2019年10月28日公開
2020年04月28日更新
【保存版】事業承継とは?目的や税制、補助金の利用方法まで徹底解説!
事業承継とは、後継者や第三者に会社の経営を引き継ぐことです。今回は、事業承継のメリット・デメリット、税制、事業承継計画の作り方など、基礎知識をわかりやすく解説します。事業承継のポイントを抑え、事業承継を成功させましょう。
目次
1. 事業承継とは
事業承継とは、後継者や第三者に会社の経営を引き継ぐことです。今まで経営してきた会社を誰かに任せることはとても大変な作業と言えます。
事業承継では、「誰に」「どのように」「どのようなタイミングで」引き継ぐのかなど、考えるべきポイントが多いです。さらに、これらが決まった後も、後継者を経営者として育て上げなかればなりません。
そのため、経営者がリタイアをするずっと前から計画的に事業承継を進めていくことが大切です。まずは、事業承継を行う目的や事業承継対策など、基本的なことを学んでいきましょう。
1-1.事業承継を行う目的
事業承継の目的は、会社や事業の継続です。もし、事業承継をせずに、現在の経営者がリタイアしたとしましょう。
会社は経営者不在となり、廃業するしか選択肢はありません。
廃業をすると、以下のようなことが問題として起きると考えられます。
- 従業員が路頭に迷う
- 取引先や顧客との信頼がなくなる
- 廃業費用が発生する
- 個人保証・連帯保証が残る
このように、会社の関係者に迷惑をかけてしまいます。今まで育ててきた会社が廃業になってしまうことは、経営者にとっても悲しいことでしょう。
早い段階から事業承継を考えていく必要があります。
1-2. 事業承継対策とは?対策の必要性と種類
事業承継対策とは、事業承継に向けての準備のことです。
「自分は現役でまだ席を譲る気は無い」と思っていても、事業承継のときは突然やってきます。不慮の事故や突然の病によって、廃業を余儀無くされる企業はたくさんあるのです。
そのため、経営者が元気なうちから後継者を考え、引き継ぐ準備を進めていく必要があります。
事業承継対策は、以下の5つの側面から実践していきましょう。
後継者対策 | 後継者の選定・後継者育成する |
納税資金対策 | 後継者による納税資金の確保する |
遺産分割対策 | 後継者が親族の場合、他の親族との相続遺産の調整する |
株価対策 | 株価の引き下げを行って、後継者の納税額を調整をする |
株数対策 | 株数を減らして後継者の会社支配権を確立する |
このように、事業承継をする前に事業承継対策を行いましょう。
1-3.事業承継とm&aの違い
事業承継とM&Aの違いは、目的にあります。事業承継の目的は会社や事業を存続させるためです。
一方、M&Aの目的は企業同士を合併してさらに会社を発展させることにあります。
しかし、最近は事業承継を目的としたM&Aも多いです。近年、多くの中小企業において親族や自社内に事業承継のできる後継者がいないといった問題を抱えています。
このような現状から、他の会社に経営権を渡して事業を引き継いでもらうケースが増えているのです。「適切な後継者がいないけど、廃業はしたくない」と考えるのであれば、M&Aを活用した事業承継を検討していきましょう。
1-4.事業承継のスキームと手続き
経営者の交代を考えている会社が事業承継を行うスキームは、以下の3つです。
- 親族内承継
- 親族外(従業員)承継
- M&A
中小企業で最も一般的なのが、親族内承継です。
親族内承継は、会社や事業を親族に継いでもらうことを言います。
また、従業員など社内から後継者を選ぶ親族外(従業員)承継も一般的です。既存の従業員だけでなく外部から経営者候補として新たに第三者を招き、事業承継を行う方法も親族外承継に含まれます。
従業員や身近な人の中で後継者が見つからない場合は、M&Aによる事業承継が必要です。M&Aでは、自分で買い手を探し、話し合いの中で売買価格を決めていくという手間がありますが、後継者を見つけられず廃業するよりもコストは少なく済みます。
事業承継の3つの方法については、『事業承継をする3つの方法を徹底解説!メリット・デメリットと税金も紹介』で詳しく解説しています。
2. 事業承継を行うメリットデメリット
ここまでは事業承継の基本的なことをお伝えしました。
しかし、「事業承継をすべき?」と悩んでいる経営者もいるかもしれません。
事業承継のメリット・デメリットや個人事業主の事業承継の注意点を確認し、事業承継をすべきか判断していきましょう。
2-1.事業承継を行う4つのメリット
事業承継を行うことで、4つのメリットを得ることができます。
- 企業がさらに発展可能性がある
- 従業員を雇用し続けられる
- 取引先や顧客との関係が続く
- リタイア後も企業の成長を見守れる
このように、事業承継をすると今まで育ててきた企業を存続させることができます。経営者の交代をきっかけに、さらに成長できる可能性もあるでしょう。
また、従業員や取引先、顧客への信頼も裏切ることはありません。「元社長」「元経営者」として関係者から感謝されるでしょう。
2-2.事業承継を行う3つのデメリット
事業承継には、3つのデメリットが挙げられます。
- 経営不振に陥る可能性がある
- 個人保証・連帯保証が手元に残ることがある
- リタイアしたつもりでも経営に口出ししてしまう
このように、事業承継をしたのに後継者育成がしっかりできていなければ経営不振に陥る可能性があります。また、経営者の個人保証や連帯保証は、後継者の資金力によって引き継げないこともあるのです。
また、企業が存続していることで、リタイア後も経営に口出しをしてしまい、老後の余暇を楽しむことができないかもしれません。
しかし、これらのデメリットは後継者育成や引き継ぎ方で解決できることばかりです。企業を廃業してしまうよりは、事業承継をすることをおすすめします。
2-3.個人事業主の事業承継には注意が必要!
個人事業主が事業承継をするときには、注意が必要です。なぜなら、企業の事業承継とは手続き方法が異なるからです。
個人事業主が事業承継をするのであれば、一度廃業届を提出し、その後、後継者が開業届を提出します。そして、後継者に対して「売買」「贈与」「相続」のいずれかによって、譲渡を行うのです。
また、個人事業の納税義務は個人に課せられます。先代・後継者の両者が確定申告と納税を行わなければなりません。
個人事業主の事業承継については、『個人事業主の事業承継方法とは?税金・手続き・M&A仲介会社を解説』で詳しく解説しています。
3. 先に知っておこう!事業承継で頻繁に起こるトラブル・問題・成功失敗事例
続いて、事業承継で頻繁に起きてしまうトラブル・問題を事例でご紹介します。よく起きる失敗事例を4つ確認しましょう。
- 後継者が決まらなかった
- 後継者を十分に育成できなかった
- 株式を後継者に集中させられなかった
- 事業承継後に派閥争いが起きてしまった
順番にどのような事例なのか、確認していきましょう。
事例1.後継者が決まらなかった
ある経営者は、後継者不在に悩んでいました。自身の子どもたちや従業員から後継者になることを断られて以降、後継者を探してこなかったのです。
とうとう後継者が親族や従業員の中から見つからないまま、高齢のため体力に限界が来て廃業を余儀なくされました。
A社の経営者が事業承継に失敗した原因は、後継者探しを先送りにしていたことです。後継者が周囲で見つからないならM&A仲介会社などに相談して後継者を探すべきでした。
このように、後継者不在のために廃業してしまう中小企業は増加しています。中小企業の経営者の高齢化は深刻で、後継者探しは事業継続のための経営課題となっているのです。
事例2.後継者を十分に育成できなかった
ある経営者は、息子に事業承継しようと考えていました。後継者が決まっているため、事業承継は問題ないと安心していたのです。
しかし、突然体調を壊して、引き継ぎのないまま息子が新しい経営者となってしまいました。急遽後継者となった息子を支援してくれる人材がおらず、経営状況が悪化。多くの従業員が離職してしまったのです。
後継者が決まっていても、突然経営者として立たせると業績が悪化するのは当然の結果でしょう。しっかり事業承継計画を立てて、息子を経営者として教育すべきでした。
このように後継者が決まっていても、事業承継の準備を進めていない経営者は多いです。後継者は決めるだけでなく、経営のノウハウや従業員との関係など会社の経営に必要なことを教える期間を設けなければなりません。
事例3.株式を後継者に集中させられなかった
ある経営者は、相続対策として子どもたちに自社株式を平等に相続させました。先代経営者が亡くなってからは、子どもうちの1人が会社を継ぐこととなったのです。
しかし、相続後に会社と関係のない配偶者から株式の買い取りを請求されたことで、後継者である子どもは議決権を33%しか維持できなくなりました。
結果、後継者は常に他の株主の賛成がないと経営できない状態となってしまい経営に支障をきたすこととなったのです。
このように後継者が経営を悪化させる原因は、先代経営者の間違った相続対策が原因の場合があります。このようにならないためには、相続対策をもっと勉強したり、税理士や弁護士などに相談したりして対策するべきでした。
相続で事業承継を行うと、後継者以外の相続人と相続争いになる可能性があります。先代経営者と後継者は、先代経営者が元気なうちに対策を話し合いましょう。
事例4.事業承継後に派閥争いが起きてしまった
経営者が急死したため、後継者の息子が株式を相続しました。しかし、先代経営者が自社株式を40%しか保有しておらず、後継者は35%しか相続できなかったのです。
残りの株式は、会長である後継者の伯父と専務である後継者の叔父、および役員や取引先が保有していました。叔父が役員と取引先を取り込み、結局後継者を追い出して社長に就任したのです。
その後、会長の伯父と社長となった叔父が派閥争いを繰り広げ、多くの従業員が離職してしまいました。
相続後に事業承継でもめることは多いです。亡くなった経営者は、兄弟間で経営の道筋をつけて、後継者に株式を集中できるよう対策しておく必要がありました。
このように相続での事業承継は、このように思ってもいなかった争いが起こる可能性があります。後継者がしっかり経営できるよう、先代経営者は専門家に相談して生前に対策しなければなりません。
以上のように、事業承継で失敗する例はたくさんあります。
事業承継の事例については、『事業承継失敗の事例から学ぶ!失敗の要因・成功のポイントとは』で詳しく紹介しています。
4. 事業承継マニュアルを参考に!事業承継計画の作り方
紹介したような失敗を起こさないためにも、事業承継計画をしっかりと作るようにしましょう。
中小企業庁の発表した事業承継ガイドラインによると、事業承継計画とは「中長期の経営計画に事業承継の時期、具体的な対策を盛り込んだもの」となっています。
簡単にまとめると、事業承継計画策定の大きな目的は、事業承継という一大プロジェクト実行のために具体的なスケジュールを立てることだと言えます。
事業承継計画の策定方法は様々ですが、どの企業も利用できるよう中小企業庁が策定しているひな形・記入例を参考にしましょう。
これらの内容に沿って必要事項を決めていくと、事業承継計画を立てることができます。
ただし、中小企業庁のHPからダウンロードできるひな形は大まかなものです。詳しい計画策定については専門家と相談しながら進めることをおすすめします。今後、会社の引継ぎを考えている方は早めに税理士や会計士、事業承継コンサルタントなどに相談してみましょう。
事業承継計画の作り方は、『事業承継の計画はどう作る?作成前の準備やタイミングも解説』で詳しく解説しています。
5. 事業承継税制は使わなきゃ損!要件や相続税について分かりやすく説明
5-1.事業承継税制とは
事業承継税制とは、中小企業の事業承継をサポートするため、贈与税・相続税の支払いを一定期間猶予してくれる制度のことです。
個人・法人共に株式譲渡による事業承継が対象となっており、制度の利用には都道府県知事からの認定が必要となります。
現在利用可能な特例を使えば、最大で100%の贈与税・相続税が免除されるので自分の会社が制度の対象となっているか、税理士などに相談してチェックしておきましょう。
5-2.事業承継税制の要件
事業承継税制とは、事業承継の際に発生する税金の負担を減らすためスタートした制度です。しかし、適用には要件があるため税の優遇が受けられない可能性もあります。
事業承継税制の適用要件は、大きく分けて以下の5つです。
- 都道府県知事の認定に関する要件
- 会社に関する要件
- 先代経営者に関する要件
- 後継者に関する要件
- 担保に関する要件
このように細かな要件が設定されているので、自社が当てはまるのかをしっかりとチェックしましょう。
事業承継税制の要件については、『事業承継税制の適用要件とは?支払い免除や認定取消も解説!』で詳しく解説しています。
5-3.事業承継に関する相続税・消費税の注意点
もし、先代が亡くなってしまったことが原因で事業承継をすることになった場合、「相続による事業承継」となります。このとき、相続税と消費税の扱いに注意しなければなりません。
2つの注意点について確認しておきましょう。
相続税の注意点
事業承継税制では、相続税が免除されるわけではないことをしっかりと認識しておきましょう。ただ、納税猶予期間が設けられるだけなのです。
もし、事業継続要件を満たされなくなった場合、納税猶予されていた相続税を一括で納付しなければなりません。事業継続のために必要な要件は以下の通りです。
- 第三者へ譲渡をしないこと
- 後継者が代表権を持ち続けること
- 資産管理会社に該当しないこと
もし、事業承継税制を使うのであれば、事業継続要件を満たし続けるように注意しましょう。
消費税の注意点
消費税は、年間課税売上高が1,000万円を超える場合に納税義務が発生します。相続で事業承継した場合、後継者が事業をしていない期間の会社の課税売り上げも対象となるので注意しましょう。
例えば、2019年5月に先代が亡くなり事業承継したとしましょう。先代の売り上げが300万円、6月以降の後継者の売り上げが800万円だったとすると、課税売上高は合計の1,100万円となり、消費税の納税が必要です。
5-4.「経営承継円滑化法」とは?
経営承継円滑化法とは、中小企業庁による事業承継を支援するための法律です。
認定を受けると、以下のような支援を受けることができます。
- 税制支援(贈与税・相続税の納税猶予及び免除制度)の前提となる認定
- 金融支援(中小企業信用保険法の特例、日本政策金融公庫法等の特例)の前提となる認定
- 遺留分に関する民法の特例
これらの認定を受けるためには、中小企業庁への申請が必要です。申請マニュアルを参考に、申請しましょう。
5-5.ローンを使った税金対策
実は、事業承継にあたってローンを組むことができます。つまり、事業承継をするときに必要な費用を銀行などの金融機関から借りることができるのです。
一度に相続税や贈与税が支払えない場合や株式の買取りができない場合などに活用できるでしょう。しかし、ローンは借金です。つまり、いつかは返さなければならないお金です。
どれくらいの期間で返していくのか、利子や担保・保証人などについては、金融機関や会社の状況によって異なります。専門家に相談しながら、ローンを活用すべきか決めていきましょう。
事業承継税制については、『事業承継税制とは?メリットと要件、手続きの流れを解説!』で詳しく解説しています。
6. 事業承継補助金を活用すると選択肢が広がる!
事業承継補助金とは、事業承継やM&Aをきっかけとした中小企業のチャレンジを応援する制度です。経営者の交代後の経営改革(Ⅰ型)や事業の再編・統合後の経営改革(Ⅱ型)を行うときに必要な経費を補助してもらうことができます。
そのため、事業承継やM&Aを実施したあとに「こんなことに挑戦したい!」と行った新しい事業への進出や新しい機械の導入など、売り上げ増加につながる事業を実施するためのサポートをしてくれるのです。
1年に一度募集が行われ、事業承継の資金繰りを支援するために最大で600万円が支給されます。融資とは違い、返済不要である点が大きなメリットになります。
なお募集に落選すると補助金は受け取れません。しかし、補助金を獲得する企業や補助金総額は年々増加しており、申請を検討すべき制度です。
補助対象者の要件や手続きの流れを確認しましょう。
補助対象者
補助対象者は以下の通りです。
後継者承継型
- 日本国内で事業を営む中小企業や小規模事業者等、個人事業主、 特定非営利活動法人(以下、「中小企業者等」という)であること
- 地域経済に貢献している中小企業者等であること
- 承継者が、次のいずれかを満たす(事業)者であること
事業再編・事業統合支援型
- 本補助金の対象事業となる事業再編・事業統合に関わる “すべての被承継者”と“承継者”が、日本国内で事業を営む 中小企業や小規模事業者等、個人事業主、特定非営利 活動法人(以下、「中小企業者等」という)であること
- 地域の経済に貢献している中小企業者等であること
- 承継者が現在経営を行っていない、又は事業を営んでいない場合、次のいずれかを満たす者であること
このような要件を満たす経営者は申請をすることができます。
補助金交付までの手続き
まずは、認定支援機関へ相談し、交付申請を行います。交付が決定されれば、申請作成書に記載した補助事業を先に実施しましょう。
その事業実績を報告すると、確定検査が行われます。その後、交付手続きを行い、補助金を受け取ることとなるのです。
このように、補助金を申請しても補助事業を実施した後に補助金が交付されることとなりますので注意しましょう。
事業承継補助金については、中小企業庁の出しているパンフレットを確認してください。詳しい申請期間や申請方法を確認しましょう。
事業承継補助金については、『事業承継の時に補助金は出る?応募の条件と採択率、金額を紹介!』でも詳しく解説しています。参考にしてください。
7. 事業承継における契約書の作り方
事業承継をM&Aで行うときには契約書の作成が不可欠です。
例えば、以下4つのような契約書の作成をする必要が出てきます。
- アドバイザリー契約書
- 秘密保持契約書
- 基本合意契約書
- 最終契約書
それぞれ作り方を見ていきましょう。
契約書1.アドバイザリー契約書
アドバイザリー契約書は、M&Aを検討していることが外部に漏れないようにするために必要な契約書です。また、M&Aのサポートを受けるためにも必要となります。
主にM&A仲介会社などの外部に依頼するときに作成する必要がありますが、作り方や内容はそれぞれ依頼する場所によって違うので聞いてみましょう。
場合によっては作成してもらえるため、作り方を知っておかなくてはならないものではありません。
契約書2.秘密保持契約書
秘密保持契約書は、取引でやりとりする企業情報を外部に漏らさないために作る契約書です。
主に、M&Aで売り手・買い手企業同士の詳細な企業情報を漏らさないために結びます。
秘密保持契約書は以下のような項目が必要です。
- 定義に関する規定
- 情報管理に関する規定
- 内容に関する規定
- 例外に関する規定
- 秘密保持期間に関する規定
- 事故発生の報告に関する規定
- 違反時の制裁に関する規定
- 合意管轄に関する規定
何を秘密情報として扱い、どの程度の期間でどうするのかなど細かく決めていきましょう。
秘密保持契約書はとても難しいものですから、もし作り方がわからないのであればM&A仲介会社などの専門家に依頼してみてください。
契約書3.基本合意契約書
基本合意契約書とは、M&Aの意思と内容をお互いで確認するために作成する契約書です。
主に話し合いで決定した内容を記載していきますが、法的拘束力を持つ項目も含めることがありますので作成には十分注意が必要となります。
例えば、以下のような項目が代表的です。
- M&Aのスキーム(取引形態)
- 買収価額
- 取引実施日
- スケジュール
- デュー・デリジェンスの実施及び費用負担について
- 秘密保持
- 独占交渉権の有無
- 法的拘束力の範囲
- 基本合意書の有効期間
お互いの意見に食い違いが出てしまうとトラブルに発展する可能性も捨てきれません。
ですから、専門家に依頼して協力してもらうことで「細かく、丁寧に、漏れのない」契約書を作成しましょう。
契約書4.最終契約書
最終契約書とは、M&Aに関する取り決めをすべて含んで作成した契約書です。
この契約書は法的拘束力を持ち、締結後に解約などの破棄を行った場合には損害賠償請求を受ける可能性があるので注意してください。
最終契約書に記載する内容は、話し合いの結果によって変わります。ですから、どのような話し合いをして何が決まったのかを整理し、必要に応じて内容を決めて作成しましょう。
契約書を作成するときには専門知識が必要となるなど、難しいことも多いです。
もし、不安があるようでしたら早めに専門家へ依頼して不備のない契約書を作成できる状態を整えてみてください。
※M&Aに関する契約書については以下の記事でも詳しく解説していますので、こちらも参考になるでしょう。
8. 事業承継を行っている団体・ファンド・マッチングサイト一覧
事業承継について悩んでいるのであれば、相談できる団体を確認しておきましょう。事業承継について相談できる窓口は以下の3つがあります。
- 事業承継支援ネットワーク
- 事業承継センター
- 事業承継信託
どのような場合に相談すべきなのか、それぞれの窓口について確認しましょう。
8-1.事業承継支援ネットワーク
事業承継支援ネットワークとは、中小企業庁の実施する事業承継支援機関と自治体を連携させた事業のことです。各都道府県の商工会議所や産業支援センターなどに拠点を起き、地域に寄り添った事業承継やM&Aの支援を行います。
事業承継支援ネットワークで相談することで、事業承継診断の実施や専門家の紹介をしてもらうことが可能です。公的機関のため、安心して相談できるでしょう。
8-2.事業承継センター
事業承継センターとは、事業承継を支援する専門家集団によって設立された団体です。事業承継士や事業承継プランナーなどの資格取得講座や、後継者塾、事業承継コンサルティングなどを行っています。
公的機関から事業承継支援を受託しているので、直接事業承継センターへ相談へいくのも良いでしょう。事業承継専門のコンサルタントが所属しているため、安心して相談することができます。
8-3.事業承継信託
そもそも、信託とは財産を持っている委託者が、信託行為によって財産を受託者に託し、委託者が定めた通りに財産を管理・分配・処分してもらい、その行為を通じて発生する利益を委託者が定めた受益者に提供してもらう法律関係のことです。
事業承継における信託とは、株式の信託を指します。
他の後継者候補がいたり他の親族がいるようなケースにおいて、後継者に株式を確実に引き継がせたいなら事業承継信託を利用すると良いでしょう。
事業承継信託については、『事業承継信託・自社株信託とは?種類やメリットや注意点まで紹介』で詳しく解説しています。
9. 【業種別】事業承継サービスまとめ
事業承継について、業種別にまとめてみました。業種によって業界動向が異なるため、事業承継の仕方や戦略の立て方が少し異なります。
業種別に事業承継サービスを確認していきましょう。
気になる業種の事業承継の動きやサービスについて確認しましょう。
10. 【地域別】事業承継サービスまとめ
つづいて、地域別でも事業承継サービスを確認していきましょう。地域によって支援している公的機関や民間会社が異なります。
気になる地域での事業承継の動きやサービスについて確認しましょう。
11. おすすめの事業承継に関する本ランキング
「もっと事業承継についての知識を深めたい!」と思うのであれば、事業承継の関連本・書籍を読みましょう。事業承継の関連本・書籍のランキングは以下の通りです。
- 事業承継が0(ゼロ)からわかる本
- 事業承継のツボとコツがゼッタイにわかる本
- 専門家のための事業承継入門 事例で学ぶ! 事業承継フレームワーク
- 中小企業のM&A実務必携 M&A手法選択の実務
- いちばんわかりやすい! 新事業承継税制のかしこい使い方
どのような内容の書籍なのかを確認していきましょう。
ランキング1位.事業承継が0(ゼロ)からわかる本
「事業承継が0(ゼロ)からわかる本」はタイトルの通り、初心者におすすめの一冊です。銀行実務で、事業承継を徹底的に経験した元銀行マンが、事業承継を0からコンサルティングしています。
とてもわかりやすく解説しているので、これから事業承継を学んで行きたい人にピッタリです。
ランキング2位.事業承継のツボとコツがゼッタイにわかる本
「事業承継のツボとコツがゼッタイにわかる本」も、これから事業承継について学んでいきたいという人におすすめの一冊です。特に、中小企業の事業承継にフォーカスを当てています。
実例を出しながら事業承継のことを学べるので、これから事業承継したい中小企業の経営者やアドバイサー業をしている人におすすめです。
ランキング3位.専門家のための事業承継入門 事例で学ぶ! 事業承継フレームワーク
「専門家のための事業承継入門 事例で学ぶ! 事業承継フレームワーク」は、事業承継の専門家におすすめの一冊です。事業承継に関する基礎的な知識が網羅されています。
基礎知識にとどまらず、実務分野も言及されているので、手続きの全体像まで一冊で勉強可能です。
ランキング4位.中小企業のM&A実務必携 M&A手法選択の実務
「中小企業のM&A実務必携 M&A手法選択の実務」は、事業承継を目的としてM&Aを実施するときに参考となります。
M&Aの手法ごとに活用方法が解説されているので、本書だけでも豊富なノウハウを身につけることが可能です。中小企業がM&Aを実施するときの実務について学ぶことができます。
ランキング5位.いちばんわかりやすい! 新事業承継税制のかしこい使い方
「いちばんわかりやすい! 新事業承継税制のかしこい使い方」は、事業承継における税金にフォーカスした一冊です。経験豊かな税理士がわかりやすく解説してくれているので、初心者でも読みやすいでしょう。
資産形成・資産運用のアドバイスも行っている、実践的な経験・知識に基づく内容となっています。
事業承継に関するおすすめの書籍については、『事業承継の関連本・書籍おすすめ25選!学べる事や理解するコツまで』でも紹介しています。
12. 事業承継アドバイザー(コンサルタント)とは?事業承継に関する資格一覧
最後に、事業承継アドバイザー(コンサルタント)について確認していきましょう。
ひとくちに事業承継アドバイザーと言っても、さまざまな資格があります。事業承継アドバイザーがどのような役割をになっているのか確認していきましょう。
12-1.事業承継アドバイザー(コンサルタント)とは?
事業承継アドバイザー(コンサルタント)とは、税務や法務、会計の知識でそうした方の悩みにこたえる事業承継の専門家のことです。
事業承継アドバイザーは、後継者不足や後継者育成に悩む中小企業経営者に対して、M&Aも含めた事業承継の最善策をアドバイスします。
具体的には、以下のような業務を依頼することが可能です。
- 会社の現状把握・分析
- 事業承継計画の策定
- 相続税・贈与税対策
- 事業承継の実行支援
- M&A支援
- 事業承継後の経営サポート
全ての業務を任せることも、一部の業務のみを任せることも可能です。会社の状況や事業承継計画に合わせて、必要な仕事をお願いしましょう。
事業承継アドバイザーについては、『事業承継コンサルタントとは?おすすめコンサル10選を比較&解説!』で詳しく解説しています。参考にしてください。
12-2.事業承継に関する資格一覧
事業承継に関する資格は、主に3つあります。資格保有=専門知識があるという証拠です。
事業承継アドバイザー(コンサルタント)に依頼するときの1つの目安にしましょう。
事業承継士
事業承継士は、士業やファイナンシャルプランナーなどが事業承継のアドバイスを行うための資格です。
事業承継士の試験自体は、さほど難しくないですが、受験資格は指定の専門家に限られています。
事業承継m&aエキスパート
事業承継m&aエキスパートは、中小企業などの円滑な事業承継・ビジネスマッチングを支援する人材であるという認定制度です。以下の3つの認定があります。
- 基本的な知識を身につけることができる「事業承継・M&Aエキスパート試験」
- 事業承継におけるプロフェッショナル資格である「事業承継シニアエキスパート養成スクール・試験」
- 上級認定資格である「M&Aシニアエキスパート養成スクール・試験」
事業承継アドバイザー
事業承継アドバイザーとは、金融機関の幹部クラス社員が事業承継のアドバイスを行うための資格です。事業承継アドバイザー認定試験(BSA)と呼ばれる試験に合格しなければなりません。
しかし、事業承継需要の高まりで、金融機関以外でも事業承継アドバイザーの資格を取得する人が増えているのです。
そして事業承継アドバイザーは、一般社団法人金融検定協会が運営する認定資格ですが、資格を取得することで事業承継アドバイザーを名乗ることができます。
事業承継アドバイザーについては、『事業承継アドバイザーとは?申し込み方法や勉強方法を解説【経験者の声あり】』で詳しく解説しています。
13. まとめ
事業承継とは、後継者や第三者に会社の経営を引き継ぐことです。一見簡単な手続きのように感じますが、事業承継を成功させることでさらに会社を大きく成長させることができます。
事業承継計画をしっかり立て、税制を理解して賢く引き継ぎを行いましょう。
また、事業承継には専門家の力が必要です。事業承継計画を策定する段階から専門家に相談し、必ず事業承継を成功させましょう。
事業承継をご検討しているのであれば、M&A総合研究所にお声がけください。
M&A総合研究所は、手数料が不要で成功報酬のみの支払いで済む「完全成功報酬型」を採用しています。
M&Aの経験が豊富な公認会計士が専任につきますので、安心して契約の進行を任せることが可能です。
相談料も無料ですので、ぜひお気軽にご連絡ください。