事業承継の手続き方法を法人・個人事業に分けて徹底解説!

事業承継の手続きでは、社風や経営理念、ノウハウなどの目に見えない資産をうまく引き継ぐことが大切です。今回は事業承継の手続き方法を法人・個人事業に分けて解説します。事業承継に必要な手続きや準備を知って、円滑に事業承継を行いましょう。


目次

  1. 法人の事業承継を円滑に行うための手続き6つの流れ
  2. 個人事業主が事業承継するときに必要な手続き5つの手順
  3. 事業承継に欠かせない3つの準備
  4. 事業承継を考え始めたときに頼りになる5つの相談先
  5. まとめ

1. 法人の事業承継を円滑に行うための手続き6つの流れ

法人の事業承継を円滑に行うための手続き6つの流れ

事業承継を円滑に行うためには、事前に6つの流れを把握する必要があります。手続きの流れは、以下のとおりです。

  1. 優秀な後継者を見つける
  2. 事業承継計画を作成する
  3. 後継者の育成を行う
  4. 後継者を周知させる
  5. 生前贈与・売買を実施し事業承継する
  6. 保証や担保を後継者に移動させる

順番に確認しましょう。

①優秀な後継者を見つける

まずは、優秀な後継者を見つけることから事業承継は始まります。

中小企業では、親族や従業員の中から後継者を選ぶことが多いでしょう。しかし、「自分も親から引き継いだから息子に任せたい」と考えていても、本人はどのように考えているかわかりません。

そのため、「5年後には会社を継いでほしい」と明確に意思を伝え、後継者候補に承諾してもらいましょう。

また、「親族だから」という理由で後継者を選ぶのはあまりおすすめできません。従業員の方が経営者として素質がある場合もあります。

優秀な後継者を見つけるポイントは、以下のとおりです。

  1. リーダーシップが取れる
  2. 向上心がある
  3. 配慮や気配りができる

このような人物であれば、今後経営者として会社を任せることができるでしょう。もちろん、会社の業務やノウハウについて理解がある方が良いですが、それは育成期間に教育できます。

しっかりと人間性を見て、優秀な後継者を選びましょう

②事業承継計画を作成する

後継者が決まったら事業承継計画を作成します。現経営者と後継者の2人で議論しながら作成すると、お互いの考えのすり合わせができるのでおすすめです。

事業承継計画を作成するときは、以下の手順に従いましょう。

  1. 現状把握
  2. 事業の方向性や目標の設定
  3. 解決策や事業計画の策定
  4. 事業承継で必要なタスクの洗い出し
  5. 事業承継のスケジュール決め

1つずつ確認しましょう。

現状把握

まずは、会社の現状把握を行います。具体的には、以下の内容を洗い出します。
 

  • 従業員数や年齢、持つ資格
  • 会社のキャッシュフロー状況・負債状況
  • 経営者の所有資産・負債(土地・建物・個人保証など)
  • 業界における会社の立ち位置
  • 会社の強み・弱み
  • 株主のリスト
  • 取引先のリスト

このように、さまざまな観点から会社を分析し、第三者から見てもどのような会社かわかるように会社情報をまとめましょう。

事業の方向性や目標の設定

現状把握ができたら、事業の方向性や目標の設定を行います。

今ある事業の方向性を再度認識したうえで、後継者が経営者となったときの事業の方向性を改めて考えます。後継者の考える事業の方向性が妥当なものなのか検討しましょう。

また、中長期の売り上げ目標も立てるべきです。「経営者が変わって経営が落ち込んでいる」とならないよう、1年ごとの売り上げ目標を設定しましょう。

解決策や事業計画の策定

事業の方向性や目標設定ができたら、今ある課題の解決策や売り上げ目標達成のための施策を策定します。

中長期の経営ビジョンに落とし込んでいき、ゆくゆくは従業員に発表できるレベルまで精度を高めるべきです。自社の事業領域や強みを改めて確認し、何に設備投資すべきかなど具体的に検討しましょう。

事業承継で必要なタスクの洗い出し

事業承継で必要なタスクを洗い出しましょう。例えば、経営上必要な資格の取得や株主・取引先へのあいさつ、株式の移動など、するべきことは多くなります。

思いつく限り洗い出し、抜けや漏れがないよう気をつけてください。

事業承継のスケジュール決め

タスクの洗い出しが完了したら、事業承継のスケジュールを決めましょう。

親族であれば10年、従業員であれば5年程度の育成期間・引継ぎ期間を設けると安心して事業承継ができます。

以上、事業承継計画の作り方でした。わかりやすい計画書を作れば、どのような形式でも問題ありません。

もし、「フォーマットが欲しい」という場合は、中小企業庁の「事業承継ガイドライン 20問20答」に掲載されている記入例・記入用ファイルを参考にしてください。

記入例は参考程度に考え、自社に合う事業承継計画書を作りましょう。

③後継者の育成を行う

事業承継計画書を作成すると同時に、後継者の育成を行います。後継者に経営のノウハウや知識などを教え込むことで、育成します。今まで社内にいなかったのであれば、取引先への同行をさせたり現場で経験を積ませたりすることで、自然と知識やノウハウは身につきます。

なお、実務に慣れてきたら経営セミナーに参加させるのも良いでしょう。

④後継者を周知させる

折りを見て会社に在籍する他の役員や従業員などに、後継者を報告します。会社だけでなく取引先や金融機関などにも紹介してください。

後継者の周知が済んだら、徐々に重要な取引の担当などを任せるのも得策です。

⑤生前贈与・売買を実施し事業承継する

事業承継計画書のとおり、事業承継実行のタイミングがきたら、生前贈与・売買の方法で株式移転を行いましょう。

中小企業の場合、多くのケースで生前贈与が選ばれます。なぜなら、後継者となる個人に株式を買い取る財力がないケースが多いからです。

株式移転を行ったら、後継者へ経営者の座が移ります。

⑥保証や担保を後継者に移動させる

最後に、保証・担保を後継者に移動させましょう。

現在の経営者が個人保証をしていたり担保を入れていたりする場合は、金融機関で解除してもらい、それらを後継者に交代する必要があります。

これらの手続きが終わったら、先代経営者は現経営者である後継者を見守りましょう。口出しをすると、従業員が新しい経営者に不信感を抱くなど人望を損なうきっかけになります。

口出ししたくなる気持ちを我慢して、後継者を信じて会社を任せてください

以上、事業承継手続きの流れでした。事前に計画することで、スムーズな事業承継ができます。

ここまでは法人の事業承継を前提に手続きの流れを解説しましたが、個人事業主の事業承継の手続きは少し手順が異なります。次の章で確認しましょう。

【関連】事業承継対策のポイント7選!後継者問題や株価、税金面も解説!

2. 個人事業主が事業承継するときに必要な手続き5つの手順

個人事業主が事業承継するときに必要な手続き5つの手順

個人事業主が事業承継するときの手続きは、以下の5つです。
 

  1. 後継者選びと引継ぎ
  2. 廃業手続き
  3. 開業手続き
  4. 屋号引継ぎの処理
  5. 取引先などに周知

順番に確認しましょう。

①後継者選びと引継ぎ

まずは、後継者選びからです。事業承継をするときに最も大切なことです。

個人事業主が事業承継する場合、店舗の承継が多いでしょう。家族や親族への承継が多く、内情をわかっている後継者を選ぶことがほとんどです。

しかし、改めて引継ぎと教育をしっかり行うべきです。個人事業主は、経営者の信頼や人間関係で事業が成り立っています。スキルやノウハウもきちんと引き継ぎ、自分が引退しても問題がないよう教育してください。

②廃業手続き

個人の事業承継をする際は、現事業主による廃業手続きを行わなければなりません。税務署へ廃業届を提出します。

廃業届を提出することで、現事業主は個人事業主ではなくなります。また、青色申告を行っていた場合は、青色申告を中止するための届出も必要です。

税務署へ事情を話すと必要な書類をもらえるので、記入・捺印を行い提出しましょう。

③開業手続き

後継者は、新しく個人事業主の開業届出を税務署へ提出します。開業届出を提出することで、後継者は個人事業主として事業経営することが認められます

青色申告をする予定であれば、同時に青色申告承諾書も提出しましょう。

④屋号引継ぎの処理

屋号を引き継ぐのであれば、開業届に引継ぎたい屋号を記載します。法的制限がないため、基本的に簡単に屋号を引き継ぐことが可能です。

屋号が商標登記されていれば、法務局で手続きしなければなりません。「屋号の名義変更をする」と伝えると申請書を渡されるので、記入・捺印を行って提出しましょう。

これで、事業承継の手続きは完了です。

⑤取引先などに周知

事業承継ができたら、取引先などに周知します。

個人事業は、クライアントからの信頼や人間関係によって成り立っていることが多いでしょう。そのため、事業承継の際も連絡をおろそかにするべきではありません。

今後も付き合いを継続する業者や取引先に、代表交代をしたことや後継者の紹介を兼ねたあいさつまわりをしましょう。

代表交代したことを連絡せずに取引を続けると、信用問題に関わります。事業承継後の事業がうまくいかない原因となる恐れがあるので、怠らずに実施してください。

以上、個人事業主による事業承継手続きの流れを紹介しました。個人事業主の方は、スムーズな事業承継を目指せるでしょう。

【関連】廃業(清算)よりもM&A、事業承継を!徹底比較で違いを分かりやすく解説

3. 事業承継に欠かせない3つの準備

事業承継に欠かせない3つの準備

事業承継の手続きの流れを見てきましたが、事業承継に欠かせない3つの準備があります。
 

  1. 自社(事業)分析
  2. 相続対策
  3. 節税対策

早くから準備を始めることで、よりスムーズな事業承継を実現できます。

①自社(事業)分析

まず、自社(事業)分析を改めて行いましょう。

業界内での会社の立ち位置や強み・弱みなどを書き出します。後継者と一緒に事業承継計画書でも同じ作業を行いますが、後継者が決まる前に一度現経営者だけで行ってください。

特に、後継者が決まらないときは必ず行うべき作業です。後継者に対して「会社はこういう現状だ」「君に引き継いで会社をこうしていってほしい」と口説く材料になるからです。

後継者候補が経営者になることを渋っている場合は、自社(事業)分析をしてプレゼンテーションを行いましょう。事業承継でどのように会社が変わるのかを伝えることができます。

②相続対策

事業承継の検討を始めたら、相続対策も同時に進めるべきです。

もし相続人が大勢いるのであれば、1人の後継者へ会社という財産を「贈与」することに不満を持つ相続人が出るかもしれません。「長男だけ父の財産を多くもらえるなんてずるい」と考える人もいるでしょう。

そのため、生前より相続人となる親族に対して理解を得る必要があります。話し合いの場を設け、自分の死後も後継者と他の親族が争わない配慮をしましょう。

また、事業承継の準備段階で自分が亡くなる可能性も考えるべきです。万が一のことがあった場合、思いどおりの後継者に会社を継いでもらえないかもしれません。

思いどおりの後継者に会社を承継させたいのであれば、以下の対策をしておきましょう。

  • 公正遺言書を残す
  • 事業承継信託をする

これらを行うと、「相続人全員に会社の株を均等に移転させた」となるのを避けることが可能です。事業承継を考えるときは、相続対策も同時に行いましょう。

③節税対策

事業承継をするときは、必ず節税対策を行うべきです。事業承継によって発生する可能性のある税金は、以下の3つです。

贈与税 生前贈与で会社株式を移転させた場合、後継者に納税義務が発生する
相続税 相続によって会社株式を移転させた場合、後継者に納税義務が発生する
所得税 売買によって会社移転をさせた場合、先代経営者に納税義務が発生する

多くの事業承継は、生前贈与や相続によって行われるため、後継者に対して納税義務が発生します。会社の価値が算定され、それに対して税金が発生するので納税額は大きいでしょう。つまり、後継者の負担がとても大きくなります

そこで、検討すべきなのが事業承継税制の活用です。事業承継税制とは、中小企業や個人事業の事業承継をサポートするため贈与税、相続税の納税が猶予される制度のことです。

事業承継税制を活用するためには、さまざまな要件をクリアする必要があります。詳しくは、下記の記事で解説しているので、参考にしてください。

【関連】事業承継税制とは?制度の内容や要件、利用の注意点を分かりやすく解説

4. 事業承継を考え始めたときに頼りになる5つの相談先

事業承継を考え始めたときに頼りになる5つの相談先

「事業承継について考え始めたが、誰を頼って良いかわからない」と悩む場合は、事業承継について相談できる5つの窓口を確認してください。
 

  1. 事業引継ぎ支援センター
  2. 弁護士
  3. 税理士
  4. 金融機関
  5. M&A仲介会社

それぞれの相談先で、どのような相談に乗ってもらえるのか確認しましょう。

①事業引継ぎ支援センター

事業引継ぎ支援センターは、中小企業庁が行う事業引継ぎ支援事業です。全国47都道府県に設置されています。

事業引継ぎ支援センターは、公的機関なので安心して相談できるでしょう。ただし、事業引継ぎ支援センターで支援してくれるのは「後継者不足の解決」です。

そのため、すでに後継者が決まっている中小企業へのアドバイスは、あまり有意義ではないかもしれません。それでも、専門家を紹介してもらえるなどメリットはあります。

悩んだら一度相談に行ってみましょう。

②弁護士

後継者が円滑に事業承継できるよう、会社法の観点からアドバイスしてくれるのが弁護士です。株式移転の方法に問題がないかなど、確認してくれます。

また、相続についても弁護士の強い分野で、遺言書作成や遺産分割を任せることが可能です。生前に事業承継をしようと計画しても、事業承継する前に亡くなることも考えられます。

もちろん、万が一のことは起きないことが一番ですが、会社や親族のためにも相続の相談はしておく方が良いでしょう。

弁護士に相談できる内容

弁護士は、事業承継で法律が関わることを主にサポートします。次の悩みがある場合は、弁護士に相談すると良いでしょう。
 

  • 法的な紛争を回避したい
  • 後継者以外の相続人の遺留分にも配慮したい
  • 遺言を生かした相続紛争対策をしたい
  • 定款の変更や議決権制限株式などで不明な点がある
  • 株式や相続人への売渡請求などの方法を知りたい
  • 会社法上の各種制度を利用したい
  • 遺言書の書き方について相談したい など

③税理士

事業承継において、税理士は欠かせない存在です。事業承継では贈与税・相続税・所得税などの税金問題が発生します。

誰もが「できるだけ税金の負担を軽くしたい」と考えるのが本音でしょう。そのため、税金のプロである税理士に事業承継における節税対策を依頼するべきです。

ただし、顧問税理士が事業承継に詳しいとは限りません。最初の窓口として相談するのは良いかもしれませんが、事業承継に詳しい税理士に依頼する方が、より具体的なアドバイスをもらえます

できるだけ納税額を減らしたいと考えている場合は、事業承継に詳しい税理士の力を借りましょう。

税理士に相談できる内容

税理士は主に税務面をサポートしますが、企業経営についての総合的サポートも行います。事業承継で、次の悩みがある場合は、税理士に相談しましょう。
 

  • 相続税額を試算したい
  • 暦年課税制度・相続時精算課税制度を活用したい
  • 計画的な生前贈与を行いたい
  • 議決権制限株式や黄金株を活用したい
  • 税務上の注意点を知りたい
  • 事業承継時期を含む長期経営計画を策定したい など

④金融機関

金融機関には、事業承継で必要となる資金(税金の支払いなど)の融資をお願いできます。もちろん、融資なので「借金」という認識を忘れずに利用するべきですが、一括で支払えないときは助けとなるでしょう。

もし、出入りの銀行・信用金庫の営業マンがいれば、事業承継融資がないか聞いてください。良い利率で融資してもらえるかもしれません。

また、事業承継支援を行う地域金融機関が増えています。産業労働局の推進により、地域金融機関による事業承継支援が推奨されているからです。

承継に向けた課題の抽出・整理や事業承継計画の策定・実行などを行ってくれます。

⑤M&A仲介会社

事業承継をしたくても「後継者がいない」と困っている場合は、M&A仲介会社に相談するのも手です。事業承継のためのM&A支援を行うM&A仲介会社は、多く存在します。

後継者不足が原因で会社を廃業するのは、非常にもったいないことです。一度、M&Aを検討してみましょう。

M&Aとは、会社の合併・買収をさします。M&Aを行うことで、事業を外部の第三者に引き継いでもらえるため、後継者がいない場合でも会社を残すことが可能です。

M&Aを活用することで、以下のメリットを享受できます。

  • 後継者がいなくても事業を存続できる
  • 個人保証や負債を引き継げる
  • 従業員の雇用を維持できる
  • 一部の事務所だけ譲渡することも可能

後継者問題に困ったらM&Aを選ぶと良いでしょう。

M&A仲介会社をお探しの場合は、ぜひM&A総合研究所にお任せください。M&A総合研究所には、M&A・事業承継の経験や知識が豊富なM&Aアドバイザーが在籍しており、親身になって案件をフルサポートいたします。

また、料金システムは完全成功報酬制となっており、着手金や中間手数料、月額報酬などは一切かかりません。成功報酬額は国内最安値水準ですので、リーズナブルにM&A・事業承継の実現が目指せます。

無料相談を行っておりますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。

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5. まとめ

まとめ

事業承継における手続きの流れについて、法人・個人に分けて解説しました。事業承継では、会社の株式や所有権の移動の手続きに目が行きがちですが、大切なのは社風や経営理念、ノウハウなどの目に見えない資産をうまく引き継ぐことです。

そのためには、人望のある後継者を選び後継者教育をしっかり行う必要があります。事業承継に必要な手続きや準備を知って、円滑に事業承継を行いましょう。

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