2020年09月29日公開
2020年09月29日更新
中古車ディーラー業界のM&A・事業承継・買収の動向/相場/メリットを解説【事例あり】
中古車ディーラー(車小売)業界では、堅調な市場規模拡大を背景に、中古車ディーラー(車小売)のM&A・事業承継・買収件数が増加しています。この記事では、中古車ディーラー(車小売)のM&A・事業承継・買収の動向や取引価格の相場、メリットなどを解説します。
目次
1. 中古車ディーラー(車小売)業界とは
中古車ディーラー(車小売)業界とは、中古車を販売している業者が属する業界を指します。消費者にとって、質のよい車や高級車を安価に購入できるメリットがあるため、一定の需要があります。
中古車ディーラー(車小売)を行うためには、中古車を購入するなど多額の初期投資が必要であるのもかかわらず、新規参入するケースが増加しています。
この記事では、中古車ディーラー(車小売)業界のM&A・事業承継・買収について解説しますが、まずは中古車ディーラー(車小売)の現状や将来予測についてみていきます。
中古車ディーラー(車小売)の現状
中古車ディーラー(車小売)の2019年の市場は、矢野経済研究所の調査によれば消費増税前の駆け込み需要や、台風による水害の買い替え需要などもあり、国内における小売台数が262万台と活性化しています。
しかしながら、中古車ディーラー(車小売)の経営環境は厳しくなっており、その要因としては不景気や若者の車離れなどによる新車販売台数の減少があげられます。
その影響で良質な中古車販売数や販売価格が低下しており、さらに中古車ディーラー(車小売)への新規参入障壁も低いため競合相手も多く、売り上げを確保することが困難になっています。
中古車ディーラー(車小売)業界の企業は、経済産業省によると約90%が9人以下の中小零細企業となっており、なかでも従業員2名以下で経営している企業が圧倒的に多いのが中古車ディーラー(車小売)の大きな特徴です。
中古車ディーラー(車小売)の将来予測
中古車ディーラー(車小売)の市場は、長期的には減少すると予測されています。直近の中古販売台数は横ばいが続いていますが、コロナショックの影響や車離れなどの要因により、今後は車の販売台数自体が減少するとみられています。
かつてのように中古車を並べただけでは売り上げが維持できるわけではないため、中古車ディーラー(車小売)にとっては、他社との差別化を図ることや利益のあるうちに会社売却を検討するなどの、対応が必要になる可能性もあります。
例えば、ドライブレコーダーなどのカーアクセサリー販売や自動車整備業も行える中古車ディーラー(車小売)になることで、業界での生き残りを図るなどが挙げられます。
将来的に中古車ディーラー(車小売)の需要が減少すると予測されているため、会社の利益も下がる可能性が高いです。
中古車ディーラー(車小売)業界内での差別化が難しいようであれば、利益がでているうちに会社売却を検討する必要があるかもしれません。
2. 中古車ディーラー(車小売)のM&A・事業承継・買収動向
中古車ディーラー(車小売)のM&A・事業承継・買収動向には、どのような特徴がみられるのでしょうか。この章では、以下2つの特徴について解説します。
- 中古市場は好調で関連業種からのM&Aが増加
- 成長中の市場なので異業種からのM&Aが増加
1.中古市場は好調で関連業種からのM&Aが増加
1つ目の特徴は、中古車ディーラー(車小売)市場は好調であるため関連業種からのM&Aが増加していることです。
前述のように、中古車ディーラー(車小売)市場は堅調に推移しているため、カー用品販売業や自動車整備業など関連業種からのM&Aが増加しています。
関連業種とM&Aを行うことにより、中古車ディーラー(車小売)業界で差別化を図ることができ、顧客確保などのシナジー効果にも期待できます。
中古車ディーラー(車小売)市場が好調であるうえに、これらの効果も期待できることから関連業種からのM&Aが増加しているものと考えられます。
2.成長中の市場なので異業種からのM&Aが増加
2つ目の特徴は、異業種からのM&Aが増加していることです。中古車ディーラー(車小売)市場は成長が見込めるため、関連業種だけでなく異業種からのM&Aも増加しています。
例えば、大手総合商社の伊藤忠商事は主に輸入車を扱うヤナセを子会社化しており、国内の輸入販売事業の強化を図る目的のM&Aであると発表しています。
中古車ディーラー(車小売)業界が堅調であるからこそ、大型投資を行って市場シェアを獲得するという戦略が可能になっているといえるでしょう。
そのほかにも、住宅関連事業を行っているVTホールディングスも、M&Aにより中古車ディーラー(車小売)市場へ参入するなど、異業種からのM&A事例が多くみられます。
3. 中古車ディーラー(車小売)のM&A・事業承継・買収相場
中古車ディーラー(車小売)のM&A・事業承継を考えている場合は、買収相場が気になるのは当然のことといえるでしょう。
中古車ディーラー(車小売)業界に限らず、M&A・事業承継・買収相場は売却する会社の規模や将来的な売り上げ見込みなどを考慮して算出されるため、これくらいの金額が相場であると断定することはできません。
しかし、中古車ディーラー(車小売)業界は短期的に売り上げが見込めるため、取引価格はやや上昇傾向にあります。
一般的に、M&Aの取引価格は企業価値をもとに交渉して決められます。企業価値は、インカムアプローチ・コストアプローチ・マーケットアプローチのなかから手法を選んで算出されます。
売却側としては、これらのなかで最も価値が高くなる計算方法で売却価格を提示しますが、中古車ディーラー(車小売)業界の場合、短期的に売り上げが見込めることからインカムアプローチが用いられるケースが多いです。
また、取引価格が上昇傾向にあることから、マーケットアプローチで計算される場合もあります。
4. 中古車ディーラー(車小売)のM&A・事業承継・買収するメリット
中古車ディーラー(車小売)のM&A・事業承継・買収するメリットには、どのようなものがあるのでしょうか。ここでは、以下3つのメリットについてみてきます。
- 事業規模・エリアを広げる
- スケールメリットを活かせる
- 新しいネットワークを構築する
1.事業規模・エリアを広げる
中古車ディーラー(車小売)のM&A・事業承継・買収する1つ目のメリットは、事業規模・エリアを拡大できることです。
同業種・異業種のM&A・事業承継・買収問わず、事業規模やエリアを拡大させて売り上げ拡大を見込むことができます。
消費者からの認知度向上も見込むことができ、信頼できる企業であると認められれば、さらなる売り上げ確保が期待できます。また、シナジー効果や販路強化など様々なメリットが得られます。
2.スケールメリットを活かせる
中古車ディーラー(車小売)のM&A・事業承継・買収する2つ目のメリットは、スケールメリットを活かせることです。
主に同業種間でのM&A・事業承継・買収を行ったときに得られるメリットであり、事業規模が拡大すると必要な仕入れ中古車台数は増加します。
1業者から仕入れる中古車台数が増加すると手数料や事務作業量が減るため、1台当たりの仕入れ価格は減少します。
また、在庫のリスクも減らすことができます。ある店舗に特定中古車の在庫がなくても他店舗から販売することができ、逆にある店舗に在庫が多すぎて管理できなくなっても、他店舗に分散させることができます。
3.新しいネットワークを構築
中古車ディーラー(車小売)のM&A・事業承継・買収する3つ目のメリットは、新しいネットワークを構築できることです。
特に、異業種からのM&A・事業承継・買収などにより新規参入する企業は、中古車ディーラー(車小売)業界でのネットワークは有していない状態です。
しかし、買収した企業を軸にすれば、中古車ディーラー(車小売)業界でのネットワークを構築することができます。
中古車ディーラー(車小売)での顧客を既存事業に、また、既存事業の顧客を中古車ディーラー(車小売)に販売機会を拡大させることで、顧客と企業との新しいネットワークも構築できます。
異業種から中古車ディーラー(車小売)業界へ参入することで新しいネットワークが構築でき、新たなビジネスの機会を得ることができます。
5. 中古車ディーラー(車小売)のM&A・事業承継・買収事例
この章では、実際に行われた中古車ディーラー(車小売)のM&A・事業承継・買収事例を3つ紹介します。
- グッドスピードのカーステーション大府店からの一部事業譲受
- ユー・エス・エスによるジェイ・エー・エーの子会社化
- プロトコーポレーションによるタイヤワールド館ベストの子会社化
1.グッドスピードのカーステーション大府店からの一部事業譲受
1つ目の中古車ディーラー(車小売)のM&A・事業承継・買収事例は、2020年6月に行われたグッドスピードのカーステーション大府店からの一部事業譲受です。
グッドスピードは中古車ディーラー(車小売)だけでなく、買取や車検などカーライフサポートを提供している企業です。一方のカーステーション大府店は、愛知県大府市で陸運局指定工場と鈑金塗装工場を保有しているガソリンスタンドです。
本事例では、カーステーション大府店がグッドスピードへ、陸運局指定工場と鈑金塗装工場に関する事業の譲渡を行っています。
譲受企業 | グッドスピード |
譲渡企業 | カーステーション大府店 |
譲渡事業 | 陸運局指定工場と鈑金塗装工場に関する事業 |
目的 | カーライフサポートサービスに関するシナジー効果の創出 |
2.ユー・エス・エスによるジェイ・エー・エーの子会社化
2つ目の中古車ディーラー(車小売)のM&A・事業承継・買収事例は、2017年1月に行われたユー・エス・エスによるジェイ・エー・エーの子会社化です。
ユー・エス・エスは中古車ディーラー(車小売)業を行っており、ジェイ・エー・エーは都内で中古車のオークションを行っている企業です。
独占禁止法の問題をクリアすることを条件にM&Aを行われており、ユー・エス・エスのジェイ・エー・エーにおける議決権の取得割合は66.04%となりました。
買収企業 | ユー・エス・エス |
子会社企業 | ジェイ・エー・エー |
議決権取得割合 | 66.04% |
目的 | 経営の合理化、付加価値機能の提供 |
3.プロトコーポレーションによるタイヤワールド館ベストの子会社化
3つ目の中古車ディーラー(車小売)のM&A・事業承継・買収事例は、2014年7月に行われたプロトコーポレーションによるタイヤワールド館ベストの子会社化です。
プロトコーポレーションは中古車ディーラー(車小売)や整備用タイヤを販売している企業であり、タイヤワールド館ベストは東北地方を中心に自動車用のタイヤを販売している企業です。
本事例で、プロトコーポレーションは、タイヤ販売事業の強化だけでなく、中古車ディーラー(車小売)へのシナジー効果も期待しています。
買収企業 | プロトコーポレーション |
子会社企業 | タイヤワールド館ベスト |
買収価格 | 約19億円 |
目的 | タイヤ販売事業の強化、中古車ディーラー(車小売)とのシナジー効果の創出 |
6. 中古車ディーラー(車小売)のM&A・事業承継・買収を成功させるには
最後に、中古車ディーラー(車小売)のM&A・事業承継・買収を成功させるポイントのなかで、特に押さえておきたい6点について解説します。
- 立地条件・資産・施設などの確認
- デューデリジェンスの徹底(簿外債務の確認)
- 人材や顧客の流出回避
- M&A・事業承継・買収の入念な準備
- 売却・事業承継側のメリットも考える
- 専門家への相談
1.立地条件・資産・施設などの確認
中古車ディーラー(車小売)のM&A・事業承継・買収を成功させるポイントの1つ目は、立地条件・資産・施設などを確認することです。
中古車ディーラー(車小売)業界は短期的な売上増加が見込めますが、今後は車需要の減少とともに中古車ディーラー(車小売)市場も縮小していくこととみられています。
そのようななか生き残るためには、固定客を獲得が不可欠になります。例えば、立地条件では新規顧客を獲得しやすい大通り沿いの店舗であるなどが挙げられます。
また、自社工場の有無や自動車整備業も行えるノウハウなど無形資産も確認しておけば、競合店との差別化に役立てることもできます。
中古車ディーラー(車小売)のM&A・事業承継・買収した後、自社がどのような戦略をとるのかに合わせ、立地条件・資産・施設などを確認しておきましょう。
2.デューデリジェンスの徹底(簿外債務の確認)
中古車ディーラー(車小売)のM&A・事業承継・買収を成功させるポイントの2つ目は、デューデリジェンスを徹底して簿外債務を確認することです。
中古車ディーラー(車小売)は、事業を行うために中古車を揃えるなど多額の初期投資費用が掛かります。しかし、業界の企業の多くは従業員が9人以下の零細企業です。
つまり、ある程度の収益性があったとしても、多額の負債を抱えている企業が多いと考えられるため、最悪の場合は自社の企業価値を高めるために負債を隠して売却しようというケースもあり得ます。
このようなリスクを避けるためには、デューデリジェンスを徹底することが重要です。専門家に依頼して、財務面など簿外債務を抱えていないか、買収しても問題がないかを調査し、そのうえで交渉を進めていくようにしましょう。
3.人材や顧客の流出回避
中古車ディーラー(車小売)のM&A・事業承継・買収を成功させるポイントの3つ目は、人材や顧客の流出を回避することです。
特に、自動車整備などの技術者や営業スキルの高い従業員など、優秀な人材は中古車ディーラー(車小売)業界で差別化を図るためにも重要となるため、M&A後の待遇などを十分説明するなどの対策が必要です。
また、顧客とは長い期間で良好な関係を築く必要があります。固定客を確保することで安定した経営を続けることができるので、顧客に対してどのようなサービスが提供できるかについても、よく検討しておく必要があります。
4.M&A・事業承継・買収の入念な準備
中古車ディーラー(車小売)のM&A・事業承継・買収を成功させるポイントの4つ目は、M&A・事業承継・買収の入念な準備をしておくことです。
一般的に、M&A・事業承継・買収はクロージングが行われるまでに少なくとも3か月~6か月程度かかります。
相手先企業との交渉や手続きも重要ですが、最も必要となるのはM&A・事業承継・買収を行う前の準備や戦略策定です。
準備や戦略策定が不十分であれば、成約してクロージングを行えたとしても、業績が悪化してしまいM&A・事業承継・買収が失敗に終わることもあるため、M&A・事業承継・買収の準備や戦略策定は計画的かつ丁寧に行うことが大切です。
5.売却・事業承継側のメリットも考える
中古車ディーラー(車小売)のM&A・事業承継・買収を成功させるポイントの5つ目は、売却・事業承継側のメリットも考えることです。
M&A・事業承継・買収では、売却・事業承継側と交渉をして成約を目指しますが、成功率を高めるためには売却・事業承継側のメリットも考慮してた交渉することが大切です。
中小企業白書の調査によると、売却・事業承継側の経営者がM&A・事業承継・買収の際に最も考慮することは、売却後の従業員の待遇という結果がでています。
売却・事業承継側の経営者は、売却価格だけでなく従業員の雇用などを必須条件と考えていることも多いため、売却・事業承継側のメリットも考慮して交渉を進めていくようにしましょう。
6.専門家への相談
中古車ディーラー(車小売)のM&A・事業承継・買収を成功させるポイントの6つ目は、専門家へ相談することです。
M&A・事業承継・買収を円滑に進めていくためには、専門的な知識が必要です。また、M&A・事業承継・買収の成功確率を高めるためには、豊富な経験と実績が必要になります。
M&A・事業承継・買収の専門家はこれらを兼ね備えているので、M&A仲介会社などから信頼できるところを探してサポートを依頼するようにしましょう。
7. 中古車ディーラー(車小売)のM&A・事業承継・買収の相談先
中古車ディーラー(車小売)業界での、M&A・事業承継・買収の成約件数は増加傾向にありますが、M&A・事業承継・買収の成功確率をより高めるためには専門家のサポートが不可欠です。
M&A総合研究所では、M&Aや事業承継の実績豊富なアドバイザーと弁護士によるフルサポートを行っています。ご相談からご成約まで丁寧にサポートいたしますので、安心・スムーズなM&Aが可能です。
当社の料金体系は完全成功報酬制となっており、万一ご成約に至らなかった場合の費用はかかりません。
無料相談は24時間お受けしておりますので、中古車ディーラーのM&A・事業承継・買収をご検討の際は、どうぞお気軽にお問い合わせください。
8. まとめ
今回は中古車ディーラー(車小売)のM&A・事業承継・買収について解説しました。中古車ディーラー(車小売)のM&A・事業承継・買収は増加傾向にあります。
また、業界内での競争は激しくなっているため、生き残るためには差別化などの戦略が不可欠といえるでしょう。M&Aも活用するのも有効な戦略のひとつであるため、実施を検討している場合はまずM&A仲介会社へ相談してみることをおすすめします。
【中古車ディーラー(車小売)のM&A・事業承継・買収動向】
- 中古市場は好調で関連業種からのM&Aが増加
- 成長中の市場なので異業種からのM&Aが増加
【中古車ディーラー(車小売)のM&A・事業承継・買収するメリット】
- 事業規模・エリアを広げること
- スケールメリットを活かせること
- 新しいネットワークを構築すること
【中古車ディーラー(車小売)のM&A・事業承継・買収を成功させるポイント】
- 立地条件・資産・施設などの確認
- デューデリジェンスの徹底(簿外債務の確認)
- 人材や顧客の流出回避
- M&A・事業承継・買収の入念な準備
- 売却・事業承継側のメリットも考える
- 専門家へ相談する