事業買収の成功・失敗事例を比較!中小企業・大企業からベンチャーまで

事業買収は成功すれば大きな事業シナジーが得られる一方で、事業買収に失敗したり買収後の統合に失敗したりすると、大きな損失を被ることもあります。本記事では、中小企業と大企業、ベンチャー企業による事業買収の成功事例と失敗事例をご紹介します。


目次

  1. 事業買収とは
  2. 事業買収の動向
  3. 大企業の事業買収事例
  4. 中小企業の事業買収事例
  5. ベンチャー企業の事業買収事例
  6. 海外企業の事業買収事例
  7. 事業買収の成功・失敗要因を総括
  8. まとめ

1. 事業買収とは

事業買収とは

事業買収とは、買収対象企業の株式を取得する方法などによって、買収対象企業の事業運営を引き継ぐことを指します。

買い手企業はさまざまな目的を持って事業買収を実行しますが、必ずしも事業買収が成功するとは限りません。事業買収の成功や失敗にはいろいろな原因があり、原因が複雑に絡み合っていることも多いです。

また、大企業や中小企業、ベンチャー企業など、企業規模や事業のステージによっても成功・失敗の原因が変わることもあります。

本記事では、事業買収の成功と失敗の事例を大企業、中小企業、ベンチャー企業、海外企業ごとに紹介します。

2. 事業買収の動向

事業買収の動向

近年、事業買収はさまざまな業界で活況となっています。事業買収の件数は2017年に過去最多を更新し、2018年、2019年とさらに件数は増加しました。

新型コロナウイルスの影響により、事業買収件数は一時的に減る可能性がありますが、中長期的には再び増加していくとみる専門家も少なくありません。

また、近年の事業買収の傾向として買収規模が小さくなっていることが挙げられます。これは、大企業による事業買収の目的が変化してきていることや、中小企業・ベンチャー企業による事業買収も増えてきていることが要因のひとつと考えられます。

現在、幅広い業界で技術革新や消費者ニーズの変化が起きており、大企業は規模拡大目的以外の事業買収も積極的に行う傾向がみられます。

また、中小企業・ベンチャー企業の事業売却による売り案件が増えていることも、事業買収のしやすさに影響しています。

【関連】M&A・買収で株価は上がる?上昇・下落要因を事例から解説!

3. 大企業の事業買収事例

大企業の事業買収事例

ここでは大企業の事業買収成功事例と失敗事例を紹介します。紹介する事例と結果は以下の通りです。
 

事例 結果
ヤフーによるdelyの買収事例 93億円で事業買収し子会社化
楽天によるスタイライフの買収事例 TOBによる事業買収に成功
パナソニックによる三洋電機の買収事例 買収許可の遅れなどにより立て直しに失敗
富士通によるICLの買収事例 多額の資金を投入するも立て直しに失敗

成功事例①ヤフーによるdelyの買収

大企業の事業買収事例1

出典: https://www.dely.jp/

大企業の事業買収成功事例1件目は、ヤフーによるdelyの買収事例です。ヤフーは2018年にベンチャー企業のdelyを93億円で事業買収し、グループに迎え入れました。

delyは動画レシピサイト「クラシル」を運営しています。クラシルはコンテンツの質の高さとSNSを有効利用した集客により、急速に利用者数を増やしていました。

また、delyのCEOである堀江氏の経営手腕や大胆な発言なども注目を浴びましたが、クラシルは多額の先行投資を続けていたため、集客には成功していたものの赤字が続いている状態です。

また、ヤフーも運営するヤフーショッピングやヤフーオークションといった事業が、メルカリなどのフリマアプリやAmazonの勢いに圧されて苦戦が続いています。

ヤフーは、ライブ配信で商品を販売するライブコマースに注力するため、delyの事業買収に踏み切りました。

一方、delyもヤフーの経営資源やプラットフォーム技術、ノウハウなどを活用することで、利用者獲得ペースの加速と事業の収益化を図っています。

成功事例②楽天によるスタイライフの買収

大企業の事業買収事例2

出典: https://corp.rakuten.co.jp/

大企業の事業買収成功事例2件目は、楽天によるスタイライフの事業買収事例です。楽天は2013年、Eコマース関連事業を営むスタイライフを、TOB(株式公開買付け)によって事業買収を実施しました。

さらに2015年には、スタイライフが運営するファッション通販サイト「Stylife(スタイライフ)」を楽天と楽天スーパーロジクティクスに事業譲受し、その後吸収合併を行っています。

これにより、楽天は同事業の経営効率化を進め、スタイライフはTOBによって楽天傘下に入る前から楽天と協業を行っていました。

スタイライフは楽天市場のアパレル専用サイトに出店していたり、他のアパレルブランドとの仲介役を担ったりと、楽天市場を支えてきた存在です。

楽天はその頃Amazonの台頭を警戒し、Amazonに対抗するためショッピングモール事業の改革を進めている時期でした。

また、当時はファッション通販サイト「ZOZOTOWN」を運営するスタートトゥデイが急成長中であり、Eコマースと相性が悪いと言われていたアパレル業界の意識が変化してきた時期でもあります。

そのような時期に楽天はスタイライフを統合することで、業界の変化に素早く対応しています。

失敗事例①パナソニックによる三洋電機の買収

大企業の事業買収事例3

出典: https://www.panasonic.com/jp/home.html

大企業の事業買収失敗事例1件目は、パナソニックによる三洋電機の事業買収です。パナソニックは2008年に三洋電機を事業買収することを公表し、買収に向けて準備を進めていきます。

三洋電機は業績不振が続いており、パナソニックが三洋電機を事業買収するのはリスクが高いとみる専門家も少なくありませんでした。

三洋電機は慢性的な業績不振に陥ってはいましたが、三洋電機の2次電池分野は世界に通用する高い品質を誇っていました。

しかし、パナソニックの2次電池シェアと三洋電機の2次電池シェアを合わせた事業規模は大きく、米国での許可がなかなか降りずに事業買収が進まない事態が発生します。

計画遅れにより三洋電機の事業立て直しを進めることができず、その間に中国の家電メーカーであるハイアールに三洋電機の白物家電事業を売却することとなりました。また、2011年にはパナソニックがプラズマパネル事業で大きな損失を出します。

さらに、長引く円高や韓国メーカーの台頭、事業シナジーの読み間違い、統合戦略の失敗による技術者の大量流出などが重なり、パナソニックによる三洋電機の事業買収は大きな損失を出すこととなりました。

失敗事例②富士通によるICLの買収

大企業の事業買収事例4

出典: https://www.fujitsu.com/jp/about/

大企業の事業買収失敗事例2件目は、富士通によるICLの買収です。富士通は1990年、イギリスの老舗コンピューター会社であるインターナショナル・コンピューターズ・リミテッド(ICL)の事業買収を実行しました。

その後、1998年に富士通はICLを完全子会社化し、現在は富士通サービスホールディングスとなっています。当時のICLは業績悪化が深刻な状態であり、富士通による事業買収は救済的な意味の強い買収でした。

富士通によるICLの大型事業買収に関しては当時賛否が分かれていましたが、結果的に富士通はもともと想定していた買収の成果をなかなか出すことができず、その後も多額の資金を投入するも失敗に終わりました。

失敗の大きな要因として、ICLはそもそも会社の構造的に根本的な問題あったことが指摘されています。いわゆる大企業病に陥っていたICLを立て直すのは簡単ではありませんでした。

また、富士通による日本式の統合手法が合わなかったことも、要因のひとつだったとの指摘もあります。

4. 中小企業の事業買収事例

中小企業の事業買収事例

次に、中小企業の事業買収成功事例と失敗事例を紹介します。紹介する事例と結果は以下の通りです。
 

事例 結果
食品スーパーの事業買収成功事例 オーナー経営者同士が意気投合し事業買収成立
学習塾の事業買収成功事例 従業員や生徒の混乱無く事業買収成立
パソコンスクール運営会社の事業買収失敗事例 従業員の離職により事業買収失敗
健康食品メーカーの事業買収失敗事例 交渉条件のこだわりにより事業買収失敗

成功事例①食品スーパーの事業買収成功事例

中小企業の事業買収成功事例1件目は、食品スーパーの事業買収成功事例です。

県内有数の食品スーパーを複数店舗経営するA社は、地域経済の衰退に不安を感じていたことや、一部店舗の近くに大型ショッピングモールの建設計画が進んでいることに危機を感じ、経営戦略を立て直す中で事業買収を検討します。

一方、同じく食品スーパーを展開している老舗企業のB社は、オーナー経営者の高齢化や親族に後継者がいないことなどから廃業を検討していました。

しかし、顧問税理士から公的機関へ相談することを提案され、公的機関からの紹介でM&A仲介会社に登録することとなります。

A社は事業買収の相談をしたM&A仲介会社からB社を紹介され、B社から色よい返事をもらったことから、トップ面談を実施することとなりました。

A社のオーナー経営者とB社のオーナー経営者は食品スーパーの経営に関する価値観などが合っていたことから意気投合し、事業買収に同意します。

A社のオーナー経営者は事業買収後もB社のオーナー経営者に助言をもらうなど良好な関係を築くことができ、B社の従業員に対しても事業買収後安心して働いてもらえる環境作りが上手くいくなど、統合も含めて理想的な成功事例となりました。

成功事例②学習塾の事業買収成功事例

中小企業の事業買収成功事例1件目は、学習塾の事業買収成功事例です。中古車販売業や飲食業、人材派遣業などを展開しているS社は、さらに事業の多角化を行うため事業買収を検討していました。

以前事業買収をサポートしてもらったM&A仲介会社に相談し、事業候補を絞り込んだうえで事業買収先を広く探し始めます。

一方、学習塾を複数経営しているD社は、少子化や個別指導塾の増加に危機感を感じ、人材確保も難しくなってきていることなどから事業売却を検討することとし、M&A仲介会社に相談しました。

S社のオーナー経営者はD社の教育理念やノウハウに共感し、事業買収後に大きな設備投資などが必要ない点も高く評価しました。

D社のオーナー経営者もS社が自社の方針や従業員を尊重してくれることや、D社のネットワークを活用することで人材確保が期待できることから事業買収を承諾します。

交渉やデューデリジェンスは、塾の従業員や生徒・保護者達に不安を与えないよう秘密裏で慎重に実施し、事業買収の公表と説明は数回に渡って丁寧に行いました。その結果、特に大きな混乱もない事業買収の成功事例となりました。

失敗事例①パソコンスクール運営会社の事業買収失敗事例

中小企業の事業買収失敗事例1件目は、パソコンスクール運営会社の事業買収失敗事例です。

WEBサイト制作会社のT社は、顧問税理士から事業譲渡を検討しているパソコンスクール運営会社のY社を紹介されました。

新規事業への進出を検討していたT社は、パソコンスクールと本業との親和性が高いと判断し、Y社との交渉を決めます。

Y社の業績は安定していましたが、オーナー経営者が家庭の都合で事業を続けることが困難となったため、事業の売却を決めていました。

Y社は県や市からも事業を委託されているため今後も安定した収益が見込める状態であり、スクール運営のノウハウや人材もしっかりしているので、T社のノウハウも投入すればさらに業績アップが見込めると判断しました。

しかし、事業買収手続きはスムーズに進み最終契約も完了したものの、事業買収を公表した時点でY社のパソコンスクール講師が離職してしまいます。

それでもT社の従業員をY社に回すことで何とかなると判断したものの、その従業員も間も無く離職していまいます。

急遽人材を募集しても適任者がみつからず、T社の本業にも影響が出る自体となってしまいました。T社が従業員へのケアをうまくできなかったために失敗した事例となりました。

失敗事例②健康食品メーカーの事業買収失敗事例

中小企業の事業買収失敗事例2件目は、健康食品メーカーの事業買収失敗事例です。

化粧品や健康食品の通信販売業を営んでいるG社は、自社の弱点である収益性の低さを改善してさらに事業を成長させるため、自社オリジナルの健康食品開発を進めていました。

しかし、時間と資金が限られるなかではなかなか納得のいく結果が得られず、事業買収によってオリジナル商品の獲得を目指します。

一方、健康食品メーカーのH社は、商品には自信があり一時的にヒットもするものの、トレンド変化の激しい健康食品業界で継続的に売上を維持していくには、安定した販売網が必要と考えていました。

M&Aマッチングサイトでのマッチングにより両社は交渉の段階まで進んだものの、お互い背伸びした条件を提示し合ったり、交渉途中で急に条件を変更したりで条件はなかなかまとまりませんでした。

次第にお互いの不信感募っていき、最終的に交渉は自然消滅のような形で決裂となりました。お互いにこだわりが強く相手への誠実さを欠いた結果、事業買収の失敗事例となりました。

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5. ベンチャー企業の事業買収事例

ベンチャー企業の事業買収事例

続いて、ベンチャー企業の事業買収成功事例と失敗事例を紹介します。紹介する事例と結果は以下の通りです。
 

事例 結果
メルカリによるザワットの買収事例 本業のフリマアプリ成長に貢献
ユーザベースによる米国経済情報メディアの買収事例 米国での事業成長に貢献
DeNAによるMERY・iemoの買収事例 問題が発覚し事業閉鎖
DMM.comによるバンクの買収事例 買収後間もなくバンクがグループから離脱

成功事例①メルカリによるザワットの買収

ベンチャー企業の事業買収事例1

出典: https://about.mercari.com/

ベンチャー企業の事業買収成功事例1件目は、メルカリによるザワットの買収です。

フリマアプリを運営するメルカリは2017年、ブランド品特化型のフリマアプリ「スマオク」を運営するザワットに対して事業買収を実行しました。

フリマアプリとは個人間でフリーマーケットのように物品を売買できるものであり、利用率は急速に拡大しています。

ザワットが運営するスマオクは、2013年のリリース以降いくつもの大型資金調達に成功してきた注目事業です。

メルカリは海外展開を進めていくにあたって、ザワットを事業買収することで海外展開ノウハウや新規事業立ち上げノウハウの獲得を図りました。

メルカリは国内トップシェアを持つフリマアプリを運営していますが、海外展開には苦戦しています。一方、ザワットは買収時点ですでに海外で結果を出し始めていました。

ザワット創業者の原田氏は、メルカリに買収された後もメルカリグループで新規事業の立ち上げを担当しています。

現在、日本国内では大手企業のフリマアプリ参入が相次いでいるうえ、メルカリはメルペイや米国事業への先行投資で赤字を出しています。

しかし、本業の業績は順調であり、メルペイや米国事業への先行投資が完了すれば、さらに大きな成長が見込める状態といえるでしょう。

成功事例②ユーザベースによる米国経済情報メディアの買収

ベンチャー企業の事業買収事例2

出典: https://www.uzabase.com/jp/

ベンチャー企業の事業買収成功事例2件目は、ユーザベースによる米国経済情報メディアの買収です。

ユーザベースは2018年、米国の経済情報WEBメディア「Quartz」の事業買収を実施しました。

ユーザベースは、経済情報WEBメディア「NewsPics」の運営や、企業財務状況分析サービス「SPEEDA」の運営などを行っている会社であり、中期経営計画として世界トップクラスの経済情報メディアを目指しています。

ユーザベースは、米国での事業成長を加速させるためにQuartzの買収を計画し、2017年にユーザベースは米国に進出しようとしたもののうまくいかなかったことから、すでに米国で事業基盤を持っているQuartzを買収して基盤を築く戦略に切り替えています。

2020年3月期決算の業績をいると、ユーザベースの成長ペースは緩やかになったものの、止まることなく成長し続けています。

失敗事例①DeNAによるMERY・iemoの買収

ベンチャー企業の事業買収事例3

出典: https://dena.com/jp/

ベンチャー企業の事業買収失敗事例2件目は、DeNAによるMERY・iemoの買収です。

DeNAは2014年、女性向けファッションキュレーションサイトのMERYと、住まいに関するキュレーションサイトiemoの事業買収を実施しました。

DeNAはキュレーションメディアのプラットフォーム構築を目指し、上記2社の事業買収を実施しています。

対して、MERYとiemoにとっては、DeNAグループに加わることで優秀な人材確保が容易になるほか、DeNAの豊富なノウハウや経営資源を活用でき、事業に集中できる点が魅力でした。

しかし、DeNAが運営する医療情報キュレーションサイト「WELQ」に、信憑性に問題のある情報が数多くみつかり、さらに多くの記事に他サイトからの情報盗用疑惑も浮かび上がります。

その疑惑はほかのキュレーションサイトにも広がり、DeNAは最終的にすべてのキュレーションサイトを閉鎖することとなりました。

その後、DeNA経営陣が会見を開き謝罪しており、DeNAのずさんな管理状況が明らかになりました。

失敗事例②DMM.comによるバンクの買収

ベンチャー企業の事業買収事例4

出典: https://dmm-corp.com/

ベンチャー企業の事業買収失敗事例2件目は、DMM.comによるバンクの買収です。

DMM.comは2017年、即時現金化買取サービス「CASH」を運営していたバンクを70億円で買収しました。

CASHは当時リリースされてからまだ間もないサービスであり、大きな話題にはなっていたものの収益化は全くできていない赤字事業でした。

しかし、DMM.comの亀山代表は、サービスの面白さとバンク代表の光本氏の起業家としての魅力を評価し、高額買収に至っています。

ところが、2018年にバンク代表の光本氏がMBO(経営陣による自社株買収)を実施し、DMM.comグループから離れます。MBO価格は5億円と、DMM.comが買収した金額を大きく下回る金額でした。

バンク代表だった光本氏はMBOを行った理由として、DMM.comから独立したほうがスピーディーで柔軟な経営判断ができると考え離れることにしたと語っています。

それに対して、大きな損失を出すこととなったDMM.comの亀山代表は、詳細な理由を語ってはいません。

光本氏が買い戻したバンクは、事業の成長に時間がかかるとしてその後解散しており、バンクが運営していた「CASH」は2020年からBuySell Technologiesが運営しています。

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6. 海外企業の事業買収事例

海外企業の事業買収事例

最後に、海外企業の事業買収成功事例と失敗事例を紹介します。紹介する事例と結果は以下の通りです。
 

事例 結果
DellによるEMCの買収事例 世界最大の非上場テクノロジー企業グループとなる
AT&TによるディレクTVの買収事例 特定事業依存からの脱却
マイクロソフトによるノキアの携帯端末事業の買収事例 携帯端末事業の立て直し失敗
テスコによるシートゥーネットワークの買収事例 日本市場からの撤退

成功事例①DellによるEMCの買収

海外企業の事業買収事例1

出典: https://www.dell.com/ja-jp

海外企業の事業買収成功事例1件目は、DellによるEMCの買収です。Dellは2016年にEMCを670億ドルという大規模な事業買収を行い、Dell Technologiesを設立しました。このM&Aにより、EMCはDell EMCとなり、Dell Technologiesの子会社となっています。

Dell Technologiesには、ITの各分野で最先端を走る7つの企業が統合され、世界に変革をもたらす非上場の大企業が生まれたと大きな注目を浴びました。

DellとEMCは同時期に生まれた企業で、Dellは当時のコンピューターの販売方法や製造方法を変え、EMCは企業のデータセンター運用を変えた企業です。

この2つの企業が協業することで、世界最大の非上場テクノロジー企業グループが生まれることとなりました。

DellはEMCの事業買収を行う前の2013年、株主を意識して短期的な業績に振り回される経営を避け、長期目線で成長を遂げることを掲げ、自社株買いにより上場を廃止しています。

EMCの買収は、巨大な負債を抱えることとなり短期的にはマイナスですが、中長期で育てていくことで大きな成長が期待できるビッグプロジェクトとなりました。

成功事例②AT&TによるディレクTVの買収

海外企業の事業買収事例2

出典: https://www.att.com/

海外企業の事業買収成功事例2件目は、AT&TによるディレクTVの買収です。2014年、米国通信大手のAT&Tが、衛星放送大手のディレクTVを約490億ドルで買収しました。

米国の衛星放送業界は加入者数が頭打ちで成熟しきっている状態です。そのためAT&Tは、新規事業への参入と海外での事業展開を事業買収によって進める戦略をとりました。

AT&Tによる事業買収の時点で、ディレクTVの成長も頭打ち状態ではありましたが、ディレクTVには安定したキャッシュフローがあったことから事業買収に至っています。

この事業買収により、AT&Tは有料放送事業への依存と米国での事業依存から脱却を図りました。AT&Tにとっては、事業シナジーを得ること以上に、配当が出せることとキャッシュフローが得られるという財務戦略を重視した事業買収だったともいわれています。

現在、米国の通信・放送業界は成熟しきっており、独力では成長の余地が少ないため、事業買収による再編が相次いでいます。

AT&Tは2018年に大手メディア企業のタイム・ワーナーを買収するなど、買収による業界再編はまだ続いていく見込みです。

失敗事例①マイクロソフトによるノキアの携帯端末事業の買収

海外企業の事業買収事例3

出典: https://www.microsoft.com/ja-jp

海外企業の事業買収失敗事例1件目は、マイクロソフトによるノキアの携帯端末事業の買収です。

ノキアはフィンランドに本社を置く大手通信インフラ企業ですが、スマートフォン事業への参入に出遅れるなど、当時グローバル競争の変化に遅れをとっていました。

そこで、2010年にマイクロソフトからCEOを迎え事業の立て直しを図り、2011年には戦略的パートナーシップを結びます。

そして2013年、マイクロソフトは54億4000万ユーロでノキアの携帯電話事業を買収します。

その後、マイクロソフトはノキア社員の大規模リストラを実施するなど改革を実施しますが、携帯電話事業はうまくいかず、ノキアブランドは一時期世の中から消えかけることになりました。

一方、携帯電話事業から撤退したノキアは現在倒産を回避し、携帯電話事業から撤退した後通信機器ビジネスに注力、5Gのグローバル競争でキープレイヤーとなっています。

失敗事例②テスコによるシートゥーネットワークの買収

海外企業の事業買収事例4

出典: https://www.tesco.com/

海外企業の事業買収失敗事例2件目は、テスコによるシートゥーネットワークの買収です。

2003年、英国のテスコは小売業と加工食品卸売業を営んでいたシートゥーネットワークをTOB(株式公開買付け)によって買収し、シートゥーネットワークの上場を廃止します。2007年にはシートゥーネットワークをテスコジャパンに商号変更しました。

テスコジャパンはテスコやつるかめなどのスーパーを展開していましたが、不採算店舗が多くありました。テスコは328億円で買収後も多額の投資を行いましたが、投資の成果は出ず失敗に終わっています。

その結果、2011年にテスコは日本から撤退し、2013年にイオンがテスコジャパンの株式を取得、イオンエブリに商号を変更しました。

テスコは1円でテスコジャパンをイオンに売却したうえに、50億円を立て直し費用としてイオンに渡し、テスコジャパンの債務もテスコが負担するという大きな損失を出しています。

日本の小売業界には独特の慣習があるため、海外の大手小売企業は参入に苦労する傾向にあります。英国テスコも日本の商慣習に対応することができず、失敗に終わったといわれています。

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7. 事業買収の成功・失敗要因を総括

事業買収の成功・失敗要因を総括

ここまで大企業、中小企業、ベンチャー企業、海外企業の事業買収成功事例と失敗事例を紹介しましたが、成功・失敗要因には共通する点も数多くみられます。

この章では、紹介してきた大企業、中小企業、ベンチャー企業、海外企業の成功と失敗の要因をまとめます。

成功要因の総括

事業買収の成功に影響すると考えられる要因には、主に以下のようなものがあります。

【事業買収が成功する要因】

  • 事業買収のタイミングが適切だった
  • 相手企業を尊重していた
  • 買収目的が明確だった

まず、事業買収のタイミングは重要であり、相手企業の状況や外部環境など、最適なタイミングを見計らうことで成功の確率を上げることも可能です。

また、日本企業同士の事業買収では相手企業を尊重することが重要であり、強引で拙速な事業買収により失敗したケースは少なくありません。

さらに、買収目的を明確にすることで売り手・買い手双方の方向性を統一しやすくなるので、成功の可能性を上げやすくなります。

失敗要因の総括

対して、事業買収が失敗に終わる要因としては、主に以下の点が考えられます。

【事業買収が失敗する要因】

  • 事業買収のタイミングが悪かった
  • 相手企業を尊重していなかった
  • 買収目的があいまいだった

買収先企業の経営状態が悪かったり、組織体制が悪かったりすると、事業買収後の立て直しは簡単ではありません。

また、相手企業が多くの強み・魅力を持っていても、相手企業のそれまでの経営方法や企業文化などを尊重しない買収は失敗に終わる可能性が高くなります。

さらに、買収目的があいまいだと統合がうまくいかなかったり投資資金が分散したりするので、統合効率が落ちてしまう可能性があります。

事業買収を成功させるには専門家のサポートが不可欠

事業買収を成功させるに失敗要因を極力排除する必要があり、そのためには事業買収の専門家によるサポートが必要です。

M&A総合研究所では、豊富な事業買収支援実績を持つアドバイザーと会計士・弁護士チームによるフルサポート体制を採用しており、専門性の高い戦略を構築できます。

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8. まとめ

まとめ

本記事では、事業買収の成功事例と失敗事例を、大企業、中小企業、ベンチャー企業、海外企業に分けて紹介しました。

事業買収を成功させるに失敗要因を極力排除しなければならないため、事業買収の専門家に相談しながら進めるようにしましょう。

【大企業の事業買収成功事例と失敗事例】

事例 結果
ヤフーによるdelyの買収事例 93億円で事業買収し子会社化
楽天によるスタイライフの買収事例 TOBによる事業買収に成功
パナソニックによる三洋電機の買収事例 買収許可の遅れなどにより立て直しに失敗
富士通によるICLの買収事例 多額の資金を投入するも立て直しに失敗

【中小企業の事業買収成功事例と失敗事例】
事例 結果
食品スーパーの事業買収成功事例 オーナー経営者同士が意気投合し事業買収成立
学習塾の事業買収成功事例 従業員や生徒の混乱無く事業買収成立
パソコンスクール運営会社の事業買収失敗事例 従業員の離職により事業買収失敗
健康食品メーカーの事業買収失敗事例 交渉条件のこだわりにより事業買収失敗

【ベンチャー企業の事業買収成功事例と失敗事例】
事例 結果
メルカリによるザワットの買収 本業のフリマアプリ成長に貢献
ユーザベースによる米国経済情報メディアの買収 米国での事業成長に貢献
DeNAによるMERY・iemoの買収 問題が発覚し事業閉鎖
DMM.comによるバンクの買収 買収後間もなくバンクがグループから離脱

【海外企業の事業買収成功事例と失敗事例】
事例 結果
DellによるEMCの買収事例 世界最大の非上場テクノロジー企業グループとなる
AT&TによるディレクTVの買収事例 特定事業依存からの脱却
マイクロソフトによるノキアの携帯端末事業の買収事例 携帯端末事業の立て直し失敗
テスコによるシートゥーネットワークの買収事例 日本市場からの撤退

【事業買収が成功する要因】
  • 事業買収のタイミングが適切だった
  • 相手企業を尊重していた
  • 買収目的が明確だった
【事業買収が失敗する要因】
  • 事業買収のタイミングが悪かった
  • 相手企業を尊重していなかった
  • 買収目的があいまいだった

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