アーンアウト条項は損?コインチェックのM&A事例からメリット・リスクを解説

アーンアウト条項とは、M&Aの取得対価の支払いに条件を付け加える条項のことです。米国を中心に日本でも利用が広がっていますがいくつかのリスクが存在するため、正しく理解することが大切です。当記事では、アーンアウト条項のメリットとリスクについて解説します。


目次

  1. アーンアウト条項とは
  2. アーンアウト条項の注意すべきポイント
  3. アーンアウト条項は損をする?その真相を解説
  4. コインチェックのM&A事例からアーンアウトの使い方を学ぶ
  5. アーンアウト条項のメリットとリスク
  6. アーンアウト条項を踏まえたM&Aの相談は仲介会社がおすすめ
  7. まとめ

1. アーンアウト条項とは

アーンアウト条項とは

アーンアウト条項とは、M&Aの取得対価の支払いに条件を付け加える条項のことです。クロージングの際に一括払いするのではなく、買収後に特定条件を達成した段階で追加の支払いを行います。

一見すると合理性のある条項に見えますが、いくつかのリスクが存在するため、特に売り手側に損失が出ることがあります。

本記事では、コインチェックのM&A事例を交えながら、アーンアウト条項のメリット・リスクを解説します。

アーンアウト条項の目的

アーンアウト条項の目的は、売り手と買い手の双方が納得できる買収価格に設定することです。

M&Aにおける売り手は、できるだけ高い買収価格を設定したいと考えるのが普通ですが、買い手にとって買収対象の将来的な価値は未確定であることから、高額の買収は避けたいと考えるのが実状です。

この売り手と買い手の食い違いを解消するのがアーンアウト条項です。特定の条件を達成した段階で追加の支払いが行われるため、売り手の売却益獲得と買い手の未確定なモノに対する支出回避を両立できます。

日本でのアーンアウト条項の現状

アーンアウト条項は米国を中心に利用が広がっていますが、日本のM&Aではあまり利用されていません

コインチェックのM&Aに利用されたことで、一気に認識が広がり注目が集まっていますが、利用については限定的であるのが実状です。

その背景にあるのは、アーンアウト条項が抱えるリスクであり、長い時間をかけて行ったM&Aが失敗に終わる可能性も存在することです。

アーンアウト条項を踏まえたM&Aの際に注意すべきポイントは、次章で詳しく解説します。

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2. アーンアウト条項の注意すべきポイント

アーンアウト条項の注意すべきポイント

アーンアウト条項を利用する際は、いくつかのポイントを押さえる必要があります。この章では、アーンアウト条項の注意すべきポイントを解説します。

【アーンアウト条項の注意すべきポイント】

  1. アーンアウト条項は使用する業績指標に双方合意する必要がある
  2. アーンアウト評価期間中の再売却はあらかじめ条項に盛り込む必要がある
  3. アーンアウトの評価期間は短くスピーディーに行うことが推奨される

①アーンアウト条項は使用する業績指標に双方合意する必要がある

アーンアウト条項によって売り手と買い手の公平性を保つためには、適切な業績指標を選択する必要があります。その際の指標は、売上高やEBITDA(国際的な企業価値)を選択することが目立ちます

これらの指標は、買い手の事業運営方針によってある程度コントロールできるものであり、防ぐためには買い手の事業運営について何かしらの規程を設けなければなりません。

しかし、これを行うと買い手の自由に運営する権利を侵害することとなり、双方の合意が得られる業績指標・規程は非常に難しいポイントです。

②アーンアウト評価期間中の再売却はあらかじめ条項に盛り込む必要がある

評価期間中に買い手が対象事業を再売却すると、売り手の支払いを受ける権利が失われる可能性があります。これを防ぐために、再売却の規程についてあらかじめ条項に盛り込む必要があります。

評価期間中に再売却する際は、売り手のアーンアウトに基づく支払いを受ける権利の代わりに、買い手が売り手に対価の支払いを行うなどの規程を設けます。

③アーンアウトの評価期間は短くスピーディーに行うことが推奨される

評価期間は売り手と買い手の交渉で設定しますが、長過ぎる期間を設定するとM&A成約時と状況が乖離しすぎて予測不能な事態が発生する可能性があります。

このような事態を防ぐために、アーンアウトの評価期間は3年以内の目安があります。

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3. アーンアウト条項は損をする?その真相を解説

アーンアウト条項は損をする?その真相を解説

アーンアウト条項は、売り手と買い手の公平性を保つための条項ですが、その機能を適切に発揮させるためには、細かい規程を盛り込まなくてはなりません。

これらを怠ると、売り手の希望する売却益を獲得できなかったり、買い手の運営方針が縛られてしまったりと本来のM&Aの目的が達成できなくなります

結果的に損に終わってしまう可能性も存在するため、アーンアウト条項に対するネガティブなイメージが定着して利用が限定的となっています。

しかし、裏を返せば、アーンアウト条項は適切な規程を盛り込むことができれば、売り手と買い手の双方が損をしないM&Aが実現できることも意味します。活用が難しい一方で多大なメリットがあることもまた事実です。

4. コインチェックのM&A事例からアーンアウトの使い方を学ぶ

コインチェックのM&A事例からアーンアウトの使い方を学ぶ

アーンアウト条項は日本のM&Aにおいて利用が限定的ですが、過去のM&Aで利用されたケースがあります。

その中で代表的なのが、マネックスグループによるコインチェックの買収事例です。この章では、コインチェックのM&A事例からアーンアウトの使い方を学びましょう。

コインチェックとマネックスグループのM&A事例とは

日本のM&Aにおいて、2018年4月に公表されたマネックスグループによるコインチェックの36億円の買収が大きな波紋を呼びました。

コインチェックは直近の決算書で営業利益1,000億円以上を記録しており、36億円の評価は安すぎるということで各方面から驚きの声が上がりました。

この誰もが驚く買収劇の裏にあるのが、アーンアウト条項です。その際の規程は、買収後から2021年3月期の3年間における純利益の1/2を上限に追加で支払うという内容です。

コインチェックの成果に応じた額を追加で支払うことで、36億円よりもはるかに高い金額を支払う契約内容であることがわかります。

買い手側マネックスグループのアーンアウト条項による利点

マネックスがアーンアウト条項によって得た利点は、リスクを回避しながらコインチェックを買収したことです。

コインチェックはNEMの不正流出問題を抱えており、リスクが高い買収案件といえます。正式な許可を受けていない状態での営業だったこともあり、いつ金融庁から営業停止命令を受けてもおかしくない状態でした。

しかし、仮想通貨市場におけるコインチェックの事業的価値は誰もが認めるものであり、当時はマネックス以外にも多数の買い手が名乗りを挙げていたことが想定されます。

マネックスが買い手に選ばれたのは、どこよりも高額な買収額を提示したためです。M&A成約時の支払いは少額ですが、将来的な収益価値によるリターンを提示したことで合意に至ったと考えられます。

マネックスがアーンアウト条項に盛り込んだ規程とは

マネックスは36億円という破格でコインチェックを買収しましたが、コインチェック自体が抱えるリスクは決して小さいものではありません。

このリスクを回避するために、アーンアウト条項に基づく追加支払額は「訴訟費用などを差し引いた額」という規程を盛り込んでいます。

買収後にコインチェックの問題によって起こる訴訟に関する費用は、コインチェック側に負担させる内容です。

売り手側コインチェックのアーンアウト条項による利点

コインチェックがアーンアウト条項によって得た利点は、最終的に獲得できる売却益の最大化です。

コインチェックの業績が順調であったとしても、買収後も変わらずに収益を上げられるかどうかは全く別問題です。この点を踏まえると、買い手は高額な買収価格を提示することが難しく、適正な価格で売却できる可能性が低くなります。

アーンアウト条項を活用することで、これらの問題をクリアしながら高額売却を実現しました。

コインチェックがアーンアウト条項に盛り込んだ規程とは

アーンアウト条項に基づく追加支払いが純利益となっていることから、マネックスの意向次第では、必要以上の人材を増やして人件費を増やすなど、意図的に純利益を抑えることも可能です。

このことから、コインチェックは何かしらの規程を盛り込む必要があると考えられますが、詳細は出回っていません。

買収後もコインチェックの主力メンバーがそのまま在籍することから、マネックスに意図的な操作をする余地はないとして、規程を盛り込んでいない可能性も考えられます。

5. アーンアウト条項のメリットとリスク

アーンアウト条項のメリットとリスク

コインチェックのM&A事例からは、アーンアウト条項の良い部分が多く見受けられました。しかし、メリットがある反面、リスクも存在することに注意しなければなりません。この章では、アーンアウト条項のメリットとリスクを解説します。

買い手側のメリット

アーンアウト条項の買い手側のメリットは以下です。

買収金額の払いすぎを防げる

M&Aにおける買い手の主なリスクは、「高値づかみ」です。先に紹介したコインチェックのように急激な成長をみせた会社は、大きなリスクを抱えていることも珍しくありません。

アーンアウト条項であれば、特定の条件を達成した段階で追加支払いを行うため、想定外の事態が発生したことで投資資本を回収できずに損害を被ることはありません。

また、特別な事情が発生しなかった場合でも、業績が伸びる保証はありません。M&Aによるシナジー創出に成功するかどうかは未確定な要素が大きく、判断がしづらい部分です。

アーンアウト条項は、このようなリスクを回避して、成果に対する相当の支払いによる健全なM&A取引が実現します。

ロックアップした際のモチベーションを維持する

M&Aの際、ロックアップと呼ばれる契約が締結されることがあります。買収後の事業安定化のために、一定期間は売り手の経営者や経営陣が会社に残る契約です。

ロックアップは主に買い手を重視した契約であり、ロックアップされた売り手側は期間中に会社をやめることができず、個人的な出資やサポート活動も制限される場合があります。

詳細な制限は交渉によって決まりますが、売り手はどれだけがんばっても見返りが得られず、ただ自由を拘束されるだけの条項になるケースも少なくありません。

この点、アーンアウト条項であれば、業績の向上が買収価格の向上に影響します。ロックアップ中のがんばりも売り手の利益につながることを意味し、売り手のモチベーション維持に大きく貢献します。

この結果、買い手の統合プロセスが円滑に進み、買い手の事業安定化と売り手の売却益の最大化が両立できます。

【関連】M&A・買収のリスクの種類!買い手・売り手サイドから解説!PMIが一番のリスク?

売り手側のメリット

続いて、アーンアウト条項の売り手側のメリットを解説します。

条件達成さえすれば多くの売却益を手にできる

M&Aの際、売り手の目的は売却益の獲得がほとんどです。しかし、実際は買い手との交渉がうまくいかず納得できる売却益の獲得が困難で、妥協した状態で成約するケースも珍しくありません。

買い手の事業価値の見積もりが低いことから起こるため、成果に応じて追加支払いするアーンアウト条項であれば、特定の条件を達成することで本来よりも多くの売却益を獲得できます。

即座に資金が必要ない状況であれば、売り手にとって最大のメリットといえるでしょう。

買い手側が抱えるリスク

アーンアウト条項には、メリットだけでなくリスクも存在します。まずは、買い手側が抱えるリスクについて解説します。

内容・手続きが複雑になり時間がかかる

アーンアウト条項を正しく機能させるためには、細かい規程を盛り込む必要があります。その際の協議や手続きが複雑となり、通常のM&Aよりも時間がかかることが多いでしょう。

M&Aに時間をかけすぎると、それぞれの企業の状況や該当業種の業界動向の変化による「条件の変化」といったリスクがあります。

日本のM&Aでは活用例が少ないこともあり、M&Aの専門家も扱いかねることが多くなっています。

想定した買収金額より高くなることがある

アーンアウトを行うM&Aの買い手企業は、売り手企業の想定よりも業績が上がると、追加で支払う買収資金が想定した買収金額より高くなる可能性があります。

ただこれは、売り手企業とのシナジー効果が予想以上に生じることでもあるため、喜ばしいことともいえますが、アーンアウト条項を入れずに一括で払うよりも最終的な買収金額が高くなるリスクもあるのです。

売り手側が抱えるリスク

続いて、アーンアウト条項で売り手側が抱えるリスクについて見ていきましょう。

売却完了時は満足いく売却益を手にできない

売却完了時に獲得できる売却益が少額である点です。株式譲渡であれば、経営者(株主)が個人的な資金として獲得するため、新事業の立ち上げや今後の生活資金などの運用方法を検討します。

また、事業譲渡の場合は会社に支払われるので、別事業の資金として活用することが多いでしょう。このようにM&Aの売却益は売り手によってさまざまな運用方法がありますが、アーンアウト条項の場合は、売却益の全額を獲得できるまでに一定のタイムラグがあります。

検討していた資金運用に支障が出ることもあるので、売却完了時に獲得できる金額や追加支払いが行われるタイミングを考慮したうえで資金運用の計画を立てる必要があります。

【関連】会社売却・事業売却の相場とは?売却価格の決め方と高く売る条件・方法をわかりやすく解説

6. アーンアウト条項を踏まえたM&Aの相談は仲介会社がおすすめ

アーンアウト条項を踏まえたM&Aの相談は仲介会社がおすすめ

アーンアウト条項は適切に活用することで、そのメリットを最大化できます。

しかし、メリットばかりに気をとられてうかつに契約すると、結果的に多大な損失を被る可能性もあるため、M&Aの専門家であるM&A仲介会社に相談することをおすすめします。

M&A総合研究所は、M&A仲介を専門的に行うM&A仲介会社で、幅広い業種において豊富な実績を重ねております。

M&A総合研究所には、M&Aの経験や知識が豊富なM&Aアドバイザーが在籍しており、アーンアウト条項のリスクを徹底的に排除したうえで、健全なM&A取引の実現を目指します。また、最短3カ月でのスピード成約を強みとしております。

無料相談を行っておりますので、アーンアウト条項を踏まえたM&Aをご検討の際は、どうぞお気軽にお問い合わせください。

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7. まとめ

まとめ

M&Aの際にアーンアウト条項を活用する目的は、売り手と買い手の双方が納得できる買収価格を設定することです。

アーンアウトのメリットを最大限享受するためには、注意しなければならないポイントもあるため、M&Aの専門家に相談することをおすすめします。

M&A仲介会社をお探しの場合は、ぜひM&A総合研究所にお任せください

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