事業承継の件数が過去最多!急増の理由や課題、相談先を解説!

国内全体で後継者問題が深刻化するなか、政府主導の支援政策によって事業承継の件数が伸びつつあります。本記事では、事業承継の件数の推移・急増する理由・課題を取り上げ、市場全体にどのような変化が起きているのか、詳しく解説します。


目次

  1. 事業承継とは
  2. 事業承継の件数ほかの推移
  3. 事業承継が急増する理由
  4. 事業承継する上での課題
  5. 事業承継のサポートする相談先
  6. まとめ

1. 事業承継とは

事業承継とは

事業承継とは、会社の事業を後継者に引き継ぐことをいいます。経営権や資産など、会社や事業の経営に必要なものを全て引き継ぎます。

事業承継は、会社や事業を存続させるために必ず行う必要があるものですが、準備が大変という側面もあります。

資産の引き継ぎや後継者育成などには手間と時間を要するため、現経営者にとって負担になることも多いですが、事業承継の件数は全体数でみると着実に増えつつあります。

【関連】【保存版】事業承継とは?目的や税制、補助金の利用方法まで徹底解説!

2. 事業承継の件数ほかの推移

事業承継の件数ほかの推移

この章では、中小企業庁や中小企業の成長をサポートする企業が公開している事業承継の関連データを基に、事業承継の件数の推移や動向を解説します。

【事業承継の件数ほかの推移】

  1. 事業承継の相談件数及び、引継ぎ件数
  2. 事業承継の形態
  3. 譲渡側企業の業種
  4. 譲渡側企業の従業員数
  5. 事業承継の引継ぎまでの時間
  6. 事業承継せずに廃業を選んだ理由

①事業承継の相談件数及び、引継ぎ件数

事業承継の相談件数及び、引継ぎ件数

出典: https://www.smrj.go.jp/org/info/press/2018/frr94k0000036x18-att/20180625_press01.pdf

上図は、中小企業基盤整備機構が公開している「平成29年度 事業引継ぎ支援事業に係る相談及び引継ぎ実績について」から抜粋した、事業承継の相談件数と引き継ぎ件数のデータです。

事業承継件数は平成28年度より急増しており、29年度には1,478件に達しています。現在はさらに件数を伸ばしており、次世代への引き継ぎが順調に行われていることが伺えます。

また、相談件数も年を追うごとに増えています。企業の事業承継に対する関心が高まっており、事業承継やM&Aによる事業承継に前向きな姿勢になっていると考えられます。

②事業承継の形態

事業承継の形態

出典: https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/kenkyukai/jigyousyoukei/2016/160426jigyousyoukei5.pdf

事業承継の形態は、事業承継の引き継ぎ先によって分けられており、それぞれ性質が変わるため、異なる形態として扱われています。

上記グラフの第三者承継は、M&Aによる事業承継のことを表しています。従来の事業承継では親族内承継が一般的でしたが、後継者問題の影響により第三者承継の割合が急激に増えてきています。

③譲渡側企業の業種

譲渡側企業の業種

出典: https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/kenkyukai/jigyousyoukei/2016/160426jigyousyoukei5.pdf

事業承継の件数が急増しているなか、特に事業承継が進んでいる業種は製造業と卸・小売業です。

両者は後継者問題が深刻化している業種でもあるため、全体の約4割を占める結果となっています。

④譲渡側企業の従業員数

譲渡側企業の従業員数

出典: https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/kenkyukai/jigyousyoukei/2016/160426jigyousyoukei5.pdf

事業承継件数では、比較的小規模の企業の割合が多くなっています。従業員数1~5名が全体の43%と最も多い比率となり、従業員数が少ない企業ほど事業承継がスムーズに行われていることが分かります。

一方で、従業員数が多く規模が大きい企業では、思うように進展していないことも明らかになっています。従業員数100名を超える企業の事業承継件数は、全体の2%と非常に少なくなっています。

⑤事業承継の引継ぎまでの時間

事業承継の引き継ぎまでに要した時間については、明確なデータが公開されていませんが、おおよその時間は計算することができます。

まず、親族内承継における事業承継においては、後継者を育成する期間が必要です。事業承継の後継者の育成に要する期間は5~10年といわれています。

M&Aによる事業承継の場合は、後継者育成の代わりに買い手を探すための時間が必要であり、M&Aによる事業承継の買い手探しから成約までの時間は6ヶ月~12ヶ月とされています。

⑥事業承継せずに廃業を選んだ理由

事業承継せずに廃業を選んだ理由

出典: https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/kenkyukai/jigyousyoukei/2016/160426jigyousyoukei5.pdf

事業承継を行わずに廃業を選択する企業も見受けられ、その理由で多いのは「子供に継ぐ意思がない」「子供がいない」「適当な後継者が見つからない」の3つがあります。

後継者問題が原因で廃業を予定している企業は28.6%となっており、企業の存続の意思があるにも関わらず、廃業を選択せざる得ない状況にある企業が増加していることがわかります。

3. 事業承継が急増する理由

事業承継が急増する理由

事業承継の件数が急増していますが、ここまで増えている理由はどのようなものがあるのでしょうか。この章では、事業承継の件数が急増する理由5つをみていきます。

【事業承継の件数が急増する理由】

  1. 政府が勧める事業承継5カ年計画の認知度
  2. 政府主導の事業引継ぎセンターの強化と認知
  3. 事業承継税制
  4. 経営者の高齢化
  5. M&Aをはじめとする事業引き継ぎの認知

①政府が勧める事業承継5カ年計画の認知度

事業承継の件数が急増する理由1つ目は、政府主導の事業承継5ヶ年計画の認知度向上です。

事業承継5ヶ年計画とは、今後5年をかけて中小企業の事業承継に関して集中的に支援する施策のことです。

現状のまま中小企業の事業承継が進まなければ、大量の雇用とGDPが失われることを懸念したものであり、2017年に開始してからさまざまな中小企業の事業承継支援を行っています。

【関連】事業承継5ヶ年計画の背景や概要を解説!中小企業庁の戦略とは?

②政府主導の事業引継ぎセンターの強化と認知

事業承継の件数が急増する理由2つ目は、事業引継ぎセンターの強化と認知の向上です。事業引き継ぎ支援センターは、中小企業の事業承継支援を目的に設立された公的機関です。

主な業務内容は、事業承継に関する相談対応です。中小企業の経営者が気軽に相談することができる公的機関は、支援体制の強化と認知度向上を実現させています。

③事業承継税制

事業承継の件数が急増する理由3つ目は、事業承継税制です。平成30年の改正により事業承継税制の適用範囲が急拡大されたことで活用する企業が急増しています。

従来の事業承継税制は適用範囲や適格要件が厳しいものでしたが、改正により相続税・贈与税の全額納税猶予が受けられるようになりました。

事業承継の後継者にかかる負担が大幅に軽減されたことで、中小企業の事業承継を後押しすることとなり、件数急増に繋がっています。

【関連】事業承継税制のメリット・デメリットや必要要件は?

④経営者の高齢化

事業承継の件数が急増する理由4つ目は、経営者の高齢化です。経営者が高齢化すると経営力が落ちてしまうため、適切なタイミングで事業承継しなくてはなりません。

2020年前後は、団塊世代の経営者が引退適齢期を迎える頃でもあるため、多くの中小企業が事業承継のタイミングを迎えています。

⑤M&Aをはじめとする事業引き継ぎの認知

事業承継の件数が急増する理由5つ目は、M&Aをはじめとする事業引き継ぎの認知度向上です。

親族内承継以外にも事業承継の形態があることが広く認知され、事業承継を決断する企業も増えています。

特に、近年はM&Aによる事業承継の件数が急増しています。政府主導の5ヶ年計画や事業承継税制の改正の影響もあり、M&Aによる事業承継が進めやすい環境が整いつつあります。

4. 事業承継する上での課題

事業承継する上での課題

事業承継を成功させるには、いくつかのポイントを押さえておくことが大切です。課題を軽視してしまうと、事業承継の失敗や後継者の負担増加などのデメリットにもつながります。

下表は、中小企業庁が公開している「事業承継をする上での課題」です。事業承継のタイミングを迎えている経営者の声が反映されており、現実的な課題を知ることができます。

事業承継する上での課題

出典: https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/kenkyukai/jigyousyoukei/2016/160426jigyousyoukei5.pdf

①自社株式に係る相続税・贈与税の負担

事業承継の際は、自社株式に係る相続税・贈与税が課せられます。中小企業にとって換金性のない株式に課せられる税金は大きな負担となり、事業承継を滞らせる一因となっています。

従来は現経営者や後継者を悩ませる問題でしたが、事業承継税制の改正により事情が大きく変わりました。現在は全額の納税猶予が受けられるので、事業承継時の納税負担がゼロとなっています。

②将来の経営不安

事業承継のタイミングを迎えている経営者のなかには、将来の経営を不安視する声も多いです。

事業承継で会社や事業を存続させたとしても、将来的に潰れてしまうことを懸念して事業承継に踏み出せていない現状もみられます。

③後継者が不在

3番目に比率が高かったのは後継者の不在です。中小企業の後継者問題が深刻化しているため、後継者不在を課題に挙げる経営者も多い結果となりました。

現在は、M&Aによる事業承継の認知度が向上したこともあり、後継者問題の対策も着実に進んでいます。

【関連】地方の会社がM&Aできない理由は?後継者対策も解説!

④借入金・債務保証の引継ぎ

借入金・債務保証の引継ぎを課題に挙げる経営者も多く見受けられます。中小企業は金融機関からの借入の際に個人保証・担保を提供しなければならないため、事業承継での引き継ぎに関して不安視する声も多いです。

事業承継における借入金・債務保証の引き継ぎは、債権者の同意を得ることで引き継ぎが認められます。

事業計画書などを提供して計画性のある事業承継であることと、後継者の返済能力を示すことで引き継ぎが可能です。

⑤自社株式以外の資産に係る相続税・贈与税の負担

事業承継の引き継ぎでは、株式以外の資産についても相続税・贈与税が課せられます。従来は後継者の負担となるものでしたが、平成30年の事業承継税制改正により全額猶予が受けられるようになりました。

現在は事業承継税制の申請を行うことで、贈与・相続を実施する際に自社株式以外の資産に係る納税負担をゼロにすることが可能です。

⑥親族間の調整

事業承継においては親族間の相続トラブル対策も必要です。特定の親族のみに資産が集中すると、ほかの親族から不満の声がでる可能性が高いです。

現経営者がリーダーシップをとり早期から親族間の調整を行い、関係者である全ての親族からの同意を取り付けたうえで、万全の体制で事業承継に臨む必要があります。

⑦その他

その他の課題としては、取引先や従業員などの関係先にかける迷惑などが挙げられます。

事業承継を行うと一時的に会社の事業が停滞することが想定されるので、取引先や従業員へかかる迷惑を気にする声も見受けられます。

⑧後継者候補から承諾が得られない

後継者候補から承諾が得られないという課題もあります。親が決めた事業承継について子側が納得しないケースが多くなっています。

近年はM&Aによる事業承継の件数が急増していますが、親族内承継の引き継ぎ件数もまだまだ多くみられます。しかし、親と子のトラブルによって、事業承継が進んでいないケースも珍しくありません。

⑨相続時に自社株式が散逸してしまうおそれがある

生前贈与ではなく死亡後の相続の場合、自社株式が散逸してしまい経営権を集中できなくなる可能性があるというものです。

そのような事態をさけるためには、経営者が死亡した時の株式の承継者を決めておくなどの対策が必要です。

細かい遺産に関しては後から相談することもできますが、株式に関しては会社の経営が関わるため、株式の承継者だけでも決めておくとよいでしょう。

⑩引退後の生活に不安がある

親族内承継の場合は無償譲渡が一般的なので、見返りを受け取らずに引退するケースも多いです。

しかし、経営者としての収入がなくなったら、満足な生活を送れるのかどうか不安という声も見受けられます。

会社や後継者の都合だけではなく、現経営者のその後の生活に関しても対策が必要とされています。

5. 事業承継のサポートする相談先

事業承継のサポートする相談先

事業承継の件数が伸びている理由には、事業承継をサポートする専門家が増えていることも強く影響しています。

この章では、事業承継のサポートする相談先を6つ紹介します。いずれも事業承継に関する知識を携えた専門家なので、安心して相談することができます。

【事業承継のサポートする相談先】

  1. M&A仲介会社
  2. M&Aアドバイザリー
  3. マッチングサイト
  4. 金融機関・証券会社
  5. 公的機関・事業引継ぎセンター
  6. 税理・会計・法務事務所

①M&A仲介会社

M&A仲介会社は、M&A・事業承継の仲介サポートを専門的に請け負う専門家です。日常的に企業のM&A・事業承継に関わっているので、豊富な知識・ノウハウを蓄積しています。

親族内承継の相談先としても優秀ですが、M&Aによる事業承継も対応しています。M&Aで培ったネットワークを保有しているので、M&Aによる事業承継においても質の高いサポートが期待できます。

M&Aサポートの特徴は仲介型であることです。売り手・買い手の中立的な立場から交渉条件のすり合わせを行うので友好的なM&Aを実現させやすくなっています。

②M&Aアドバイザリー

M&Aアドバイザリーは、M&Aに関する助言業務を行う専門家です。M&A業界における立ち位置はM&A仲介会社と酷似しています。

M&A仲介会社と異なる部分は、M&Aサポートがアドバイザリー型であることです。依頼者の利益の最大化を最優先にするサポートであるため、目的を達成しやすい反面、交渉が長期化するなどのデメリットもあります。

③マッチングサイト

マッチングサイトとは、インターネット上でM&A・事業承継案件を探すことができるウェブサービスです。

売り手もしくは買い手が情報を登録することでマッチングが成立するので、近年では利用者が急増しています。

M&Aによる事業承継においても多用されており、比較的規模が小さい案件も多数掲載されているので、買い手からの閲覧も多いのも魅力です。

④金融機関・証券会社

金融機関・証券会社も相談先の候補に挙げられます。近年はM&Aの専門チームを設立するなど、主たる事業に次いで注力している金融機関・証券会社が増えています。

しかし、規模の大きい案件を好む傾向にあるため、中小企業の事業承継サポートは断られてしまう可能性がある点には注意が必要です。あくまでも相談先の候補の一つとして捉えておくことをおすすめします。

⑤公的機関・事業引継ぎセンター

公的機関・事業引継ぎセンターとは、国と地方自治体が連携して設立した中小企業の事業承継サポート機関です。

事業承継に関する悩みを無料で相談することができるため、事業承継の第一歩として最適な相談先といえるでしょう。

業務内容は相談の受付となっているため、事業承継の具体的なサポートは受けられない点に注意が必要です。

⑥税理・会計・法務事務所

税理・会計・法務事務所は、事業承継サポートを行っていることが多いです。税務・会計・法務は事業承継においても必須なので、相談先として心強いです。

しかし、特定の分野に突出している分、一貫したサポートを行えないという弱点もあります。

提携先のM&A仲介会社に案件を流されるといったこともあり得るため、サポートを依頼する際はよく検討することが必要です。

事業承継のご相談はM&A総合研究所へ

M&A総合研究所は、M&A・事業承継のサポートを行っているM&A仲介会社です。M&A・事業承継に関する経験・知識を備えたアドバイザー・会計士・弁護士の3名によるフルサポート体制が整っています。

過去の相談・仲介実績で培った豊富な経験・ノウハウをフル活用することで、事業承継をしっかりサポートいたします。

後継者候補がいない場合はM&Aによる事業承継サポートも可能です。独自に保有するネットワークにより広範囲から後継者を選定し、よりよい条件での引き継ぎが実現できます。

無料相談は24時間お受けしていますので、事業承継をご検討の際は、お気軽にM&A総合研究所までご連絡ください。

M&A・事業承継ならM&A総合研究所
電話で無料相談
03-6455-5875
WEBで無料相談
M&Aのプロに相談する

6. まとめ

まとめ

本記事では、事業承継の件数の推移や件数急増の理由を解説しました。政府主導の施策により事業承継の件数が順調に伸びており、滞っていた事業承継事情が大きく変わりつつあります。

一方で、後継者問題や独自の課題を抱えている中小企業もまだまだ多いのが実情です。会社を次世代に引き継ぐためにも、事業承継について知っておくことが有用といえるでしょう。

【事業承継の件数ほかの推移】

  1. 事業承継の相談件数及び、引継ぎ件数
  2. 事業承継の形態
  3. 譲渡側企業の業種
  4. 譲渡側企業の従業員数
  5. 事業承継の引継ぎまでの時間
  6. 事業承継せずに廃業を選んだ理由

【事業承継の件数が急増する理由】
  1. 政府が勧める事業承継5カ年計画の認知度
  2. 政府主導の事業引継ぎセンターの強化と認知
  3. 事業承継税制
  4. 経営者の高齢化
  5. M&Aをはじめとする事業引き継ぎの認知

【事業承継のサポートする相談先】
  1. M&A仲介会社
  2. M&Aアドバイザリー
  3. マッチングサイト
  4. 金融機関・証券会社
  5. 公的機関・事業引継ぎセンター
  6. 税理・会計・法務事務所

関連する記事

人気の記事

人気の記事ランキング

新着一覧

最近公開された記事