事業承継の株価引き下げ対策まとめ!自社株評価の計算方法を徹底解説!

事業承継における自社株贈与では多額の贈与税が課せられるため、円滑な事業承継の大きな障害となっており、自社株の株価引き下げや自社株買いによる資金調達のような対策が講じられます。本記事では、資産管理会社による自社株買いのような株価引き下げ対策などを解説します。


目次

  1. 事業承継とは
  2. 事業承継の株価引き下げ対策とは
  3. 事業承継の株価引き下げ対策一覧
  4. 事業承継の際の自社株評価の計算方法
  5. 事業承継計画の策定による自社株の引継ぎまでの流れ
  6. 事業承継の相談先
  7. 事業承継の際の自社株引き下げ対策のまとめ

1. 事業承継とは

事業承継とは

事業承継とは、会社や事業を存続させることを目的に、後継者や第三者に会社の経営を引き継ぐことです。

中小企業や非公開会社では、親族や従業員などから後継者を選んで事業承継を行うケースが多いですが、後継者をみつけることができない場合は、M&Aにより事業承継を行うこともできます。

事業承継時の自社株の株価が高ければ贈与税や相続税も高額になるので、事業承継を行う中小企業にとって大きな問題になっています。

【関連】【保存版】事業承継とは?目的や税制、補助金の利用方法まで徹底解説!

2. 事業承継の株価引き下げ対策とは

事業承継の株価引き下げ対策とは

事業承継を行う際は自社株を後継者に譲り渡すことになり、無償で株式を渡す自社株贈与や自社株相続、有償で株式を渡す株式譲渡、資産管理会社による自社株買いなどの方法で行われます。

いずれの場合でも、自社株の株価評価額に対して贈与税や相続税、株価に対応する対価が必要となり、円滑な事業承継の妨げになることもあります。

事業承継時の納税額を引き下げるためには、自社株の株価引き下げや自社株買いなどの対策、事業承継税制の活用などの方法があります。

事業承継は高い株価がネック

自社株贈与や自社株相続により後継者に事業承継する場合、自社株の株価に対して贈与税や相続税を納めなければなりません。会社の経営が順調など優良な企業であるほど株価算定額が高くなり、納税額も高額になります。

納税には多額の現金が必要であり、贈与や相続の対象となる資産のほとんどが株式や不動産である場合は、贈与税や相続税を納めることは困難となり、後継者に大きな負担を強いるケースも少なくありません。

自社株買いなどにより納税資金を調達する方法もありますが、自社株買いには多額の資金が必要となるため、事業承継後の会社経営に支障をきたすケースもあり、高い株価は事業承継の大きなネックともなっています。

事業承継税制とは

事業承継税制とは、中小企業の自社株贈与や自社株相続の際の贈与税や相続税が全額免除される制度のことであり、中小企業の円滑な事業承継を促すことを目的としています。

事業承継税制の利用により、株価引き下げ対策や自社株買いなどを行う必要がなくなる点が大きなメリットです。

ただし、事業承継税制により贈与税や相続税を全額免除するためには、引継がれた事業を次の世代に承継しなければなりません。

例えば、1代目から2代目に株式を贈与する場合、事業承継税制の利用で贈与税が一旦猶予され、2代目から3代目に事業承継が完了して初めて全額免除となります。
 
3代目への事業承継が完了するまでは贈与税は猶予されている状態なので、2代目が経営中に廃業やM&Aなどを行えば、猶予されていた贈与税を支払う必要があります。

利息を払わなければいけないケースもあるので、事業承継にあたっては、事業承継税制を利用するのか、株価の引き下げ対策を実施するのか、自社株買いをするのかなど慎重に検討することが大切です。

【関連】事業承継税制のメリット・デメリットや必要要件は?

3. 事業承継の株価引き下げ対策一覧

事業承継の株価引き下げ対策一覧

株価が高い優良企業の事業承継の場合には、高額の贈与税や相続税が必要となるため、事業承継時の株価を引き下げることは、円滑な事業承継と事業承継後の安定した経営のために必要不可欠ともいえます。

また、自社株買いの際の対価を下げるためにも株価引き下げは有効です。そのため、多くの中小企業がさまざまな方法を用いて、事業承継時の株価引き下げや自社株買いなどの節税対策を行っています。この章では、一般的な株価引き下げ対策についてそれぞれ解説します。

【事業承継の株価引き下げ対策一覧】
 

  1. 経営者・役員の退職金で対策
  2. 不動産購入で対策
  3. 減価償却の計上で対策
  4. 生命保険の活用で対策
  5. 相続時の特例活用で対策
  6. 資産管理会社の活用で対策
  7. 株式配当金を下げて対策
     

①経営者・役員の退職金で対策

引退する経営者や役員の退職金は、役員退職慰労金として特別損失に計上することができ、一時的に会社の利益を減らすことによって自社株の株価引き下げが可能です。

ただし、退職金は適正な金額でなければ損失として認められないので、適正外の多額の退職金を支給して、大幅に利益を減らすことはできません。

適正な退職金の算定方法が定められているわけではありませんが、功績倍率方式での算定が一般的です。功績倍率方式では、「最終役員月額報酬×役員就任年数×功績倍率」の計算式で退職金を算定します。

②不動産購入で対策

不動産は資産の一部なので自社株の株価引き下げ対策にはならないと思われがちですが、購入から3年以上経過した不動産の評価額は時価よりも低く算定されるので、結果的に株価が下がることになります。
 
例えば、賃貸マンションのような収益物件を購入した場合、土地は時価の60~70%の評価となり、建物も購入時よりも低い評価額となります。

そのため、不動産の購入は事業承継時の自社株の株価を引き下げに非常に有効で、多くの中小企業が活用している方法です。

③減価償却の計上で対策

減価償却の対象となる固定資産は、経費を減価償却費として計上できるので、純資産を減らし自社株の株価を引き下げることができます

パソコン・車・設備・機械などのように、時間の経過とともに劣化する資産が減価償却の対象になります。
 
例えば、古くなったパソコンや機械などがあり、新しいものの購入を検討している場合は、後継者への事業承継前に交換をしておけば、事業承継時の株価引き下げにつながります。
 
ただし、時間が経過しても劣化することはない土地や借地権・書画・骨董品などは減価償却できないので、株価引き下げや自社株買い対策にはなりません。

④生命保険の活用で対策

積立型の生命保険や従業員の養老保険に加入し、保険料を損金として取り扱うことで会社の利益を減らすことができるので、自社株の株価引き下げ対策として多くの中小企業で活用されています。

そのなかでも「低解約返戻金」を採用している積立型の生命保険は、非常に有効な対策のひとつです。低解約返戻金とは、保険料払い込み期間中に解約した場合の解約返戻金が低い保険のことです。

例えば、1億円を積立てる積立型生命保険で、最初の3年間の解約返戻金が3000万円の場合、3年間は7000万円を損金として計上することができ、株価に大きな影響を与えることになります。

⑤相続時の特例活用で対策

事業承継税制の活用により、贈与税や相続税を1円も支払う必要がなくなるケースがあります。株価引き下げや自社株買いとは異なる方法ですが、贈与税の全額免除は非常に魅力的といえるでしょう。

ただし、事業承継税制の全額免除を受けるためには、経営者から後継者、さらに次の後継者に事業承継を行わなければなりません。

次の後継者への事業承継までは贈与税や相続税が猶予されている状態なので、後継者がM&Aなどで会社を売却したり廃業したりした場合は、猶予されていた税金を納める必要があります。

⑥資産管理会社の活用で対策

贈与税や相続税対策として、後継者が資産管理会社を設立し、経営者が保有する株式を自社株買いするという方法があります。

自社株買いは株価引き下げ対策とは異なりますが、自社株贈与や自社株相続の対象となる株式数が少なくなるため、贈与税や相続税額が減って円滑な事業承継の一助となります。

ただし、自社株買いを行うためには、自社株の株価に見合った対価を支払わなければならないので、多額の資金が必要になるケースもあります。自社株の株価引き下げ対策は、低コストで自社株買いを行うためにも重要といえるでしょう。

⑦株式配当金を下げて対策

株価算定において類似業種比準方式を用いる場合、純資産・利益・1株あたりの配当金を基準に株価を評価します。

そのため、配当金が類似業種の上場企業の平均よりも高ければ、会社としての評価が高くなります。逆に、配当金を下げることができれば、自社株の株価引き下げ対策にもなります

配当金の変更には株主総会の決議が必要ですが、株主総会に出席している株主の過半数の同意があれば可決されるので、経営者が過半数以上の株式を保有している場合は容易に配当金を変更することができます。

株主の反対などにより配当金を下げることが難しい場合は、特別配当や記念配当などの名目で配当金を分配することも可能です。これは、株価算定の対象となるのは経常的な配当金であるためです。

【関連】事業承継対策のポイント7選!後継者問題や株価、税金面も解説!

4. 事業承継の際の自社株評価の計算方法

事業承継の際の自社株評価の計算方法

上場企業の株価は市場の価格から算出されますが、非上場の企業の場合は、自社株の株価算定に純資産価額方式・類似業種比準方式・配当還元方式のいずれかの方法で算出します。

どの方法を用いて自社株の株価算定を行うかは、従業員数や取引額などによって明確に定められています。また、算出した株価は自社株買いの際の対価にもなるので、自社株の株価算定は慎重に行われます。

①純資産価額方式

会社が保有する資産から負債や法人税などを引いた金額を自社株の株価とする方法です。仮に会社を解散させるとして、株主の手元に返ってくる金額が株価になると考えられます。

一般的にほかの株価算定方法よりも株価が高く試算され、特に社歴が長く安定した経営を続けていると、高く評価される傾向にあります。

事業承継や自社株買いでは敬遠されがちですが、非上場の中小企業ではこの方法で計算されるケースが多いです。

計算方式

純資産価額方式では、以下の計算式を用いて株価を算出します。純資産から負債や法人税を差し引いて計算するため、比較的簡単な式で表すことができます。

【純資産価額方式の計算式】

  • 1株あたりの株価= (A-B-C)/発行済み株式数
 
A:純資産額(相続税評価額)
B:負債金額(相続税評価額)
C:評価差額の法人税等相当額
評価差額:A-簿価純資産価額

純資産価額を下げる対策

資産を少なくすることにより、株価の引き下げを実現できます。具体的な対策には、土地や賃貸物件の購入や経営者への退職金、設備投資による原価償却費の計上、生命保険への加入などが挙げられます。

発行株式数を増やすことでも株価は下がりますが、第三者割当増資を行う場合は発行価額次第ではみなし配当などが発生する可能性があるので注意が必要です。

ほかの株価算定方法よりも不利な計算方式なので、多くの中小企業が円滑な事業承継や自社株買いに向けてさまざまな対策を講じています。

②類似業種比準方式

類似の企業の株価や配当額、利益などを基準に株価を算出する方法です。上場企業の株価を参考にするため、実態と近い金額となります。この方法では、自社株の株価が低く算出されるため、事業承継や自社株買いでは好まれます。

従業員が100人を超える企業は、業種を問わず大会社とみなされるため、類似業種比準方式のみで自社株の株価を試算できますが、中会社や小会社の場合は一定の割合で純資産価額を組み合わせる必要があります。

計算方式

類似業種比準方式では、以下の計算式を用いて株価を算出します。2017年の法改正により計算式が変更になっており、詳細は国税庁のホームページで確認することができます。

【類似業種比準方式の計算式】 

  • 1株あたりの株価=類似業種の株価×(a/A+b/B+c/C)/3×斟酌率
 
A:類似業種の1株あたりの配当額
B:類似業種の1株あたりの年利益額
C:類似業種の1株あたりの純資産価額
a:自社の1株あたりの配当額
b:自社の1株あたりの利益額
c:自社の1株あたりの純資産価額
斟酌率:大会社=0.7、中会社=0.6、小会社=0.5

類似業種比準を下げる対策

株価引き下げのポイントは、配当額・利益・純資産額を下げることです。経営者への退職金や生命保険の加入、配当金の引き下げなどが挙げられます。

配当金は、株主総会にて参加株主の過半数以上の賛成で変更できるため、経営者が過半数以上の自社株式を保有していればすぐに実行できます。

利益は損金を多く計上することで引き下げることが可能であり、例えば、事業承継に伴う経営者への退職金や生命保険への加入などが利益引き下げにあたります。

③配当還元方式

同族会社の少数株主が対象となる特例的評価方式です。一般的な市場価値が低い非上場の同族企業の場合、先に述べた2つの方法で計算するとで額な相続税がかかるため、その防止策として導入されました。

例えば、ある同族会社の株式を5%保有している少数株主がその株式を相続する際に活用できます。この少数株主には議決権がなく、株式の保有目的は配当のみと考えることができるためです。

また、経営者一族であっても、保有株式数が5%未満かつ非役員であれば配当還元方式が適用されます。ほかの株価算定方法よりも株価が低く算出されるため、節税には最も効果的です。

ただし、経営には関与していないケースでの株価算出方法なので、一般的には事業承継や自社株買いの対策にはなりません。

計算方式

配当還元方式では、以下の計算式を用いて株価を算出します。配当金と資本金のみが計算のベースとなっているため、少ない情報で算出することができます。

【配当還元方式の計算式】 

  • 1株あたりの株価=(A/10%)×(B/50円)
  • A=(C/2)/(D/50円)
 
A:年間配当額
B:1株あたりの資本金額
C:直前期末以前2年間の配当額
D:直前期末における資本金額

配当還元を下げる対策

配当還元方式を用いて株価を算定する場合、経常的に支払われている配当金額を年間配当額として用います。

そのため、経常的な配当が下がれば必然的に配当還元価額が下がります。配当が下がった部分は、特別配当や記念配当の増額により対応することが可能です。

配当金は、株主総会にて参加株主の過半数以上の賛成で変更できるため、経営者が過半数以上の自社株式を保有していれば、すぐに実行できます。

5. 事業承継計画の策定による自社株の引継ぎまでの流れ

事業承継計画の策定による自社株の引継ぎまでの流れ

贈与税や相続税を減らすための株価引き下げ対策や、納税資金確保のための自社株買いなどには、時間がかかるケースもあります。

円滑な事業承継のためには事業承継計画を策定し、引継ぎの時期や自社株買いを行うのかなど、よく検討しておくことが大切です。この章では、自社株引継ぎまでのおおまかな流れを解説します。

【事業承継計画の策定による自社株の引継ぎまでの流れ】

  1. 現状把握と会社の中長期の展望及び、目標を設定
  2. 経営の引継ぎ計画
  3. 自社株式の引継ぎ

①現状把握と会社の中長期の展望及び、目標を設定

まずは、会社の現状を把握して後継者や事業承継の時期などを決め、事業承継後10~20年先の展望や利益目標などを設定します。また、事業承継計画を策定する前には、自社株の株価も算定しておきます。

事業承継時に全株式を後継者に贈与するか、自社株買いを行い事業承継に必要な資金を調達するか、事業承継税制を利用するかなど、自社株贈与や自社株相続に関する決定事項は、事業承継において非常に重要な要素です。

事業承継税制を利用する場合は、後継者の次の世代まで事業を継続させて、事業承継しなければならないので、長期的な会社の展望や目標の設定も忘れずに行う必要があります。

②経営の引継ぎ計画

事業承継の基本事項が決定したら、事業承継計画を策定します。事業承継計画には、後継者教育のスケジュールなどの経営引継ぎ計画を盛り込みます。

後継者の能力は事業承継後の経営に大きな影響を与えるので、5~10年ほどの中長期スパンで事業承継までに後継者の教育を計画・実施します。

また、事業承継の実施により経営者が代わることを、株主・従業員・取引先などにしっかりと説明して理解を得ることも、円滑な経営の引継ぎには重要なポイントです。

③自社株式の引継ぎ

事業承継計画書で策定したスケジュールで定めた事業承継の時期がきたら、自社株式を後継者に引き継ぎ、経営権を承継します。

後継者の持ち株比率も決定することになりますが、後継者が経営に強い影響力を持たせるために、全株式の2/3以上を引継ぐことが理想です。

また、自社株式を引継ぐ際には、贈与税を納付しなければなりません。納税資金を調達するために自社株買いを行うなどの方法もありますが、自社株買いには株価に対応する金銭が必要なので、会社としての自社株買い用の資金が必要になります。

事業承継にかかる贈与税や相続税をどのように納めるかについては、自社株式を引継ぐ前に十分に検討しておくことが大切です。

6. 事業承継の相談先

事業承継の相談先

事業承継で自社株贈与や自社株相続を行う場合、贈与税や相続税を納めなければなりませんが、優良企業であるほど自社株の株価評価額が高くなり、多額の納税が必要になります。

納税額が大きくなれば後継者の負担になるだけでなく、会社の経営に影響を与えてしまうケースもあるため、円滑な事業承継には自社株買いによる納税額の確保や、自社株の株価評引き下げ対策などが重要です。

自社株買いや自社株の株価引き下げ対策は、専門的な知識があれば効果的に行うことができるので、事業承継の際は専門家へ相談することをおすすめします。

M&A総合研究所には、事業承継や自社株買いや株価引き下げについての専門的な知識を有する会計士や弁護士が多数在籍しています。

アドバイザー・会計士・弁護士が3名体制で就き、事業承継や自社株買いを丁寧にサポートいたします。

無料相談はお電話・Webより24時間お受けしておりますので、自社株買いや事業承継ご検討の際は、お気軽にご相談ください。

M&A・事業承継ならM&A総合研究所
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7. 事業承継の際の自社株引き下げ対策のまとめ

事業承継の際の自社株引き下げ対策のまとめ

事業承継の際に大きな問題となっている多額の贈与税や相続税は、自社株の株価引き下げや自社株買いなどのような方法で対策を講じることができます。

自社株の株価引き下げには、不動産の購入や生命保険への加入などがあり、納税額を引き下げることができます。また、自社株買いにより、後継者が納税資金を調達することも可能です。

自社株買いを実行するにしても、会社が株式取得の対価を支払わなければならないので、自社株の株価が低い方が会社の経営への影響が少なく済むため、自社株の株価引き下げ対策は事業承継の重要なポイントといえるでしょう。

【自社株の株価引き下げ対策】

株価引き下げ対策 純資産価額方式 類似業種比準方式 配当還元方式
①経営者・役員の退職金 ×
②不動産購入 × ×
③減価償却の計上 × ×
④生命保険の活用 ×
⑤相続時の特例活用
(事業承継税制)
⑥資産管理会社の活用
⑦株式配当金の引下げ

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