障が出る恐れもあります。

引き継ぎ後の事業展開を安定させるためにも、適切な税金対策を行って事業承継に臨まなくてはなりません。本記事では、事業承継の税金計算方法と節税について、会社・個人事業別に詳しく解説します。

【関連】【保存版】事業承継とは?目的や税制、補助金の利用方法まで徹底解説!

2. 事業承継の際にかかる税金一覧

事業承継の際にかかる税金一覧

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事業承継の税金は、後継者に多大な負担をかけることが想定されます。よりよい環境を構築するためにも、現経営者と後継者が協力して節税に取り組まなければなりません。

税金の計算方法や節税対策について述べる前に、まずは事業承継で発生する税金の種類について解説します。基本的なことを把握しておけば、税金対策を考える際にも役立ちます。

相続税

相続税とは、亡くなった人の遺産を引き継ぐ場合に課せられる税金です。先代の経営者が亡くなった場合の事業承継であれば、税金は相続税ということになります。

相続税は引き継ぐ資産に応じて税率が高くなります。したがって、会社の価値が高く評価されるほど、後継者にかかる税金負担も重くなります。

贈与税

贈与税とは、生前に財産を譲り受ける場合に課せられる税金です。現経営者が存命の会社の事業承継なら、税金は贈与税ということになります。

親から子に事業承継する場合は無償であることが多いので、税金は大抵が贈与税です。税率は相続税と同様、引き継ぐ資産に応じて高くなります。

消費税

消費税とは、消費に対して課せられる税金です。個人事業者による事業承継では、現経営者もしくは後継者に消費税が課せられます。

個人事業者の消費税は、前々年の売上高を基準に課税事業者と免税事業者に分類されます。事業開始後2年間は基準となる売上高がないので、無条件で免税事業者となり消費税が免除されます。

3年目からは、前々年の売上高が1000万円を超えると納税義務が課せられます。事業承継する年の直近2年の売上高が1000万円を超えている場合、納税義務が後継者に引き継がれる点に注意が必要です。

所得税

所得税とは、所得に対して課せられる税金です。個人事業者の事業承継は、現経営者に所得税が課せられます。

売買による事業承継を行う場合、譲渡所得に対して所得税が発生します。また、譲渡による事業承継の場合、事業承継後の後継者所得である事業所得に対して課税されます。

【関連】事業承継をする3つの方法を徹底解説!メリット・デメリットと税金も紹介

3. 事業承継税制について

事業承継税制について

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相続・贈与による事業承継は、後継者に相続税・贈与税が課せられます。会社の規模次第では高額納税は避けられず、事業承継が滞る一つの要因でもあります。

そこで、後継者の税金負担を減らして事業承継を円滑にする目的で制定された「事業承継税制」という制度があります。

事業承継税制とは

事業承継税制とは、事業承継で発生する税金の優遇措置を受けられる制度です。後継者の税金負担を抑えて少しでも事業承継しやすい環境を整えることで、中小企業の事業承継を促すことを目的としています。

特例の内容は、都道府県知事の認定を受けることで相続税・贈与税の納税猶予・免除を受けられるというものです。猶予は納税期限の延長、免除は納税義務の解除を意味します。

認定を受けられれば、事業承継にかかる税金負担を大幅に抑えることができます。税金に回す予定だった資金は事業資金として活用することもできるようになるので、税金対策として積極的に活用したい制度の一つです。

【関連】事業承継税制とは?制度の内容や要件、利用の注意点を分かりやすく解説

4. 事業承継の際の税金計算方法

事業承継の際の税金計算方法

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中小企業の事業承継では、非上場株式に対して相続税・贈与税が課されますが、換金性が低い非上場株式に高い税金が課せられるのは後継者にとって大きな痛手になります。

しかし、事業承継税制を活用することで税金の負担を軽減することが可能になります。この章では、事業承継の相続税と贈与税の計算方法と事業承継税制を適用した場合をそれぞれ解説します。

相続税の計算方法

事業承継の相続税の計算方法は、通常の資産を相続した場合と同じです。時価評価した資産から債務を差し引いた額を正味の遺産額として、そこから基礎控除額(3000万円+600万円×法定相続人の数)を控除して課税遺産総額を算出します。

【相続税率】

課税価格 税率 控除額
1000万円以下 10% -
3000万円以下 15% 50万円
5000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1700万円
3億円以下 45% 2700万円
6億円以下 50% 4200万円
6億円超え 55% 7200万円

【設例】
  • 法定相続人数・・・1人
  • 資産・・・8000万円
  • 負債・・・3000万円

上記の場合は「(正味の遺産額5000万円-基礎控除額3600万円)×20%-控除額200万円=80万円」となり、相続税の課税遺産総額は80万円となります。

納税猶予の特例を考慮した場合

事業承継税制の納税猶予の特例を考慮した計算方法ですが、結論からいえば特例を適用すると課税遺産総額の100%が猶予されます。

事業承継税制は平成30年に改正されており、10年間限定で相続税・贈与税の100%の納税猶予・免除が制定されています。有効期間は10年間なのでまだまだ節税に利用できる制度です。

なお、通常の事業承継税制における相続税の計算方法は以下の通りです。改正後の特例措置と比較すると見劣りしますが、それでも十分な節税といえるでしょう。

【一般措置の納税猶予の特例を考慮した相続税の計算方法】

  • 資産から債務を差し引いて課税遺産総額を算出
  • 課税遺産総額の20%を差し引いて納税猶予額を算出

前述の設例を用いた場合は、課税遺産総額1400万円の80%の1120万円が納税猶予額になります。

贈与税の計算方法

事業承継の贈与税の計算方法は、通常の財産贈与と変わりません。贈与を受けた財産の額から基礎控除額(110万円)を差し引いた額を課税価格として、贈与税の税率を掛けた額から一定額を控除して最終的な贈与税額を算出します。

特例税率とは、一定の要件を満たすことで贈与税における優遇措置を受けられる制度です。受贈者の直系尊属(父母、祖父母など)と贈与を受けた年の1月1日に20歳以上の要件を満たすことで、特例税率を適用することができます。

【贈与税率】

課税価格 一般税率
(控除額)
特例税率
(控除額)
200万円以下 10%
(-)
10%
(-)
200万円超~300万円以下 15%
(10万円)
15%
(10万円)
300万円超~400万円以下 20%
(25万円)
400万円超~600万円以下 30%
(65万円)
20%
(30万円)
600万円超~1000万円以下 40%
(125万円)
30%
(90万円)
1000万円超~1500万円以下 45%
(175万円)
40%
(190万円)
1500万円超~3000万円以下 50%
(250万円)
45%
(265万円)
3000万円超~4500万円以下 55%
(400万円)
50%
(415万円)
4500万円超~ 55%
(640万円)

贈与を受けた財産の総額が3000万円の場合、特例税率を適用すると「(3000万円-110万円)×45%-265万円=1035.5万円」となります。

納税猶予の特例を考慮した場合

続いて事業承継税制を適用した場合の贈与税の計算方法です。贈与税も事業承継税制を適用することで100%猶予されます。

現在の特例措置は、平成30年1月1日から令和9年12月31日まで有効です。この期間中に行われる相続・贈与については、どちらも100%の猶予が受けられるので節税に活用できます。

なお、贈与税の一般措置は「納税猶予割合100%、対象株数2/3」です。通常時の事業承継税制では、株式総数の2/3を超える部分について猶予を受けることができません。

5. 事業承継の際の節税対策

事業承継の際の節税対策

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事業承継は後継者にかかる負担が重いことで敬遠されることも多いです。事業承継が進まないと会社や事業の存続が危ぶまれるため、税金対策についての理解は不可欠ともいえます。

事業承継では、事業承継税制を始めさまざまな税金対策があります。少しでも有利な状況で事業承継するためには、節税に有効な方法を把握しておくことが大切です。

【事業承継の際の節税対策】

  1. 事業承継税制を活用する
  2. 相続時精算課税制度を活用する
  3. 株式移転を行う
  4. 遺産分割を行う
  5. 不動産投資を行う
  6. 法人保険に加入する
  7. 株価を引き下げる

①事業承継税制を活用する

事業承継の税金対策で真っ先に活用したいのは、やはり事業承継税制です。平成30年度の改正で要件の引き下げと適用範囲の拡大が図られたことにより、活用範囲が広くなっています。

相続税・贈与税に設けられた要件を満たすことで税金の猶予措置を受けられるので、後継者の税金負担を大きく抑えることができます。ここでは、要件やメリット・デメリットを一覧で紹介します。

【関連】事業承継税制の適用要件とは?支払い免除や認定取消も解説!

相続税・贈与税共通の猶予・免除に必要な要件

相続税・贈与税共通の要件は、事業承継税制を利用するうえで必ず満たさなければならない条件です。

以下の要件で特に重要なのは都道府県知事の認定であり、ほかの要件を満たしたうえで都道府県に申請を行って認定書を発行してもらわなくてはなりません。また、税金の優遇措置を受けるためには平成30年4月1日から令和5年3月31日の認定も必要です。

認定を受けられない場合は税金の猶予・免除を受けることができず、税金対策として機能させることもできなくなります。都道府県に申請する際は、事業承継の専門家のサポートを受けることをおすすめします。

【相続税・贈与税共通の猶予・免除に必要な要件】

  1. 都道府県知事の認定を受ける
  2. 会社の代表権を持つ者から承継であること
  3. 相続人であり相続者の中で最も多くの議決権をもっていること
  4. 中小企業であること
  5. 担保を税務署に提供すること

相続税の猶予・免除に必要な要件

相続税の猶予・免除に必要な要件は、先代経営者が亡くなってから事業承継する場合に満たさなければならないものです。

特に注意すべき点は、相続後5ヶ月以内に後継者が会社の代表権を持つことです。期間的に余裕があるように思えますが、先代経営者が亡くなられている状態で引き継ぎ準備や税金対策を施さなければならないため、意外と余裕はありません。

【相続税の猶予・免除に必要な要件】

  1. 相続後5ヶ月以内に会社の代表権を持つこと
  2. 現時点で会社の役員であること

贈与税の猶予・免除に必要な要件

相続税の猶予・免除に必要な要件は、現経営者の生前から事業承継する場合に満たさなければならないものです。

注意すべきポイントは、相続時点で3年以上役員であることです。つまり、少なくとも3年は役員として会社の経営に携わっていなければ、要件を満たせずに税金対策として活用することはできなくなります。

生前の事業承継を検討されている場合においても、事業承継税制を活用するためには早期の準備が必要不可欠です。

【贈与税の猶予・免除に必要な要件】

  1. 現時点で3年以上役員であること
  2. 20歳以上で会社の代表権を持っていること

先代の経営者に必要な条件

先代の経営者に必要な条件のうち注意すべき点は、最も多くの議決権数を持っていることです。事業承継自体は後継者の保有株式数が1/2を超えれば問題ありませんが、事業承継税制を受けるためには先代経営者が筆頭株主である必要があります。

事業承継対象の株式が関係会社などに分散している場合は、事業承継を実施する前に先代経営者に集約させておきましょう。

【先代の経営者に必要な条件】

  1. 会社の代表権を持っていること
  2. 最も多くの議決権数を持っていること
  3. 贈与時に会社の代表権を持っていないこと

事業承継税制のメリット

事業承継税制を活用するメリットは、相続税・贈与税の節税です。税金の猶予もしくは免除の優遇措置を受けることで、事業承継の節税対策として活用できます。

【事業承継税制のメリット】

  1. 相続税の納税猶予や免除が受けられる
  2. 贈与税の納税猶予や免除が受けられる

事業承継税制のデメリット

事業承継税制の大きなデメリットは、猶予された税額には利子税がかかることです。税金の猶予措置はあくまで猶予を貰っているだけで、非課税扱いになるわけではありません。

いつかは納税しなければならない税金であり、最終的に納める税金の総額は、事業承継税制を活用しない時よりも高くなることを承知しておく必要があります。

【事業承継税制のデメリット】

  1. 専門家が少ない
  2. 猶予された税額には利子税がかかる
  3. 認定取り消し後のリスクがある

②相続時精算課税制度を活用する

相続時精算課税制度とは、生前贈与にかかる贈与税を2500万円まで非課税にできる制度です。「相続時精算課税制度」と、年間基礎控除額110万円の「暦年贈与」どちらか有利なほうを選択することができます。

一見すると、2500万円非課税の相続時精算課税制度が有利に思えますが、贈与者が死亡した際は生前贈与した分も想像税として課税されます。最終的には全額納税することになるので、節税ではなく猶予に近い形になります。

節税として使える制度ではありませんが、事業承継さえできれば事業の存続は叶います。事業の収益で税金の後払いということができるため、十分に利用価値があるといえるでしょう。

③株式移転を行う

株式移転とは、2社以上の会社の全株式をほかの会社に移転させるM&A手法です。完全親子関係会社を作る目的で利用されている手法ですが、事業承継の節税対策として活用することもできます。

株式移転を行うと、管理コストが増大することで株価が下落する可能性があります。本来であればデメリットとして扱われる株価下落リスクですが、事業承継の場合は逆手にとることで節税対策になります。

④遺産分割を行う

遺産分割とは、先代経営者の遺産を一旦相続人全員の共有財産とした後、再分配する方法です。先代の経営者が遺言状を残さずに死亡した場合に利用できます。

遺産の分け方については、相続人それぞれの主張があると思いますが、相続人が協力して遺産分割を活用すれば相続税を節税することができます。

分かりやすい例に「小規模宅地等の特例」があります。土地の相続に関して一定の条件を満たすことで最大80%の控除を受けられる制度であり、節税テクニックとして広く活用されています。

この条件を満たすことができる相続人が土地を引き継げば、親族間で納めるべき税金を抑えることに繋がり、結果的に大きな節税効果を得られます。

⑤不動産投資を行う

中小企業の事業承継における節税対策に、不動産投資を活用した株価引き下げがあります。

相続税評価額の計算において不動産は時価評価がされないため、路線価もしくは固定資産税評価額によって時価より低い評価を行うことができます。

例えば、5000万円の現金をそのまま引き継ぐよりも、5000万円の不動産を購入してから引き継いだほうが評価額を引き下げられる分、節税に繋がります。

賃貸物件である場合、さらなる節税効果が期待できます。賃貸中は一時的に借り主に一部の権利が移転することで、相続税評価額をさらに抑えることができます。

⑥法人保険に加入する

法人保険で支払う保険料を損金計上することで、自社株価を引き下げることも可能です。相続税評価額を抑えることになるので、不動産投資と似たような節税効果が期待できます。

ただし、同種の死亡保険と比較すると保険料は高く、解約するタイミングを誤ると効果が薄れる可能性もあります。一時的な節税効果は得られたとしても、最終的な支出が増えてしまう可能性もある点に注意が必要です。

法人保険を活用した事業承継の節税対策は広く浸透しており、保険セールスマンの常套句にもなっています。思わぬ落とし穴にはまらないためにも、保険料や解約金の返戻率にも注目することが大切です。

⑦株価を引き下げる

相続税は、株価を引き下げることで大きな節税効果を得られます。株価を引き下げる方法は大きく分けると以下の3つがあります。

【株価を引き下げる方法】

  1. 配当による引き下げ
  2. 利益による引き下げ
  3. 資産による引き下げ

①配当による引き下げ

配当金の引き下げあるいは無配にすることで、類似業種比準価額における株価を引き下げることができます。

現経営者が筆頭株主であるならば株主総会決議も容易に行えるので、積極的に活用したい節税対策の一つです。

②利益による引き下げ

利益による引き下げは、故意の損金計上による節税対策です。法人保険やオペレーティング・リースで支出・赤字を増やして利益を相殺すると株価を引き下げて、税金負担を軽くすることに繋がります。

③資産による引き下げ

会社の純資産額を減らすことで節税に繋げることができます。前述した不動産購入以外では、特別配当や記念配当で積立金を減らすことで資産引き下げが可能です。

節税対策を踏まえた事業承継のご相談はM&A総合研究所へ

事業承継で発生する税金は、後継者に大きな負担を与えてしまいます。適切な節税対策を施して、後継者の税金負担を減らし、事業承継後の事業に集中しやすい環境を作ることが何より大切です。

事業承継の節税対策にお悩みの場合は、ぜひM&A総合研究所にご相談ください。財務・税務を専門分野とする公認会計士が適切な節税対策を施して万全の体制で事業承継に臨みます。

料金体系は完全成功報酬制を採用しており、事業承継が完遂するまで一切の手数料が発生しないので、安心してご相談いただけます。

無料相談は24時間お受けしています。節税対策を踏まえた事業承継をお考えの際は、M&A総合研究所にお気軽にご連絡ください。

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6. 事業承継の際の会社と個人事業との課税の違い

事業承継の際の会社と個人事業との課税の違い

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この章では、会社と個人事業の税金について、特徴的な部分を比較します。会社と個人事業主で活用できる税金の優遇措置が異なるので、自分が適用できるものを確認しておくことが大切です。
 

事業承継税制の適用は中小企業であることが条件の一つ

事業承継税制の前提条件の一つに、中小企業であることが定められています。事業承継税制の目的が「中小企業の滞っている事業承継を円滑にする」なので、税金の優遇措置の対象はあくまでも中小企業に限られています。

平成30年の改正では要件の引き下げが行われ、事業承継の税金対策として挙げられることも多くなりましたが、大企業や個人事業主は利用することができません。

中小企業の定義は「業種・資本金・従業員数」の3つを基準にしています。詳細は中小企業庁の「中小企業・小規模企業者の定義」で確認できます。

個人事業主の事業承継には消費税と所得税が発生

個人事業の事業承継では、消費税と所得税が発生します。消費税は、前々年高の売上高が1000万円を超える場合に課税され、事業承継2年以内の消費税納税義務は後継者に引き継がれる点に注意が必要です。

所得税においては、売買による事業承継は「経営者の1年間の譲渡所得」、無償譲渡による事業承継は「事業承継後の後継者の事業所得」に対して課せられます。

個人事業主には2019年施行の新制度により税制の節税が可能

2019年度税制改正で「個人版事業承継税制」が導入されています。その名の通り事業承継税制の個人事業版となっており、相続税・贈与税の納税猶予を受けられるので節税対策に使えます。

これまで個人事業主の税金に対する優遇措置は限定的であり、事業承継を行わずに廃業するケースがほとんどでしたが、新制度導入により節税対策として積極的に活用する個人事業主が増え始めています。

7. 個人事業主の事業承継特例とは

個人事業主の事業承継特例とは

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個人事業主の事業承継特例とは、2019年度税制改正で導入された個人版事業承継税制です。個人事業の事業承継を円滑にする目的で制定されたもので、後継者にかかる税金負担を大幅に軽減することができます。

個人事業主にも範囲拡大された事業承継税制は、事業承継の税金対策としてますます注目されています。この章では、個人事業主が相続税・贈与税の納税猶予を受ける条件について説明します。

特定事業用資産とは

特定事業用資産とは、先代事業者が事業供用していた資産(不動産貸付事業を除く)です。該当する資産に対する税金を猶予・免除することが、個人版事業承継税制の概要となります。

【特定事業用資産】

  • 宅地等(400㎡まで)
  • 建物(床面積800㎡まで)
  • 固定資産税の課税対象とされているもの
  • 自動車税・軽自動車税の営業用の標準税率が適用されるもの
  • その他一定のもの(貨物運送用など一定の自動車、乳牛・果樹等の生物、特許権等の無形固定資産)

贈与税の納税猶予の条件

「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」という法律が定められており、個人事業の納税猶予にも適用されます。個人事業の贈与税の納税猶予の条件は、以下の通りです。

【贈与税の納税猶予の条件】

  1. 特例承継計画書を都道府県に提出
  2. 2028年12月末までに20歳以上であること
  3. 同種事業を3年以上継続すること
  4. 後継者が一括贈与で全ての特定事業用資産取得すること
  5. 規定日まで事業供用すること
  6. 青色開業届出を出すこと
  7. 期日までの認定申請書を都道府県に提出

①特例承継計画書を都道府県に提出

特例承継計画書とは、今後5年間の事業計画をまとめた計画書のことです。事業承継の対象事業について計画性・持続性があることを証明するため、都道府県知事に提出します。

本書を提出して認定を受けることが、個人事業の税金対策の第一歩となります。なお、個人版の場合は「個人事業承継計画書」と呼ばれています。

②2028年12月末までに20歳以上であること

個人版事業承継税制は10年間の限定措置です。納税猶予の対象は、2019年1月1日~2028年12月31日の間に行われるものに限られています。

贈与時点で20歳という条件があるため、2028年12月31までに後継者が20歳を迎えられない場合は、税金対策として利用することはできません。

③同種事業を3年以上継続すること

贈与の日まで3年以上に渡り特定事業用資産に係る事業に従事していたことも条件の一つです。

後継者が事業に関与していない場合は要件を満たせず、税金の優遇措置を受けることもできません。

④後継者が一括贈与で全ての特定事業用資産取得すること

先代事業者から特定事業用資産の全てを一括贈与で取得する必要があります。一括贈与としていますが、最初の贈与から1年以内であれば複数回に分けても問題ありません。

ただし、1年を超えて行われた贈与については本制度は適用されず、税金の猶予措置は受けられませんので注意が必要です。

⑤規定日まで事業供用すること

税金の優遇措置を受けるためには、事業承継した資産について、規定日まで事業供用する条件もあります。事業の用に供さなくなった場合は、猶予税額と利子税額の納税義務が課せられます。

⑥青色開業届出を出すこと

事業開始日より2ヶ月以内に開業届出書を提出して青色申告の承認を受けます。以降も継続した青色申告による確定申告が求められてます。

もし何かしらの事由で青色申告の承認が取り消された場合は、猶予税額と利子税額の納税義務が課せられます。

⑦期日までの認定申請書を都道府県に提出

贈与を受けた年の翌年1月15日までに認定申請書を都道府県に提出します。年末間際の贈与では時間的余裕がなくなる可能性もあるので、贈与を急ぐ理由がない時はタイミングを調整するのもよいでしょう。

相続税の納税猶予の条件

相続税の納税猶予も条件が定められています。先代事業者が亡くなっている場合は、以下の条件を満たす必要があります。

【相続税の納税猶予の条件】

  1. 特例承継計画書を都道府県に提出
  2. 2028年12月末までの間に個人事業主が死亡
  3. 相続人は同種事業経験していること
  4. 相続人が全ての特定事業用資産取得すること
  5. 相続発生から5ヶ月以内に相続が確定すること
  6. 相続発生から5ヶ月以内に事業供用すること
  7. 相続発生から5ヶ月以内に青色開業届出を出すこと
  8. 期日までの認定申請書を都道府県に提出

①特例承継計画書を都道府県に提出

贈与税と同じく、特例承継計画書を都道府県知事に提出します。特例承継計画書の確認は令和6年3月31日までとされているので注意が必要です。

②2028年12月末までの間に個人事業主が死亡

2019年1月1日~2028年12月31日の期間限定の措置であるため、先代事業者は2028年12月末までに死亡していないと優遇措置を受けられず、税金対策としても機能させることができません。

③相続人は同種事業経験していること

優遇措置を受けた節税のためには、相続直前に特定事業用資産に係る事業に従事している必要があります。

ただし、先代事業者が60歳未満で死亡している場合、税金の優遇措置の条件から除くとしています。

④相続人が全ての特定事業用資産取得すること

相続人が先代事業者の全ての特定事業用資産を取得という条件もあります。特定の資産を引き継ぎしなかったり売却したりすることは認められていません。

⑤相続発生から5ヶ月以内に相続が確定すること

税金の優遇措置を受けるには、相続発生から5ヶ月経過するまでに相続を確定させる必要があります。

手続きが長引くなどの理由で5ヶ月を過ぎると、税金対策として機能しなくなる点に注意が必要です。

⑥相続発生から5ヶ月以内に事業供用すること

相続した特定事業用資産について、5ヶ月以内に事業供用する条件もあります。事業を存続させるための税金優遇措置なので、後継者はできるだけ早期に事業を開始しなければなりません。

⑦相続発生から5ヶ月以内に青色開業届出を出すこと

相続発生から一定の期日までに青色申告の承認を受ける必要があります。先代事業者の死亡日を基準に期限が若干前後することに注意が必要です。
 

死亡の日 申請期限
その年1/1~8/31 死亡の日から4か月以内
その年9/1~10/31 その年12/31まで
その年11/1~12/31 その年の翌年2/15まで

⑧期日までの認定申請書を都道府県に提出

税金の優遇措置について認定を受けるためには、相続開始後8ヶ月以内に認定申請書を都道府県に提出する必要があります。

以降の申請は受け付けてくれなくなるので、早急に手続きを済ませておくことをおすすめします。

贈与税・相続税に共通する納税猶予の条件

贈与税・相続税に共通する条件は、税金の優遇措置を受けるうえで絶対に満たす必要があるものです。個人版事業承継税制においては、以下の2点が挙げられます。

【贈与税・相続税に共通する納税猶予の条件】

  1. 担保提供を行うこと
  2. 3年ごとに税務署に継続届け出を提出

①担保提供を行うこと

優遇措置を受ける税金に見合う総額(納税猶予・利子税)を税務署に担保提供します。個人版事業承継税制の税金の優遇措置はあくまでも猶予であり、免除が確定しているものではありません。

事業供用されなくなったり要件から外れた場合は、猶予されていた税金を税務署に納めることになるので、その際の担保として事前に提供しておきます。

②3年ごとに税務署に継続届け出を提出

税金の猶予措置を継続して受けるためには、3年ごとに税務署に「継続届出書」と一定の書類を添付して提出しなくてはなりません。

継続届出書の提出が途切れた場合は、猶予されていた税金について納税義務が発生します。

【関連】個人事業主の事業承継方法とは?税金・手続き・M&A仲介会社を解説

8. 個人事業主の事業承継特例に節税効果はある?

個人事業主の事業承継特例に節税効果はある?

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個人事業主が事業承継税制を活用することで、得られる節税効果は大きいです。特定事業用資産に該当する資産については100%の猶予措置が受けられるので、節税対策として有効活用できます。

ただし、特定事業用資産に含まれない資産については対象外となり、全ての相続税・贈与税が猶予・免除されるわけではないので、必ずしも高い節税効果を得られるとは限りません。

特定事業用資産の対象は以下の通りであり、該当しない資産については納税猶予の対象外となり税金が発生します。

【特定事業用資産】

  1. 宅地等(400㎡まで)
  2. 建物(床面積800㎡まで)
  3. 固定資産税の課税対象とされているもの
  4. 自動車税・軽自動車税の営業用の標準税率が適用されるもの
  5. その他一定のもの(貨物運送用など一定の自動車、乳牛・果樹等の生物、特許権等の無形固定資産)

事業承継特例を踏まえ贈与税を計算した場合

まずは贈与税の計算から解説します。ここでは、特定事業用資産の対象資産を5000万円、対象外資産を3000万円として計算します。

【事業承継税制を適用しない場合】

  • 贈与税率・・・55%
  • 控除額・・・110万円+640万円
  • 贈与税額・・・(8000万円-110万円)×55%-640万円=3699.5万円

【事業承継税制を適用する場合】
  • 贈与税率・・・45%
  • 控除額・・・110万円+265万円
  • 贈与税額・・・(3000万円-110万円)×45%-265万円=1035.5万円

対象資産と対象外資産の割合が5:3の場合、高い節税効果を得られることが分かります。ただし、対象外資産の方が多くなれば節税効果は低くなります。

事業承継特例を踏まえ相続税を計算した場合

次は、相続税の計算について解説します。贈与税と同じく、特定事業用資産の対象資産を5000万円、対象外資産を3000万円として計算します。

【事業承継税制を適用しない場合】

  • 相続税率・・・30%
  • 控除額・・・3600万円+700万円
  • 贈与税額・・・(8000万円-3600万円)×30%-700万円=620万円

【事業承継税制を適用する場合】
  • 相続税率・・・20%
  • 控除額・・・3600万円+200万円
  • 贈与税額・・・(5000万円-3600万円)×20%-200万円=80万円

相続税も贈与税と同様に大幅な節税効果が得られます。特定事業用資産が大半を占める事業承継であるならば、税金負担を抑えるために積極的に活用すべき制度といえるでしょう。

9. まとめ

まとめ

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今回は、事業承継の際に発生する税金について、会社と個人事業のケース別に解説しました。それぞれに事業承継税制が設けられていて、条件を満たすことで多大な節税効果を得ることができます。

会社に適用される税金の優遇措置と比較すると個人のものは適用範囲が限定的ですが、うまく活用することができれば税金対策として機能させることができるでしょう。

経営者に少しでも多くの資金を残すためには、節税・事業承継税制を把握したうえで、上手に税金対策することが重要です。

【事業承継税制まとめ】

  • 事業承継税制とは事業承継で発生する税金の優遇措置を受けられる制度
  • 個人事業主の事業承継特例とは個人版事業承継税制のこと

【事業承継の際の節税対策】
  1. 事業承継税制を活用する
  2. 相続時精算課税制度を活用する
  3. 株式移転を行う
  4. 遺産分割を行う
  5. 不動産投資を行う
  6. 法人保険に加入する
  7. 株価を引き下げる

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